並行時空のフロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに初日突貫す〜 作:栗実成
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サンラクが荒野にて採掘に勤しんでいた最中、跳梁跋扈の森にて駆ける影が二つあった。
「ちょっとレイちゃん速過ぎるって!僕あんまりAGIに振ってないんだけど!?」
「こうしている合間にも、サンラク君が・・・・・・」
経験者と廃人の卵。サービス開始して以来最速で貪食の大蛇を打倒してみせた二人は止まる事を知らない。
その後、探し人が荒野の辺境で死闘を繰り広げていることを知らないまま彼女達は次のエリアボスと対峙するのだが、それはまた別の話。
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セカンディルの宿屋。
先程までの激闘の興奮も冷め切らぬまま、彼女はチェックアウトを済ませる。
「・・・・・・おのれリュカオーン、これじゃあ楽郎君に痴女扱いされちゃうじゃない」
彼女の頭上を染め続けていた赤い髑髏は既に消え去り、手元に残ったのは幾らかの借金と腰に刻み込まれた黒狼の残滓。
「とはいえあのリアリティ、シャンフロも案外悪くないわね。まぁ鯖癌には劣るけど」
自らをドゥーランスと名乗るそのプレイヤーはスリルを求める。
逆境であればある程興奮する異常者の彼女は、とある
「あの時はPNを弄ってなかったからなぁ、楽郎君も誰かわかってなかったみたいだし。
てか正体明かす前に襲って来るとかアイツ何なの!ああ思い返したら改めて腹が立ってきた、おのれリュカオーン!!」
逢瀬を邪魔されたことに改めて腹を立てつつ、短パンの彼女は遺された呪いを隠すために防具屋に駆け込むのだった。
借金のせいでまともに装備も買えず、変質者として連行されたのは言うまでもない。
◇◇◇
始まりの街、ファステイア。
この街を拠点とするプレイヤーのほぼ全員が二極化される中、唯一の例外と言ってもいい女性プレイヤーがいた。
「はーい新規プレイヤーの皆さーん!熟練プレイヤーのお姉さんがセカンディルまで連れて行ってあげるぞー!
はいそこの君ー!何か言いたげな顔をしてるなー?」
「質問、本当に俺達は何もしなくていいのか?」
「良い質問だねブレードライン君!他のパーティとかだと寄せ集めの人材で突撃かますのが普通なんだけどね、
今回はなんと!このオイカッツォ君が全部一人で倒してくれるから安心安全!君達はただ着いていくだけでセカンディルまで行けちゃいます!!
勿論、ほんのちょっぴりお気持ちを貰うけど・・・・・・ね?」
ファステイアの出入り口である門の前、彼女は街頭演説のように周囲へと呼びかける。それはまるで人民を率いる女神の様であり、一度でも興味を持ってしまえば最後、人々を魅了する本業を持つ彼女に争う術など存在しない。
「はいペンシルゴン質問、俺今仕事が忙しいって散々言ったよね?なんで脅されてまでこんなことに参加しないといけないの?」
「良い度胸だねカッツォ君、そんなにサンラク君に「
「これで駄目だったら全部お前のせいにするからな・・・・・・」
自身の実力不足を他人のせいにしないでほしい・・・・・・と根本的な原因を無視して彼女はすっかり道を占領した群衆を眺める。
ここに集まった者達は殆どがセカンディルに行くだけの実力を持ち合わせていない者達であり、彼ら一人一人は彼女の求める力に程遠い一匹のイナゴである。
しかし、もしそれが街を埋め尽くす程であれば?もし彼らが一斉に街に雪崩れ込んだのであれば?
「シャングリラ・フロンティア。果たして、どれくらい楽しませてくれるかな・・・・・・!」
自らの売名と街への攻撃を兼ね合わせた一石二鳥の策。
やってて楽しいから。ゲームにおける道標であり免罪符であるスローガンを掲げ、彼女は叫ぶ。
「さぁ皆!セカンディルへ向けていざ出発!!」
「「「「うぉぉぉぉおおおお!!!!」」」」
先導者、アーサー・ペンシルゴンはこれから起こるであろう
◇◇◇◇
「『お前のせいかよはよ喰われろ』って・・・・・・私どっちかって言うと被害者側なんですけどー!!」
ゲーム内に実装されているメール同期サービスより現実からの返信を受け取った少女は、謂れのない罪を着せられたであろうことに憤怒する。
沼荒野での採掘中、突如上空より現れた「夜襲のリュカオーン」相手に彼女達は結果として三十分以上も持ち堪えることができた訳だが・・・・・・
「突然の即死、辛うじて範囲外にいたプレイヤーも何が起こったかわからないと証言。恐らく時間制限によるものだとは思うけど・・・・・・」
リスポーンから戻って来る最中だった一部のプレイヤーを除き、彼女達は一瞬にして全滅していたのであった。
「とは言え、ユニークモンスターと戦闘しただけでスキルポイントが貰えるとはね。思ったより早く次の段階に進めそうだ」
ステータス画面に映るのは、此度の戦闘で追加されたスキルポイントと素のステータスだけで三桁を越えたVIT。
「リュカオーン相手にはワンパンされちゃったけど、流石にあの性能がわんさかいる訳ではないはずだしビルドはこのままの方針で良い・・・・・・よね?」
いざという時は自前のスキルで回避すれば問題なしと付け加え、彼女は再びメール画面を開く。
「学校のせいで最前線から落ちちゃう訳だしなぁ・・・・・・折角だし締めちゃおうかな」
送った先はサンラクではなく、彼と時に舟を同じくし、転覆させることに至上の悦びを感じる外道の一人。
「さぁて、明日の放課後が楽しみだねぇ。お 兄 ち ゃ ん」
サンラク・・・・・・陽務楽郎と共に生まれ、しかし対極の世界に生きる者。
神ゲーハンター、ハルナクこと陽務涼羽は悪魔のような笑みを見せ、現実へと帰還するのであった。
バカの三号、遂に登場。
新年からは新章に突入します。
ちょっとリアルの都合上更新頻度は落ちますが、長い目で見守っていただけると幸いです。
それでは皆様、良いお年を!!!