【カオ転三次】酒と葉巻と病と死神 ~みんな楽しく踊ればいい~ 作:マカーブル
本作をお読みいただき、たくさんのお気に入り登録やご感想をありがとうございます。
誤字脱字の指摘等も、いつも助かっております。
作中の挿絵として画像生成AIによるイメージイラストを表示しております。
AIによる生成画像に不快感を感じる方はご注意下さい。
今回の話は、番外編であり本編よりも未来の時間軸の話となっております。
時期的には、半終末を想定。いわゆるアンソロ時空で、細かい時系列などは気にしない方向で。
内容的には、『今年のハロウィンに起きた出来事』です。
今回の話は、以下の話を読了の上でお読みいただけると、ストーリーの連続性をお楽しみいただける構成となっております。
・昨年のハロウィン
→ 拙作の 56話目~66話目 番外編 ハロウィン回の合計11話分。
・昨年のクリスマス
→ 貧弱一般メガテンプレイヤー 作 【カオ転三次】幼女ネキの謎を解明するため、黒札調査隊は宮城県の奥地〇〇町出張所へと向かった――。
20話目のクリスマス回。 https://syosetu.org/novel/368974/20.html
要約すると『昨年のハロウィンとクリスマスに何があったのか』です。
それでは、今回の番外編もお楽しみいただければ幸いです。
なお、調子こいて文字数増やしてたら3万6千文字オーバー!!
例によって分割です^^;
まずは、その①からです。
そも、ハロウィンとは何ぞや?
ハロウィンとは、毎年10月31日に開催される、なんか妙に仮装の自由度が高い祭りである。
元々は古代ケルトの祭事「サウィン」が起源とされ、秋の収穫を祝い、冬の到来とともに訪れる死者や精霊を警戒する行事だった。
後にキリスト教文化などと混ざり合い、現在のハロウィンへと変化したとされる。
そして現代日本では、何故か子供たちが魔女や吸血鬼やお化けに仮装し、家々を巡って───
「トリック・オア・トリート!」
――─つまり、「お菓子をくれなきゃイタズラするぞ!」と脅迫……もとい、可愛らしくお菓子を要求するイベントになっている。
大人も負けじと仮装する。
ゾンビ、怪人、アニメキャラ、果ては「それ何の仮装だよ」と聞いてはいけない何かまで出現する。
要するに、「普段なら怒られる格好をして街を歩いても、今日はハロウィンだから大丈夫!」と言う、非常に便利な日なのである。
ただし、調子に乗って本物の怪人になるのはやめよう。
……まあ、この世界では三人ほど、わざわざ怪人になろうとする馬鹿もいるのだが。
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ようやく夏の暑さも落ち着きを見せ始めた稲刈月*1、ガイア連合山梨支部の宿舎の一室に、いつものノリで集まった三人の
彼らは人呼んで三馬鹿ラス。*2
忍び装束のサスケニキ。闇に潜む忍者?否、ポンコツ極まるニンジャな俺ら。
鎧武者姿のヨロイニキ。節操なく様々な武将の鎧のパーツを寄せ集めた俺ら。
魔導士姿のクロマニキ。見た目だけ正統派魔導士スタイルの負け軍師な俺ら。
この三人が揃っていると言う事は、つまり─――ろくでもない話が始まると言う事に他ならない。
口火を切るのはリーダー役でもあるサスケニキ。
「───さて、単刀直入に言おう。今年のハロウィン、どうする?」
「いや、どうするって言われてもなあ? ……どうするよ?」
「そもそも、今年の、と言いますが、まず去年のハロウィンの事も、肝心なところを私たちは…………」
「「「………………」」」
沈黙。
去年のハロウィンは、三馬鹿ラスにとって『参加する側』としてのイベントだった。
普段の格好からして仮装しているような装いの連中だが、それはそれとして、去年は衣装をハロウィンカラーにしてみたり、ワンポイントにコミカルなハロウィンモチーフのモンスターのピンバッジを付けるなど、ハロウィンを意識した装いで参加していた。
普通にパーティで美味いお菓子を食べたり、10月31日が過ぎてからの後夜祭*3にも普通に参加したりと、ハロウィンと言うイベントを楽しんだのである。
……である、が───
「去年のハロウィンで、一体何があったのか、だよなぁ?」
「それな」
「探求ネキとの契約ですし、それ自体は良いんですが、それはそれとして……」
「「「何があったのか、マジで覚えてないし思い出せない」」」
───『何か』があった。しかし、その『何か』を覚えていないし思い出せない。
探求ネキ主導による娯楽作品『絶対に笑ってはいけない人生禄』シリーズ。*4
その主演キャストである三馬鹿ラスは、自分たちの記憶を要望に応じて蒐集され、その際の記憶を消すと言う契約に合意しているのである。報酬も破格だし。
なお、
だって、毎回新鮮なリアクションが欲しいし?
閑話休題
「あの時は、〝覚えてない〟ってのが俺らのためでもあるって事で納得はした。したが……」
「後になって周りから「凄かったな」とか「酷かったな」とか散々言われると、気にもなるよなぁ?」
「それですね。ですが、これは考えても仕方ないと言えば仕方ありません。私たちがどう足掻こうと、探求ネキの手の平から逃れられるはずもありませんしね。しかし、だからこそ私たちが気を付けなければならないのは『去年と同じ轍を踏まない事』です。去年の事は、散々揶揄われてきましたからね」
「「それは確かに」」
珍しく一発で大方針が決定し、ならば、次は具体策である。
「じゃあ、去年と同じ轍を踏まないためにはどうするよ?」
ここは、議論の受け止め役にして、進行を促す役目を担う事が多いヨロイニキが引き継ぐ。
「そもそも去年、俺らは『参加する側』だったんだよな? なら、今年は『主催する側』になればいいんじゃね?」
更に、進行の際の立案役として、サスケニキがアイデアを出す。
「……なるほど……自分たちで企画を立て、自分たちで進行し、自分たちで安全管理を行う、ですか」
そして、出たアイデアをクロマニキが具体的な方向としてまとめる。
こうなると、意外とスムーズに議論が進み、方針は決定していく。
内容はともかく。 もう一度言う。 内容はともかく、だ。
「そんじゃあ、具体的に何するよ? 流石に普通に仮装して菓子配って終わりじゃ駄目だよな?」
「だな。『主催する側』になるなら、面白味が無いと駄目だ。そもそもハロウィンなんだから、仮装は必須だろ?」
「ですね。かと言って、去年のクリスマスみたいなコンセプト*5だと、〝イベントで悪さをした〟扱いで制裁されかねませんよ?」
「なら、悪さをしなけりゃ良いんだよな? 変に凝ったマネしないで、素直に子供たちを楽しませるみたいな方向で良いんじゃね?」
「んー、ちょっと面白みに欠けるかもだが、〝去年と同じ轍を踏まない〟って事なら、それも有りだよな」
「そうなると、問題は何になるか、ですね」
「魔女」
「却下」
「吸血鬼」
「却下」
「狼男」
「さっきから普通過ぎますよ?」
「ゾンビ」
「去年の記憶がないのに死体系は何か嫌だ」
「お化け」
「ふわっとしすぎてるだろ」
「では怪人」
「…………」
「…………」
「…………」
沈黙。そして───
「……怪人になれば、子供たちもハロウィンらしくて喜ぶんじゃね?」
「それだ」
「それですね」
「怪人だな」
───何故か三人とも納得した。
「ハロウィンと言えば怪人!!」
「子供たちにとっても分かりやすい!!」
「よし!! どんな怪人か方針を決めようぜ!!」
ついさっきまで、「去年と同じ轍は踏まない」「去年のクリスマスみたいなコンセプトだと制裁されかねない」とか言った矢先に、「
三馬鹿ラスの中で去年のクリスマスは、『結果的に未遂とは言え、アベックのイチャコラを妨害しようとした』と言う〝悪さ〟故に制裁された事になっている。つか、事実でもあるし。
そして、三人ともこう思った。すなわち───
「「「悪い事をしない怪人になる!!」」」
───本末転倒な結論である。
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ようやく夏の暑さも落ち着きを見せ始めた稲刈月、秋の陽射しが降り注ぐ星霊神社の境内を、二人の少女が並んで歩いていた。
一人は、白いTシャツに黒いスパッツ、シンプルなサンダルと言う、身軽な格好をした幼い容貌の少女。
その顔立ちには年相応のあどけなさが残っているものの、口元から覗く鋭い八重歯と、自信に満ちた表情が印象的だ。
何より目を引くのは、身体の小ささとは裏腹に、途方もなく長い黒髪である。
前髪は眉の辺りで綺麗に切り揃えられ、その下には鮮やかな赤い瞳が覗いていた。
その隣を歩くのは、黒いスーツに身を包んだローティーンに見える少女だ。
白いシャツに赤いネクタイ、くるぶし近くまで覆う黒いロングスカート、そして足元には、重厚な黒い編み上げブーツ。
きっちりと着こなされたスーツ姿は、外見以上に淑女然とした印象を周囲に与えている。
こちらもまた、膝の辺りまで届くほど長い黒髪を持ち、前髪は寸分違わず切り揃えられていた。
その赤い瞳も、顔立ちも、隣を歩く少女によく似ている。口元には、何か面白い事でも見つけたかのような、不敵な笑みが浮かんでいた。
二人を見比べれば、まず気づくのは、その顔立ちの相似だろう。
長い黒髪に、揃えられた前髪。大きな赤い瞳に、どこか似通った目元。顔の輪郭や表情の作り方にまで共通するものがあり、初めて見た者ならば、姉妹か何かではないかと考えても不思議ではない。
とは言え、見分けがつかない訳ではない。
片や明らかに幼い小さな身体、片やローティーンに見える成熟前の身体。身長差は明白だ。
服装も、白いTシャツとスパッツと言う気取らない格好に対し、もう一方は黒いスーツにロングスカートと言う、対照的な装いである。
似ているのに、違う。違うのに、よく似ている。
そんな奇妙な二人は、互いに言葉を交わしながら、秋の神社の境内を歩いている。
一見すると微笑ましい光景でもあるのだが、この二人の中身が外見からは想像もつかないほどの怪物である事は、すれ違うガイア連合のメンバーたちの態度と表情が物語っていた。
どんな態度と表情か? 「触らぬ神に祟りなし」ですが何か?
「そうか、ドクターネキ*6は、今年もハロウィンへの直接の参加は見合わせるのか。まぁ、こればかりは致し方ないか」
「去年のクリスマスは相当無理を……もとい、一念発起したようだが、ハロウィンはクリスマスとは違って、
幼い姿の白い少女───幼女ネキ*8の言葉に、黒い姿の少女───黒死ネキは応える。
話題は今年のハロウィンと、友人たちの参加の有無についてだ。
「セツナ*9も今年は『有翼の会』の連中や、小鷹兄弟*10と過ごすらしいな。交友関係も広がって来ているようだし、良い事だろう」
「違いないな。……ふむ、そうなると今年のハロウィンは、私も普通に参加する側にまわる事になりそうだな」
「ん? 黒死ネキは去年みたいに企画側にはまわらないのか? 例のシリーズのハロウィン編の第二段を期待してる声もちらほら聞くが?」
「あのシリーズは元ネタも毎年コンセプトが変わっていただろう? それに、本来なら年末バラエティだった物を隔月でリリースしているし、「ハロウィンだから」で何度も同じコンセプトの企画をやるものでもないからな。……それに、あいつらのやらかしが多すぎるせいで、正直言ってネタが供給過多でな? 放っておいてもネタが蓄積されているのが現状である以上、必要以上にこちらから何かを企画する事も無いだろうと判断した。探求ネキも同意見だ」
「隔月でリリースしてるのに、ネタが尽きるどころか蓄積されていく人生を送ってるのか、あの馬鹿どもは…… とは言え、そう言う事なら私も今年は参加する側と言う事になりそうだな。なら、気楽に祭りを楽しませてもらうとするか」
『実年齢小学生カルテット』*11の一員であるドクターネキとセツナは、今回のハロウィンでは同行は見合わせ。
去年のハロウィンでは企画側にまわっていた黒死ネキも、今年は普通に参加側にまわる予定。
同じく去年は企画側だった幼女ネキも、必然的に他と同じく参加側になるだろう。
それならそれで、気楽にハロウィンを楽しめば良い。
二人はそう結論付け、当日の予定を話し合う。
そして、何の仮装をするのか、どんな菓子を用意するのか、他の友人知人の動向など、色々と話している間に、星霊神社の事務所へとたどり着く。
「それにしても、私たち宛てに手紙とは何だろうな? 事務からも「直接お渡ししたい」としか聞いて無いが、黒死ネキは聞いているか?」
「私も聞いていないな。メールの文面には「荒事の依頼ではない」とは書かれていたが」
「まぁ、受け取れば分かるか」
元々、二人が揃って歩いていたのは、ガイア連合の事務所より「二人に手紙が届いているから、取りに来て欲しい」と言う連絡があったからだ。
当然、何故直接転送しないのか尋ねたが、「内容的に二人宛ての依頼でもあるので、直接その場で確認して欲しい」との事だ。
「あ、黒死ネキに幼女ネキ、お待ちしていました」
二人を出迎えたのは、星霊神社の事務所に勤める男性職員だった。
覚醒者ではあるがまだ低レベルであり、遥か格上の二人を前に少し緊張が見られていた。
「待たせたな。それで、私たち宛ての手紙と言うのは?」
「はい。こちらになります」
職員が取り出したのは、一通の封のされていない封筒だった。
特に飾り気もない、ごく普通の封筒。宛名も差出人の名前も書かれていない。
「……宛名が無いな?」
「ええ。実は、この封筒は子供たちが直接こちらへ持ってきた物でして」
「子供たち?」
「はい。お二人に渡して欲しい、と。それで、最初は事務所の方でお預かりしていたのですが……」
職員は、少し困ったような表情を浮かべる。
「内容を確認したところ、これは単なる手紙と言うより、お二人への『お願い』に近いものだと判断しまして。こちらで勝手に返事をしたり、何かを約束したりする訳にもいきませんので、直接お渡しする事にしたのです」
「なるほどな。子供からの依頼と言う訳か」
「依頼と言うほど大げさなものではないと思いますが…… ただ、お二人に関係する事ですので、どう扱うかはご本人たちに確認した方が良いだろう、と」
「ふむ。筋は通っているな」
黒死ネキは納得したように頷く。
「それで、この手紙は見ても構わないのか?」
「もちろんです。お二人に宛てた物ですから」
許可を得て、黒死ネキは子供らしい筆跡で書かれた一枚の手紙を開く。
文字の大きさはまちまちで、ところどころ線が曲がっている。
丁寧に書こうとした跡はあるものの、まだ字を書く事に慣れていないのだろう。
いくつかの文字は、読むのに少しばかり苦労しそうだった。
それでも、書かれている内容は明快だった。
[[きょ年のクリスマスに出会った、光のお姉ちゃんと、やみのお姉ちゃんに、また会いたいです]]
その下には、付け足すようにして、もう一言。
[[ハロウィンにも、きてくれたらうれしいです]]
……なるほど。
手紙を読み終えた二人は、顔を見合わせた。
「……光のお姉ちゃんと、やみのお姉ちゃん、か」
「……フフッ」
幼女ネキの口元が、みるみるうちに緩んでいく。
「ハハハッ!! なんだそれ!! 私たちは、そんな風に呼ばれていたのか!!」
「どうやら、そうらしいな。……しかし、『闇』の字が書けなかったのか。『やみのお姉ちゃん』とは、なかなか可愛らしい呼び方じゃないか」
「だな!! 『光』は書けたのに、『闇』は書けなかったんだな!!」
「ククク……。まあ、子供にとっては難しい字だろうさ」
二人は顔を見合わせ、くすくすと笑う。
手紙を書いた子供たちにとって、去年のクリスマスに出会った二人は、名前や肩書きよりも、見た目や印象の方が強く残っていたのだろう。
何せ、光り輝くサンタ服と、闇を纏ったサンタ服の少女たちが、『TAKE ME HIGHER』*12をBGMに、グリッターゼペリオン光線っぽい何かを放つ演出をしたのだから、それも当然と言えた。
光のお姉ちゃん。
やみのお姉ちゃん。
子供らしい、実に素直な呼び方だった。
「それで、事務所としてはどうするつもりだったんだ?」
黒死ネキが尋ねると、職員は少しだけ表情を引き締めた。
「手紙の確認と、お二人にお渡しするところまでは、こちらの判断で行える事でした。ただ、子供たちへの返事や、実際にハロウィンでお二人に会いに行って頂くかどうかは、お二人の意思を確認してからにしようと」
「なるほど。子供たちの願いだからといって、勝手に約束するわけにもいかない、と」
「はい。お二人にもご予定があるでしょうし、何より、これはあくまで子供たちからの『お願い』であって、『依頼』と言う訳ではありませんから」
「うんうん。ちゃんとしているじゃないか!!」
幼女ネキは満足そうに頷くと、改めて手紙へと目を落とした。
そして、そこに書かれた短い文章を、もう一度読み返す。
「……また会いたい、か」
先ほどまでの笑顔とは少し違う、柔らかな表情だった。
「ククク……。さて、どうしたものかな?」
隣では、黒死ネキが手紙を指先で軽く叩きながら、何やら楽しそうに笑っている。
その声には、困惑よりも、どこか面白い事を見つけた時の響きがあった。
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そして、ハロウィン当日。
ガイア連合の山梨支部が主催する催しは、朝から大勢の参加者で賑わっていた。
魔女に吸血鬼、狼男にゾンビ。中には、どこから調達したのか分からないような本格的な怪物の衣装まである。子供たちも思い思いの仮装に身を包み、会場を巡りながらお菓子を貰っている。
「トリック・オア・トリート!!」
「はいはい、お菓子をどうぞ~」
「やったー!!」
あちらこちらから、楽しげな声が響く。
普段なら少しばかり気恥ずかしい格好でも、今日ばかりは問題ない。大人も子供も、思い思いにハロウィンを満喫していた。
そんな賑やかな会場の片隅に、一人の少女がいた。
年齢は小学校低学年ほどだろうか。魔女の帽子を被り、手にはお菓子を入れるための小さな袋を持っている。
どうやら仮装をして、ハロウィンに参加するつもりではあったらしい。
しかし、いざ会場に来てみると、知らない人に声を掛けるのが恥ずかしい。
楽しそうにお菓子を貰っている子供たちを眺めながら、結局、誰にも話し掛けられずにいた。
――その時である。
「「「そこのおガキさまァァァッ!!」」」
「きゃあっ!?」
突然、背後から大音声が響き、少女はびくりと肩を震わせ振り返る。
そこにいたのは――三体の怪人だった。
青とピンクのボロ布を纏った骸骨じみた顔。
その左目は眼窩から飛び出しているが、生々しさよりも、どこかメカニカルさを感じさせる。
口元に咥えた、大きなロリポップキャンディーは場違いなコメディ要素だ。
ロボットじみた胴体は、ゾンビじみた仮装にも見えるし、不気味な案山子にも見える。
左腕には、魔女帽子を被った奇妙な白い幽霊のパペットを模した手甲【トリックロー】。
右手には、色鮮やかな包装紙に包まれた大きな棒キャンディを模した長柄のトンファー【トリックオアトリートンファー】。
そして、何よりも特徴的なのは、その頭部……の、上に鎮座するジャック・オー・ランタンだ。
更に、そのジャック・オー・ランタンには、それぞれ忍者の覆面、武者兜、三角帽子が被せられている。
どう見ても、まともな存在ではない。そもそも怪人の格好と頭上の飾りが、微妙に噛み合っていない。
だが、本人たちは気にしていないようだった。
「えっ……あの……だ、誰……?」
少女が恐る恐る尋ねる。
すると三体は、互いに顔を見合わせ───
「誰、と聞かれたら答えねばなるまいハロウィ~ン!!」
「我らが何者であるか、その崇高なる理念と共に教えてやるハロウィ~ン!!」
「耳の穴かっぽじって、よぉ~く聞くんだハロウィ~ン!!」
───何やら寸劇が始まった。
少女が呆気に取られていると、三体の怪人は揃って天を仰ぎ、何故か朗々と語り始めた。
「東にトリック・オア・トリートを言えぬ子供あれば、行って一緒に叫んでやり!!」
「西に仮装する勇気のない子供あれば、行って大丈夫だと背中を押し!!」
「南に泣きそうな子供あれば、行って怖がらなくても良いと言い!!」
「北に喧嘩や迷惑な悪戯あれば、つまらないからやめろと言い!!」
そこで三体は、ぴたりと動きを止めた。
そして、何故か誇らしげに胸を張る。名フレーズをパクられた宮沢賢治は怒って良い。*13
「そう!!」
「我らは!!」
「ハロウィンを楽しむ全てのおガキさまの味方!!」
―─―何だか、微妙に良い事を言っている。
しかし、見た目は完全に怪人である。
少女が戸惑っている間にも、三体は勝手に名乗りを始めていた。
まず、中央の怪人が両腕を天へ掲げる。
「忍び寄る悪戯、仕掛ける罠!! だが今日の俺は悪事を働かぬ善良な怪人!! ハロウィンワルド・ニンジャ!! ……いや、ハロウィン社長!!」
続いて、左の怪人が一歩前へ出た。
「闇夜に紛れて菓子を配る!! 泣く子も黙る、いや、泣く子を笑顔にする!! ハロウィンワルド・サムライ!! ……もとい、ハロウィン大将!!」
最後に、右の怪人が杖を掲げ、無駄に芝居がかった仕草で一礼する。
「魔術と知略の結晶!! お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ、ただし悪戯の内容は健全です!! ハロウィンワルド・ウィザード!! ……改め、ハロウィン先生!!」
三体は互いに顔を見合わせ、頷き合い、拳を突き上げる。
「「「我らハロウィンワルド、じゃなくて―─―ハロウィン3ちゃんズ!!!!!!」」」
背後の申し訳程度の爆発と共に、不審者……もとい、三体の怪人による似非ヒーローじみた決めポーズが決まった。*14
なお、本人たちの中では完璧に決まっているが、左右はもちろん、中央まで含めて微妙にずれていると言う、何とも締まらない出来だったりするのだが。
少女はぽかんと口を開けたまま、三体を見上げていた。
何が起きているのか、まったく分からない。
ただ、一つだけ分かった事がある。
この怪人たちは、どうやら自分に何か用があるらしい。
「……あの、わたし、何か悪い事をしましたか?」
「いや、違うぞおガキさま!!」
中央の怪人───サスケニキことハロウィン社長が、勢いよく首を横に振った。
「我々は、君を叱りに来たのではないハロウィ~ン!!」
「むしろ、君を褒めに来たのだハロウィ~ン!!」
左のヨロイニキことハロウィン大将が、堂々と言い放つ。
「……褒める?」
「そうだハロウィ~ン!! 貴女は仮装をして、ちゃんとハロウィン会場まで来ている!!」
右のクロマニキが、教師のような口調で続けた。
「それだけでも、立派な一歩なのだハロウィ~ン!!」
「でも……」
子供は、手元の袋を見つめた。
「みんな、知らない人にも普通に声を掛けてるから……。わたし、恥ずかしくて……」
三体の怪人は、再び顔を見合わせた。
そして、深く頷く。
「なるほど、シャイなおガキさまかハロウィ~ン!!」
「ならば、我々からこれを授けようハロウィ~ン!!」
そう言ってヨロイニキことハロウィン大将が取り出したのは、小さなジャック・オー・ランタンのお面だった。
それは、三体の怪人が頭上に載せている物とよく似た、可愛らしいカボチャのお面である。
「こ、これは……?」
「ハロウィンワルドの力の象徴!! ……ではなく、勇気の証だハロウィ~ン!!」
「これを被るかどうかは、君の自由だハロウィ~ン!! だが、被ったならば君も立派なハロウィン参加者だハロウィ~ン!!」
クロマニキことハロウィン先生が、妙に芝居がかった仕草で告げる。
「……これを被っていれば、わたしも参加していいの?」
「当然だハロウィ~ン!! ハロウィンは楽しんだ者勝ちだハロウィ~ン!!」
サスケニキことハロウィン社長が、力強く頷いた。
少女は、しばらくお面を見つめ、そして、恐る恐る手を伸ばす。
「……ありがとう」
小さな手でお面を受け取り、顔に当てる。
カボチャの目の穴から見える景色は、さっきまでと何も変わらなかった。
魔法が掛かったわけでもないし、突然、恥ずかしさが消えたわけでもない。
それでも、自分はハロウィンに参加しても良い。不思議とそう思えた。
少女は、三体の怪人を振り返る。
「……えっと……トリック・オア・トリート」
少しばかり小さな声だった。それでも、ちゃんと口に出来た。
「よく言えたなハロウィ~ン!!」
サスケニキことハロウィン社長が、我が事のように喜んだ。
「よく頑張った!! お菓子をプレゼントだハロウィ~ン!!」
ヨロイニキことハロウィン大将が、用意していたお菓子を差し出す。
「君の勇気に、我々から祝福を贈ろうハロウィ~ン!!」
クロマニキことハロウィン先生も、満足げに頷いた。
「ありがとう!!」
少女はお菓子を受け取り、何度も嬉しそうに頭を下げた。
そして、少しだけ自信のついた足取りで、会場の人混みへと向かっていった。
三体の怪人は、その背中を見送る。
「……うむ。良い仕事をしたな!!」
「これぞ、ハロウィン怪人の本懐!!」
「我々の活動理念が、また一つ実を結んだハロウィ~ン!!」
そして、三体は揃って会場を見渡した。
まだまだ、ハロウィンを楽しめていない子供たちはいるだろう。
恥ずかしがっている子。
どうしていいか分からずにいる子。
友達の輪に入れず、遠巻きに眺めている子。
そんな子供たちを見つけて、背中を押してやる。
それこそが、今年の三馬鹿ラスの活動なのだ。
サスケニキことハロウィン社長が、勢いよく拳を突き上げた。
「さぁ、他にもハロウィンを楽しむべきおガキさまはどこだ~ハロウィ~ン!!」
「我らが直接出向いて、勇気を授けてやるハロウィ~ン!!」
「さぁさぁ、遠慮はいらんぞ!! トリック・オア・トリートを叫ぶのだハロウィ~ン!!」
三体の怪人は、怪しげな掛け声と共に会場を練り歩き始めた。
その姿を見た大人たちは、何とも言えない表情を浮かべている。
何せ、こいつらは子供に怪しげなお面を配り、妙な掛け声でハロウィンへの参加を促す怪人集団である。
どう見ても不審者だ。
だが、彼らの行く先では、少しずつ子供たちの笑顔が増えていた。
「「「さぁ、次のおガキさまはどこだハロウィ~ン!!」」」
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131話目 120:娯楽は黒札の優先事項なので…… より
外見は『ラストオリジン』のドクター。過去の経緯から人型の者に対するトラウマがある。ゾイド大好きチビッ子博士。
20話目
人型の者との関りにトラウマを持つドクターネキが、三馬鹿ラスたちに〝気遣われる事無く〟一緒にクリスマスイベントへ参加する為、探求ネキに依頼して『表情や声を特定の状態に、ある程度固定する術式込みの変身薬』を用意し、大人の姿に変身すると言う無茶をした。
幼い見た目と仁侠的な性格の、フリーダムICBM幼女。
最近、「え? 9歳で身長155㎝?」と言う色々とビックリの情報が再確認された。
兄の小鷹四夕はケモナーで、妹の小鷹五月はサキュバスのデビルシフターで兄を性的に狙っている。
五月は『頑張る子達応援し隊』のメンバーでもある。
身長はセツナ(155㎝)>黒死ネキ(150㎝強)>ドクターネキ(140㎝)>幼女ネキ(110~120㎝くらい?)である。
お読みいただき、ありがとうございます。
本編どうしたって? いや、ネタが降りて来たんで? ハロウィンも丁度時期だったし?(マテ
去年はちょっと長くなり過ぎたんで、今回は一発ネタで1話に収めて……
今回の番外編の本文、3万6千字以上。
・・・・・・うん、知ってた(マテ
ま、まぁ分割投稿でも10月中に納まるならええやろ(震え声
と言う訳でハロウィン回です。チャッピー君で色んなイラストを作れるようになったんで、折角だからとフル活用!!
で、完成させてから気付いたんですが、ハロウィンワルドのイラストって使って大丈夫だっけ? 偉い人から怒られない?
……丸パクリじゃなくて、三馬鹿ラスのモチーフも描き加えてるからセーフ!!
多分、きっと、メイビー?
試作だけで数十枚作って、ようやくこのポーズに辿り着いたから、出来れば見て笑って欲しかったりw
指定通りの造詣とポーズの作成は、やはり創意工夫が必要ですね。
三馬鹿ラスらしい馬鹿を出せていれば幸いw
次回は光のお姉ちゃんと、やみのお姉ちゃんの出番です。
果たして、この二人はどんな姿で登場するのか、こうご期待。
・黒死ネキ(実年齢10~11歳 普段は152~3㎝。実際はもうちょっと小さい)
今年は主催側には回らない予定。『笑ってはいけない』シリーズは、元ネタ的にも同じコンセプトはやってないしね。
去年の『笑ってはいけない
子供に人気の『やみのお姉ちゃん』。
・幼女ネキ(実年齢8歳 身長115㎝くらいと想定。コレでも平均身長よりかなり低い)
今年は普通に参加者としてハロウィンを楽しむつもりだった。
去年の『笑ってはいけない
子供に人気の『光のお姉ちゃん』。
・三馬鹿ラス(実年齢17歳くらい? 案外長身と言うイメージがあるの私だけ?)
去年の『笑ってはいけない
探求ネキと黒死ネキにハメ尽くされて、ネタと記憶も蒐集され尽くされる。覚えてないけどw
それ自体は契約通りだから良いとして、周囲から揶揄われまくると「何があった!?」と気にはなる。
今年のハロウィンはイベント参加者ではなく主催者側にまわる事で、為すがままになるのを回避しようと目論む。
何故かそれで「怪人になる」で意見が一致。
とは言え、去年のクリスマスのように〝他者に迷惑をかける〟がコンセプトではまた成敗されるからと「悪い事をしない怪人になる」と変な方向へ舵を切った。
・ハロウィンワルド
『機界戦隊ゼンカイジャー』に登場する敵組織・トジテンドが造り出したワルドの一体。
ハロウィントピアの力を悪用して、トリックローより放つ「トリックビーム」を浴びせた人々へジャック・オー・ランタンのお面を装着、ハロウィンに熱狂させ暴徒化、混乱と無秩序を引き起こす能力を行使する。
要するに、リアル2018年の渋谷ハロウィンでの暴動じみた馬鹿騒ぎ現象を引き起こしていた。
今回の三馬鹿ラスの行動は、それとは正反対の『ハロウィンに上手く馴染めずにいる子供を勇気づける』とか言う善行()である。
夢空様からFAをいただきましたので、この場を借りて掲載。
【挿絵表示】
黒死ネキを描いていただきました。
やはり贈り物から摂取できる喜びは別格!!
それにしても、他者から見た黒死ネキがどんなイメージなのか良く分かりますねw
ロンスカではなく黒スラックスも良いね。