惑星の通り道   作:梛木

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プロローグ【衛星基地襲撃】

 

 宇宙統一暦(UCC)608年。地球から人類が宇宙へと乗り出し600年の歳月が流れた。宇宙に進出した人類は、多くの血を流しながらも統一連邦政府の元で太陽系の各地に進出していた。

 

 連邦政府は太陽系外縁部探査計画で定めた太陽系の範囲迄を人類が進出するべき範囲とし、各惑星圏を結ぶ惑星間ワープドライブ技術や義体換装技術といった技術革新を進めていった。人類は技術革新により生身の肉体から環境に的にした義体に変わり1部の者は寿命という枷から解放されていた。

 

 

 

 

 

 ■火星圏──フォボス・ダイモス衛星基地

 

 

 武装組織アルゴノーツの外宇宙探査船アルゴーは火星圏にある連邦政府直轄管理区域であるフォボス・ダイモス衛星基地へと向かっていた。

 アルゴー号内部では、これから行われる任務の説明が改めて行われている。

 

 

 

「諸君! 今回の任務は連邦政府が極秘研究をしていたという研究所の襲撃及び研究品の確保にある。

 |Neo-Genesis Artificial Gestation Interface《ネオ ジェネシス アーティフィシャル ジェステイション インターフェース》計画の阻止が目的であり、滅亡に向かっている人類を止めるのだ」

 

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 アルゴーの艦長でもあるイアンさんが、作戦の概要の説明を続けている。

 

 アルゴノーツエースパイロットの俺は今更作戦内容について聞くまでもないので、自身が乗る人型機動兵器(ゼニスフレーム)の様子を見に格納庫へと向かう。

 

 格納庫には俺とは別の人型機動兵器(ゼニスフレーム)のパイロット兼整備士である、ヒュラー・スメラギが居た。スメラギはこちらに気がつくと手を振りながら近づいてくる。

 

 

「隊長! ……いいんですか? 会議に出なくて。イアンさんまた怒りますよ?」

 

 

 汚れがちな格納庫においても、輝く金髪で小柄ながらも知性を感じさせる瞳がこちらを見つめてくる。

 きちんと作戦内容は把握していると返すと、そういう事じゃ無いと思うんですけど……と若干の非難の眼差しが帰ってきた。

 

 

『そんな事より整備状況はどうだ?』

 

 

「はい、各ゼニスフレーム問題ありません。何時でも出撃できます」

 

 

 なら、問題無いと言葉を返し自身の人型機動兵器(ゼニスフレーム)に目を向ける。黒を基調とした機体には所々に紅い装飾がされている。獅子をモチーフとした兜の様なパーツに覆われた頭部に、主武装として大型特殊メイスを装備している。動力源としてのコアが胸部に組み込まれておりそれを守る装甲がコックピットとコアを守っている。

 

 

「ゼニスフレーム・アルケイデス。400年前、巨人戦争(ギガントマキア)で活躍したとされる、12機のゼニスフレームのとある機体をモデルに製造された、最新機。いつ見てもカッコイイですよねぇ」

 

 

 カッコイイ……か。愛機として乗ってはいるもののカッコイイと思った事は1度もなかった。宇宙統一暦608年の現在、太陽系のほぼ全域を統治するのは統一連邦政府となっている。人類の居住範囲は地球圏、火星圏、木星圏、土星圏を中心として生活している。各惑星圏には一定の自治権があり統治されている。

 

 ゼニスフレームは連邦政府が円滑に各惑星圏を統治する為に生み出された人型機動兵器、それを思えばカッコイイとは思えなかった。

 

 

 

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 アルゴー号は目的地である火星圏のフォボス・ダイモス衛星基地へと到着した。

 

「今回の作戦、隠密行動の為ゼニスフレーム・アルケイデス単騎の潜入とする。勿論囮は必要なので本隊であるアルゴー号が陽動として基地の防衛部隊を誘き出す。目標達成後の合流には、スメラギのゼニスフレームを護衛に輸送艦が合流ポイントで待っているので、そこへ向かうように」

 

 

 

「それでは作戦開始!」

 

 

 イアンさんの号令と共に作戦開始の宣言がされる。

 

『ゼニスフレーム・アルケイデス……出る!』

 

 

 ハッチから宇宙へと出撃する。基地への潜入ルートは事前に調査済み、アルケイデスのステルスモードで問題無く潜入出来る手筈となっている。

 指定のポイントを目指し、道中も特に問題なく基地内部へと潜入を果たした。

 

 潜入後にはアルゴー号への合図を送り、作戦は第2段階へと移行した。

 囮となるアルゴー号が基地の付近でゼニスフレームも出撃させ、襲撃を行う。それに釣られたのか基地にいた量産型ゼニスフレームも全てそちらに向かっていった。

 

 

 基地の奥へと向かうといかにも研究所といった雰囲気の場所にたどり着き、慎重になりながら先へと向かう。道中培養液か何かに浸かる無数の生体を見かけるも関係ないので、更に先へと進んだ。

 

 

 最後に第13研究室と無機質に記載された扉の前に立ち、中の様子を伺ってから侵入する。

 

 

 中は無機質で、部屋の中央に人間が収まる巨大なフラスコとも呼ぶべき機器が鎮座していた。その中をよく見ると一人の少女がいた。機器の傍によると情報端末が放置されており、電源の着いていたそれには|Neo-Genesis Artificial Gestation Interface《ネオ ジェネシス アーティフィシャル ジェステイション インターフェース》、生体アンドロイドArchetype1号の経過観察と表示されていた。

 

 そこには、この目の前にいる少女が生み出されてから今までの記録が記載されていた。

 

 

 これを見る限り今回の目的の品はこの少女の確保という事になるが……。

 少女は身に何も身につけておらず、フラスコの中にいるため意識も無いようだ。

 

 どうするにせよ、この少女をフラスコから取り出し連れていかねばならないな。目の前の基盤を操作し、少女をフラスコの中から連れ出す。

 

 都合よく白衣が落ちていたのでひとまず、それを羽織らせ抱える。

 意識が無いうちにアルケイデスの元まで戻らなければいけない。

 

『急ぐか……』

 

 

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 無事アルケイデスの元までたどり着きコックピット内部に戻る。

 まだ少女は意識を戻さなかった。生きているのか途中で怪しくなり確認したが呼吸はしていたので生きているのは間違いなかった。

 

 まあ、だとしたら余程図太いのかも知れないなと、少し少女にとって不名誉な事を考えてしまう。

 

 

 ゼニスフレーム・アルケイデス起動……

 

 生体認証……完了。

 

 

 アルケイデスの起動が完了したので、基地からの離脱を試みる。

 あと少しで基地から離脱というところでセンサーに反応が出た。

 

 

『あれは、量産型ゼニスフレーム……まだ基地に残っていたのか』

 

 

 さすがに気づかれて基地から追っ手が差し向けられたのかこちらに向かって迫ってくる量産型ゼニスフレーム。単眼のモノアイがこちらを逃さんとばかりに睨みつけてくる様だった。

 

 

 追ってくる以上は振り払う必要があるな。遠距離武装は隠密に向かないからと置いてくるんじゃなかった。

 

 

 仕方が無いので近接武装の大型特殊メイスを展開する。

 

 向こうも近接武装として標準搭載されているバトルアックスを持ち出し、勝負を仕掛けてきた。

 パイロットが下手なのか、拙い動きで先程までの動きとの差に違和感を覚える。焦りからか上段に構えたバトルアックスをメイスで弾き飛ばし、手足を破壊して行動不能に追い込む。

 

 

 この距離なら基地の人間に救助されるだろう……。

 そう思い急ぎ合流ポイントへと移動を始めた。

 

 

 安全域にたどり着いた頃、それまでコックピットの複座にて寝ていた少女が意識を取り戻した。

 

「ここは……」

 

『目が覚めたか、ここは武装組織アルゴノーツ所属のゼニスフレーム・アルケイデスの中だ』

 

【|Neo-Genesis Artificial Gestation Interface《ネオ ジェネシス アーティフィシャル ジェステイション インターフェース》計画】、生体アンドロイドArchetype1号、お前は我々と共に来てもらう。拒否権は無いからな。

 

 

 そう一方的に告げられた少女もといArchetype1号は、不満そうな顔をして反論をしてきた。

 

 

「むっ、私の名前はNAGIです。Archetype1号ではありません。訂正を求めます」

 

 親切な人に名付けてもらった大切な名前なのです。と今それを気にすることなのだろうかと、思ってしまうようなことを少女、いやNAGIは言ってきた。

 

『……それよりも気にすることは無いのか?』

 

 

「無いですね。良いですか、名はその人を表すとても大事なものです。それをArchetype1号なんて機械的かつ楽しくありません」

 

 そういうものだろうか……名前なんて解ればなんだっていいだろうに。

 

 

『そうだ! 貴方! 私を連れ出してくれた貴方。どうか私を連れて行って欲しい場所があるのです』

 

 

「基地に戻れという話なら無理だぞ」

 

 

『ええ……分かっています。そうではなく、私をこの太陽系の外に連れ出してくださいな!』

 

 

 これは、後に人類が太陽系外に進出するきっかけとなる【運命の子】を産む少女と彼女と旅をする中で男が英雄になるまでのお話。

 

 

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