並行時空のフロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに初日突貫す〜   作:栗実成

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これが私の答えです


第二話 世界の幕開けに人々は集う

 

クソゲーをクリアしてから暫くの間はどことない全能感に包まれるものだ。

今の俺にとっては「何事にも精一杯取り組んで下さい」の一言で終わる言葉を何十倍にも希釈し過ぎて最早ただの水とまで言える校長先生の言葉も笑顔で聞き流すことだって容易いことだ。

事あるごとに自身とプレイヤー以外の陰口を漏らすフェアリアのドブ水に比べればなんと清らかな言葉だろうか。

 

「・・・・・・という訳で、いつまでも春休み気分でいたら問答無用で三者面談だからな、覚悟しとけよ。はい解散!!」

 

その言葉に、ミイラの集団の方がまだ活力があると言えるほどまでに無気力オーラが漂っていたクラスに俄かに活気が取り戻される。

 

リアルが充実しきった者たちが我先にと新たな友人を作り始めると同時に、そうでない人種も密かに盟友を探し始める。

 

流石にクソゲーに脳が侵食された俺であっても、新学年初日に即帰するような愚は犯さない。

 

自己紹介の際に見かけた元クラスメイトの所へ駆け寄りつつも、俺は半分の脳で次なるクソゲーを考えていた。

 

(・・・・・・・・・まぁ今日寄るつもりだったし見てから決めるか)

 

フェアクソという大盛りクソゲーを平らげた今の俺は、並のクソゲーでは束になっても満足できない、そんな確信があった俺は、フェアクソの攻略で暫く寄っていなかったゲームショップに向かうことを決意し、まだ見ぬクソゲーに思いを巡らすのだった。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

俺をじっと見つめる視線に気づく事なく。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・ようやくサービス開始ね、毎日お疲れ様」

 

そう呟く女性、岩巻 真奈は個人経営のゲームショップ「SHOP ロックロール」の女主人であり、自らもまた、乙女ゲーを主食とする偏食主義のゲーマーである。

 

レジの後ろに貼り付けたポスターには数時間後にサービスが開始される新作VRMMORPGのタイトルがこれ見よがしに誇示されている。

 

そのタイトルの名は『シャングリラ・フロンティア』

 

そのサービス開始が丸一年延期したことによる苦悩を、とある理由から間近で見続けてきた彼女にとって、下部に記された「本日サービス開始」の文言には込み上げるものがある。

 

「シャンフロ・・・・・・また新しいクソゲーっすか?」

 

「おや楽郎君、いらっしゃい」

 

振り向けば、この店の常連客であり、クソゲーを主食とする偏食主義者である彼、陽務 楽郎が先程貼ったポスターを興味津々といった表情で見ていた。彼が購入するゲームの大半が在庫余りのため、いつしか雑談を交わす程度には顔の知った仲になったのだ。

 

「残念だけど、公式曰く、文句無しの神ゲーだそうよ」

 

「サービス開始前にそれって、やっぱクソゲーじゃないっすか」

 

彼曰く、発売前から大作やら神ゲーやら謳うゲームの九割はクソゲーということらしいが、生憎、これは余った一割の方であると自信をもって言える。

 

「・・・・・・物は試しってね。ところで楽郎君、フェアクソはクリアしたの?」

 

「当然!やってやりましたよ!」

 

そう言って彼はフェアクソに対する恨みを語っていくのだが、改めて聞いてもその悲惨さにゲームであることすら疑ってしまう。

 

「それをクリアしちゃう楽郎君も大概だと思うけどね。まあ楽しそうで何より」

 

「いやーでもフェアクソが極まり過ぎてて次のクソゲーが見つからないんですよ・・・・・・そういやアイツもシャンフロがどうとか言ってたっけなぁ・・・・・・折角だし、そのシャンフロとやらに賭けてみるか」

 

そう言って棚からシャンフロを取り出した彼はその強気な値段に多少躊躇するも、意を決したのか私の元に差し出す。

 

「はい毎度ー、ゲームの前には栄養補給とトイレを忘れずにねー」

 

「二時間毎の休憩も忘れずに、ですよ」

 

互いに重度のゲーム廃人であるが故に、VRゲームにおける注意点を互いに言い合って退店する彼を見送りつつ、それを見つめるもう一人のお客さんに声を掛ける。

 

「・・・・・・だそうよ、玲ちゃん」

 

「・・・・・・」

 

玲と呼ばれた少女は、彼が完全に見えなくなるまで見送ってから、躊躇うことなくシャンフロのパッケージを真奈に差し出す。

 

「・・・・・・いやぁ、恋する乙女は強いねぇ」

 

少女が退店したのを見送った彼女は、かつての自分の姿を思い浮かべつつ呟く。

 

それを聞く者は、ここにはもういない。

 

・・・

 

・・・・・・

 

・・・・・・・・・

 

「いらっしゃーい、遅かったわね涼羽ちゃん」

 

「楽郎君も玲ちゃんも、シャンフロをやるってさ」

 

「ふふ、神ゲーは涼羽ちゃんの担当だもんね。」

 

「そうそう、シャンフロなら玲ちゃんも一緒にプレイできると思ってね」

 

「涼羽ちゃんも久しぶりじゃないの?お兄さんと一緒にゲームをプレイするっていうのは」

 

「毎度ありー、涼羽ちゃんも身体には気をつけてねー。やり過ぎは禁物だぞー」




涼羽ちゃん、一体何者なんだ・・・・・・(作品タグ)(オリジナル要素で差をつけろ)(本格的に登場するのは結構後)
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