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「————————は?」
零崎問識が。
仙瓩おとふが。
石凪赭石が。
全員が全員、尽く惚けたように、口を開ける。
そこにあったのは——死体だった。
死んでいた。
死んでいた。
死んでいた。
死んでいた。
死んでいた。
殺人ピエロが。
戦う野球選手が。
狂気の大学教授が。
誰もその姿を知らないはずの、小さな隠密少女が。
誰もその姿に覚えがない、青白い肌の男が。
死んでいて、
死んでいて、
死んでいて、
死んでいて、
死んでいた。
その全てが殺されていて。
殺されすぎるくらいに殺されていて。
壊されすぎるくらいに壊されていて。
破壊されすぎるくらいに破壊されていて。
ともすればその原型が、わからないくらい。
五つの死体は、五つの死体であろうものは。
その尽くが、
その死体たちの中心に。
一人の男が——立っている。
「死吹
唐突に。
背を向けたまま——その男は語り始める。
背が高い——とは、言えない。
せいぜいが、平均程度。百七十を越えるか越えないか、という程度に見える。
体型は細身。ただし、決して痩せこけているというわけではなく、むしろ、細身ながらも筋肉質な、脂肪のない体付き。
引き締まった体に——黒革のショートブーツ。裾の窄まった、デニム地のオーバーオール。至って普通の白いシャツに——両手を二の腕まで覆う、巨大な手袋。何が素材なのかもわからない、ドス黒い色の巨大なそれが、シルエットを酷く歪にしていて。
伸びた癖毛を赤銅色に染め——後頭部で一本の三つ編みに束ねている。
男は。
高く、通りのいいその声で、話し続ける。
「誰も知らねぇ死体が一個あるってなるとよぉ、なんかの伏線なんじゃねぇかとか、なんかのトリックなんじゃねぇかとか、余計な想像が捗っちまって仕方がねぇだろ。この場に伏線なんてねぇってのにさ。この後にトリックなんてねぇってのにさ。読者の皆様に余計な頭を使わせてたんじゃ、申し訳ってやつが立たねぇだろ? だから俺が代わりに、紹介しといてやろうと思ってよ」
けはは、なんて特徴的な笑い声をあげて——男は背を向けたまま語り続ける。
その背に垂れ落ちる三つ編みが、尾のように揺れて——どこか。
獣のような、肖像。
「死吹屍飼——『
その背はまるで隙だらけで——隙だらけのように見えて——けれど。
その場にいる、誰もが。
まるで縛り付けられたように——動けない。
「で、だ。そんなつまんねぇ男だがよ、一個だけ面白れぇ特技ってのがあったのよ。けはは。わりかし爆笑の宴会芸だぜ。合コンで披露すりゃあ大ウケ間違いナッスィーング! ま、オンナノコにモテるかは微妙なとこだがよ。けはははは——」
確か——
「『蝋人形』、っつってたかねぇ? 死吹の死配人どもの中でも、
えーっと、どこまで話したんだったか。
後頭部をかきながら、男は言う。
「あーっと、そうそう、『蝋人形』だったよな。超絶爆笑一発芸。こいつは死吹の連中のお家芸である身体支配の応用だっつー話なんだがね、しかしこいつの身体支配が特殊なのは、
ここまで聞きゃあ、もう大体想像つくだろ? けはは——なんて、楽しげに言って。
「
「
笑いながら。
笑い、嗤い、咲いながら——
男はゆったりと——振り返る。
中分けの、短い前髪。
紫色の猫目。
中性的な、ともすれば女性的でさえあると言える、美しい顔立ち。
その造形にまるで似つかわしくない——凶悪な、猛獣のような笑み。
その姿は。
その有様は。
暴力の世界においては——あまりにも有名だ。
ともすれば。
「身元不明死体の解説義務も終えたとこだし——ここらで、俺の自己紹介をしとこうか」
ぎしり、と。
歯を食いしばるようにして、凶相の笑みを浮かべ。
男はその名を——名乗って見せる。
かつて。
「俺の名前は——
今からお前をぶっ殺すから、よろしく頼むぜ、後輩くん。
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