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戦も佳境と言えよう。かつて合戦に響き渡っていた忍達の掛け声は途絶え、代わりに巨大な猿、四尾の雄たけびが聞こえてくる。
(――ッ! こうも時間がかかるとは⋯ッ)
「 塵遁・限界剥離の術 」
そんな戦場にて岩の総大将、土影のドンは滝のような汗を流しながら何度目かの四尾の攻撃を迎撃する。
万物を塵にする白い閃光と禍々しい黒い奔流がぶつかりあい、ジュワッと何かが焼き切れるような音が響き渡った。
衝撃波で砂ぼこりが舞い上がり、付近の視界は酷くなる一方だ。
繰り返される大技の余波は周りの木々を軒並み吹き飛ばし、戦場はかつての土の国のように変貌しつつあった。
見渡す限りが岩と荒廃した土地、ドンやイシカワにとっては懐かしく感じるだろう。
砂ぼこりが舞い上がろうと、ドンの仙人モードはあらゆるチャクラを感知可能だ。戦場の動きを掌握し続け、的確に相手の弱点を見抜きゴーレムや自身を送り込む手腕は流石土影と言えるだろう。
だが水を差すように砂ぼこりの中に扉間の声が轟く。
「 口寄せ・穢土転生! 」
ドンは扉間の位置を正確に感知しているーーーーが、やはり四尾と相対していては十分な対処が出来ない。
そもそも飛雷神の術で即座に転移する扉間を仕留めようとするのは時間の無駄と言える。
ドンは四尾に、無はマダラに釘付けにされている以上、
(
己の里の、守るべき岩の忍を使い捨てる扉間へドンの怒りは留まることを知らない。
戦場を見渡せばもう両軍の姿は
何故なら木の葉、岩の両軍は四尾の出現から始まった大怪獣バトルをきっかけに撤退を進めていたからだ。
もはやこの戦場で動き回る忍は足止めを狙う扉間やマダラ、それに相対するドンと無だけである。
だが動けない者達も居る。
重症を負った者や意識を失っている者達は、本隊から見捨てられる形で未だ戦場に捨て置かれてしまった。
動けない忍は穢土転生の素体として適しており、扉間の暗躍を招いてしまう。
「 火遁・頭刻苦 」
ドンに近づく穢土転生体をゴーレムの火遁が燃やし尽くす。複雑な命令を与えられていない穢土転生体は避けるそぶりすら見せず、火遁に飲み込まれていった。
だが悲しいかな、散っていた塵芥が集まり始めて、早くも体が修復しつつある。
やはり良心を度外視すれば穢土転生ほど応用が利き、効率の良い術は無いだろう。
修復された穢土転生体は再びドンへ歩みを進める。
四尾と向き合うドンの周りを扉間が呼び出した死者らが囲み、彼らはドンが生み出すゴーレムと終わりの見えない消耗戦を繰り広げている。
穢土転生、更には不意に投合される扉間のクナイにもドンは気を張らねばならない。
そのストレスは計り知れず、ドンの精神を着実にすり減らしていた。
(実態のある分身を作らないのがここまで響くとは⋯ッ。だが⋯⋯)
扉間を放置しないため岩分身や、影分身を使えばいいだろうに。
そう考えるのは実に自然と言えよう。
だがドンは実体のある分身を
これはドンがチャクラを溜める封印術を開発してから自身に課す鉄の掟であった。
本来膨大なチャクラを保有するドンにはナルトの様な戦法が適しているように見える。
だがそうしない、そう出来ない理由があるのだ。
日頃貯蓄したチャクラを切り崩して戦うドンと、九尾のチャクラを引き出して戦うナルト⋯。
膨大なチャクラを持つ彼らには決定的な差が存在する。
ーーーー それはチャクラの回復速度だ
ドンのチャクラ貯蓄はあくまで日々の余剰分を上乗せしているだけであり、翌日にはケロリと失ったチャクラの殆どを回復している九尾とはその回復速度が雲泥の差である。
故に毎日のような高頻度の大量チャクラ消費は確実にドンの打てる選択肢を狭めていく。
考えてみればここ数年忍界が落ち着いているだけであり、それまでは修羅と言える争いの日々であった。
連日の戦は当たり前、毎日のように酷使される忍一族が大勢いた。
そんな彼らと同じように争いに明け暮れた傭兵時代において、ドンは己のチャクラ量を管理し、可能な限り連戦を避け、余裕を持った立ち回りをしていた。
する必要があったのだ。
何故ならドンには頼れる味方が居なかった。
だからこそ大量のチャクラを消費する連戦がいつ起きても良いように、チャクラの消費を抑えた術の選択が必要だったのだ。
真っ先に選択肢から外れたのが分身系統の術だった。
結論から言えば、全チャクラの数割を分け与える必要がある分身系の術はドンとの相性が悪いと言える。
何故なら分身系統の術は予め分割するチャクラの下限が決まっており、一定の割合以下のチャクラの振り分けでは術が成立しないからだ。
そもそもドンのチャクラの数割を分身へ分け与えるのは些か過剰とも言えるし、その分身が倒された場合に失うチャクラの量は費用対効果が見合っていない。
だからこそ分配するチャクラ量の調節が効くゴーレムの術をドンは愛用しているのだ。
今後の展望を見据えれば、ドンはチャクラを多く保有しておきたい。
まだまだ続くであろう木の葉との戦争に加え、この後には砂との戦も控えている。
ドンが分身系統の術を躊躇うのも無理は無いだろう。
(ーーーっしッ! よくやった⋯!)
とはいえそうも言ってられない。
最後の負傷兵をゴーレムが救出するのを感知したかからだ。
ドンの指示を受けた大量のゴーレムは四尾や扉間の妨害を受け多く数を減らしつつも、岩や木の葉である等関係なく負傷兵を移動し続けた。
足手まといと言える負傷兵達をドンは見捨てない。
土影として彼らを無事に家に帰すために四尾の尾獣玉を相殺し続け、背後の彼らを守り切った。
また木の葉の忍は優秀な者も多い。たとえ敵軍であろうと必ず役に立つとドンは踏んでいた。
そしてたった今その憂いが無くなり自由に動けるならば、ここは攻め時と言えよう。
「岩分身の術」
ドンにより五体の岩分身が生成された。
今この時が賭け時だとドンは判断する。
チャクラの一割程を分け与えた四体の岩分身は各々目線を合わせ、頷き合った。
「させんッ⋯! 水遁・水龍弾の術!!」
今まで見たことの無かったドンの岩分身の術⋯、何か企てているのは明白であり、それを阻止すべく扉間は水遁を放った。
「馬鹿かお前はッ!」
高速で飛来する水の龍は密集している岩分身めがけて突き進むが、即座に射線に割り込んだドンの
それでドンは終わらない。高速で印を結び終えたドンの背中からいくつもの黄金の鎖⋯黄剛封鎖が飛び出し、四尾を地面へと縫い付け、縛り上げる。
今の今までは四尾や飛雷神で突然飛来する扉間の妨害で叶わなかったが、遂に四尾の封じ込みに成功した。
「ガァァァァァ!」
四尾が暴れまわり、鎖がギチギチと引っ張られる。封印術を帯びる黄剛封鎖といえ四尾を何時までも封じ込むことは出来ない⋯。
だからこそドンは岩分身を生み出したのだ。
「散るぞ!」
一人の掛け声と共に岩分身は散開し、四尾の四方を取り囲む。
四隅にて高速で印を結び、岩分身は落ち着き払った声で術の完成を告げた。
「「「「四赤陽陣!」」」」
赤い線が上方へ伸びたかと思えばそこから四方へ広がり続け、縦長の直方体が形成された。
この術は四赤陽陣と呼ばれ、火影クラスの忍が四人集まることで発動出来る極めて頑丈な結界である。
結界内の四尾がやっとのことで黄剛封鎖を引き千切ったがもう手遅れだ。
何故なら四赤陽陣は原作において十尾を封じ込んだ結界であり、その一部である四尾が結界を破れるはずが無い。
そうとも知らない四尾が腕を振りかぶり、結界を殴りつけた。
「ガァァァァァッ⋯ッ⋯ッ!」
結界は一切歪むことなく、鈍い音を立てて四尾の拳を受け止め切った。
殴りつけた拳へのダメージが強いのか四尾は拳を押さえながら悲鳴を上げ、一歩二歩と後ずさった。
結界が完璧に作動するのを確認したドンは更に打って出る。
「影分身の術」
チャクラを二等分し、己の影武者を生み出す。
貯蓄したチャクラの半分を保有する影分身がやられるようなことがあれば、今後の継戦に大きな影響を及ぼすだろう。
だが四尾を確保し、この場をうまく切り抜けるためにリスクを避けては通れない。
覚悟を決めたドンは影分身に扉間の対処を任せ、マダラの元へ飛翔する。
(狙うならバてているマダラだ⋯。それが一番早いよなァ!)
マダラを狙うドンの考えは間違っていない。マダラは変えの効かない唯一無二の存在であり、重要な役割を担っている。
戦況を一人で変えてしまう絶大な力は敵国への抑止力であり、その名声、実力は各国の判断を鈍らせる。
単独で動けるマダラを恐れ、敵国は慎重に戦力を整えざるを得ない。すなわち大規模な戦力を簡単には送れないのだ。
故に扉間はマダラを見捨てられない。
「ちょこまかちょこまかとッ⋯、 岩の砂利風情がッッ!」
苛立ちを隠さないマダラの怒声が耳に入る。
目を向ければ、薙ぎ払われた須佐能乎の剣を無がひらりと躱すところだった。
マダラの須佐能乎はよくよく見れば大振りであり、何時ものキレが無いことが見受けられる。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ⋯」
ドンとの闘い、加えて四尾のコントロールとチャクラと瞳力を酷使したマダラは荒い息を吐き、ギロリと無を睨みつける。
だが目を合わすことなく、無は無塵迷塞を使い姿を消し去った。
写輪眼はチャクラを色で見分ける⋯が、無塵迷塞は己のチャクラそのものを消し去ってしまう。
写輪眼で無を見つめてもチャクラの景色は変わらない。
おかげで無はマダラを好きなタイミングで付け狙える。
ドンがマダラに無を当てたのは消去法ではない。
原作に置いて無とオオノキはマダラに痛めつけられたが、少なくとも無に至ってはマダラを倒せる確率は僅かにあったとドンは睨んでいる。勿論マダラが万全でない事も考慮してだが。
そのマダラは須佐能乎を解かない。否、解けない。
無の位置を掴めない以上、火遁等の範囲攻撃も闇雲に放つほかない。万全の状態であれば有り余るチャクラを使用しその選択肢を取れたが現状不可能だ。
そのため空中から一方的に攻撃をする無への対抗手段として須佐能乎がベストであり、加えて
「後ろかっ⋯!」
僅かな衝撃を感じたマダラが振り返れば、須佐能乎の一部を
後ろへ跳ね上がり、迫りくる魔の手を躱すマダラだが、一撃離脱を徹底する無が直ぐに透明化するため須佐能乎での反撃が間に合わない。
写輪眼でチャクラを視認出来ず、対処の一歩目が遅れてしまうマダラは後手に回ってしまう。
原作であれば無が取れる須佐能乎への攻撃手段は塵遁しか無かったが、今は
ドンが編み出した新たな忍術は完璧に継承され、確実にマダラを追い詰めていた。
「ドンの後継⋯ッ、これ程とはな⋯!」
だが思わず本音を呟くマダラの前へ、無情にも勝利を確信したドンが居り立った。
前門の虎後門の狼。扉間を足止めさせている以上、これでマダラに逃げ場は無い。
後はいつ扉間がマダラの元へ飛んで来ても良いように、徹底的に範囲攻撃で押し潰すだけだ。
「さぁ。終わりにしようかマダラ」
死の宣告がマダラへ告げられーーーー
パァン
ドンと無の手が同時に叩かれた。
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