どう頑張っても主人公がフェードアウトしてしまうんだが!?   作:銀の弾丸

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屑鉄の人形

「いってぇ……」

 

 

 風呂場でお湯に浸かり始めると、治りきっていない生傷がじくじくと痛み始める。

 とはいえだ、これももういつものことではあるので、気にすることはない。

 

 

「デートは明日で、レキとの妙ちきりんな仕込みも既に終わらせた」

 

 

 今生における峰の強さというものを掴みかねている現状だと、それが十分であるのかはわからない。

 ……まあ、うん。もしもの時は霧崎にぱーっとやってもらおう、ぱーっと。

 

 

「……っし、もういいだろ」

 

 

 人生最後になるかもしれないお風呂は、この辺でいい。

 

 

「なんてな、そんなネガティブに考えてたら怒られる」

 

 

 うちの周りには前向きすぎるピンク様がいるからなぁ。

 本人が1番ナイーブじゃんって? ……そんな正論(ツッコミ)は受け付けませんよっと。

 

 

「ん」

 

 

 ふと携帯を見ると、頼もしい白いのからの電話履歴が。

 霧崎だな、作戦の確認とかか?

 

 

「……もしもし、悪い、風呂入ってたわ」

 

『や、こっちこそごめんねイッチ」

 

「気にすんなよ。で、どういう用件だ?」

 

『神崎さんから。……遠山くん、正式にとは言わないけど、神崎さんには借り1個ってことで納めたらしいよ。あとイッチにも』

 

「そうか。……ん? 俺にもか」

 

『いやあの時の1番の被害者誰だって話だよね? わかってる?」

 

「んー……アリア、もしくはバス会社だな」

 

『……』

 

「悪かった、流石に理解してるって」

 

 

 状況的には重傷を負った俺が1番の被害者であることは間違いないのだろうさ。

 この部分、俺が未熟なだけって声を大にして言いたいんだけどねぇ。

 

 

『世間がそう思ってくれるのは、後にも先にも遠山金一とかの件くらいじゃない?』

 

「今日もキレッキレだな霧崎お前、で、それだけか」

 

『んー、作戦の再確認とかしとこうかなって』

 

「おう」

 

『遠山くんは今回の件で参加させるのはもう、ちょっと無理があるってことで。その次から上手いこと誘導しましょうってことになったよね?』

 

「ああ、今回はちょっと峰のヘイトが俺に向き過ぎてるから多分無理」

 

『ほーんとイッチたらしー……って言えることでもないか、お父さん? からの因縁だもんねぇ』

 

「俺は未だに怪しんでるんだけどな」

 

 

 えー今更ー? と困惑の声をあげる霧崎。

 仕方ないだろ、だって俺才能ねぇんだし。

 

 

『才能だけが血を示す鍵じゃなくない?』

 

「石川姓がそもそもありふれてるし、そもそも俺みたいなガキお山にはたくさんいたからってのがな」

 

 

 俺は、数ある石川の血筋のその一つであって。

 『石川五ェ門』の血筋ではないんだろうなってのが、漠然とした認識の底にあった、今までは。

 

 

『でも理子ちゃんからは"そう"だって言われてるんでしょ?』

 

「らしい。……まぁ、都合よくねじ曲げられてる可能性も無きにしも非ずだが」

 

『んーまあその線を考え始めるとキリないからね、やめやめ』

 

「だな」

 

 

 刀剣の類が得意そうな奴だってもちろんいたよ、帯刀帯銃は当たり前、クナイやら暗器の類だってたくさん見た。

 ま、俺サボってたから触ったことないんだけど。

 

 

「あいつの話になると露骨に嫌がるよなぁお前」

 

『……シンプル嫌なんだよね、あーいう露骨な奴』

 

「なんだったか、俺の担当になった途端目の色変えて関わろうとしてきたって?」

 

『そ! ほんっとあの陰険メガネ……!』

 

「俺の血が奴にとってそこまでの価値があるとは思えんがねぇ」

 

 

 あれに石川五ェ門の方の遺伝を欲しがる理由もなくないか? だって刀剣の類も忍耐力もあいつ必要ないでしょ。

 ……まーバケモンの考えることなんて俺や霧崎にはわからないってだけなんかもだが。

 

 

『……してやりたいくらい……』

 

「なんか言ったか」

 

『ん、なんでもなーい! さて、確認だよ確認。まずは神崎さんの乗るプライベートジェットにイッチが荷物を持って乗り込む、ここまではいいよね?』

 

「ああ、峰のやつはそこで待ってるらしいからな」

 

『わーロマンチックー。……改めて、勝算は?』

 

「俺とアリアと秘策込みで……んー、半分ありゃあ出来すぎてるくらいかもなぁ」

 

『怖いなぁ。……ねぇ、ほんとに私行かなくていいの?』

 

「まだお前の番じゃねぇさ。矢面に立つのはまだ俺だけでいい」

 

『むー……』

 

 

 そりゃあもっと大型になり始めたら直接手ぇ貸して欲しくもなるが。

 霧崎には別の方面でずっと頑張ってもらってるし、まだ超能力もどきも安定してないというか、あれから発動もできてないみたいだし。

 

 

「頑丈なのが俺の取り柄だろうが。そこくらいは信頼してくれよ」

 

『頑丈なのは知ってるけど、同時に無茶しまくるおばかさんだってこともよーく知ってるんだけどなー?』

 

「ハハ、なんのことかよくわからねぇな」

 

『わかってくれたら嬉しかったなぁ!』

 

 

 もうっ! と電話の向こうで憤る声が聞こえている。

 お医者様はかんかんであるが、こればかりはちょっと止められそうにないんだな、これが。

 

 

『いつか背中から刺されるよー、というか刺してやる』

 

「おう、ばっちこい。受け止めてやるよ」

 

『……ばか、そんなことするわけないんだから真に受けないでよね』

 

「……別に冗談では言ってねぇぞ、共犯者様(あいぼう)。俺はお前を信頼してるし信じてる。だから何されようが暴露されようが受け止めるし、なんなら一緒に悩んでやるくるいのことはするつもりだ」

 

『…………ま、その時は存分に頼るよ、共犯者(あいぼう)さん」




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