BLUE ARCHIVE THE UNSUNG STUDENTS WAR   作:神宮寺志狼

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#3 6日目 間隙の第一波──Narrow Margin

次の日、私はトリニティ総合学園へ向かおうとした。

 

過去形なのは、トリニティに繋がる路線が全て運休となり

自治区前でティーパーティー所属の生徒に足止めを食らっているからだ。

 

 

「ですから、何度も申し上げている通り、戦時中は何方であれトリニティ総合学園の自治区に入れるな、とのナギサ様方ティーパーティーからの指示です。

 

 

例え先生であっても。」

 

冷たく言い放たれる拒否、拒絶の言葉。

 

「"どうしてもダメなんだ"」

 

 

「はい、お帰りください。」

 

粘る私に、1部の生徒がしっかりとした意志を持って銃のグリップを握るのを感じた。

 

 

『先生、ここは.....』

 

「"そうだね、お仕事の邪魔をしてごめんね。"」

 

 

プラナに促され私はトリニティ総合学園地区を後にした。

 

 

 

 

シャーレのオフィスに戻った時、部屋の前で待っていたのはヒナだった。

 

 

 

「"ヒナ!?どうしてここに!!"」

 

私の顔を見るやいなやヒナは安心したのかホッと息をはいた。

 

「良かった....無事ね、先生。」

 

「"一体何が起きてるの?"」

 

 

ヒナの表情が仕事モードに切り替わる。

 

 

「中で話しましょう。」

 

 

 

 

私は部屋の中に入っていくつかの盗聴器を無力化する。

 

「別に気にしなくても....どうせネットで直ぐに流れるだろうし。」

 

 

「"ごめん、状況があまり掴めていなくて。

 

 

どうして戦争なんかに?"」

 

 

ヒナは椅子に座って話し始めた。

 

 

「.....実は私達風紀委員はおろか、万魔殿すら情報をあまり掴めていないの。」

 

 

「"え!?"」

 

 

「ここ最近、ゲヘナとトリニティの自治区の境界での問題が多発していた所までは確認した。

 

実際に事を収めに行ったし、多発と言ってもゲヘナでの事だから正直いつも通りだと高を括っていた所があったのは認めるけど。」

 

 

「"それを踏まえたとしても急だった、って事なんだね?"」

 

「ええ、規模だってそんなでもなかったし。」

 

 

 

表立っての発端や兆候は認められなかった。

 

「"それで現状は?"」

 

 

「.....良くも悪くもない膠着状態。

 

ゲヘナ側は主に万魔殿(パンデモニウムソサエティ)の生徒が。

 

 

トリニティはティーパーティーの生徒達が正面で、後ろには正義実現委員会が控えてるみたい。」

 

 

「"万魔殿(パンデモニウム...)、マコトは何か言ってるの?"」

 

 

ヒナが眉間に皺を寄せ考え始める。

 

「それが、よく分からないのよ。」

 

「"...どういう事?"」

 

ヒナが顔を上げる。

「マコトが風紀委員会に対して当たりが強いのはいつもの事なんだけど。

 

今回は叱責とか戦争になった責任転嫁とかも無くて。

 

イロハすら何も情報を教えてくれないの。

 

 

『風紀委員は連絡あるまで通常業務で活動しろ』の一点張りで。」

 

「"イロハが?"」

 

「そう。」

 

 

 

私は思いついた様に噂の話をした。

 

「"ゲヘナが、ベルカ戦争で活躍した『円卓の鬼神』を害したアリウススクワッドを匿った、っ噂が流れてるんだけど。"」

 

 

ヒナは心底不快だと言わんばかりの形相で腕を組みながら私に聞いてきた。

 

「....それ、どこ情報なの?」

 

私は自身が建てた掲示板が裏目に出てしまったことをヒナに白状した。

 

「"私は信じてないよ。

 

そもそも前提のサオリ達が『サイファー』を襲う動機が不明だし、憶測だけで噂が流れていってるみたい。"」

 

 

ヒナが難しい顔をする。

 

 

 

「......嫌な予感がする....先生、今からでもいいから風紀委員会に来ない?」

 

 

その申し出は、正直嬉しかった。

 

しかし────

 

「"それはダメだと思う。

今私がゲヘナ側に着くというのは連邦生徒会がゲヘナに味方しているのと同じ意味になってしまう。"」

 

戦力均衡、他校からのゲヘナとトリニティの見方が変わってしまう。

 

何より

 

 

「"先生にとって、みんな大事な生徒だからね。"」

 

 

だからこそ、どうしようもない現状が歯がゆくもある。

 

 

「そう....そうね。

 

ごめんなさい、先生の立場を考えればそうなるのは当然ね。

 

失言だったわ。」

 

 

「"そんな事は無いよ。

 

ヒナが私のことを心配してくれたのは充分伝わったから。"」

 

 

「うっ....//」

 

 

「"だからごめんね、私はヒナとは一緒に行けない。"」

 

 

「な、ならせめてアビドス──ホシノとか─」

 

「".....ダメなんだ。彼女達も何かに巻き込まれたみたいで、連絡が───"」

 

 

 

その時だった。

 

 

事務所の扉がノックされ、生徒が入ってくる。

 

その制服は万魔殿(パンデモニウムソサエティ)の物で───

 

 

 

「─────先生、付いてきてもらうぞ。」

 

生徒達が私とヒナに銃を向けた。

 

 

「マコト議長────これはどういうこと?」

 

 

万魔殿(パンデモニウムソサエティ)の生徒に囲まれた状態でも怯まず立ち上がり私の前に立ってくれるヒナ。

 

「......お前には関係ない話だ───キヒヒッ.....」

 

ヒナが目線を動かし退路を確認しようとする。

 

しかし、囲まれているこの状況で、私を庇って離脱するのは不可能だ。

 

 

私は立ち上がる。

 

「"分かった。マコトに着いていくよ。"」

 

「先生、でも貴方さっき!──」

 

「"状況が分からない以上、ヒナは風紀委員会で何時でも動けるように準備してなきゃ。

私を庇ってヒナ自身や委員会事態の立場が悪くなったらどう転ぶか分からなくなっちゃう。"」

 

 

「でも......」

 

「"それにこれはチャンスかもしれない。

 

 

マコト、私は何をしたらいいの?"」

 

私の問いかけに彼女はいつもの黒い笑みを浮かべる。

 

「"クックック....何、簡単な話だ。

 

前線にいる万魔殿生徒達のサポートをしてくれればいい"」

 

 

「マコト!それは──」

 

「"いいんだ、ヒナ。

君の誘いを断った時と矛盾していて、申し訳ないけど...."」

 

「私の事はいいのだけど....」

 

「よし、交渉成立だな。ヒナ風紀委員長、お前は口出しするな。」

 

「......マコト、何をするつもりなの...?」

 

 

私がが隣に立つと出口の方にマコトが歩き始める。

 

「キキキッ!お前には関係ないと言ったはずだ。

さっさと自分の持ち場に戻れ。」

 

 

 

そうして私は立ち尽くすヒナを残し、シャーレのオフィスを後にした。

 

 

 

 

しかし

 

〈ガシャ!〉〈ガシャ!〉〈ガシャ!〉

 

万魔殿の部室に着くなり、私は銃を向ける彼女達に拘束された。

 

 

「"マコト、どういう事か説明してくれる?"」

 

 

「どうもこうもない、先生は私達に協力の姿勢を見せた。

 

その事実さえあればいいのだ!!」

 

マコトの返事を聞き、私はイロハを見る。

 

「.....すみません、先生。

 

こうするしか.......無かったんです。」

 

そして、捕縛されたまま旧校舎の一室に入れられる。

 

 

「あ!せんせいだー!!」

 

底には見たことの無い制服を着た生徒と、イブキがいた。

「"イブキ?どうして、"」

 

「えーっとね、しばらくマコト先輩達が忙しいからこの人達と遊んでるの!!」

 

私はその生徒達を見る。

前後のドアに2人──計、4人の銃を兵士のように構える生徒とイブキを持ち上げて高い高いしている生徒。

 

 

「"君達は─────"」

 

「先生、貴方は大人しく私と一緒に、そこにいる娘の遊び相手になっているんだな。

 

しばらく大人しくしていれば、危害は加えない。」

 

 

「"君達に適うような力もないし、大人しくしているよ。

 

だから、君達の話を聞かせて欲しいな。"」

 

 

 

彼女達は顔を見合せ頷いた。

 

 

 

「いいだろう、何が聞きたい?」

 

「".......まず確認したいんだけど───────"」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正義実現委員会はナギサ達、ティーパーティーからの指示によりゲヘナ生徒との戦闘に駆り出されていた。

 

 

ツルギは燃えていた。

 

 

「......『円卓の鬼神』.....

 

サイファー......

 

 

アイツを殺るのは自分だと思っていた....

 

それを....」

 

 

エデン条約を滅茶苦茶にし、仲間に危害を加え、先生を撃った女。

 

アリウススクワッド。

錠前サオリ。

 

 

シスターフッドの長であるサクラコが、サイファーを庇っているのは予想外だったが、直前に起きた自治区境界線付近で起きた騒動が予想より大規模だった為、ほぼ全ての正義実現委員会の生徒を導入した。

 

 

その隙をついて、アリウススクワッドがシスターフッドを襲撃したうえ、サクラコ、シスターフッド数名が意識不明の重体。

 

 

そして───────

 

 

 

「.......サイファー、ですか。

 

 

共に戦ったのは1度だけでしたが、彼女には最後まで借りを返せませんでした。

 

仇討ちです。

 

しかも、アリウススクワッドを匿っているのが、あの何考えてるか分からない万魔殿(パンデモニウムソサエティ)........」

 

 

「と、とりあえず落ち着いて下さい!」

 

「これが落ち着いてられますか?

 

実際、サクラコさんは未だに生死の境を彷徨っていると言うのに.....!!」

 

 

待機所にティーパーティーの連絡員が走ってくる。

 

 

「交代です!!後をお願いします!!」

 

 

「.....了解だ....」

 

 

ツルギはニヤニヤと笑いながら答えた。

 

「ヒッ....!!?」

 

伝達しに来た生徒は恐怖で顔を歪め、テントを去った。

 

 

「......ツルギ。」

 

「あぁ......行くぞ!!」

 

 

彼女達は駆け出して戦場へ出る。

 

 

 

「キィェェェェェェッ!!!!」

 

 

「いやぁ ....でも、情報を漏らさない為にとはいえ、トリニティの電波局停止、サーバーダウンまでやるんすねぇ~」

 

 

 

〈ダダダダダダッ!!!〉

 

イチカの言葉に後輩達が返す。

 

「多分ナギサ様も怒り浸透なんでしょう。

 

何せ、その情報が───」

 

 

「あのフェリお姉様からでしたから.......」

 

 

「まぁ、確かにそうっすね.....

それにしても、襲撃の日に戻ってくるなんて偶然にも程が────」

 

 

イチカの分隊にゲヘナ生徒が迫る。

 

「イチカ!!なにを喋っているのですか!!!」

 

 

その生徒たちの先頭は、ハスミの狙撃によって倒された。

 

「うっ!!!」

 

 

「あ、申し訳ないっす!!」

 

ハスミの怒号に、後輩達もイチカから離れ、銃を構えながら走った。

 

 

 

彼女達の初動は完璧だった。

 

 

 

2時間程戦い、正義実現委員会が前のめりになった時だ。

 

 

「てったーーい!!!てったー〜い!!」

 

万魔殿(パンデモニウムソサエティ)の生徒が退却していく。

 

 

 

「追います!!ツルギ!!追撃の指示を!!」

 

 

今にも走り出しそうなハスミをツルギが押しとどめる。

 

 

「待て、何か妙だ......」

 

 

ゴォォォ、という音が正義実現委員会の全員の耳に届く。

 

 

ツルギがふと空を見上げれば、頭上からは鉄の雨が降ってきた。

 

「.....!!!」

 

 

〈ズダズダズダズダズダズダズダァァァァァァン!!!!!!!〉

 

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!」

 

 

「痛い痛い痛い痛いっっっ!!!!!」

 

「.....ッ!!」

 

「くっ....!!!」

 

 

鉄状の針が突き刺さる。

 

それは地面だけなどという訳ではなく。

 

例外なく、生徒たちの体に傷を与えていく。

 

 

雨が止めば、その場にはボロボロになった生徒たちが倒れていた。

 

 

その場に立っている者は1人だけ。

 

 

 

「....ハスミ!」

 

 

自らも血を流しながらもツルギは傍に横たわるハスミに駆け寄る。

 

「....ツルギ、す....みません。」

 

 

「....もういい、喋るな。」

 

そう言うとツルギは端末で自分の部下を呼び出す。

 

 

「重傷者多数、これ以上の戦闘は不可と判断し撤退する。

 

待機していた者も全員、負傷者の救助に来い....。」

 

 

 

こうして、この日の戦闘もどっちつかずで終了した。

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