イベントの最中、会場の空には怪しい雲が発生して……。
※「ひろがるスカイ!プリキュア」と「仮面ライダーセイバー」のクリスマスコラボなお話しです。
※出てくるのは、ましろんと小説家の二人だけです。人数少ないけど短編だからね、仕方ないね。
「大変、おくれちゃうよ~! おばあちゃん、いってきます!!」
おばあちゃんの「いってらっしゃい」の返事も聞かずに家を飛び出た私は、虹ヶ丘ましろ。
このあいだまで、四人のおともだちと一緒に、「ひろがるスカイ プリキュア」をやっていました。
プリキュアってなにって? みんなを守る、ヒーローの名前だよ。
なにを隠そう、私もプリキュアの一人として、悪い人たちからこの街──ソラシド市と、別の世界にある「スカイランド」って王国を守ってたんだ!
もう戦いは終わって、プリキュアの活動も終わっちゃったんだけどね。
おともだちも、それぞれの夢に向かって今は離れ離れ。私も、将来の夢の「絵本作家」を目指してがんばってるんだ。
今日は、そんな私の夢にとっても、大切な一日。
それは……ここソラシド市に、あのチョー有名な小説家の「
飛羽真先生は、自分の体験をもとにして書いた「ロストメモリー」っていうおはなしが一番有名で、私も読んだんだけど、本当に「ビックリだなぁもう!」ってくらいに面白かったの。
この本は「ファンタジー小説界に革命をもたらした」っていう風に、評論家の人たちにもすっごく褒められてる一冊なんだ。
そんな一流作家の飛羽真先生に、私も同じ作家を目指すために、なにかアドバイスをもらいたいなと思って、今日のイベントに参加することにしたんだ。
「もちろん新刊も買って、サインも欲しいんだけどね」
そうこうしているうちに、会場に到着~。
よかったぁ、急いできたおかげで、ちょうどサイン会が始まったところだ。
さっそく新作の小説を買って、私も列にならんだよ。
それにしても、すっごい行列だな~……さすが飛羽真先生だよぉ。
あっ、いよいよ私の番だ! 目の前には憧れの大先生が……!
「今日は来てくれてありがとう!」
「は、はいっ。こちらこそ、ありがとうございます!」
緊張しておかしなこと言ってる?
すっかりあがってる私のことを、先生はやわらかい笑みを浮かべて、「大丈夫だよ」って言ってくれた。
そうしたら、すぐに緊張が解けちゃった。
それにしても、飛羽真先生……こうして間近で見ると、すっごいカッコいい!
クリスマスのイルミネーションのキラキラした光の効果も重なって、なんだか物語の主人公みたいだぁ。
「君の名前は?」
「に、虹ヶ丘ましろです」
「『ましろちゃんへ』……っと。はい、どうぞ」
私が買った新刊に、先生がサインをしてくれて、私宛てへのメッセージまで書いてくれて……今日は本当に、きてよかったよ~!
「あっ、そうだ。飛羽真先生!」
「うん? なんだい?」
うれしすぎて、一番大切なことを聞きそびれるところだった。
「私も、先生みたいな作家に……絵本作家になりたいんです!」
「絵本か、それは素敵な夢だね」
「今まで、自分でも何冊か絵本をつくったりもしていて……それで、どうしたら飛羽真先生みたいな、有名な作家さんになれるんでしょうか」
「そうだね……」
先生は、私みたいなこどもを相手にしても、とても真剣な顔で答えを考えてくれている。
「俺もまだまだ勉強中の身だから、偉そうなことは言えない。でも、作家になるために一番大切なことは……」
「ことは……?」
「どんな時でも、あきらめずに物語を
どんな時でも、それは楽しい時だけじゃなく、悲しい時や心がつらい時でも……。
「俺は小説を書くことで、それを読んでくれる誰かを幸せにしたいと思ってる。そのためには、物語を生む自分自身が苦しむことになるかもしれない」
「人のよろこびのために、自分を犠牲に……」
「けど、決して自分だけが犠牲になるわけじゃない。君が描いた物語を読んで、喜んでくれた人の笑顔が、また君自身を幸せにする。作家と読者は、そうしてつながりあっているんだ」
たしかに私も、おともだちのエルちゃんが私の絵本を見て笑ってくれて、その笑顔で私もうれしくなった覚えがある。
「だから、そんな幸せの
「そして夢のため……私、がんばって本を書きつづけます!」
飛羽真先生は満足げにうなずいて、私にはげましの言葉をかけてくれました。
「がんばれ、ましろちゃん。君の物語の結末を決めるのは、君だけだ!」
ありがとうございました。
そう言って私は、会場をあとにしようと先生に背を向けると、不意に辺りが真っ暗に。
なんだろう? イルミネーションの光も、街灯の明かりも消えて……でも今はまだ夕方で、夜になるには時間も早いし……。
「これは……ただ太陽が沈んだわけじゃない。この暗闇は……なにか
うしろで飛羽真先生が叫んだ。
同時に、会場の空に真っ黒な雲が、わたあめみたいにモクモクーって集まってきたよ。
周りの人たちも、あれはなんだろうって感じで不思議そう。
飛羽真先生の顔には、なんだか強い緊張が走ってる。
「あれ、ミラージュペンが光ってる?」
私のカバンから下げている、プリキュアに変身するためのアイテム──「ミラージュペン」が、
ピーン!って感じで、直感が走ったんだけど……もしかして、あの雲みたいなモヤモヤって
「うわあー!?」
「きゃあー!?」
まわりの人たちから悲鳴が上がる。
雲からカミナリみたいなビカビカが、会場に向けて降ってきたぁ!?
「大変だ……みんな、急いで逃げるんだ!!」
飛羽真先生が、まわりに避難をうながした。
みんな、大慌てで逃げていく。
そのあいだにも、カミナリはどんどんと降ってきて……これってやっぱり
「あの雲……『アンダーグエナジー』なのかも……!」
私たちがプリキュアになって戦った最後の敵は、ここソラシド市にもやってきたの。
やっつけた時にアンダーグエナジーっていう闇の力は浄化されたんだけど、もしかしたらその時に消えずに残ったエネルギーが、今目の前にあるモヤモヤ雲なんじゃないかな?
「ましろちゃん、君も早く逃げろ!」
「私は大丈夫、先生こそ逃げて!」
ひさしぶりに、ヒーローの出番だよ!
私はミラージュペンと、もう一つのアイテムのスカイトーンをとりだす。
となりでは飛羽真先生が、腰に大きなベルトをまいて、小さな本みたいなものを
「ひろがるチェンジ、プリズム!」
「変身っ!」
ステップを踏んで、私は光のプリキュア──「キュアプリズム」に姿を変えた。
私の横には飛羽真先生……じゃない!? なんか赤と黒のスーツに、頭に刀が生えてる仮面の人が立ってる!?
「ましろちゃん……その姿は、一体」
「え、その声……飛羽真先生なの?」
右肩に龍の頭の鎧をつけた仮面の人は、どうやら神山飛羽真先生みたい……えぇ、どういうこと?
「君は……」
「先生は……」
「君も、仮面ライダーだったのか!?」
「先生も、プリキュアだったの!?」
え?と私たちの声が重なった。
『かめんらいだー』ってなんだろう? 飛羽真先生はプリキュアじゃないの?
「俺は、『仮面ライダーセイバー』。聖剣の剣士だ」
「わ、私はキュアプリズムです。ひろがるスカイ プリキュアをやってました」
仮面ライダーっていうのは、本を悪用する「メギド」っていう怪人からみんなを守って戦っていた戦士の名前なんだって!
そんな人たちがいたんだぁ……全然知らなかったよ~。
「つまり、ライダーもプリキュアと同じ正義の味方──『ヒーロー』なんですね!」
「そういうこと、みたいだね。それにしても、プリキュアか……まさか俺たち仮面ライダー以外にも、平和を守る戦士がいたなんて驚きだよ」
って、話しこんでるあいだにも、アンダーグエナジーの雲からカミナリがどんどん落ちてくる!
飛羽真先生──仮面ライダーセイバーが腰のベルトから剣を抜いて、それを振るって逃げる人たちにカミナリが当たらないように防いでくれてるよ。
「私はこのスキに……『ヒーローガール プリズムショット』!!」
手のひらから光の玉──プリズムボールを撃ちだして、雲を攻撃したんだけど……
「当たらない!? っていうか、当たっても通り抜けちゃうよ~!」
「あの敵には実体がないんだ。見た目どおり、煙みたいに散るだけだ! ……あの黒い雲は一体なんなんだ?」
「私たちが戦っていた、なんていうか……悪い力のエネルギー?みたいなものです」
「強いの?」
「ソラシド市をおおい尽くすくらいにおっきい相手で、あれは最後に相手をした人の力の残りだと思います」
セイバーは私のそれだけの話で、目の前の敵の力も理解しちゃったみたい。
さすが小説家さんだあ。
そしたら持ってた赤い剣をしまって、どこからか、全体が青い色をした新しい剣をとりだしたよ。
「どうやら厄介な相手そうだ。なら、これで一気に決める!」
『
剣がしゃべった!
あれは
セイバーが剣を操作して、なんだか壮大な音楽が流れ始めた。すっごいことが起こりそう。
「……ぁっ、なに!?」
「! 雲が……セイバーの剣をとりこんじゃった!?」
これって、アンダーグエナジーがショベルカーや自動販売機にとりついて、怪物──ランボーグになった時と同じだ!
っていうことは、もしかして
私とセイバーが見ている前で、黒いモヤが形を変えていく。
隣にいる赤いセイバーとそっくりな、でも色はちょっと違って、
「闇のエネルギーが……
「これって、ランボーグがセイバーの偽物になっちゃったの……!?」
黒いセイバーが、青い剣──
たったひと振りなのにビックリするような力が込められていて、それだけで私たち二人は吹き飛ばされちゃったよ!
「ぐぁっ!」
「きゃあっ!?」
建物の壁にぶつけられて、苦しみの声がもれた。
偽物だけど、これが仮面ライダーの力なの? すっごい強くて、斬られた体が痛くて動けないよ……。
横ではセイバーが、赤い方の剣を支えにして、ヨロリと立ち上がった。
「なんてことだ……まさか
名前を付けてる場合かなぁ?
でも、それも飛羽真先生らしいかも。
聖剣を返せと叫びながらセイバーは、黒いセイバー ──ダークロストセイバーに斬りかかる。
私も手伝わなくちゃ!
体の痛みをこらえながら立って、プリズムショットの要領で光の力を集めていく。
でも、今度は攻撃のためじゃないよ。
「元に戻って、
この技──プリズムシャインは、光の力でアンダーグエナジーの闇に染まった心を、元の状態にかえすものなんだ。
でも……ダークロストセイバーは、プリズムボールの光に照らされても変わらずに、飛羽真先生の変身する仮面ライダーセイバーと戦いを続けている。
「えぇ~! プリズムシャインも効かないの!?」
「この敵……アンダーグエナジーの
飛羽真先生の推測を聞いて、私は焦る。
こんなこと初めてで、どうしていいのかわかんないよぉ!?
『
ダークロストセイバーが剣を操作して、不気味な音声が響いた。
私にはバリアみたいな身を守る技がなくて、それはセイバーも同じだったみたいで、まとめて闇のエナジーに飲み込まれてしまった。
大きな爆発が起きて、私たちはそれに巻き込まれ、台風の
そして、衝撃が通り過ぎたあとには……お互いに変身が解けて、地面に倒れ込む私と飛羽真先生、それを見下ろすダークロストセイバーがいた。
『…………』
ダークロストセイバーは無言でたたずんでいる。
まるで落ちた枯れ葉に対するように、なんの感情も抱いてないみたいで、私にはそれがすごく怖く思えた。
同時に、その冷たい冷酷な姿や反応を感じた私は……なんだか、ムッときちゃった。
怒ってるっていうのとはちょっと違うんだけど、なんていうのかな……許せなくなったんだよね。
倒れた私たちの周り──イベント会場は、さっきのダークロストセイバーの攻撃でめちゃくちゃに壊されちゃってる。
サイン会に集まっていた人たちは、もうみんな逃げていったおかげで、お客さんへの被害は無かったんだけど。
でも、せっかくみんなが楽しみにしていたイベントは、もう台無しだよ!
今日はクリスマスだったし、飛羽真先生の小説を、自分やほかの誰かへのプレゼントに選んだ人だって、いたかもしれないのに。
そんな誰もが
「それに……せっかく平和になったこの街を、また暗闇の中には……戻させないよ!」
自分に言い聞かせるように、傷ついた体を無理やり立たせる私。
隣でも、同じ風にボロボロになった飛羽真先生が奮い立った。
「ましろちゃんの言う通りだ……みんなが幸せに暮らせることを祝う、この聖なる日を……俺たちの手で絶対に守り抜く!」
あれ? 立ち上がった飛羽真の服の内側から、ピカーッて光が漏れてるよ……?
先生が
「これは……未記入のブランクライドブックに、
「あっ。本が白から、赤と緑の色に塗り変わった!」
この本──ワンダーライドブックは、先生たち仮面ライダー ──聖剣の剣士が変身したり技を使う時なんかに、力を引き出すために利用するアイテムなんだって。
そのワンダーライドブックの、まだ中になにも
……この本は
『ハッピーブレイブドラゴン!』
本の表紙には、雪の降る夜を背に、サンタの帽子をかぶった一匹の赤いドラゴンが描かれている。
まるで、クリスマスにプレゼントを配って回るサンタさんとトナカイみたい。
あ。ダークロストセイバーも、ハッピーブレイブドラゴンのワンダーライドブックを見て驚いてるよ。
こんな風に新しいアイテムがつくられるなんて、飛羽真先生もだけど予想してなかったみたい。
「ありがとう、ましろちゃん。君の決してあきらめない強い想いが、俺に新しい力を授けてくれたんだ」
『かつて全てを幸せにするほどの、偉大なイベントに届く神獣がいた……』
先生はもう一度変身するために、腰のベルトに新しいライドブックをはめた。
私もまた、ミラージュペンが形を変えたマイク型のアイテム──スカイミラージュに、スカイトーンプリズムをセット。
「きらめきホップ! 爽やかステップ! 晴れ晴れジャンプ!」
アイドルのステージみたいな空間で、私はダンスを踊るようにステップを踏んで、キュアプリズムに姿を変える。
飛羽真先生もベルトにセットされている剣を引き抜いて、炎を浴びて仮面ライダーに変身するよ。
『烈火抜刀! ハッピー、一冊。幸せの本は、さらなる力を
新しくなったセイバーの体は、元の赤い右半身がもっと鮮やかになって、黒い左側も含めて全身がキラキラに輝いてる。
まるでクリスマスのイルミネーションみたいで綺麗だなぁ~。
って、見惚れてる場合じゃなかった。
変身した私たちを見て、ダークロストセイバーがすぐに戦いの準備に入ったよ。
また必殺技で私たちをやっつけようと、
あれが引き抜かれたら、さっきと同じように私たちがまたやられちゃう!
「もう同じことはさせないよ! 私の新しい技……『ヒーローガール プリズムフラッシュ』!!」
セイバーが炎の剣士なのを見てとっさに思いついたものだけど、プリズムボールをめいっぱい輝かせて、それを相手の顔目がけて投げつけたの。
太陽みたいなキョーレツな光を間近で浴びて、ダークロストセイバーは眼がくらんで動きを止めたよ。やったね。
「今だよ、セイバー!」
「ありがとうプリズム! 今度こそ、決める!!」
仮面ライダーセイバー ハッピーブレイブドラゴンが、聖剣をベルトにセット。
右脚に赤い炎をまとって、まるでクリスマスケーキのロウソクみたい。
『必殺読破! とある物語、一冊撃! ファイヤー!!』
「とぁーっ!!」
プリズムフラッシュの影響で反応がおくれるダークロストセイバーに向けて、セイバーは全身を炎でつつんで突撃。
燃える右脚を蹴り込んで、闇の黒いセイバーは大爆発!
残っていたアンダーグエナジーも聖なる炎に当てられて浄化されたのか、キラキラエナジーなのかな? 雪みたいな結晶になってあたりに降り注いだ。
そして、無事に元に戻った
それにしても……
「剣士なのに、最後のトドメはキックなんだ」
なんかちょっとモヤっとするけど、でも仮面ライダーってそういうものなのかな?
とりあえず私は、そう自分を納得させるのでした。
私、キュアプリズムと飛羽真先生が変身した仮面ライダーセイバーの活躍で、とつぜんの敵の襲撃もどうにかおさめられた。
会場はめちゃくちゃになったし、サイン会のイベントも途中で終わりになっちゃったけど……。
「心配しないで。俺も、まだ本を渡せてない人がいるのは気になってるんだ。だから、またこのソラシド市に来るよ。次の新作と一緒にね」
「その時は、私もまた来ます! 今度は私の描いた絵本も持ってくるので、よかったら感想を聞かせてくださいね」
「ああ、約束だ!」
お客さんと一緒に避難していたイベントのスタッフさんも戻ってきて、先生もあとは大人にまかせれば大丈夫と言ってくれたので、夜も遅くなったことだし私は家に帰ることに。
帰り道、早々に今日おきた事件を思い返して、またこんな風に残っていたアンダーグエナジーが復活したらって考えると、ちょっと心配になってきたよ~。
「でも……もしそうなったとしても、きっと大丈夫だよね」
だってこの街にはわたしたち「ひろがるスカイ プリキュア」がいるし、街の外には飛羽真先生たち「仮面ライダー」がいるんだもん。
どんな悪者だって、ヒーローがいれば……。
「そうだ。久しぶりに、スカイランドにいるソラちゃんに連絡しよう。ライダーと一緒に戦ったこと伝えたら、きっとソラちゃんもおどろくだろうな」
アンダーグの闇じゃない、聖なる夜のお空から、シンシンと真っ白な雪がおりてくる。
私は、私の話を聞いてよろこんでくれるだろうおともだちのことを思い浮かべて、フフッと小さく笑みをこぼすのでした。
ハッピーブレイブドラゴンワンダーライドブックはキャラデコクリスマス限定の商品です。
こいつを使いたくてこの話を作りました。