えっ、私の役目って魔力タンクなんですか??   作:朝食付き

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5-1 えっ、こんな塔のてっぺんまで上らないといけないんですか??

 さあ、調査依頼の始まりですよ! いつものように森行きの乗合馬車に揺られ、ついたのは森の北側入り口。鬱蒼とした森がまるで壁のように街道と森を切り分けている。ここに入るのかぁ、って入るまでは気後れする。しない人もいるみたいだけど。深呼吸をして先輩たちの後に続く。

 

 塔は3層にあるらしい。森がどこまで広がっているのかは誰も知らないけど、いくつか分かっていることもある。その一つが、森は層状に分かれていること。森をずっと進んでいくと、木々が全然生えていない領域にぶつかる。帯状になっているそこを通り抜けると、より脅威度の高い魔獣が現れる。そしてそこは安全地帯でもある。いや、安全地帯と思われていた。なにせ先日ゴーレムが出ちゃったもの。私たちが討伐したとはいえ、どこもかしこも全く気を抜けないとなると冒険者の体がもたない。ということで安全地帯の安全確認も実は依頼調査の一つでもあったりする。

 

 それまではいつも通りの森歩きってわけだ。例によって探索用の警戒陣形をとって歩く。小さい魔獣を見るくらいで大物を見かけることはない。まあまだ浅い層だものね。ゴーレムが出たというのも理由だったりするのかな。熊が出たら兎とか鹿が逃げ出すみたいに。でもゴーレムは見つからないように擬態していたみたいだし関係ないか。一人で考え、答えに納得する。覚えてたら、そのうち師匠に答え合わせがてら話してみればいいのだ、こういうのは。

 

 足元はそれなりにしっかりしているけど、森の圧だって人の足跡に負けていない。時々突き出した新しい芽が強烈に主張して私を転ばせようとするから、しっかりと足元を確認して歩く。当然周りの警戒だって忘れちゃ駄目。でも駄目、私はまだ足元注視で一杯一杯だ。警戒を忘れてないだけマシなのよ。そうなのよっと。

 私はさておき他のみんなは軽口を叩く余裕がある。まあ上位パーティだからね。当然といえば当然。表情だけ見れば街中、それも近所を歩いているのと変わりなく見える。なにせ魔物がよってきたところですぐ処理できるから。なのでそもそも魔獣を恐れて静かに歩く必要もないのだ。今だって先輩は好きかっておしゃべりしている。全く、静かなる狼なんて誰が名付けたんだ?

 

***

 

 どんなに長い道でも歩いてれば近づくもんだ。前に魔術を教わる時に師匠に言われた言葉だけど、なぜか今その言葉を思い出している。なぜかじゃないや。普通に歩くのが疲れてきたなってタイミングで目的地が見えたからだって。

 うーん、デカい。周りの木々より頭一つ(塔の頭ってどこだろう?)高い。2層と3層の境目、いわゆる緩衝地帯は見通しがいいというのもあるけど、普通に見えてるってのが大きさの証拠だ。

 

 今回は調査に時間がかかる。だから一晩二晩はここで寝泊まりすることになる。塔までも大した距離はなさそうだし、どうせなら荷物置いていくのはアリなんじゃないかな。

 それは私だけの思い付きではなかったようで、提案しようと口を開ける前にリーダーが荷物をどさりと置いた。みんなで分散して持っている宿泊出来るような天幕とかその他もろもろ。

 

「ここに置いておこう。食料と水、調査に必要なもの以外はね」

 

 みんな無言で荷物を下ろす。私も背負っていた背嚢を下ろす。せっかく薄紅のかわいいローブなのに、味気ないカーキ色が台無しにするのだ。せめて黒とか、悪目立ちしない色ならよかったのに。鞄を開けて中身を取り出す師匠を見て考えを変える。いや、黒だと師匠の場合どこまでが鞄かわかんなくなっちゃうな。そりゃ駄目だわ。紛らわしいことこの上ない。なんだってあの人は全身真っ黒なんだ。一人ぷんすかと怒りを燃やしてみる。……うわ、目が合った。鎮火!

 

 さてさて、荷物を下ろして身軽になった私たち一同。向かうは早速塔の足元。そこには一体何が待っているのだろうか?!

 

 近くまで来てみると、というか近くまで来るまでもなくでっかい。何階建てだ? 窓の数を下から数えてみる。ひいふうみい、ええと次がなんだったっけ? 指で数え直すと6個の窓。つまり6階建て! ギルドハウスなんて目じゃない高さにちょっと衝撃を受けている。だってあそこまで登らないといけないってことでしょ?

 

「ちょっと高いわね……」

「高いな」

「高すぎるね」

「ここを上らなきゃらならんわけかい……」

 

 まあみんな同じ気持ちよね。それにしても改めてこの高さの塔が今の今まで見つかっていなかったという事実がすごい。あのゴーレムってすごい奴だったのでは?

 

 ギルド調査員や実際に中まで入ってみた冒険者によれば、外からは見た目通り結構でかいように見えるが、中に入るとさらにデカくなるとのこと。そんなことってあるのかな。入り口近くで突っ立っているわけにもいかないから近くの藪に潜んでいる今現在、同じ藪に潜んでいる師匠をつつく。

 

「中はもっと広いって聞いてますけど、高さまで増えてるなんてことはないですよね……?」

「……その発想はなかったな。多分それはないと思うが…。いや待て。階数を増やす利点があるならなくはないか……?」

 

 ちょっと気になった程度の質問だったのに、師匠はそれっきり黙り込んでしまった。私としては単なる会話の出だし程度のつもりだったのに。お陰でずいぶん退屈を持て余すことになった。なにせ今やっているのは調査の一環で、塔から本当に魔獣が出てくるのかを確認中なのである。

 正式に報告書という形でまとめる以上、又聞きではなく自らの目で確かめる必要があるとのこと。ギルド調査員や他の冒険者が信じられないというわけではなく、多様な視点からの評価が必要なのだという。それは分かったけど、せめておしゃべりしようよ師匠……。ちなみに塔の外だからまだ魔術師二人組でも問題ない。特に言われてないから多分だけど……。

 

 私が先輩のいる藪を選べば良かったと後悔していると、早速塔に動きがある。いや、塔の中というべきかな。辺りを伺うようにして一体の魔獣が頭を出す。白く柔らかい毛並みを持つそいつは、この森だと割とよく見る魔獣だ。ウサギに似てはいるが、脚は六本。ウサギは4本足だからね。6本じゃない。しかも何気に薄らデカいし、前足には鋭い爪もある。新人冒険者が一番怪我させられる魔獣でもある。

 このパーティならただの雑魚に過ぎないが、私一人だったらかなり厳しい相手でもある。ウサギモドキにやられる狼ってんじゃサマにならない。いつかはあいつとも決着を付けなくてはならないのだろうな……。ありもしない因縁を見出してみる。

 

 そんなウサギモドキだが、私にとっては脅威でも森の中では割と下位の魔獣である。だから周囲の警戒に余念がない。塔の入り口から離れず、ひくひくと微妙にかわいくない顔で鼻を動かしている。別に倒しても問題はないが、血が他の魔獣を呼ぶのもよくない。さっさとよそに行ってほしいものだ。

 

 結局師匠が思考をまとめるくらいの時間までその魔獣は塔入り口に居座り、突然駆け出すという奇行を見せて私たちを一息つかせた。

 

「恐らくだが、塔の階層が増えていることはないはずだ」

 

 魔獣を見送る私に師匠が突然そんなことをいうから、暇つぶしに折って遊んでいた葉っぱの舟を壊してしまった。階層が何なんです?

 

「高さまで増えているのかと、聞いたのはお前だろうが」

 

 嗜めるような口調だが、思索にふけって私を放置していた自覚はあるらしい。いつもよりその口調は柔らかい。なので私も責めはすまい。お互いの落ち度は手打ちってことで。

 

「ええと、高さは増えないんですね。なんか不思議ですね。平面は気軽に広げるくせに、高さはそのままなんて」

「塔は術式のためにある。塔はあくまで構造を利用するためのものだ。存在しない階層を作り出すのは無駄が多い」

「ハナから必要な階数を作っておけって話ですね」

「その通りだ。まあ完全に同じものを複製するのならばやれないことはないかもしれん。意味があるかはわからないけどな」

 

 禁術に手を出すような魔術師が意味を求めて動くかっていうと怪しいけど、中に入る私たちとしてはそれがないことを祈るばかりだ。だって6階だってちょっとだるいんだもん。

 

***

 

 その後もきっちりと魔獣の出現を確認し、記録する。師匠の肩越しに書きつけられていく文字を眺めていたけど、なんだか頭が痛くなりそう。しかもずっと隠れてたせいで体が固まっている。逆に疲れたまである。

 結局日が暮れるまでに現れた魔獣は4体。うち一匹はかなり上位の魔獣だ。流石に見逃すと後々厄介なので、師匠の電撃をきっかけとした前衛三人のコンビネーションにより即時討伐がされた。私はただの魔力タンク。まだまだ私の火の術式では速攻での構築とまでは行かないのだ。だんだん早くはなってるんだけど、師匠のようにピッと組むまでは行かない。精進あるのみ。

 

 そんなこんなで一度2層と3層の間、緩衝領域に戻ってきましたよっと。さすがに夜中まで見続けるのは結構しんどいし、出てくることは確認できたからいいのだ。第一塔の中に入るっていうのに寝不足じゃかっこもつかないし、命が危ない。

 

 前回はここでゴーレムに襲われるという不幸に遭遇したものの、基本的にはここは安全地帯。少なくともまたゴーレムが出ることはない、はず。

 それでも見張りをなくすわけにはいかないから熟睡とはいかないんだけどね。

 

 ふと思いついて辺りを慎重に見て回る。確かここらへんだったと思うんだけど。…ああ、あったあった。妙に新しく見える根っこと土。私がゴーレムを倒した時にぶち開けた大穴跡である。今はもう中穴かな。すでに縁の方は新しい根っこや土で埋まっている。自然ってすごいね! でもさすがに、爆心地近くは穴が埋まらずに残っている。完全に焼き尽くされてたせいかな。普通に縦穴って感じ。私たち全員が隠れても多少の余裕がある。結構、いやかなり深そうだし、次にゴーレムが出たらここに隠れたらいいかも。いや、この落とし穴に引っ掛けるべきかな? 初めてやっつけた大物だからね、今後もここを通るたびに君のことを思い出すよ…!

 

「ほら、穴なんてどうでもいいでしょ。さっさと火を起こしなさい。お得の術式使ってもいいわよ」

 

 はぁいと返事をして拠点まで戻る。拠点だなんてちょっとかっこよく言ったけど、薄手の布を天幕にしただけの簡素な休憩所だ。魔獣の警戒がいるから仕方ないね。それでもそれなりに居心地は良くなるから不思議だ。

 さっさと火を起こす。何気に不器用な先輩は火おこしが苦手なのだ。私は逆に火おこしくらいしかできないからこれは適材適所。流石に私が薪拾いは危険が危ない。いざという時に対処できる前衛組が薪拾い。そして私たち後衛が火おこしやご飯を用意するという分担になっている。

 今日の晩御飯は贅沢にも野菜汁の予定だったりする。森の中ではでかい木に巻き付いている蔓を見つけられさえすれば水の確保は簡単だ。地面の下から猛烈に水を吸い上げるこのツルは、断面に傷をつけるとそこから結構な勢いで水が滴る。この水と麦、野菜と塩を少々入れて煮込めば完成。麦をふやかすんだから麦粥と言ってもいい。場合によっては森の果実とか野草を入れたりもする。塔の中に入ったらここまで手間はかけていられないけど、森にいる分にはしっかりとご飯を作るのが静かなる狼の流儀なのだ。

 

 ***

 

 その後も遠目からの塔の監視と休憩を全員で回して一晩が立つ。朝日の中で準備を整えていく。さて、ここからが本格的な塔の調査、つまりお邪魔しますってわけだ。

 

 塔の中に入ってみると、中は妙に明るい。窓からの光だけじゃ説明できないくらいに。森の中より明るいかも。暗くてじめじめしているよりはいい。取り出していた松明をしまうか迷う。結局一応背嚢のすぐ取れるところに突っ込んでおくことにする。

 

 師匠と旦那は早速調査を開始している。入り口を触ったりコンコンと叩いてみたり。旦那の方は剣の鞘で地面を叩いてまわっている。あれで何がわかるんだろうね。ちなみに今回リーダーは師匠の傍に控えている。先輩は私の隣。旦那だけが単独行動を許されているのだ。一体どんな罠があるのかはわからないけど、魔術師が混乱すると被害は大きくなっちゃうからね。特に師匠。攻撃から調査、回復までなんでもこなすこの人がいなくなるとうちのパーティは戦力半減だから。私? 私がいなくなる分には大した影響はないけど、魔力だけはあるから禁術のいい栄養源になってしまう。それはやっぱり良くないよね。

 

 それにしても、師匠が言ってた通り、中は妙に広い。外から入り口を見ていた分には相応の広さって感じだったのに、中から見ると倍では効かないくらい広い。この中を6階まで歩くわけね……。

 忙しそうに調査に励む師匠に平気な顔で話しかける先輩。なにせ私の護衛役だ。護衛以外することがない。せめて何をしているかくらいは知りたくなるというものだ。先輩のことだからただの暇つぶしの可能性もあるけど。

 

「ね、この広さ、禁術の効果なのよね?」

「そうなる」

「そこまでわかってるならそれ以上調べる必要ってあるわけ?」

 

 師匠がちらりと先輩を見ている。どうも暇つぶしではなさそう。結構真面目な顔をしている。

 

「禁術を使ってまでやることが、単なる空間の拡張だとは思えない。見ろ。いくつもの術式が絡み合って何が何やら全くわからん。少なくとも拡張と魔獣の呼び出し、それ以外にも何がどうなっていてもおかしくない。少しでも術式を記録して識別する必要がある」

 

 私も見てみる。塔の通路、その角に禁術の構成が見える。こんなにはっきり見えるとは、禁術ってのはすごいんだなと思った。……いや違うわ。これ普通に書き込まれている、というより彫りこまれている。

 塔の構造を利用するってこういう意味なの?! そりゃ構成を維持するのって結構しんどいから、刻み込むのはありだと思うけどさぁ……。

 

「お、気が付いたか。物事はシンプルな方が壊れにくいってわけだ」

 

 そりゃそうでしょうよ。にしてもむしろ6階建ての塔をさらに拡張して、それでようやく組み上げられている構成って何なの?うっかりすごいヤバい禁術に関わっちゃったんじゃない? 大丈夫かな……。

 

***

 

「師匠、歩くのを省略してさっさと上まで上がったりとか出来ないですかね?」

 

 なんとなく、そして切実な思いつきを言ってみる。できるかは知らないけど、とにかく楽できそうな方法があれば試してみたい。まあ試すのは師匠になるわけだが。

 

「時間の省略は難しいな。いや、歩く事、なら距離か…。それならいけるのか?時間を距離に置き換えれば……」

 

 ブツブツ言い出す師匠がリーダーに叩かれる。珍しい。でも流石にこの状況で考え事に夢中になられても仕方ないからね。でもちょっと面白い。

 

 すまんと言って師匠が調査に戻る。私も調査の真似事でもしてみようか。塔の壁に指を当てて、軽くなぞってみる。魔力を込めたりはしないよ。何が怒るかわかんなくて怖いからね! ふむふむと頷いてみる。

 

「一応聞いとくけど、何かわかったわけ?」

「分からないことが分かりましたとも!」

 

 でしょうねと先輩は呆れ顔だ。でも触った感じ、なんか違和感はある。

 

「ほら先輩も触ってみてください。なんか、ちょっと変ですよ、この壁」

 

 素直に指を当てる先輩もすぐに気がついたらしい。

 

「これ石じゃないわね。妙に弾力があるし、石の冷たさがないわ」

「なんなんでしょうね。でもこの素材で家とか建てたらなんか住み心地良さそうじゃないですか?」

「割といいかも。うまくいけばこの塔を森の攻略の前線基地にできるかもね。そうしたらいちいち街まで戻らずにすむわよ」

 

 それはすごくいい考え。毎度のことだけど、行き帰りが辛いんだよね。私みたいに森慣れしてないと、長い間森の探索は厳しいから。帰り道の体力を考えて動く必要がある。それが緩和できるなら、俄然調査もやる気になる。

 というかなんとかしろってのは、この塔を利用することを初めっからギルドも考えていたってことかな。

 

 ふと見ると、旦那が羊皮紙に何かを書いている。何書いてるのか気になって近くに行く。肩越しに見てみると、書かれているのは大きなマル。なんだろう?

 

「こりゃな、塔の地図だ。ここが今いる入り口だな」

 

 なるほど、確かに入り口っぽく書いてある。これ、嫌な予感がするんだけど、全部記録するってことなんです?

 

「その通りだな。それが調査ってことよ。他の連中がやりたがらないってのもわかるだろう?」

 

 コクコクとうなずく。中は結構広いのに、全部地図まで作るってのは相当な手間だねこりゃ。

 

「本当はなぁ、お前さんらにも教えてやりたいところなんだがな、流石に初見の塔でやらせるわけにはいかんわ」

「いえ、大丈夫です! まずは見て学べって言いますから、今日のところは見ておくことにします!」

「私もそういうのはパス。8割合ってればいいっていうならやってもいいけど、そんな地図誰もいらないでしょ?」

 

 8割合ってる地図……。つまり2割間違っているわけで。そういうのって、一番嫌なタイミングで間違いにぶつかるんだよね。魔物に追われている時とか、奥まで進みすぎた時とか。帰り道がわからないなんてちょっと想像したくない。

 

「うまく書けはするけどよ、別にやりたいわけじゃないんだよなぁ。ま、いずれ嬢ちゃんには教えちゃる」

 

 うへぇ。いや、任されたら頑張りたいけど、かなり責任重大なお仕事ではなかろうか。うーん、まあやれなくはないか?

 悩む私を見て旦那はご機嫌だ。どうもこの人は私が困っている姿を楽しいおもちゃだと思っている節がある。くそう、いつかキャンと言わせてやる! いつになるかは知らんけども!

 

 ゆっくりと塔を歩いていく。調査、塔のマッピングがあるので進み方はゆっくり。師匠は何やら楽しそうだけど、旦那はかなりめんどくさそうだ。あまり邪魔するのはなんだけど、師匠の楽しそうな理由が気になる。来るまでは禁術をボロクソに貶してたくせに、実物を見ると変わるのかな?

 

「なんか楽しそうですけど、そんなに面白いものですか?」

「ん? ああ、生きた禁術をここまでしっかり調査なんてそうそうできることではないからな。いや待て、倫理的に問題があることは重々承知している。だけどな、ここまで精緻にくみ上げられた構成であれば目を奪われるのも無理はないというかだな……」

 

 師匠には珍しく歯切れの悪い物言いになっている。まあ自分でも分かっているようだから何も言わないけど。だがこの先輩はどうかな?!

 

「あんた、ちょっと…どうかと思うわよ?」

 

 まさかのガチトーン。さすがの師匠もこの反応に二の句が継げず、言い訳を呑み込んでいる。うん、私もフォロー出来ないや。でも反省して!

 

 静かになってしまった師匠に地図を描くのに忙しい旦那。リーダーは警戒を絶やさないし、先輩も私の近くで退屈そうにしている。私だって特にやることないから、時々調査している二人を冷やかすくらいしかできない。

 

 これ、6階まで続くのかぁ。体と心に負担が過ごそう。早くもうんざりを隠さない私たち(忙しい二人を除く)なのだった。

 

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