えっ、私の役目って魔力タンクなんですか??   作:朝食付き

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14.えっ、ここからが私の出番なんですか??

 

 意外なことに、引き合わされた精鋭小隊には知った顔がちらほら。隊長さんはさっき会ったばかりでいいとしても、長髪の嫌な人と、爽やかにはにかむ騎士くんがいるのだ。5人の内2人が既に会ったことのある人ってのは、確率としてなかなかだと思うんだよね。

 

 隊長さんが紹介してくれるのを大人しく聞いている。長髪は小隊の副隊長らしい。そっぽを向いたままだけど、よろしくの一言を言うときだけは私たちを見た。気まずいんだろうな。酒場で因縁付けて、打ち合わせでも因縁付けてきて、でも一緒に戦うことになると。うん、私ならお断りしたい! が、そう思っているのは私と多分長髪だけのようだ。いつもならかみつくはずの先輩が興味なさそうなのは珍しい。私と同じくらい怒ってたのに、なぜ? 疑問符を振りまいていても自己紹介は進む。騎士くんはやはり一番新入りらしく最後だったけれど、立派な挨拶をしていたな! ちょっと固くなってたのはご愛敬かな。

 

 当然こちらの紹介もするんだけど、私の番で思いきり噛んでしまったのは消し去りたい記憶である。この舌がッ!

 

 ***

 

 自己紹介即突入! とはならない。さすがに肩を並べて戦うのに顔すらうろ覚えじゃちょっとね。リーダー達で話は付いているとはいえ、線引きは必要、とのことらしい。あんまりそういうパーティ同士の連携は知らないから先輩からの受け売りだけど。

 まあとりあえずは知っている人から。つまり騎士くんと話してみる。

 

「こんにちは。精鋭部隊所属だって教えてくれたらよかったのに!」

「あはは、いや、うん。入りたてだし、連れて行って貰えるかは分からなかったから。謙遜はするなって言われているから言わないけど、でも俺にもやれることはあると思う。だからよろしく」

「こちらこそ! 私もできることはまあちょっとはあると思いますから、一緒に頑張りましょう!」

「うん。まだまだだけど、君に追いつけるように頑張るよ」

「?? 騎士くんははじめから私の前にいると思いますけど?」

「……そうあるように努力する」

「私こそ騎士くんにいいところ見せないとですね! 言うなと言われてないので言いますが、今のところこの塔で松明としてしか役に立っていない自覚がありますから!」

 

 それを言ったら俺だって似たようなもの。いいや私の方がよほどです。そんなつつき合う様な軽口を叩いていれば、興味を持った先輩がやってくることになる。

 

「こら、そういう話するならもっと良い話題でやりなさい。──そっちの新入りくん、うちの能天気娘が世話になってるわね。手のかかる子だけど、仲良くしてあげて?」

「あ、ハイ!」

 

 はいではないが。そこは立派な友達ができて嬉しいと言いなさいな。まあいきなり先輩のようなキリッとした美人に話しかけられたら仕方ないよね。ドギマギしている騎士くんを見て、私はニヤニヤする。まあ2人からの白い目を受けるまでの間だけだったけど。

 先輩は華のある人なので、自然に人が集まる。まだ話していなかった騎士の人達とも多少なりとも仲良くなれた気がする。この先の厄介な通路はみんなの悩みの種であるので、よろしく頼むよとの旨。ううむ、責任重大。いつもなら師匠が大体やっちゃうけど、今回は私も結構前に出るからな。気合いを入れ直さないとね。

 そう思って頬を優しくペタペタと触る。はたいて赤くなったら嫌ですので!

 

 ***

 

 さあさ、これより魔術士のお通りだ! お立ち会いどうぞ! 真っ黒くろすけな師匠よりもなお黒い通路。その前に師匠と並んで立つ。師匠が眉にしわを寄せながら暗闇を見ている。これは師匠が集中するときに現れるしわ! 通称集中しているしわ! この集中力なら禁術を読み解くことまではできずとも、構成自体の隙間を見つけ出すくらいはわけないはずだ。

 実際すぐに師匠は片手を私に差し出す。サッと手を乗せる。ちがう、そうじゃなくて、師匠の組んだ術式を確認するのだ。事前に組み上げておいた私の術式構成に、師匠のその構成を組み込む。

 

「やれ」

 

 やります! 大変だけど、まあできなくはない。それくらいはできるように師匠から教育されているので!

 構成に魔力を流し込めば、すぐに魔術が起動する。両手の人差し指を揃えて前に突き出す。指さす先、その交点を頂点とした光の三角錐が生まれる。この三角錐を暗闇に突き刺す。柔らかい編み物の、隙間を広げるように。ゆっくりとそのまま前に歩いて行けば、概ね人一人分くらいの光の通路が生成される。後ろを振り向けば、師匠がこくりと頷いた。よしよし、これで第一段階は成功じゃ!

 

 ここから更に魔術を安定させる必要がある。私の前にしか明かりがないのでは困るものね。なので基点を用意する。魔術に限らず何もないとどこに集中すればいいか分かんないから大変なのだ。一般的には使う魔術と同じ、もしくはその一部を刻むというのが楽ちん。しかし塔の壁に魔術を刻むのは大変。なので持ってきた礫を置く。これには私がちまちまと刻みつけた狼の印が付いているのだ。つまり魔術を刻んでいるのと同じ。よく師匠がやっている雷の魔術によるマーキングと仕組みは一緒で、同じ構成を埋め込んでいるのだ。だから離れている場所であっても魔力を込めれば起動するし、そんなに意識しなくても構成を維持しやすいという利点があるのだ!

 

 適当な間隔で礫を放り投げていく。明かりはこの礫を基点に広がっていくことになる。後続の諸君は踏まないように。砕けたら魔術も消えちゃうからね。

 

 今まで文字通り手探りで通路の地図は作られてきている。この地図を参考にしつつ、怪しいところをこの魔術で更に照らしていくのだ。そうして先に進む。当初は私と師匠が必要な部分だけ魔術で押し広げるという計画だったのよね。でも、先ほどの交流で騎士の人達にも協力して貰うことになった。魔獣相手ならそこまで魔術を使うこともないし、魔力が余っているのももったいないと言うことで。結構大変だと思っていたから手伝って貰えるのはありがたい。

 

 早速光の通路に騎士が入り込んで、私の魔術を押し広げるようにして光の領域を増やしている。今さっき師匠から伝授されたばかりの魔術をこうも上手く使いこなすとは……。これは私もうかうかしていられないぞ?

 

 少しずつ明かりの範囲を広げながら進む。地図を読む旦那の指示を受けて、まずは一つ角を曲がる。見てるはずなのになんにも見えない暗闇。いっそ目をつぶった方がまだマシな気もする。これ、先行していた冒険者や騎士は良く地図を作るところまでやれたな……。後ろを振り返れば明かりがある。みんなそれぞれ作業をしていて、ひとりぼっちじゃないなと思える。身ひとつでこの闇に飛び込んでいった人達の勇気に頭が下がる。

 

「そろそろ曲がり角があるはずだ。そうしたら、通路の全体をくまなく照らしてくれや」

 

 できる限り旦那の指示に従う。禁術の隙間を広げる都合上、難しい部分があったりするからいちいち術式を作り直していく。これがまた手間なんだよなぁ。まもなくして直角な曲がり角。そこをくまなく照らしていく。特に何もない、単なる通路だ。はずれかな?

 

「先に進みますね。ちなみに旦那としてはどんな予想ですか?」

「騎士や冒険者が見つけられなかったっつーことはだ。見つけられない理由があるってことだろう。この地図は実際良く出来とる。だが、あくまで手探りだからな」

「手の届かないところに道がある?」

 

 なるほど。確かにひたすら壁沿いに手を当てて道を探っていったはず。迷子になるわけには行かないし。なら、例えば道が分岐していたり、天井や足下付近に通路が隠れているという可能性は十分にある。特に上の方。試しに天井近くを照らしてみる。当然なにもない。

 

 横から師匠の口が挟まれる。

 

「単なる通路にはないぞ。忘れてるようだが、この塔はそれ自体が禁術を構成している。術式構成は無駄を作らない。禁術でも同じだ」

「完全さを求めるから逆に障害が機能しないってのも面白い話ですよね。迷路なんて行き止まりあってこそなのに」

 

 こんなところを丁寧に地図にしないか、普通は。先行していた騎士と冒険者のお手柄だよね。おかげで私たちは楽に進めます。感謝感謝。しかし魔獣が出てこないのは本当に助かる話だ。もしここで襲われたら闘うどころじゃない。こないだの遺跡みたいにコウモリとか出てきたら大変だったろうに、ここにはでない。なんだろ、出せる種類とか決まってるのかな? 森の遺跡でもそういえば空飛ぶ類いの魔獣はでなかったもんな。

 

 魔術を使い少しずつ見える領域を広げていく。そして件の行き止まりにたどり着けば、そこにあったのはなんと!

 

 ***

 

 そこにあったのはなんと!(二回目)

 

 天井近くに空いた隠し通路であった。私どころかリーダーが精一杯跳び上がってようやく届こうかという位置に、人がかがめば通れる程度の穴が空いている。というかこの通路だけ気がつけば天井がやけに高くなっている。これは相当性格の悪いやつが作ってますよ?

 

「隠し通路見つけました~!」

 

 後ろで明かりを広げている精鋭騎士達に声かけをする。この先が重要であって、これ以上丁寧に道を広げる必要はないのだ。

 早速やってきた騎士隊長が私の隣に立って髭を撫でている。

 

「こりゃあ見えてなきゃ見つかるもんではないな」

「いかにも怪しい行き止まりでもですか?」

「それは魔術師の理屈だからな。俺たちが使う魔術は戦いのためのもので、その理屈にゃ詳しくないんだ」

 

 それもそうか。そもそも行き止まりなんてあって当然だもんね。

 

「すぐにはしごを掛けるからな。どれだけ暗闇が続くかは分からんが、よろしく頼むぜ嬢ちゃん」

 

 がってんだ!

 

 微妙に頼りないはしごを上がり、中腰で少し歩くと突然目に光が飛び込んでくる。思わずぎゃあと叫んでしまって心配を掛けてしまった。これは良くない。慌てて暗闇を出ましたと、明るくてびっくりしただけと宣言する。さすがに油断しすぎ、と先輩からお叱りを受けてしまった。うん、普通に暗がりが続くとか思ってました……。

 

 やや、ややのやらかしこそあれど、先が見えたというのは大きい。多少なりとみんなの役に立てたのではなかろうか。これでただ飯食らいとは言われまい。むふーっと深呼吸する。早速周囲の警戒に散会した騎士くんにもすれ違いざまに胸を張れたから割とよかったかも!

 

 

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