ご注意・名前を伏せると誰が誰か判りに難く、書きに難いのでオリジナルキャラクターの内1人だけ名前が出ます。
本日は12月24日のクリスマスイブ、キヴォトスには浮ついた空気が少なからず漂っています。
こんばんは、ティーパーティーのただの会計事務員の セイラ よ。私の在籍するトリニティ総合学園も勿論クリスマスのイベントはある。
シスターフッドの友人から聞いた話では、聖歌を捧げるのだそう。救護騎士団の知人はキャロルを歌い、必要な場所に救護の手が届く様にと募金活動などをしているらしい。
時折こうして息抜きにクリスマスというイベントの事を考え書類の山を整理している内に窓の外は暗くなっているが、まだ生徒がそれなりに残っているのかいつもよりは学内は賑やかだ。
折角のクリスマスイベント、楽しまなきゃ損よね。そんな私達はと言うと、年末の書類整理。もう終わりかけだから私と
「…んん?もうこんな時間、予定より長引きましたね。」
我が上司でもある同級生は帳簿を閉じて、スマホと腕時計を見ながら首を回し背中に畳まれていた翼を伸ばしている。
壁掛けの時計を見ると時刻は18時を指している。
「お疲れ様でした、我が上司。これで私達も穏やかな年末を過ごせるわね。」
「お疲れ様です、セイラさん。そうですね と言いたいところですが、いくらトリニティ自治区とはいえ、
翼を畳んで、ハーフアップにした灰色の髪を手櫛でとかしながら溜息混じり彼女は言う。
「いつものことね。年始の仕事の事を考え始めると貴女の常備している胃薬もすぐに無くなるわよ?」
いつもの事後処理を思い出し、互いに遠い目で乾いた笑い声を口から溢している。
「さて、生徒会長さん達もお帰りになられている事ですし。私達も帰りましょう。」
「そうね。書紀の皆も仕事が終わっている様だし。」
銃や鞄など荷物を持ち、執務室を出て戸締まりをする。
ティーパーティーの部活棟を出ると1人の見慣れた人影があった。
「今年最後の大仕事は終わったみたいですわね。お疲れ様。」
「お疲れ様です。書紀のお仕事も無事順調に終えられた様ですね。」
「お疲れ様。ずっと待ってたのかしら?」
堂に入ったお嬢様口調と強気な声色ながらも優雅さも感じさせるその人物は、ティーパーティーの書紀を取り纏める、同じ教室の同級生だった。
「いえ、先程までナギサさんと立話をしていましたわ。」
労いの言葉をかけた時の柔らかな表情ではなく、仕事モードの真顔で短く答える。
また、仕事の依頼かしら。ほぼ総務部な会計部署には珍しくもない話だけど、生徒会長直々の依頼は我が上司が引き受けているから私に関係あるかどうかは判らないわね。
「そういうわけで、少々お話がありますわ。」
「…大体お察しします。どちらへ向かうのですか?」
その問いに腰の辺りにある翼をユラユラと揺らしながらニヤリと不敵な微笑で答えるクラスメイトは、会計に話しかけている。
私には関係無い話の様ね。生徒会長ら、あの3人の事だそうだし。
なら…帰ろうかしら、家で昨日買ったケーキを食べたいわね。
「そうですか。長い話は道中で致しましょう。」
「そうね。セイラさん…それでは、ここで失礼させていただきますわ。」
「大変ね、貴女達も…。お疲れ様。」
「ありがとうございます。それでは、わっぴー♪」
そこは メリークリスマス じゃないのね。私も聞いた事はあるから1人のシスターの姿を鮮明に思い浮かべる。
とか考えながら「わっぴー。」と棒読みで返し手を振る。
2人を見送った後、私は遠回りをして普段はあまり行かないトリニティの商店街を歩いていた。
何処のお店もクリスマス仕様で、大通りのイルミネーションに負けないくらいキラキラと物理的に光っている。なんだか目がチカチカしてくるわね。
「やっぱり、人…多いわね。」
私と同じくイルミネーションやお店に訪れてか、人混みがあちらこちらにできている。
でも、キヴォトスのお決まりの様になっているトラブルの気配がする騒々しさは無く、和気藹々とした賑やかな声で満ちていた。
私はただただ物見遊山よろしくと練り歩く。道中で救護騎士団の蒼森団長を見かけたり、正義実現委員会の御一行が居たけど、平穏に過ごしている様子。良かった、今日くらいは胃痛に悩まされる事態から解放される様ね。
トラブルなどで被害が出るとそれ相応の費用がかかるのよ?皆バカスカ撃ちまくって壊してるけど、被害箇所の修復と医療費諸々と予算を見積もる。壊すのは一瞬だけど事後処理は多くの時間が必要になるの。
と…いけない、いけない、なんだか目の前が一瞬真っ白になってたわ。
「ココアでも買いにいきましょうか…」
近くにスーパーがあったがそこでは買わずに自販機でココアを買う。
暖かいココアの缶が冷えた私の手を暖かくしていく。口の中でココア特有の甘さと風味が広がり身体の中からも暖まる。
「さて、帰ろうかしら…。」
ココアを飲み切り僅かに余熱を残すのみとなった空缶を自販機横のゴミ箱に入れる。そして、ライトアップでキラキラとした街で喧騒をBGMに散策を止めて帰路につこうとする。
「あ!布団乾燥機推しの先輩だ!」
「もう、セイラ先輩だよ。こんばんは、セイラ先輩。」
「あら、貴女達…こんばんは。」
聴こえれば思わずそちらを見てしまうハイテンションな声と聞き慣れた落ち着いた声がする方を向く。思い浮かべた通り、私によく話しかけてくる後輩2人が居た。
「お仕事お疲れ様です。これからお帰りですか?」
「ええ、仕事自体はもう終わっているのだけどね。会計と別れた後に少し街を散策していたのよ。丁度今帰るところ。」
「なるほど。しかし珍しいですね。いつものセイラ先輩なら早く帰ってお休みになられるのに、何か気になる事でもありましたか?」
目の前の後輩は背中の羽を少し広げ、私の顔を覗き込む様にしている。
もう1人の後輩は何か大事な荷物を両手に持っているのかそちらを気にしている。
「なんの気紛れか、普段行かない街の様子が見たくなったのよね。…引き留めてごめんなさい、私はそろそろ帰るわね?」
彼女達が私を慕ってくれているのはすごく嬉しいけど、こんな寒空の下で長話をしすぎるのも悪いかと考えて、話を切り上げようとしてしまった。
「あの、実は私達今から下校するところで…この後クリスマス会をするのです。特に何処でやるかは決めていないのですけど、よろしければ…セイラ先輩もご一緒にどうですか?」
「良いねっ‼︎ 私もセイラ先輩とクリスマス会したいかな☆」
突然で思わず驚いてしまった。でも、考えてみれば彼女達はこういう子達だ。彼女達は、精神や戦闘が特別強いワケでもない。誰に対してもこういう真摯に純粋に寄り添う姿勢をみせる。
眩しいくらいだと思う。
「ふふっ…ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかしら。」
私は、良い善い後輩に慕ってもらってるわね。
私の返事を聞いて明るく眩しい笑顔をする後輩達を観て、そう考える。
「…それじゃ、私の家に来る?」
「良いんですか?」
「ええ、今日は食べようと思って買っておいたの。どうせなら皆で食べましょう?」
ゆったりと過ごすつもりだったクリスマスイブは、後輩達との楽しいクリスマス会になったのだった。
〜終〜
お読みいただきありがとうございます。
読者の皆様は今宵はいかがお過ごしでしょうか。流行病や年末仕事納めに冬の課題・宿題とお忙しい時期でしょうが、出来る限り無理はなさらずにご自愛ください。
*世界観のご説明
このお話の舞台となるキヴォトスは、敢えて原作とは違う世界線になっています。故に、ティーパーティーに 会計 と 書紀 などの原作では存在しなかった役職があります。
何故、違っているのか…という説明をしていくと小説1シリーズは書けてしまいますので割愛させていただきます。
お付き合いくださりありがとうございます。