好評なら、続編も考えます。
___キヴォトスにはこんな噂がある。
『新月か満月の夜、赤い目をした、黒い巨狼と出会うことがある』
目撃情報はある…が、証拠となるようなもの…写真や動画などはなぜか、一切上がらない。
そんな学校の七不思議じみた噂。
そんな中、一人の名もなき少女がそんな噂を詳しく調べるために、街へと向かった…。
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「…んー!全然情報が集まんない!」
そう言って、私は手帳を片手に、カフェテリアで顔を机に置く。
「この噂、シャーレの近くに集まってるのは確かなんだけどなぁ…」
そう言いながら、ページをめくる。
そこには
『狼は襲撃を受けてるものの所へ来ることが多い』
『狼の毛が固く、分厚い為なのか、なんの細工もしていない拳銃程度の弾丸では、大したダメージになってないらしい』
『入念に準備し、痕跡を残すこと無く狼のいる場所からかなり遠くへと逃げ切ったとしても、なぜか二、三時間後には居場所を割られてしまう』
『暗闇の中、鈍く目が光る為、相対した相手に恐怖を抱かせていた様子』
『気のせいだろうが、狼の影が人影に変わったところを見た』
『間近に見たものは三人のみ。目撃者たちは加えて、体長は5mになろうかという程の大きさで怖い姿をした獣の筈なのに、目を見た瞬間、揃って(あぁ、この子は安心していい)と思ったようだ』
『現れた後、すぐに大金積み込んで頼んだ傭兵や特殊部隊で大捜索してみるものの、一切見つからない。その巨体故に隠れる場所など少ない筈なのに。また、その際目撃情報もかき集めて見たものの、なかったようだ』
『シャーレの先生に関与してもらったが一切手掛かりはないという話が上がった』
と、今調べてる噂のことが緻密に書かれている。
「…本当、ナニモンなんだろうな。この狼』
森の中とかならまだわかる。自然豊かな場所故にその巨体を隠すことができる場所も多いだろう。
だが、街の中なのだ。監視カメラも当然あるし、夜とはいえ人もいる。
そんな中で巨狼どころか手掛かり一つさえ、見つからないのだ。
どう考えても何かがおかしかった。
「…誰かがこの巨狼に対して、裏で手を引いてる?」
ボソリと呟くが案外、悪くない考えだった。
もし、そうだとするならば、一切情報が出ないことに対しての辻褄が合う。
狼が逃げた後見つからないのも、誰かが襲撃受けてる所を助けるのも、痕跡が一切見つからないのも。
何者かが裏で指示をしているとしたら、説明がつくのだ。
「でもどうやってそれを証明すればいいのか…」
実はこの噂を調べ始めたのは私がミレニアムで新聞部に所属しているからで。
噂の中で、最も熱いこの噂の事実確認したことを記事にしたら一番注目を浴びそうだからという理由で選んだのだ。
だからこそ、誇張表現はほんのりとあるものの、嘘は一切ない、記事を目指して作るために根拠のある情報をかき集めているのだが…。
「…あー、だーめだ。全然いい案が思いつかない」
前途多難。とはこのことを言うのだろう。
今手元にあるのは殆どがどれも根拠が薄いものかデマだと思われる情報ばかりだ。
裏が取れてる情報はかなり少ない。
このままでは次の記事にまでは間に合わず、私の今集めてる情報は御蔵入りしてしまうだろう。
新聞とは鮮度が命なのだ。
その時の最新の情報を常に届けなければ意味がなくなってしまう。
「むむむ…それは避けたいなぁ…」
少し悩んだ後、スマホを開き、銀行通帳アプリをタップ。残高を見て、とある名刺を見て、またそこから悩み始める。
頭の中で天秤が揺れ動いている。
諦めて他の記事を書くか。
この情報にこだわり、期限ギリギリまで粘るかか。
お金をかけてまで尻尾を掴むか掴まないか。
すでにこの情報に新聞屋としてはかなり時間をかけていると思うし、〆切も刻々と迫っている。
時間的には余裕持たせて記事を完成させるならばここが切りどきではあるのだ。
私の中の悪魔が囁く。
『ここまで時間かけたんだ。せっかくなら最後までしちまおうよ☆』
と。
それに対して、天使が声を上げる。
『ですが、時間は金なりと言いますし、それならそろそろ切り上げて別の記事を書くべきではないですか?』
と。
それに悪魔の私は反論する。
『でもその理論でいくと、もうすでに随分お金かけちまってるじゃんか。なら今からかけた所であまり変わらないし、むしろ、今ある情報を捨てるよりかは活かして、このままお金をかけて、真相を調べるべきでは?』
それに対して、天使が返す。
『……それもそうですね!』
どうやら私の中で答えは決まったようだった。
そうと決まれば。
私は名刺に書かれた電話番号をスマホに打ち込み、電話をかける。
「あ、もしもし。こちら便利屋68でしょうか?少し依頼したいことがあるのですが___」