いせかるメンバーにナツキ・スバルの人生上映会を観せる 作:リーグロード
ってか、来週は残業が増えそうだから、今週の土日に頑張らないとヤバそう。
「ロズワール先生の召し抱えるメイドは誰もが素晴らしい精神をお持ちのようですな」
「ええ、あのペトラという少女。新入りでありながら、自らの身の危険を顧みずに仲間を救おうという姿勢。感服せざるを得ませんね」
ナザリックの執事とメイドの観点から見ても、先程のペトラの選択は、セバスとユリの琴線に触れるものがあり、その美しい精神に心からの賞賛を送った。
だからこそ、どうにか彼女には助かって欲しいと強く願うものの、観ることしか出来ぬ我が身の無力さに打ちひしがれそうになる。
「スバル殿、どうかご無事を願っております」
せめて、この場で祈ることしかできないセバスは、友人ヴィルヘルムが信頼を寄せたスバルへと、ペトラ共々の無事を願った。
『エル・フーラ──!!』
状況を誰よりも早く把握したラムの魔法の一撃がエルザの頬をかすめ、その一瞬の隙を突いて、獣人の血で変身したフレデリカがエルザに飛びかかった。
『部分獣化……!亜人の血ね、素敵……!』
『ペトラ!』
獣化して生えた尻尾を使い 、捕らわれていたペトラの救出に成功する。
それによって人質の消えたエルザに、ラムの本気の魔法の一撃が炸裂する。
『今度こそ千切れ飛びなさい!!』
『────っ!!』
風の魔法がエルザを切り裂き、鮮血が宙に舞う。
「よっしゃー!!」
人質を無事に救出し、完璧な先制攻撃を決めたのを見て、カズマはガッツポーズを取りながら歓声を上げた。隣のアクアやめぐみんも、カズマほどではないが、今の一連の流れに対して、嬉しそうな笑みを浮かべている。
だが、その一方で戦いに精通した者たちは、まったく別の反応を見せていた。
事実、魔法を放ったラム本人も、今の一撃を腕を犠牲にするだけで防いだエルザを見て、驚いている。
『ああ痛い、痛い。死んじゃうかと思った』
嗜虐的な笑みを浮かべつつ腕から流れる血を舐め、エルザは恍惚とした表情を見せた。
そんな常軌を逸した彼女の姿に、先ほどまでガッツポーズを決めていたカズマの顔には、恐れと不安が入り混じる。
「盗品蔵の時も思ったけど、まさかダクネス以上の変態を見る日が来るとは夢にも思わなかったぜ」
「にゅわっ!?な、何故今急に私にそんなご褒美を!!?時と場所を考えろ、カズマ!!」
「いや、こんな時にまでドMを発揮するな。お前こそ時と場所を考えろ、このド変態クルセイダーが!!!」
シリアスな雰囲気を台無しにするダクネスの反応にカッとなったカズマは、指を突きつけて怒鳴った。
しかし、その怒声を浴びたダクネスは顔を赤らめ、息を荒くしながらハァハァとしていた。
「いつもの光景とはいえ、あの猟奇的な殺人鬼の反応を見た後だと、ダクネスの変態性も多少マシに思えるな」
「えっと、そうですね……。あははは……」
呆れ顔でカズマたちを見やる尚文の隣で、ラフタリアは返答に困って苦笑いを浮かべていた。
そんな中、これ以上イカれた殺人鬼エルザとの戦闘は危険だと判断したラムがスバルに声を掛けると、同じ結論に達していたスバルがシャマクの魔法で撤退を始める。
『──ぎ……ィ、がぁぁぁッ!』
突然苦しみの声を上げるスバルに、エルザに何かされたのかとカズマやアクアたちが不安げな声を上げる。
「なんだよ急に!?」
「ちょっと、まさかまたお腹を切られたんじゃないでしょうね!?」
慌てて騒ぐ2人を落ち着かせるため、スバルの異変の原因をいち早く察したターニャが、冷静にカズマたちへ説明した。
「安心しろ……というのは、間違っているかもしれんが、腹を切られたことによる苦悶の声ではないだろう。恐らくは、未だ治療中のゲートとやらを酷使して魔法を発動したが為の反動、副作用だろう」
「ゲートを酷使って……。大丈夫なのか?めぐみんが爆裂魔法を使ってぶっ倒れるとは違った反応だけども……?」
「さあな、あの世界の魔法がどういった理論で構築されているか詳しくは知らないし、そもそも異世界人であるスバルが、あの世界の魔法を使用できているのも多少不可解であるからな。まあ、あの反応を見るに、無事では済まないというのは確定だろうな」
そう言ってターニャは、スクリーンに映るスバルの姿を見つめ、目を細めた。ゲートの酷使──それは、魔導士である自分に置き換えれば、演算宝珠が壊れたのと同じだと考えていいだろう。
戦闘がまだ終わっておらず、あの殺人鬼からも逃げ切れていない状況で、スバルが足手まといになるのは全くもって歓迎できない展開だ。
しかも、撤退しようと動き出した瞬間、シャマクの向こう側から、スバルとフレデリカの背中に千本という針のような武器が突き刺さる。
「シャマクの中で敵も見えないだろうに、特別な目か索敵能力でも持っているのか、それとも獣染みた野生の勘という不合理過ぎる第六感か……。どちらにせよ、厄介な相手だな」
「こうなってくると、盗品蔵でラインハルトに是が非でも打ち倒してもらっていたかったが、あの状況では安全を取って見逃す選択をしたのは間違いではないだろうし、あまり責めることは出来んな……」
ターニャとアインズは、スバルとフレデリカの負傷に渋い顔を見せた。
とはいえ、怪我を負いながらも部屋の窓から外へ逃げられたのは運が良かったと言えるだろう。しかも、窓から飛び降りる際には、ラムの魔法がエルザごと部屋全体を吹き飛ばした。
後はこのまま全員無事に屋敷から脱出出来れば良いのだが、まだ屋敷には眠り続けているレムと、禁書庫に閉じこもっているベアトリスが残されている。彼女らを回収出来なければ、スバルはまた死に戻りの力を使ってやり直しをするだろう。
『相手を侮りましたわね……ッ』
『痛てぇ……。クソ!やったのか?』
「ああ、馬鹿!?そんなフラグになりそうなこと口にしてんじゃねえ!!」
明らかに倒せていないときに出る台詞を口にしたスバルに、カズマが思わず大声で突っ込む。
案の定、魔法を放った張本人のラムも倒した手応えはなかったと口にし、カズマの懸念を裏付けた。
『レム、ベアトリス……。助けないと……』
『置いていく。──その2人を置いて、屋敷を4人で脱出する。それがこの場の最善よ』
『な……にを……、なに……を、なにを!言い出してんだお前は!!』
ラムの冷徹な言葉にスバルが怒鳴り返した瞬間、部屋の空気がピリッと張り詰めた。
「……置いていく? レムとベアトリスを……?」
カズマは思わず眉をひそめた。元の世界でも厄介事ばかり起こすパーティーメンバーを、何度クエスト中に置き去りにしようかと考えたこともあったが、結局は「しょうがねえなー!」と嫌々ながらも一緒に危機を乗り越えてきた。
そんなカズマにとって、ラムの口から告げられた最善の方法にはどうしても納得がいかない。それはカズマだけでなく、同じパーティーメンバーのアクアや、なんだかんだと情に甘い尚文たちも同じような表情を浮かべていた。
しかし、その一方で、合理を重んじる者たちはまったく別の反応を見せていた。
「状況判断としては正しい。戦力の低下、敵の能力の未知数、撤退経路の不確実性。全てを考慮すれば切り捨ては合理的だ」
「でしょうね。追ってくるエルザを振り切り、聖域にさえ逃げ込めれば安全は確保できる。屋敷に徽章を奪おうとした殺人鬼が襲撃してきたという情報をロズワール先生やエミリアさんに届けるのは、記憶に存在しない妹と、禁書庫を守る精霊であるベアトリスの命よりも重いでしょうからね。後はそうですね、クルシュ陣営との同盟を成功させ、白鯨と魔女教怠惰の討伐を成し遂げたスバルの生存を優先したというところでしょうかね」
ターニャの見解もデミウルゴスの主張も正しく、感情派のメンバーからは反論の言葉は出なかった。
しかし、合理派でありながら感情派にも理解を示せるアインズは、再び王都での出来事を目にした際に起こり得る衝突を避けようと気を配り、助け舟を出した。
「まあ、待て両方とも。まず、ラムの冷徹さも、スバルの激情も、どちらも極端だ。この状況を収めるには──第三者の介入が不可欠だろう」
「「「────」」」
アインズのその一言で、感情的になりかけていたカズマたちも、理屈で冷笑的な優越感を漂わせていたデミウルゴスたちも、一気に冷静さを取り戻した。
異世界にて上に立つ者としての豊富な経験と、ユグドラシル時代にギルメンたちの意見の食い違いによる衝突を何度も収めてきた実績から生まれるアインズの言葉は、その場の熱くなりかけた空気を一瞬で冷ますほどの効果を持っていた。
『わたくしは2人を助け出すべきだと考えますわ。陣営の痛手と言うなら、ベアトリス様もレムも必要な存在ですもの』
アインズが口にした通り、意見の衝突するスバルとラムの間にフレデリカが参入する。
更にそこにペトラも加わり、スバルとフレデリカ、ペトラの3人はレムとベアトリスの救出を熱望した。
『多数決をしてるんじゃないのよ。子供は黙っていなさい』
『こ……子供でも、もう立派な大人です』
ラムの圧に一歩も引くことなく意見を押し通そうとするペトラに、何人かがよく言ったとばかりに頷く。
『敵を抑える役割は言い出しっぺのわたくしが負います』
『……またそうやって進んで貧乏くじを引くのね。そういうところもガーフそっくりだわ』
『あなたたちはわたくしの可愛い後輩ですもの。それに、わたくしがガーフに似ているんじゃありませんわ。ガーフがわたくしの真似っこですのよ』
そう言うや否や、フレデリカが自身のメイド服を自らの手で引き裂き始めると、惜しげもなくその裸体を晒しだした。
「うおおおぉぉぉ!!!」
「──てぇい!!」
「あ~がぁ~!!あ~あ~目がぁ~目がぁ~!!」
フレデリカの裸体に興奮して雄叫びを上げたカズマの両目にめぐみんの指が突き刺さり、カズマが絶叫する。
「お、お前という奴は!さっき私に時と場所を考えろと言ったくせに、一体どの口がそんなこと言ってるんだ!?」
「最低!クズ、クズよクズ!女の敵のクズマだわ!!」
「まったく、女性の裸とあれば状況も忘れて目を血走らせて凝視するとは。ド変態は一体どちらなのでしょうねこの男は!」
目潰しされて苦しむカズマの耳に、3人の侮蔑の声が届く。
いや、聞こえてくる声はこの3人のものだけではなかった。部屋のあちこちから、今のフレデリカの裸体を晒す行為に騒動が起きている。
「アインズ様!あのような者の裸を見るのはイケません!!」
「そうでありんす!アインズ様にあのような下賤な者の裸でお目を汚すなど、臣下として何より未来の妃として見過ごせんでありんす!」
その後、アルベドとシャルティアの言い争いに混じって、アインズのひどく困惑しつつも疲れ切ったような声が聞こえてくる。
男としてちょっぴり羨ましい気持ちのある半面、心底面倒くさそうな気配を強く感じる。
「ちょっ、ラフタリア!目をそんなに強く押さえつけえるな!!」
「で、でも、そうしないと尚文様の目にフレデリカさんの裸がぁ!!?」
「わぁ~、トラのお姉ちゃん。すっごいお胸だ~!」
クソォ!あっちも可愛い女の子とイチャコラしやがって!!あと、フィーロさん。もうちょっと具体的に詳しく、そのお胸とかの話をだね……。
「おお、凄い!みるみるうちにフレデリカ女史の体が獣へと変化していく!?」
「いやいや、見るべきところはそこじゃありませんよ、大尉殿」
「ええ、あの臨海学校で見たララティーナお嬢様のものと引けを取らない素晴らしき見事な大きさと形!」
「布一枚すらないアレは、男にとって暴力を超えた別のナニカですよ……」
あいつらぁ!俺は目を潰されて全然見られなかったのに、あいつらだけ誰の邪魔も入らずに楽しむなんてズルくないか!
嫉妬で燃えるカズマの耳に、ヴィーシャの冷めた声で「最低です……」という呟きが届く。だが、その程度の罵倒や失望で、あの美人の豊かな胸をじっくり眺められるなら、俺だって味わいたいと心の中で叫んだ。
「くっ!せめて後もう一度だけでも……」
『ガアアアァァァァァァ!!!』
目に走る痛みを我慢し、充血した目を開けた先に見えたのは、人間から完全な野獣へと変貌したフレデリカの姿だった。
「クソッたれぇぇぇ!!!」
「うわぁ~、流石に引くわ、カズマさん」
「カズマ。そ、そういう目を向けるのは私だけにだな……」
「普段からクズだのカスだの言われてますけれど、この状況で悔しがるのは人としてどうなんです?」
アクア、ダクネス、めぐみんの冷たい視線を浴びても、カズマはまったく気まずくなることもなく、それどころか彼女らの言葉も耳にすら入っていなかった。ただ彼の頭の中には、フレデリカの裸体を目に焼き付けたかったという欲望だけがあった。
『――ラム、後は任せますわ』
『言われるまでもないわ。フレデリカこそ、遅れを取ったら承知しないわよ』
裸体を見逃して情けなく喚くカズマとは対象的に、ラムとフレデリカの会話は実に冷静で、そして互いを信頼し合っていることが窺える素晴らしいやり取りが繰り広げられている。
「酷く醜いわね……」
「うわぁ〜って感じでありんすね」
「カズマさん……」
その為か、先程まで大騒ぎしていた女性たちは、そんな余計に情けないカズマの醜態を見て呆れと侮蔑の眼差しを投げつけるのだった。
カズマの醜態は部屋の空気の換気にピッタリだと思う作者でした。
いくらカズマでもこの状況でフレデリカの裸体に興奮するわけないじゃんとか思う読者の方もいるかもしれませんが、作者はどんな状況であれ、青少年の鏡であるカズマさんならするという確信を持って書いてます。
なので、感想でチクチク責めてきたりしないでください。
感想で少し指摘があったので、アンケートの内容変えました
スバルの第二の試練後にIFストーリーを入れる
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