並行時空のフロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに初日突貫す〜   作:栗実成

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クリスマスが終わったので初投稿です。
遅筆ですがよろしくお願いします。


序章 開拓者よ、道なき未知を進め
第一話 終焉を告げる光の中で


 

・・・・・・それは、いつ振りの青空だろうか。

 

世界を闇で覆った元凶、邪神グラトーニエが斃れ、奴が取り込んでいた数多の同胞達が解放される。その光景はさながら光輝く天への道のようであり、精霊を取り戻した世界は徐々に生命の歓喜に包まれていく。

 

『ああ・・・遂に・・・遂に邪神を倒したわ・・・!!』

『世界に色が・・・・・・・・・貴方のお陰よサンラク、本当にありがとう・・・・・・・・・!!』

 

彼女、フェアリアの目線の先には、グラトーニエを屠った英雄にして、彼女と共に長い旅を乗り越えてきた勇者、「サンラク」がいた。

 

 

 

 

「あぁ、この時を本当に待ち望んだよ。フェアリア」

 

腹の底から湧き上がってくるこの思いは何と形容すればいいのだろうか。だがしかし、まだそれを吐き出すわけにはいかない。俺・・・・・・勇者サンラクは真剣な眼差しで彼女を見つめ、一目散に駆け寄る。

 

『・・・・・・思えば長く、大変な旅だった。だけど・・・・・・』

 

遂にそれも終わる時が来た。様々な思い出が胸に去来し、俺は彼女以上の笑顔を浮かべ、万感の思いを込めて振りかぶる。

 

「ついでにお前も爆ぜやがれこのアバズレがぁぁぁぁぁ!!!」

 

断罪突き上げ(パニッシュメントアッパー)」・・・・・・無駄に凝った設定のせいでラスボスに今までの武器全てが通用しないという最高にクソな要素を克服するために習得した格闘スキルが彼女の下顎に命中し、このゲームにおけるヒロイン(クソビッチ)「フェアリア」が呆気なく吹き飛び、地面に叩きつけられる。

 

『ずっと願っていた・・・・・・貴方とこうして青空の下で共に笑い合えることを・・・・・・』

 

しかしながら一度始まってしまったイベントシーン故に会話が止むことはなく、五体投地で旅の思い出を振り返る様はホラーとしか言いようがない。そもそも壮大なフィールドとBGMの中、覆面と海パンだけの変質者こと俺に対して感動的な言葉を投げかけること自体がちゃんちゃらおかしい話だ。

 

「なんでラスボスへの唯一の対抗手段が素手の癖して与えられるダメージが普段の三分の一なんだよ!あまりにもダメージが低過ぎて時々0ダメとかになるじゃねーか!ゲームバランスどうなってんだよマジで!!それになんでネタ装備が一番ラスボスに有効なんだよお陰で変態ファッションでラスボス倒す羽目になったんだけど!?というかフェアカスてめーどこに居たんだよなんの援護もしないくせに声だけ響かせやがって!怨霊か!!くたばれ悪霊退散!!!」

 

『みんなとの旅は大変だったけど、楽しかった・・・・・・!!』

 

「そのみんなを殺したのも全部元凶お前だったけどなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

精一杯の殺意を込めてヒロインをひたすら殴り続ける。

もしこれがゲームだとして、ここまでキレておきながらエンディングまでやり続けるのは奇妙だと感じる人もいるかもしれない。

しかし安心して欲しい、俺はこの瞬間のためにこのゲームから逃げなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

『フェアリア・クロニクル・オンライン〜妖精姫の祈り〜』はVRRPG黎明期に発売された自称大作RPGのオンラインリメイク版であり、オフライン版での問題点を悉く仕様と言い張って放置したのに加え、リメイクの目玉でもあるはずのオンライン要素もバグの宝庫という、クソにクソを掛け合わせたまごうことなきクソゲーである。

「瀕死の仲間を放置して壊れた馬車を回復しようと敵陣特攻するヒーラー」「武器が壊れるとプレイヤーの武器を奪おうとする傭兵」「街に入る寸前のモンスターよりも昼寝を優先する門番」などといった無能を通り越して害悪と言えるほどの味方NPC。

サブヒロインの死因九割が「ヒロインが問題を起こす→プレイヤーがピンチになる→サブヒロインが犠牲となってプレイヤーを救う→なんだかんだで全部邪神のせいになる」という流れのため「外道」「責任転嫁の鬼」「邪神ちゃん可哀想」「ガンジーが異世界転生して殴りに来るレベル」「シャラハールたんを返せ」「お前が代わりに死んでくれ」とまで酷評されたヒロイン及びストーリー。

そして何より、「一度入ったら出られない宿屋」「突如爆発する薬草」「ヒロインがパーティにいると一割の確率でデータが消えるボス(なおソロプレイだとヒロインが必ずパーティに加入する)」エトセトラエトセトラ・・・・・・な数々のバグ。これが全部オフライン版から更に悪化してるのだと言うのだから笑うしかない。

 

ラスボスを倒し、エンドロールに入るまでの三分間は無制限にヒロインを攻撃可能という事実だけがこのゲームを最後まで遊び続けさせる価値とまで言わしめるだけのパワーがそれにはあった。ちなみにこの時間は苦行を乗り越えた数々の先達からは「報酬の三分間」と呼ばれているのだが、この時間以外でヒロインを殴ろうとした場合、ヒロイン含め全NPCの好感度が最低になるため、皆から罵倒を受け続けながらストーリーを進行させるためにヒロインの好感度を上げなければならないというドMしか楽しめないような設計になっている。

悪意しか感じられないAI、最悪のシナリオ、予測不能過ぎるバグの三位一体によるゲーム界のバミューダトライアングルとまで言われた『フェアリア・クロニクル・オンライン』、通称『フェアクソ』のプレイを始めてはや一週間。人生の内約十八時間をゴミ箱に投げ捨ててようやくクリアした俺は、さながらジャングルの奥地で蝶が初めて羽ばたく様を間近で観察したときのような、はたまた伝説とまで言われた巨大カジキマグロを突き上げた時のような奇妙な爽快感を感じていた。

 

ただ一つだけ確信を持って言えることがある。

 

「こんなクソゲーもう二度とやらねぇ」

 

やけに壮大な曲と共に流れる犯行声明(スタッフロール)を流し見しながら、口ではそう言いつつも俺は確かな達成感に浸っていたのであった。

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