並行時空のフロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに初日突貫す〜   作:栗実成

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実質序章ラストです


第十四話 小夜より露る禍根の化身 其の五 〜晴天の夜空〜

 

再び轟音が走り、荒野が振動する。

まるで歩く重機のようだと思いながら予め目星を付けておいた岩場に避難。再び解体工事が始まるまでに器材を確認しておこう。資本は大事、まずは俺の身体からだな。

 

・ゴルドゥニーネの呪い(八番目)

それは死に追われし恐怖の残滓。

それは生を追われし嫉妬の残滓。

怨蛇がその命を託す時、根源たる思念は依代の身体を蝕み、放たれる気配は半端な存在に大いなる力の片鱗を示す。

呪いは、怨蛇を超える力にて解呪するか、怨蛇の根源たる恐怖を打倒する他に解く術なし。

『ゴルドゥニーネの呪いが付与された部位は装備品を装備することができません』

『ゴルドゥニーネの呪いを持つキャラは呪いを掛けたゴルドゥニーネの眷属になります』

『ゴルドゥニーネの呪いを持つキャラ以下のレベルの一部モンスターはキャラから逃亡します』

『ゴルドゥニーネの呪いを持つキャラは他の呪いに対して強い抵抗を得ます』

『ゴルドゥニーネの呪いを持つキャラはNPCとの会話で補正がかかります』

 

・ゴルドゥニーネの眷属(八番目)

それは恐怖と嫉妬を抱く怨蛇が己の命を託した者。

その身は主君たる怨蛇に捧げられ、主君の死を以って[閲覧不可]。

『ゴルドゥニーネの眷属は主君たるゴルドゥニーネのパーティに強制加入します』

『ゴルドゥニーネの眷属はNPCとの会話で補正がかかります』

『ゴルドゥニーネの眷属は主君たるゴルドゥニーネが死亡した際[閲覧不可]になります』

 

俺の胴体に刻み込まれたゴルドゥニーネの呪い、そしてそれに付随するのか職業の下に追加されたゴルドゥニーネの眷属という文言、そして何より説明欄の閲覧不可箇所から発せられる明らかにヤバいオーラ。とにかく、主君であるヘタレニーネが死なないよう見守る必要があるというわけだ。

 

「まぁ詳しくは、アレを倒してから問い質すとするか」

 

呪いのことはさておき、続いては持ち物チェックといこう。

今の手持ちはアイアンダガー四振りと薬草二十個、ポーション三個に解毒薬一個、それと干し肉二十個にツルハシ一本。後は地図や適当な素材などが幾つかあるが使えそうなものは見つからない。

 

「うがかごごごぐきがか、ごごぎごがかがごがぎががぎげげが」

 

「ふむももままままみまへふふままひ?」

 

視覚的には面を着けているって感じにくいのだが、食事の際には嘴の中に手を突っ込まないといけないので、嫌でも鳥面を被っている事実を突きつけられてしまう。

 

ヘタレニーネにも干し肉を与えてみたのだが、気に入ったのかぱくぱくと食べ続けてもう八個目だ。そろそろ九個目に手を伸ばしそうだったので工事を再開しよう。

にしても、中々着眼点が鋭いなこのヘタレは。やはり爬虫類であることが関係しているのだろうか・・・・・・

 

「ツルハシか、確かにあの鎧を破るのにうってつけかもな」

 

「ふふふもふんももふんも!」

 

いつまで食ってんだ全く・・・・・・

とはいえいくら高レベルでもヘタレである以上戦力外通告は免れない。ヘタレニーネは岩場のベンチにおかわりを添えて待機させておくことにする。

 

「まずは、牽制!」

 

近くにあった石ころを投擲。頑丈な鎧を着込んでいても振動は伝わるらしい、こちらに気づいた鯨土竜が再び突進して来る。

 

「ヘルメットを忘れずにな!」

 

一応防具として最低限のVITはあるので鳥面も立派なヘルメットだ。

マタドールよろしく華麗に避けた俺はアイアンダガーを鎧の間に捩じ込み、踏み台にして駆け上がる。

二重の衝撃で激しく暴れ回るが二本目の取っ手にしがみついて耐える。体力が半減したが予め口の中に入れておいた薬草を噛んで回復すれば隙も与えない。

ところ構わず走り回る重機をダガーを頼りに乗りこなし、辿り着いたのは奴の頭部。

 

「解体工事を開始するぜ!」

 

使い物にならない重機なぞスクラップにしてしまえばいい。

両足で首を抱えてツルハシを振り下ろす。うわ固ってえこれ本当に生物か?

 

「シギュォォオオオオオ!!!」

 

一応生物らしく脳へのショックに驚いた素振りを見せるが肝心の鎧には少し傷の入った程度だ。

これなら鎧の間を突いた方がいい気がするがあっちもあっちで肉体と言っても脂肪とかそんな感じの感触がしたので痛手にはならないだろう。

 

「スタミナの減りが早ぇえ!」

 

ぶんぶん首を振り回すせいかロデオをやっている気分だ、鯨だし土竜だし馬だしで属性過多に胃もたれしそうだ。

 

「ダイエットなら幾らでも付き合ってやる!」

 

とはいえスタミナの消費が激しいのは向こうも同じことだ。このまま限界まで耐えてやれ「シギュギョォォオオオ!!」ってそれはヤバい!!

 

「危ねぇええ!!」

 

流石はシャンフロAIといったところか、振り下ろしモーションの延長で上に乗る俺諸共岩に突撃するとは恐れ入ったぜ。衝突する直前で飛び降りたはいいが落下の衝撃で体力が三割を切る。クソ、薬草の消費が早くなってきてんな。

 

「だが、どうやらお前も限界みたいだな・・・・・・!」

 

懸命な工事が実を結んだのか、先程よりも明らかに疲労が見える鯨土竜と向かい合う。しかし二振りのアイアンダガーはさっきの激突で木っ端微塵に砕けており、同じことをするのも後一度が限度だろう。

それに鯨土竜も警戒しているのか、突進を行わずにじっと此方を見つめている。てかそうしてくれて助かった、実はスタミナ切れで動けなかったんだよね。今さっきSTMにポイントを割り振ったからもう突進してくれてもいいけど。

 

「さて、そのまま再演しても良いが、折角ならアレンジを加えて行こうぜ!」

 

俺が駆け出すのと同時に鯨土竜も動き出す。しかし今度は左右には避けない、スライディングで奴の下に潜り込んだ俺はアイアンダガーを無防備な腹に突き刺す、パンタジャッキは無いがこれで我慢してくれ。

 

「シギュォオオ!?」

 

本当に代わりになっちまったよ。目に見えて飛び上がる鯨土竜を見上げながら下を通り抜け、高圧プレスでスタンしたその巨体をケツから駆け上がる。

 

「これで決めてやる!」

 

工事再開、今度はスタミナ切れにならない様にギリギリを突く。よっしゃヒビが入った!

 

「シギュゥゥウウギョォォオオオ!!」

 

「クソッ、暴れ回んじゃねぇ!」

 

スタミナの回復が間に合わない、振るか耐えるか二択の前で迷いが生まれる。

あとちょっと、あとちょっとなんだよ!

鎧が叩き割れるギリギリ、後一度の振りで全てが決まるその瞬間・・・・・・

 

「ぶべっ」

 

ヘタレニーネが沼に足を滑らせて転び、

 

「ギョギョッ!?」

 

鯨土竜が一瞬だけ意識を取られ、

 

「貰ったぁ!!」

 

その隙を見逃さなかった俺が渾身の振り下ろしで鎧を叩き割る。

脆弱な部分が露わになるが、スタミナは尽きて最早手にはダガーを握る力すら入らない。だが手が駄目な時、頭を使うのが人の知恵というものだ。

辛うじて残った力でインベントリを操作、自由落下で取り出されたダガーを足で蹴って上に飛ばす。片方は落ちたが二択で迷わなくて良い分楽なものだ。

 

「これで、トドメだぁっ!!」

 

宙に浮くダガー。切先が脳天を指し示すタイミングを見計らい、グリップにヘッドドロップを叩き込む。

その刃は何も反射しない。完全に脳にめり込んだダガーが鯨土竜の思考を完全に破壊し、制御を失った巨軀が崩れ落ちる。

 

 

 

 

 

「はぁぁぁ、疲れた」

 

ポリゴンと化して消え去っていく足場の上で息を吐く。正直ソロで倒す様なモンスターでは無いと途中で薄々感じ取ってはいたが、ちゃんと一人で倒せる仕様になっていて助かった。

 

「いや、一人じゃなかったな」

 

鯨土竜の遺した大量のドロップアイテムを物色しながら今回の戦功者其の二へと歩み寄る。てかコイツ「鉄喰い」って言うのか・・・・・・やっぱあの鎧鉄じゃねぇか!!

 

「さて、最後の惹きつけ、ナイスだったぜヘタレニーネ」

 

「それ、わたしのこといってるの?」

 

おっといけねぇ、つい本音が。

 

「・・・・・・んぷ」

 

「なんて?」

 

「うぃんぷ・・・・・・ここにくるまえ、かたいにんげんにつけられたなまえ」

 

嗚呼なんて事だ、俺とその名付け親は生きる場所は違えども、志を同じくする心の友だったようだ。まさかこのヘタレニーネに「WIMP(意気地なし)」なんて素敵な名前を付けるなんてな。

 

「凄く良い名前だと思うぞ、ウィンプ。これから宜しくな」

 

「こちらこそ、たよりにしてるわよ」

 

そう言い合って俺達は熱いグータッチを交わす。

色々と言いたい事はあるが、今はこれで充分だ。

命を共にする相棒。

神ゲーの幕開けに丁度良いじゃないか。

 

空を覆っていた雲はいつの間にか消えており、月明かりが海の果てを照らしていた。




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鉄喰い(アイアンイート)
四駆八駆の沼荒野に生息するレアモンスターであり、このエリアのボスである「泥掘り」の親戚。
泥掘りと同じく種族レベルのキメラであり、通常の餌の他に鉄を摂取することができる。
摂取した鉄は体内に貯め込むことができ、自らの外殻や鉄イオンとして生体内での情報伝達等に使用している。
貯め込んだ鉄が一定量以上になると地上に放出して貯蔵する特性があり、沼荒野内に点在する沼柱はそれによって生成されたもの。
因みにただの土や泥は取り込んですぐに排出することができるが、沼棺の化石や古びた遺機装なんかは体内に残り続けるので、そういった物も沼柱に含めて排出している。
こんな沼荒野で鉄の鎧なんか必要ないじゃないかと思う人もいるかも知れないが、元々泥掘りよりも地下に潜る習性があり、それにあたって素の肉体が余りにも貧弱だったので鉄の鎧を纏うようになったといつ歴史がある。
──────────────

正直名前を「鉄纏い」にしても良かった感はある
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