惑星の通り道   作:梛木

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1話【真の不老不死】

 

 

宇宙統一暦608年、統一連邦政府の極秘研究所があるフォボス・ダイモス衛星基地を襲撃した俺たちアルゴノーツは、統一連邦政府が研究していたとされる、【Neo Genesis Artificial Gestation Interface】計画のArchetype1号もとい自身をNAGIと名乗る少女の確保に成功。

 

追っ手として現れた量産型ゼニスフレーム一機を迎撃し無事逃走に成功した。

意識を取り戻したNAGIは、自分を太陽系外へと連れて行って欲しいと願い始めた。作戦は継続中な以上今は取り合っている時間は無いと判断。

 

ゼニスフレーム・アルケイデス及びパイロット、レイ・アルバート、目標を連れランデブーポイントへ向かう。

 

『… 以上、記録終わり。』

 

 

「ねぇ〜レイ〜連れてってよ〜。私はどうしても外に行かないと行けないの!」

 

 

アルケイデスの複座で先程から不満を垂らしているのは、統一連邦政府が研究し生み出したとされる存在なのだが…。どうしよう、凄くうるさい。

 

いきなり訳の分からない事を言い始めたと思ったら、やれ早く連れてけ、私には使命があるだの。頼むから静かにしていてくれ。

ちなみにここで反応してはいけない、先程安全域に来たとはいえさらなる追っ手が来ないとも限らないから大人しくしていろと言ったら、やっと反応してくれた。ねぇ貴方の名前を教えてよ!と一切人の話を聞かなかった。

 

 

ただ、一応自分の立場が分かっているのか暴れだすことは無いのでこのまま合流ポイントまでの移動そのものはスムーズに進んで行った。

 

 

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暫く宇宙空間を移動しているとレーダーに味方の反応が現れた。視界にも味方の輸送艦とヒュラーが乗る白く塗装された中に紅い装飾のゼニスフレーム・ヒュラースがいた。

 

 

「あ、あれは味方?」

 

 

『ああ、そうだ。頼りにしてる部下だよ』

 

 

 

輸送艦の中にアルケイデスを格納しヒュラースも格納する。

アルケイデスはそのまま輸送艦の動力源と接続させ、ステルスシステム【ハデスの隠れ兜(カプ・オブ・ハデス)】を起動させる。アルゴノーツが統一連邦政府の手を逃れて活動する上で助けられているシステムでもある。

今の所このシステムを起動して見つかったことは無い。

 

 

 

格納庫にNAGIを連れてアルケイデスから降りる。未だ白衣を纏っているだけだが、輸送艦内なら服もある。今は我慢してもらおう。何より当人は気にしていないのか平然としている。今までそれが当たり前だったのかもしれない。

 

 

「隊長!ご無事で何よりです!」

 

 

ヒュラーが自身のゼニスフレームから降り立ちこちらに駆け寄ってくる。

本隊が囮として基地戦力の大部分を引き受けてくれたとはいえ、単独潜入だ、危険が無いわけではなかった。部下としては気が気で無かったのかも知れない。

 

『ああ、問題無い。お前がきちんと整備してくれていたおかげでいつも通りの性能を発揮することが出来たよ』

 

 

そう、言葉を返すとヒュラーは満足そうで表示を緩めた。そして俺の隣にいるNAGIに目線を向けると一言、ソレが目標ですか?と言った。

 

 

『ああ、基地にあった研究資料に目を通して裏付けも取れている間違いない。後でアルケイデスに保存してあるデータをイアンさんにも提出する』

 

 

「こんにちは、可愛らしい子ね。初めまして私はNAGI、アナタのお名前は?」

 

 

と、それまで静かにしていたNAGIがヒュラーに向かい挨拶をする。それに対してヒュラーは先程迄とは違いあまりに素っ気ない反応を返した。

 

「…連邦政府の実験体に名乗る名前などない。隊長のお手を煩わせないよう大人しくしていろ。」

 

隊長、それでは自分はヒュラースの不備確認がありますので失礼します。と踵を返して去っていった。それに対して、俺はあぁ、わかった。と返した。ヒュラーのあまり褒められた対応では無い姿に少し頭を悩ませたが、NAGIを放置するのも不味いと思い声を掛ける。

 

 

 

『…とりあえず、本隊と合流まで部屋があるからそこに行ってもらう。服は船員に頼むから部屋に届けさせよう』

 

 

「えぇ、問題無いわ。あの子に嫌われちゃったかしら」

 

 

NAGIは先程のヒュラーの対応に気にしていないのか、自身の振る舞いの何がいけなかったのかと独り言を言い始めていた。気にしていないならそれでも良いかと思い、NAGIを連れて艦内へと向かった。

 

 

 

船員に服の用意を頼み、NAGIを外鍵付きの部屋へと案内する。その間のNAGIは出会った当初が嘘のように大人しくしており、使命だの、太陽系外へ連れて行けだと言わなくなっていた。大人しくしている以上は俺から何かすることも無いので、本隊へ伝える報告書の作成を与えられた部屋で進めていた。

 

 

 

アルケイデスに保存しておいた研究資料に、改めて目を通しながらNAGIについて考えを巡らす。真の不老不死実現か…。義体換装技術により擬似的な不老が叶ってはいるが、それを新人類と呼ぶ事は出来ない。何を持って

人類と定義されるのか、この手の話は先の巨人戦争においても多くの哲学者が議論をし後世に残してきた。

 

現在、統一連邦政府が公的に認める人類の定義が、身体の80%以上が生身、要は義体換装技術を用いずに生物学上の人間と差異が無いものを人類。義体換装技術により身体の20%以上が置き換わっているものを新人類と定義している。勿論ここにアンドロイドや電子生命体は含まれない。

近人類として彼等は定義されている。これも巨人戦争以降に定義付けられたものだ。

 

そしてNAGIはそのどれでも無い、デザイナーベビー。人造生命体。あの子の身体は特殊なナノマシンを搭載された存在。ナノマシンにより細胞レベルで制御されており、容姿は10代後半か20代前半ともいえなくも無いが資料が正しければあの子は生み出されてからまだ8年しか経っていない。

 

身体機能は生身の人間の比ではなく、自己修復機能もあるので病魔等に侵される心配もない。知力、体力、感覚、環境への耐性全てにおいて優れた存在と言える。またそれにより寿命も義体換装技術で得るもの以上となる。

 

『まさに、真の不老不死というわけか。だがだからこそ気になることがある』

 

 

そう、NAGIの計画名、あの研究所にあった資料の抜け落ちたページ。アクセスしようとしてもダメだった。真の不老不死実現それだけでは無いと何かが訴えて来るようだった。

 

今出来ることは少ない。幸いにも実験体たるNAGIはこちらで確保出来た。

遅延行為としては上出来だと思いたい。

今後の方針を決めるのはアルゴノーツの船長でもあるイアンさんは勿論の事、俺たちの上層部とも呼ぶべき存在。

 

自然復古活動団体 Eden Reclaimers(イーデン・リクレイマーズ) 通称ERという組織がある。勿論表向きに反統一連邦政府組織アルゴノーツとの関係は無いとされている。資源採掘により破壊された宇宙を守ろう。自然を取り戻そうという良くある自然保護団体だ。

 

メンバーの殆どは反義体換装技術主義者で、過激なものは義肢等にすらも良くない感情を持っている。木星圏を中心として活動をしており、非武力的な活動が中心で少しづつシンパを増やしているそうだ。

 

 

 

今は彼等がNAGIをどう取り扱うのか…それが少しだけ気がかりとなっていた。

 

 

 

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