ハイスクールC×P~駒王の騎士乙女~   作:マルク

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少し気になる点が一つ。主人公の原作の性格と、ヒルダの影響で変化したこの作品での性格に差異がありすぎて、一誠が二重人格みたいになってしまった気がする。皆様がなんとか違和感なく読める事を祈っています。


勇気の在処

 

 

 

風切り音と共に振るわれる竹刀。力強い踏み込みで軋音を奏でる木床。

 

駒王学園剣道部にて、松田はボンヤリと部員の練習風景を眺めていた。

 

「よう、どうした。最近やけに元気ないな。まさか、お目当ての女の子がいないとやる気が出ないって言わないよな」

 

友人の男子部員が気さくに話しかけてくる。図星なだけに反論できない。

 

「……半分正解。それだけじゃねーよ」

 

在籍していた写真部から剣道部への転部。松田の普段の言動と照らし合わせれば、とある女子目当てと推察されるのは容易い。それ故に、入部したての頃はかなり強めに可愛がられたものだ。しかし、松田は持ち前の運動神経とその女子への思いで耐え抜いた。今では剣道歴最年少にしてレギュラー候補というのだから我ながら驚きだ。

 

惚れた女の為に努力し、成長する。

 

坊主頭に剣道着という見た目だけなら古き日本男児、しかもそこそこ強い。そんな松田の姿に感じ入る者が少しずつ増えていった。教師からは更生したと感心され、男子部員からは同志よと共感され、女子部員も自分に害が及ばないならと辛辣な対応は無くなった。

 

「しゃあない、そんなお前に耳寄りの情報を聞かせてやろう。今度ヒルダ先輩の家に来たって人、女性らしいぜ」

 

松田の耳がピクリと動く。

 

「なんでも俺達と同じぐらいの年齢の子で、外国人だから日本語も碌に喋れないらしい。だから、同性で若いヒルダ先輩が暫く日本の常識とか教えてるってよ」

 

「おい、なんでお前がそこまで知ってんだ。先輩から聞いたのか? んん!?」

 

「女子部員経由で聞いたんだよ。先輩自身、隠す気もなかったみたいだから直接聞いたら普通に教えてくれたんじゃないか?」

 

「…できる訳ないだろぉ。プライベートを無理に詮索して嫌われたくないじゃん…」

 

損な性格だなと友人に呆られながら、松田は自己嫌悪に陥いる。ほんの少し踏み出していれば違った未来が見れたかもしれないのに、その一歩が難しい。

 

「なぁ、勇気ってどうやったら手に入ると思う?」

 

「少なくとも、ここで蹲ってる限りは無理だろ。せっかくまともな対応してくれるんだから、女子部員と会話して女心を学んでみたらどうだ?」

 

無茶を言う。そんなもの何回生まれ変わっても分かる気がしない。

 

「織斑は良いよな。何もしなくても女の方から寄ってくるんだからさ。少しでいいからそのコミュ力を分けてくれ。いや、寄越せや」

 

目の前の男は木場祐斗に並ぶ学園でも屈指のイケメンなのだが要領が悪く、失言やら行動で度々折檻されている。にもかかわらず、何故か数日もすればリセットされたかのように女共は織斑に媚びるのだから女心は分からない。

 

「山賊かよ…。ていうか、お前も知ってるだろ。俺が居ない時に出す、アイツらのギスギスした空気を。本人達は上手く隠してるつもりだろうが、しっかりバレてるからな。あんな環境で誰かを選んでみろよ。下手したら俺も、彼女になった子も刺されるぞ…」

 

「は? じゃあ、今までのやらかしって…ムグッ!?」

 

何も言うなと物凄い形相の織斑は唇に人差し指を立てる。聞けば、ストレス発散させる為に女共の暴行を甘んじて受けていたらしい。それで愛想を尽かすならそこまでなのだが、今の取巻きはそれを潜り抜けてきた猛者だ。一筋縄ではいかない。大学進学の際、海外に逃亡するつもりだと。

 

「ハーレムじゃダメなのか?」

 

「無理、性根が腐ってる。金持ちはATM、強い奴はボディーガード、顔が良ければ装飾品(アクセサリー) としか見てない。まともな女の子も俺を避けるようになっちまったんだぞ。あんな自分本位な連中、こっちから願い下げだっつーの」

 

何処ぞの大富豪に家畜として出荷されれば良いとまで言い放つ姿に松田は圧倒される。友人の精神は相当参っているらしい。

 

(イケメンも大変なんだなぁ。なんか今まで妬んでいてすまん)

 

ひょっとして木場も似たような事情なのだろうか。学園一のイケメンならチャンピオンベルト扱いされてもおかしくない。恋人を作りたがらないのも頷ける。生まれながらに恵まれている人間なんて、この世にいないのだ。そう思いながら、松田は膝を抱えて蹲る織斑の肩に優しく手を添えた。

 

 

 

 

夜更けの駒王町内を一誠の自転車が風となって走り抜ける。

 

あの夜以来、一誠の世界は一変した。

 

なんとこの世には神話が実在し、聖書の勢力—— 通称三大勢力と呼ばれる天使、堕天使、悪魔が日本で暮らしているらしい。彼らの目的は主に〝人間″だ。

 

 

『天使』は種族の特性上、その数を増やす事が難しい。だからこそ信徒、要は味方になってくれる人間を増やす事で補填し、組織を維持している。

 

『堕天使』は『神器(セイクリッド・ギア) 』の探索・解析を主な目的にしている。神器とは『聖書の神』が作り上げたシステムで、人間に無作為で宿る超能力のようなものだ。誰に、どんな神器が与えられたかは発動しなければ分からない。そして強力すぎて扱えない、若しくは有害認定されたものは封印や殺処分している。

 

『悪魔』は三大種族の中で最も余裕がある勢力だろう。悪魔が仲間を増やす方法として用いる『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』、これが種族間の均衡を崩す〝決め手″となった。チェスの駒をモチーフにしたシステムで、「女王(クィーン) ×1」「僧侶(ビショップ) ×2」「戦車(ルーク) ×2」「騎士(ナイト) ×2」「兵士(ポーン) ×8」の計15個。これを使い、彼らは他の種族を悪魔へと転生させるのだ。神器持ちなら神器ごと自軍に取り込めるから一石二鳥である。更に上級悪魔が催す『レーティングゲーム』で活躍した悪魔は上の階級へ昇格が可能だ。ゲームは他種族からも人気があり、一種の娯楽として成功している。この外様でも働き次第で居場所を確立できるというのは非常に効率的なシステムだった。

 

 

 

訳も分からぬ内に死んでしまい、得手勝手な理由で悪魔となり、そして初の彼女は堕天使で殺害目的で近づいてきたという三重苦。

 

踏んだり蹴ったりな初デートだった。

 

最初は落ち込んでいた一誠だが、御主人様は学園三大お姉様の1人、貴重と云われる『悪魔の駒』の『兵士』を8つも消費させた自分(=神器)の性能(スペック)、上級悪魔に昇格できれば自分の眷属(ハーレム)を持てるという様々なメリットを提示されて考えを改める。

 

(あれ、ひょっとしてこれ、悪くないんじゃね? どうせ普段からまともに人間扱いされてなかったんだし、別にいっか)

 

泣こうが喚こうが、どうしようも無い。人間に戻る手段が無い以上、突き進むしかないのだ。

 

自分に都合の良いよう解釈するのは得意だからか、一誠がそう結論づけるのに時間はかからなかった(現実逃避ともいうが) 

 

「今はとにかく、チラシ配りまくって契約者を増やす! そして部長からお褒めの言葉を貰うんだぁああ!!」

 

兵藤一誠、良くも悪くも単純な男だった。

 

 

契約者の住居に到着し、早る気持ちを抑えきれずに呼び鈴を鳴らさずに敷居を跨ぐと、一誠は僅かに違和感を感じる。開けっ放しの門と玄関、綺麗に並べられた靴、シンと静まりかえった屋内。契約者が在宅している筈なのにその気配がない。

 

何かの間違いかと思って耳をすませていると、奥から錆びた鉄のような匂いが漂ってきた。

 

それはつい最近嗅いだ事のある匂い——血の匂いだ。

 

靴を脱ぐのも忘れて匂いの元まで走る。辿り着いた先には、逆十字に磔にされていた人間がいた。おそらく彼が契約者だろう。胸から腹にかけて体をバッサリと斬り裂かれ、臓物が溢れて異臭を放っていたのだ。

 

あまりの非日常な光景に絶句している一誠に、1人の男が近づいてきた。

 

「これはこれは! 悪魔くんではありませんか!!」

 

白髪の髪の若い男。首元で光る十字架から、男が聖職者——天使側の人間だと悟る。

 

「俺は神父♪ 少年神父〜♪ 日頃の行いが良いせいか、今日の俺はツイてるぜぇ〜♪ 俺に会ったが百年目、お前の命はデストロイ♪ 誰が殺るかって? それは俺さ! フリード・セルゼンさ!!」

 

フリードと名乗る神父はダンスパーティーにいるかのようにクルクルと踊る。その奇行にたじろぎながらも、一誠は堪らず声を上げる。

 

「おい! これはお前がやったのか!?」

 

「イエスイエス! どう? 中々の出来っしょ? 悪魔と取引するような人間は、生きる価値ナッシング。困難を自力で乗り越えられないからって悪魔に頼るかフツー? 負け組もいいとこざんす。逝って良し!!」

 

「お前は人間…… 悪魔祓い(エクソシスト)だろ!? お前らは人間を守るのが仕事じゃないのかよ!!」

 

転生して間もない一誠の脳裏に、リアスと共にこの世界の裏側を教えてくれたヒルダの顔が思い浮かぶ。彼女は自身を悪魔祓い(エクソシスト)だと、人間を守る者だと名乗った。そして一誠を助けられず、あまつさえ悪魔にさせてしまった事に対して頭を下げた。

 

『守れなくてすまない。弱くてすまない。兵藤のご両親には責任を持って事情を説明し、謝罪する』

 

正直言って、ヒルダに指摘されるまで一誠は親の存在を完全に忘れていた。肉親なのに、この年齢まで一緒に暮らしてたのに、自分にとって親はいないも同然だったのだろうか。そう思うと鳥肌が立つ。リアスが命の恩人なら、ヒルダは心の恩人だ。

 

目の前の男がそんな彼女と同類だと思いたくなかった。

 

「はぁ? いいかよく聞け、クソ悪魔。お前らは人間の欲を糧に生きてんだろ? お前らにおまんまくれてやる人間は人間として終わってるんですよ。裏切り者なんだから死は当たり前。むしろこれ以上魂が穢れないようにしてるんだから、慈悲ですよ慈悲。アーメン!」

 

そう言いつつフリードは契約者の頭部を蹴り砕く。

 

もう我慢ができなかった。

 

「てめえ! いい加減にしろよ!!」

 

「あハぁん、正当防衛成立♪ こっちも話し疲れて顎痛いし、ぶっ殺しまーす!」

 

怒りと共に突き出した一誠の拳。しかしフリードは華麗に躱しながら光剣を振るう。胸元を掠めたそれに冷や汗を流す暇もなく、一誠は太腿を銃で撃ち抜かれた。

 

「痛っ!? この痛み、光の…」

 

それは天野夕麻——堕天使レイナーレが振るった光の槍と同じ痛みだった。

 

「ご名答。祓魔弾っていう光力を持つ弾丸ですよ。痛い? ねぇ痛い? あハ、でもダ〜メ。許しません。クソ悪魔は死ね! 死んで俺のキルスコアの糧となれ!!」

 

つい先日まで普通の高校生だった一誠とは戦闘経験が桁違いだ。勝てる気がしない。殺されると覚悟した時、あの夜と同じく金髪の少女が割って入った。

 

「やめてください! どうしてイッセーさんにひどい事を!」

 

「……アーシア?」

 

その正体はアーシア・アルジェント。

少し前にヒルダが紹介してくれた、駒王教会の新たな修道女(シスター)だった。何故とは思わない。むしろフリードが神父なら、教会関係者が同行しているのは自然の流れだ。

 

「おいおい、勘弁してよ。君ら何? 知り合い? それともカップルですか? お笑いだね、悪魔と修道女(シスター)の禁断の恋ってヤツ?」

 

悪魔という単語を聞いたアーシアの顔から血の気が引く。足がガタガタと震えるものの、彼女は毅然としてフリードに向き合う。

 

「知ってます。イッセーさんが悪魔だって私は知ってます。その上でお願いします。イッセーさんを見逃してください!」

 

何が彼女をそうさせるのだろう。

一誠は茫然とアーシアの背中を見ていた。

 

戦闘力は天地ほど差がある。それ以前にアーシアは女の子だ。性別で既にハンデがある。ヒルダやリアスのように男より強い女はそうそういない。なのに彼女は一誠を守ろうとしている。

 

「もう嫌です。悪魔に魅入られたからって人間を裁いたり、悪魔を殺したりなんて…そんなの間違ってます!!」

 

激昂したフリードに殴られても、怖くても、アーシアは主張を変えない。ダメなものはダメなのだと言い続ける。その姿を見ると不思議と力が湧いてくる。

 

「やめろ…! てめえの相手は俺だろうが!!」

 

「おっと、先に君を殺さないとねぇ。五体バラバラにして、君の家族に送ってやるよ!!」

 

倒せるかどうかなんてどうでも良い。

ただ今はこの激情に身を任せたい。無性にそうしたい。

 

「おぉオオおおっ!!」

 

一誠の神器が発動し、左腕を赤い手甲が覆う。

 

「ハッハァー! 来いよ、クソ悪魔ぁあアア!」

 

ぶつかり合う赤拳と光剣。互いに興奮状態で敵しか目に映らず、周りには一切目に入らない。

 

それ故に2人は気づかなかった。部屋の床に描かれた真紅の魔法陣が発動の光を放ち始めた事に…。

 




織斑百春
転生者その3。転生時の願いは「女にモテたい」。与えられた特典はISの織斑一夏の体。
出番はここだけかもしれないけど、一誠との対比、一般人感覚で美少女動物園に入った者の末路を書きたくて作ったキャラです。一誠レベルまで思考力を落とさないと地獄じゃないかな。
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