ハイスクールC×P~駒王の騎士乙女~   作:マルク

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長らくお待たせしてしまって申し訳ありません。終わらない終わらないと頑張っていたら5千文字以上も書いていました(なのにあまり進んでないっていう)
本当ならもっと書き込みたかったですが、これ以上は精神疲労が半端ないのでとりあえず今回はこのまま投稿します。


聖剣事変

 

 

アーシアの様子がおかしい。

 

お互い半人前ということでいつもは一誠の契約者の呼び出しに付き合ってくれるのに、ここ最近ご無沙汰だ。まぁいつまでもベッタリでは成長しないのも事実。彼女なりに考えがあるのだろうと一誠は訝しむ心を押し込む。

 

「こうして一緒に帰るのも久しぶりだな」

 

「そうですね。学校では松田さん達、部活ではオカ研のみんな、家では部長さんと必ず誰かがいますからね。二人きりになれるのは下校中くらいです」

 

そしてまた沈黙が続く。美少女と帰宅なんて夢のシチュエーションなのに冷や汗が止まらない。見えない壁のようなものが自分とアーシアの間に立ち塞がっていた。

 

(うおぉおおお、どうすりゃ良いんだ!? 話題が見つからねぇええ!!)

 

そもそも(ヤロー)共としかまともに交流してこなかった一誠に年頃の女の子の好きそうな話題など分かる筈が無かった。強いて挙げれば堕天使(レイナーレ)ぐらいしかないが、あれも殆ど向こうは演技で一誠とのデートは退屈でしかなかったらしい。

 

一誠は改めて共通の話題を探る。

 

アニメ、漫画、ゲーム、映画、遊園地、カフェ…どれもこれもアーシアの人生では無縁のものばかり。話題にしたところで一方的に一誠が話すだけで終わるだろう。デートの基本は互いに楽しむことだ。自慰行為のような自己満足に浸りたい訳じゃない。

 

アーシアの灰色の人生に一誠の心は挫けそうだ。

 

「あれ? イッセーさん、何か感じませんか?」

 

「え?」

 

ふと足を止めたアーシアの言葉に思わず一誠も顔を上げる。いつもと変わらぬ帰宅路。しかし、彼女の言うようにどこか違和感を感じる。なにかこう、霞がかかったような…。

 

「っ!? まさか!」

 

霞の原因がもし人外関係者ならば狙われるのは一誠の家族が住まう自宅だ。直接一誠達を襲うより人質を取った方が遥かに楽になる。大急ぎで帰宅し家族の安否を確認しようと扉を開けると――

 

「あらお帰りなさい。血相変えてどうしたの?」

 

呑気に接客している母が一誠達を出迎えた。

 

「か…母さん?」

 

「はぅうう。よかったですぅ」

 

アーシアと共に腰から力が抜けそうになるのを堪えて一誠も客人に向き直る。

 

母の正面に座る2人の女性。同じ外套を纏い、首から下げた十字架から教会関係者だと分かる。2人はその若い外見には似つかわしくない威圧感を醸し出していた。特に彼女達が持つ長い包みから特大の危険を感じる。

 

(たぶんあれは悪魔を滅ぼせる武器。ならこいつらは悪魔祓い(エクソシスト)。狙いは俺か? 部長か? それとも…)

 

いざとなったらアーシアと母を逃がす為に戦わねばならない。一誠の背中を嫌な汗が伝う。

 

「こんにちは、一誠くん」

 

「は、はじめまして」

 

にこやかに笑う天敵に警戒心MAXで返事する。

 

「あれ? 覚えてない? 私だよ?」

 

怪訝な表情をする我が子を見兼ねたのか母が助け舟を出す。

 

「この子は紫藤イリナちゃん。小さい頃、よく遊んでたでしょう? ほらこの子よ」

 

「え…ええええええ!?」

 

母がアルバムを見せながら一枚の写真を指差す。その写真は教会で遊んだことのある少年だった。目の前の女性と見比べると確かに面影がある。

 

「男じゃなかったの!?」

 

「間違えるのも仕方ないか。あの頃は男顔負けにヤンチャだったからね」

 

気を悪くした様子も見せず、イリナはクスクスと笑う。普通の男なら見惚れる姿だろうが、一誠は真逆に怖気が走った。

 

「でも…お互い会わないうちに色々あったようだね。本当、再会って何が起こるか分からないものだわ」

 

笑みを崩さずイリナの瞳が一誠を真っ直ぐ見据える。それと同時に一誠の警鐘が一段と跳ね上がった。

 

(気づいている! 俺が悪魔になった事に!)

 

友人を、人間を見る目じゃない。これは害虫を見る目だ。

 

「安心して、今日はもう帰るから。そろそろお暇しましょうか、ゼノヴィア」

 

天敵(あくま)を前にしてイリナ達は無防備に背を向けた。隙だらけの姿だが一誠には解る。あれは罠だ。敵地で問題行動を起こせば、いくら悪魔祓い(エクソシスト)でも不利になる。けれども一誠が襲ってしまえば大義名分が成り立つ。堂々と悪魔を、最悪それを庇う人間を狩る事ができるのだ。

 

(外国から来たんだっけ。あれが本場の悪魔祓い(エクソシスト)か…)

 

幼馴染との再会に喜ぶ暇すらなく、一誠は新たな脅威に戦慄した。

 

 

後日オカ研部室にて、イリナ達とリアス達の会談が行われた。駒王教会の代表としてヒルダには立会人になってもらった。そして彼女達が持ってきた厄介事にリアスは驚愕する事になる。

 

先日未明、教会に保管・管理されていた聖剣エクスカリバー3本が奪われたというものだ。

 

「アーシアの時といい、教会は何やってるのよ」

 

「返す言葉もありません。私も耳にした時は驚いたから」

 

思わず声に出してしまった発言にイリナが肩をすくめる。末端の彼女に言っても仕方ないと先を進めようとするが、一誠から疑問の声が上がる。

 

「え~と、話の腰を折ってすみません。エクスカリバーってそんな何本もあるんですか?」

 

「一誠の疑問は当然ね。丁度いいわ。イリナさん。ウチの新人の為にも一つ教えてあげてくれないかしら」

 

「まぁ事前情報は必要だし、元はと言えばこちらの失態ですしね」

 

イリナは渋々と頷いてエクスカリバーの歴史について語る。

 

エクスカリバーは元々1本の剣だった。だが、最強と謳われたエクスカリバーですら先の大戦の激しさには耐え切れずに折れてしまう。もちろん教会は直そうとしたが、当時の聖職者達はふと考えた。はたしてこのまま最初の1本にしてしまって良いのかと。聖剣にはみんな何らかの特殊能力があるが、エクスカリバーの数はなんと7つ。数ある聖剣の中でもトップクラスの保有数だ。

 

「一誠くん。もしあなたが英語やドイツ語といった7つの言語を勉強したとして、マスターできる?」

 

「無理です。あっ、そうか!?」

 

つまり能力が豊富すぎて十全に扱える人間が殆どいなかったのだろう。宝の持ち腐れにするくらいならいっそ7本に分けて剣士の方を増やした方が戦力になると考えられ、現存する7本のエクスカリバーが生まれたのだ。

 

「他にも所説ある。たった1人の最強戦力に依存してしまえば様々な弊害が生まれるんだ」

 

沈黙していたゼノヴィアが補足するように語り出す。

 

「たとえば大陸の端から端まで移動する場合、飛行機はおろか車すらない時代にどうやってそこまで行く? 着いた頃には戦闘が終わってましたじゃ話にならない」

 

続けてヒルダも自論を述べる。

 

「あとは一個人に権力を集中させないとかだな。英雄と祀り上げて教皇猊下に取って代わるような派閥が出てくるだろう。争いの火種になるくらいなら英雄など要らない」

 

いかに強くてもその者は一介の戦士だ。前から悪魔と堕天使、後ろからは人間から命を狙われる。あまりの不憫な扱いに一誠は言葉が見つからない。

 

「レーティングゲームと戦争は違うわ。政治事情も絡んでくるから厄介なの。そのあたりは追々教育するつもりだから安心しなさい。今のあなたの課題は強くなる事。戦略は(キング)の仕事よ」

 

「はぁい…」

 

リアスは項垂れる一誠を慰め、イリナに先を促す。

 

「そうして新たに生まれたエクスカリバーは、折れた破片を集めて錬金術により造られました。それぞれカトリック、プロテスタント、正教会に2本ずつ分配されて保管するようになったの」

 

言い終わるとイリナは腕に巻いていたリボンを解く。すると糸が帯を作って硬質化し、鋼の刀剣が顕れた。

 

「これがプロテスタントが管理する擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)。こんな風に自在に形を変えられて持ち運びに便利なんだ」

 

ゼノヴィアも同じ様に聖剣を開帳する。身の丈はある巨大な剣を軽々と掲げた。

 

「そしてこれが破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)。私達、カトリックが管理している」

 

「各宗派に2本ずつって事は6本だよな。1本足りないぞ」

 

一誠が不審な点を指摘する。

 

「残りの1本は三つ巴の大戦の折に行方不明になってしまったんだ」

 

「そして今回、各宗派から1本ずつ奪われてこの地に持ち込まれてしまいました」

 

ゼノヴィアとイリナの返事に納得する一誠。反対にリアスはというと頭を抱えていた。イリナ達の話が事実なら、犯人は少なくとも3ヶ所に分かたれたエクスカリバーの保管場所を把握しており、厳重な警備を突破できる人物という事になる。単独犯は考えにくい。情報を漏らした内通者がいるはずだ。

 

「目には目をという訳ね。でも虎の子の聖剣使いを2人も派遣するなんて、犯人は何者なの」

 

「奪ったのは堕天使組織『神の子を見張る者(グリゴリ)』の幹部――コカビエルだよ」

 

意外な人物にリアスは血の気が引く。堕天使側の要人が敵陣営の宝剣を盗む。国際条約違反ものの大事件だ。下手したら大戦の再来が起きてもおかしくない。

 

「聖書にも記された者の名が出るとはね…」

 

名が知られるという事はそれだけの実力と認められた証。いくら聖剣使いとはいえ相手が悪い。彼に比べれば目の前の2人など小娘でしかないだろう。

 

「先日から秘密裏に派遣していた悪魔祓い(エクソシスト)が始末された。私達の依頼、いや提案とは私達とグリゴリのエクスカリバー争奪戦に悪魔が一切介入しないこと」

 

「関わるなと言いたいのね。まさか私が堕天使と手を組むとでも?」

 

「本部はその可能性も憂慮しています」

 

信用されてない事にリアスは苛立ちながらも堪える。たとえ教会側と手を組んでも勝ち目はまず無い。実力差が解らぬほど愚かではないのだ。

 

「正教会はどう動くのかしら?」

 

「奴らも今回不干渉だ。残った1本を死守したいのだろう」

 

淡々と言い放つゼノヴィアにリアスは憤りを感じる。自分の立場を理解しているのだろうか。機械人形を相手にしているようで気分が悪い。

 

「ヒルダ、あなたからも何か言ってあげたら? このままじゃ、更に2本のエクスカリバーをプレゼントする事になるわよ」

 

「駒王教会は後方支援(バックアップ)に努めるよう命が出された。上の判断には従わざるをえない」

 

憮然としたヒルダの表情から本意ではないのが解る。親友の境遇に同情しながらリアスは教会の用件を飲み込んだ。

 

「分かったわ。私達グレモリーはこの件に関して干渉しない。これで満足かしら?」

 

「十分だ。 イリナ、帰るぞ」

 

「オッケ〜と言いたいとこだけど、ちょっといいかしら。アーシア・アルジェントってあなたよね?」

 

輝きを失ったイリナの暗い双眸が一誠の傍らで震える少女を見据える。

 

「話は聞いてるわ。悪魔になったんだって? 元とはいえ聖女様が落ちぶれたものね。なんでそんな事をしたの?」

 

「そ…それは、それが一番みんなが傷つかない方法だと思ったからです」

 

たどたどしくもアーシアが答える。それが彼女なりに考えに考え抜いた選択だった。

 

「君は一度悪魔を助けた。そして傷が癒えた悪魔が護衛を含めた数人の同胞を殺した。その事に関して思うところは無いのか?」

 

しかし続くゼノヴィアからの糾弾にアーシアの顔色が変わる。どれだけ美辞麗句を語ろうと、彼女の情けによって死者が出たという事実は変えられないのだ。自分の罪に改めて向き合わされたアーシアは体を震わせる。

 

「同胞達にも親しい友人や愛する家族がいた。その者達に対しても同じ事が言えるのか?」

 

慈愛の精神こそアーシアの最大の長所。彼女が聖女と崇められた所以だ。けれども、そんな彼女の浅はかな行動によって命を奪われた者からすればどうだろう。裏切られたと思ってもおかしくない。あまつさえ元凶たる悪魔になったと知れば、アーシアは我が身可愛さにその道を選んだと考えるのではないだろうか。

 

「君の心にひとかけらでも罪の意識があるのなら、いま神の名の下に断罪しよう。罪深くとも我らの神ならば救いの手を差し伸べてくださるはずだ」

 

そう言いつつゼノヴィアが聖剣を抜く。反論できず、アーシアは涙を浮かべるしかできない。

これ以上はさせまいとリアスが声を上げようとするが、いち早く彼女の前に飛び出す者がいた。

 

「黙って聞いていりゃあ好き勝手言いやがって! 救いを求めていたのはアーシアだって同じだ! 追放される時になんで誰も助けてやらなかったんだよ!?」

 

アーシアを庇うように一誠が前に立つ。

 

「『聖女』に意思など必要ない。大切なのは分け隔てない人間への慈悲と慈愛だ。神からの愛だけあれば、生きていくのに必要なものは我らが用意する」

 

「自分達で『聖女』に祀り上げておいて、都合が悪くなったら要らないのか? そんなせこい奴らに崇められて神様だっていい迷惑だろうぜ!」

 

「神は愛してくれていた。なのに何も起こらなかったのは彼女の信仰が足りなかったのか、もしくは偽りだっただけだよ」

 

「ふざけんな! 悪魔すら助けるアーシア以上に信心深い人間、俺は知らねぇ! お前達がアーシアに手を出すなら、俺は全員敵に回してでも戦うぜ!!」

 

どちらも己の信条を曲げず、譲らない。一触即発の空気が部屋を満たす。

 

「そこまでだ。お前達の任務はエクスカリバーの奪還のはず。不要な戦闘は避けるべきだ。その身はヴァチカンの看板を背負っている事を心に刻め」

 

「ヒルダの言う通りよ。それにアーシアは今はリアス・グレモリーの眷属。彼女に手をかけるのであれば、こちらも黙ってはいられないわ」

 

その言葉にイリナ達は罰が悪そうに眉を顰める。三すくみの均衡を崩さぬよう交渉に来ておいて、それを崩しかねない自分達の発言を恥じたのだろう。畳みかけるなら今しかない。

 

「でも、お互いこのままじゃ気が済まないでしょ。お互いの力量を知る意味も兼ねて2対2の模擬戦をしてみないかしら?」

 

リアスの提案に渋々ながらも2人は了承した。それを確認したリアスはもう1人の問題児に視線を向ける。

 

「1人は一誠で決まりだとして、もう1人は祐斗、あなたにお願いしようかしら」

 

「仰せのままに…」

 

殺気を隠そうともしない祐斗の様子に呆れながらも仕方ないと割り切る。聖剣への憎悪が蘇り、フリードには逃げられて不完全燃焼気味の身だ。ここでガス抜きさせないと独断専行しかねない。

 

(眷属を育てるのも(キング)の務めとはいえ、中々大変ね…。でも、グレモリー家の次期当主たるものこの程度の事ができなくてどうするの。頑張れ、私!)

 

頭痛に悩まされながらも駒王町の管理者として(キング)としてリアスは心を引き締めるのだった。

 

 

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