2部6章の重大なネタバレと、オーディールコール~奏章3の軽いネタバレを含みます。
私が実際にFGOをプレイした体験を基にしています。そういう世界線のカルデアと思ってください。
主人公は藤丸立香(♀)になっています。
まるで雪原のような寂しさで、白紙化された大地が広がっていた。そこに取り残されたようにポツンと、ストーム・ボーダーは停泊していた。
人理定礎盤のランクがBになってから、しばらくが経っていた。南極を囲う壁は、未だ無くならない。カルデア一行は、リソースを集めつつ、新たな試練――ルーラークラスの歪みを解消する機会――が訪れるのを待っていた。
そのストーム・ボーダー内、レオナルド・ダ・ヴィンチの強化ラボ。白いフリルでいっぱいのスカートを揺らして、メリュジーヌがそこに入ってきた。
「どうしたんだい、マスター」
人類最後のマスターの少女、藤丸立香が応える。
「メリュ子にプレゼントがあってね。そこに立って」
「おや、何かな?」
「よし、準備OKだ」
そう言って、ダ・ヴィンチが魔術を起動した。素材とQPがメリュジーヌの霊基へと注ぎ込まれていく。
「これは――霊衣だ!」
自らの霊基に書き加えられた情報を確認して、メリュジーヌは踊るような声を出した。
「それも三つも!」
バイザーと鎧を身に付けた、妖精騎士ランスロットとしての姿。
顔をヴェールで覆った私服の姿。
赤と黒をまとった竜の姿。
メリュジーヌがくるくると回る度に、その姿が変わっていく。
「ありがとう、マスター。とても素敵だよ」
「時間とリソースに余裕ができたから、ダヴィンチちゃんに作ってもらったんだ」
立香の言葉に、ダ・ヴィンチがサムズアップを返す。
最終的にメリュジーヌは、ヴェールを付けた霊衣に落ち着いた。
「しばらくこれを着ていよう。ふふふ」
ヴェールの奥に笑顔があるのが分かった。
「これは、ブリテンで見た僕の姿を、霊衣にしたのかい?」
立香は頷く。
「うん。……妖精國では、メリュ子に本当に助けられた」
カルデアにメリュジーヌが召喚されたのは、第六異聞帯を訪れるより前のことだった。
そのため、妖精國ブリテンのメリュジーヌとは別に、カルデアのメリュジーヌも立香によって簡易召喚され、第六異聞帯での戦闘に力を貸していた。
「ケルヌンノスとの戦いでも、活躍してくれたしね」
「戦果を上げるのは当然さ。何しろ、私はこのカルデアでも最強のサーヴァント。最高クラスの霊基に加え、聖杯というリソースまで貰っているのだから」
「……そうだね。メリュ子は最強だ」
立香は遠くを見つめる。今は無い國を探すかのように。第六異聞帯の最後は、彼女の脳裏に焼き付いていた。
それは、オベロンを斃した後のことだった。奈落の虫の中から、ストーム・ボーダーは脱出できなくなっていた。立香たちは出口の無い世界に閉じ込められようとしていた。
無限に落ち続ける暗い空洞。
――しかし、境界の竜の咆哮が聞こえた。アルビオンの光線は、奈落の虫に出口を開けた。
光が差し込んだ。
その光のことを、どこまでも飛び去っていく竜の残骸の姿を、立香ははっきりと覚えていた。
「マスター?」
メリュジーヌの声で、立香は我に返る。
「あ、ごめん。どうしたの?」
「――ブリテンの僕のことを考えていたのかい?」
「……うん。私は、最強の妖精騎士に、この命を救われた」
メリュジーヌの腕が、立香へと伸びる。その手は立香の頭を両側から掴んだ。
「……え?」
立香の視線が、メリュジーヌへと強制的に固定される。
霊衣が切り替えられ、ヴェールが取り払われた。
「マスター。ブリテンのメリュジーヌも確かに僕だ。けれど、ここにいる僕……私は、英霊としてキミに召喚された存在だ。だから、ここにいる私を見て欲しい。というか見なさい」
「……そうだね、ごめん。あなたは私と共に旅をしてきた、ただ一人のメリュジーヌだ」
立香はメリュジーヌを抱き寄せる。
少女の姿となった境界の竜。彼女の小さな
竜の身体は、伝わった体温で温かかった。
メリュジーヌは満足気に目を細めた。
「その通りだ。私はメリュジーヌ。キミの妖精騎士だ。これからも、私から目を逸らすことは許さないよ」
立香は、愛しいサーヴァントの頭を撫でた。
「うん。これからもよろしく、メリュジーヌ――」
――私の最強の妖精騎士。