並行時空のフロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに初日突貫す〜   作:栗実成

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長かった・・・・・・


第二十話 地雷の脅威を思い知る

 

武器屋に寄った後道具屋でたんまりと回復アイテムをウィンプに持たせた俺は沼荒野の終点近くで食事を取っていた。正直ウィンプは今のままだと攻略の邪魔だと思っていたが、インベントリが増えたと考えればかなり役に立つ存在だ。

 

四駆八駆の沼荒野のエリアボス、「泥掘り」は昨日倒した鉄喰いの親戚であるらしく、鯨土竜ではなく鮫土竜とでも形容できるその巨体を前方に見据え、ライモンドからサードレマの地図と共に渡された蛙の串焼き弁当を平らげた俺達は戦闘準備を進める。

 

「結局あれからレベルは上がらずか・・・・・・」

 

ウィンプによって付けられたゴルドゥニーネの呪いには俺のレベルより低いレベルのモンスターが逃げるようになるという効果があり、スキルを駆使すれば何とか追いついて狩れるものの、一体倒すための手間が増えたことで経験値効率はすこぶる悪くなってしまっている。

 

「いっとくけど、わたしがやくにたつとはおもわないことね!」

 

どういう心境で言ってるんだお前は・・・・・・

まぁどちらにせよ、今回もウィンプの助けを借りるつもりはない。目指すは当然、初見単独撃破に決まっている。

脚装備を沼でも動きやすいものに履き替え、両手に握るのは鉄裂の爪刃。

 

「アイツと違って厄介な鎧もないらしいし、とっとと攻略してサードレマに行くぞ!ウィンプ!」

 

「おー」

 

奇襲を警戒してアクセルを起動、軽快なステップで沼に踏み入る。

 

「確かに鯨土竜の親戚みたいだな、例えるならそうだな・・・・・・鮫土竜か?」

 

沼を引き裂いて現れる巨体。

鉄喰いよりも一回り大きいであろう泥掘りが叫び声と共に突進してくる。

 

「行動パターンも似てるんだな!」

 

一切のブレがない突撃を横移動で回避、いくら今履いている沼弾きの靴が足を引き抜きやすくするとはいえ、両足が底についている状態でないと足を動かせなくなるという仕様は俺のような俊敏特化戦士にとって相性が悪く、奴の爪が脇腹に僅かながらの傷を与える。

 

「破壊属性はなし、突進中の方向転換もない・・・・・・攻撃後の隙に叩き込む!」

 

奴の横腹にスパイラルエッジを放ち破壊属性を持った爪刃が弱点を作る。

分厚い肉に阻まれて傷は浅いが、クリティカル判定を出すには充分だ。

クリティカルにより耐久性を増す湖沼の短剣に持ち替え、斬り刻んでダメージを稼いでいく。元々の値が高いってのもあるが、耐久ゲージが全く動かないおかげで安心して使うことができる。

かなり効いたのか泥掘りが再び地中へと潜り、俺の背後から噛みつこうと迫り来る。

 

「顎が外れないよう気をつけな!!」

 

フラッシュカウンター起動、襲いかかる泥掘りの歯を短剣で弾き、スキルの効果で補正の入った追撃を加えてがっつり開いた口を更にこじ開ける。

 

「餌やりの時間だ!」

 

インベントリから石ころを取り出して口の中に放り込む。あの鉄喰いも石そのものは食えないようなので、当然泥掘りも消化できないはずだ。

てかインベントリの中にゴミがかなり溜まってるな、ついでに全部投げ捨ててやる!

 

硬直が終わり、再び噛みつこうとしたのをスライドステップで回避。ちゃんと飲み込めたようで泥掘りが明らかに苦しそうな素振りを見せる。

その隙を見計らってエッジクライムを起動、念の為持ち替えた鉄裂の爪刃を登山のピッケルのように泥掘りへと突き立ててあの時のように頭上へと登り、リキャストが終了したアクセルを再起動して一気に畳み掛ける。

鉄喰いのような鎧がないこともあり、泥掘りが今まで以上の悲鳴をあげて沼へと沈み込む。

 

「さて、そろそろ倒せそうだが・・・・・・」

 

先程の一撃から泥掘りの衰弱を感じ取った俺は勝利を確信し、スキル一覧を確認する。

 

「スピンスラッシュを使ってみるか?正直使いやすい進化をするとは思えないが・・・・・・」

 

このゲームのスキルは経験を元に成長する。

それ即ち、使っていないスキルは成長しないということだ。

現にナックルスラッシュやスピンスラッシュは初期から習得していたにも関わらず一向に進化していない。

スパイラルエッジ以外に有用な攻撃スキルがない現状を変えるため、今まで使ってこなかったスキルを進化させようとしているわけだ。

 

「にしても、アイツどこに行った?」

 

ふと気になって周囲を見回してみると、そろそろ地上に浮かび上がってくるはずの泥掘りの姿が見えない。

経験値が入っていない以上まだ生きているはずだが・・・・・・何やら嫌な予感がする。

 

 

 

「さんらく、もうたおしたの?」

 

姿を消した泥掘りを撃破したものだと勘違いしたウィンプがこちらへ向かってくる。

沼に入るところで一瞬躊躇いを見せたが、覚悟を決めたのかずぶずぶと沼の中を突き進む。

 

「ひっ!いまのなに!」

 

刹那、俺達のいた沼地に振動が走る。

 

「ウィンプ!逃げろ!」

 

「えっにげれっ」

 

悪い予感が的中した。

すかさずウィンプに避難を促すが時既に遅く、次の瞬間には沼地が爆発し、ウィンプの身体が宙に浮いていた。

 

「ウィンプ!!」

 

ウィンプの真下では泥掘りが頭を空へ突き出しており、ゆっくりとその巨体をこちらへ向けて動かしており、直感的に今の出来事が泥掘りの特殊アクションによるものだと理解する。

再び突進をスライドステップで回避し、軽く斬りつけてからウィンプの下へ向かう。

高く飛ばされた身体はようやく落下を始め、じきに大地と衝突するだろう。

あの高さだと悪くて即死、良くても重症は免れないだろう。

 

このゲームにおけるNPCがリスポーンかどうかはわからないが、ここまでリアリティを追求している以上リスポーンしない可能性が高い。そうでなくてもウィンプの死によって発動する[閲覧不可]の効果がわからないため、今この瞬間では救助する以外の選択肢はない。でもどうすればいい!?落下している対象を助けるスキルなんて持ってないぞ!?横から攻撃を当てて落下の衝撃を掻き消すか?いやそうした場合追加ダメージで死のリスクが高まるだけだ!考えろ!服を使って即席のクッションを作るか?いや間に合わないし服なんて今着ているものしか・・・・・・そうじゃん隔て刃の服がある!うわ駄目だリュカオーンに殺された時に耐久値が限界になってやがる!おのれリュカオーン!!!

 

そうこう考えている内に現場に到着し、その瞬間ウィンプの身体が俺の両手にのしかかる。結局そのまま受け止めることにした俺は高所から加速した人一人分のGにやられ、腰を砕いて沼地へと倒れ伏す。

当然獲物が見せたそんな隙を泥掘りが許すはずもなく再度突撃を開始する。

 

現在俺はウィンプを抱えたまま膝を折って仰向けになっているせいで四肢が使えない。腕に関しては引き剥がそうと力を入れているががっしりと掴まれてるせいで動かせそうにない。

 

「ええいこうなったら一か八かだ!」

 

目の前に泥掘りの顎が迫りその身体が俺達を潰すその一瞬、ヘッドバットを発動して全力の頭突きを泥掘りの顎に喰らわせる。

 

決死の覚悟で放った一撃は衰弱し切った泥掘りの身体を吹き飛ばし、一回転して腹を天に突き出したその巨軀が次第にポリゴンとなって消えていく。

 

 

 

 

 

「えっ・・・・・・倒せた、のか?」

 

クソッ!身体が動かせないせいでどうなってるか確認できねぇ!ちょっとどいてくれウィンプ!

 

「なぁウィンプ、アイツ倒せたのか確認してくれないか?」

 

「・・・・・・しんでる」

 

「じゃあちょっとどいてくれないか?正直このままだと身動きがうぐぅ!!」

 

俺の腹の上で立つんじゃねぇ!そういうのは地面に足を置いてからするもんであってだな!

そう口に出して叫びそうになったところで俺の怒りを感じ取ったのか慌ててウィンプが俺から降りる。

 

「まぁいい、それじゃあ俺も起き上が・・・・・・」

 

そう言いかけて違和感に気づく。

 

 

 

・・・・・・下半身が言うことを聞かない。

 

「マジかぁ」

 

どうやら受け止めた衝撃で完全にやられたらしく、今の俺では歩くどころか立ち上がることすら叶わない。てかこれドロップアイテムは!?街までの移動は!?なんならここにいたら他のプレイヤーの邪魔にならないか!?

 

様々な懸念が交錯し、脳内で最適な行動を計算する。数多くの案が下半身不随という名の零に掻き消されていく中、最後に残ったのは・・・・・・

 

「なぁウィンプ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

「俺を引き摺ってくれないか?」

 

「えっ」

 

・・・

 

・・・・・・

 

・・・・・・・・・

 

「何してんのサンラク君・・・・・・」

 

「ん?その声は、我が友鉛筆戦士でないか?」

 

この明らかに外道が滲み出ているボイスは奴以外にありえないだろう。

 

「いやそうなんだけどそうじゃなくて!後今はアーサー・ペンシルゴンだから!」

 

「そうじゃないんだったらなんだ?虎にでもなったぐぶぇ!」

 

やめて!ただでさえ回復アイテムがゴリゴリ減っていってるっていうのに!

 

「てか鉛ぴ・・・・・・ペンシルゴンこそこんな所でどうした?てっきり街で良からぬことをしてると思ってたが」

 

「サンラク君、ここサードレマの目の前なんだけど?なんで幼女に引き摺られながら移動してんのさ」

 

マジか案外早かったな。言われてみればさっきから背中を削る地面の質が悪くなってたのも沼荒野を抜けたからだとしたら合点がいく。

 

「ちょっと!はなしてるひまがあるならてつだいなさい!」

 

「えっ、嫌なんだけどこんな変態の奇行に付き合うの」

 

「わたしだっていやよっ!」

 

ちょっとー?本人がいる前でそんなボロクソに言わなくてもいいんじゃないかなー?

 

「はぁ・・・・・・サンラク君、そうなってるのは訳があるんだろうけどさ、門潜る時どうするつもりなの?見えないだろうけど門番ドン引きしてるよ?」

 

「すまんペンシルゴン頼んだ」

 

「嘘でしょノータイムで丸投げしてきたんだけど!?」

 

だってそうするしか手がないじゃん・・・・・・

ちなみに今の俺は両足をウィンプに引っ張ってもらいながら両手で薬草を貪り食っている。こうでもしないと一瞬にして体力が尽きてしまうのだがそろそろ薬草が底をつきそうで結構やばい。

 

「・・・・・・まぁいいけど」

 

「あっいいんだ」

 

「その代わり!これは大きな貸しにしてもらうけどね!」

 

「やっぱキャンセグボッ!」

 

やめろポーションかけながら腹を蹴るな!言論統制反対!言論統制反対!




なんでプロットにない頭突きが二連続でラストアタックになっているんですかねぇ・・・・・・
そもそもプロット自体あってないようなものなんですけどねぇ!!

ちなみにこの世界では泥掘りがエリアボス最弱です(なおパーティメンバーの内一人は脱落するものとする)
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