並行時空のフロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに初日突貫す〜   作:栗実成

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ああ、投票数が増加していく……評価バーに色が………皆のお陰よ、本当にありがとう………!!

今回はキャラ崩壊強めです。番外編みたいなものだと思ってください。


第二十二話 世界の蛾セレクションの悪夢

 

日付は変わり、翌日(四月九日)の放課後。

 

「あー、つっかれた」

 

完全燃焼した俺の身体を冷蔵庫にあったエナドリで動かして自室へと向かう。

やたらと涼羽があの格好について問い詰めてくるせいで精神的な疲労が・・・・・・

 

「寝ようにも寝れねぇ」

 

正直エナドリを飲んだことを後悔するが、既に燃え盛っているカフェインの前にはゲーム以外の選択肢は炭になってしまう。

そう思いVRヘッドギアを起動しようとした時・・・・・・

 

「ん?誰だ?」

 

耳をすまさなくても聞こえるインターホンの音。

誰かを呼んだ覚えもないし何かを頼んだ覚えもないが・・・・・・

父は出張、母は博物館、妹A(涼羽)はシャンフロ、妹B(瑠美)はバイトに行ってしばらく帰ってこないだろう。

必然的に俺が見に行くしかないわけだ。

 

 

 

「なんだこれ・・・・・・」

 

宅配便によって届けられたのは宛先に陽務永華───母の名前が書かれた三つの巨大なダンボール。

母はその道の専門家に名の知られるレベルの虫マニアであり、この前は何も言わずに夕食にタランチュラを混入させて涼羽と瑠美を発狂させていた。近所のお婆ちゃんにもお裾分けしようとした時は一家総出で止めたものだ。

 

とまあそんな頭のおかしい趣味人が後三人もいる(俺以外の家族が全員イカれている)もんだから、必然的に我が家はそれぞれが趣味に没頭できるよう広く作られており、当然リビングもそれなりの広さを持っているはず・・・・・・なのだが、それでもなおこのダンボール達はリビングの一帯を占拠しており、これじゃあ移動もままならない。

そして極めつけは・・・・・・・・・・・・

 

「さっきから聞こえてくるこの羽音、明らかにこの中からするんだよな・・・・・・」

 

三つのダンボール全てからやかましい羽音が不協和音となって部屋中に響き渡る。

正直母の部屋に全て押し付けてやりたいが宅配のお兄さんが二人がかりになってようやく運べるような箱三つを健全な男子高校生一人で運べるはずもなく、結局は開封して小分けに移動させるしかないわけだ。こんなことなら母の部屋に直接持って行ってもらった方が良かったなと反省しつつ、戻って来る可能性のある母と涼羽を召集する・・・・・・いや駄目だ母さんが帰ってきたら余計状況が悪化する未来しか見えない!!帰って来るなりノータイムでダンボールを開けて飛び出す虫に見惚れて棒立ちとか平気でやるからな、お邪魔虫以外の何者でもない。

そしてさっきから涼羽にメールを連投しているのだが・・・・・・

 

「クッソ涼羽め断りやがって!この前のことを根に持ってんのか!?」

 

確かにあの時は「喰われて死ね」なんて送ってしまったが、ゲームと現実はまた別問題のはずだ。しかし現にこうなってしまった以上、この危険物は母さんが帰って来る前に俺一人で処理しなくてはならない。

いつ爆発してもいいようにリビングの窓を全て開け、小物や小道具などをしまっておく。

殺虫剤なども用意しておきたいが生憎家には置いてないし買ったら母さんがうるさいので諦める。

 

「あー嫌だ開けたくない、絶対碌なことにならない」

 

爆弾処理班ってこんな感じなのだろうなと考えながら昔テレビで見た映画を思い出す。あの頃はまだクソゲーにハマっておらず、家族皆で出かけることが多かったなぁ・・・・・・っといかんいかん、凄くナチュラルに走馬灯が流れるところだった。

 

「さて・・・・・・やるか」

 

遂に意を決した俺は玄関の扉を開け、カッターを握りダンボールを封印していたガムテープを切り裂く。

切れ目から僅かに差し込む光によって中にいた虫達は活性化し、一斉に外の世界へと溢れ出す。その様はまるでグラトーニエの内部から精霊が溢れ出した時のようで奴の顔がちらつくが次の瞬間には部屋中へと飛び散った虫の大群によって現実に戻される。ん?さっきから聞こえるこの足音は・・・・・・

 

「楽郎、どうしたのってうわぁぁぁああああ!!!!」

 

休憩か何かで降りてきた涼羽が虫で溢れかえったリビングを見て叫び、その声に釣られた虫達が一斉に動き始めて声量が増す。

慌てて虫を追い払おうとする涼羽だが、暖簾に腕押しコナチャタテムシとはよく言ったもので、一向に効果のない現状にただ労力を無駄に消費するだけである。

 

丁度いいタイミングで来たな(来んのが遅いんだよ)

ピザクロックでもやってたか(悪夢を見せてやろうか)?」

 

なんかちょっと面白くなってきたので日頃の存在しない恨みを込めんとばかりに残りのダンボールも開封する。ここまできたら虫が増えるだけで大して変わらないだろう。羽音が倍増し最早数メートル先の涼羽の顔すらモザイクがかかっている。

 

「何してんのらくろぉぉぉぉおおおおおお!!!!!!この外道!!!!!!!!悪魔!!!!!!!!!鉛筆戦士!!!!!!

!!!」

 

罵倒のレパートリーに鉛筆戦士(ペンシルゴン)が含まれていることはさておき、周囲を見渡す。

中南米にありそうな謎ダンスで虫を追い払おうとする涼羽、あたり一面虫景色となった我が家、そして家から飛び出す虫を見て何事かとやってきた数名のご近所。大丈夫死人じゃないです!涼羽の顔が死んでるけどコイツ普段からこうなんで!ん?待てよこの気配は!?

 

「ただいまー!何この楽園!?一体どうしたの?」

 

母が帰って来た(タイムアップ)、正直ここから更に悪化するとは思えないが、うちの母さんは想像の遥か先を越えていく。

 

「これはチャタテムシね、もー放すなら電気を消さないと」

 

全てを察した俺達が止めに行こうとするも間に合わず、母がリビングの電気を消したことにより外界へ飛び散ったはずのチャタテムシが集結する。

 

「母さん違うの!!これは楽郎が!!!」

 

「おいバカ!なんで俺のせいになるんだよ!」

 

「コラコラ喧嘩しない、二人もそろそろ帰って来るんだから」

 

そう言って窓を閉めながらウキウキでチャタテムシの鑑賞を始める母。てかこの状態で全員集合するのか・・・・・・週末以外に揃うのは何ヶ月ぶりだろう、なんかもう行けるところまで行ったせいで却って冷静になって来たわ。

 

「ちょっ楽郎!?適応早すぎない!?ってあっ瑠美!助けて家の中で虫爆弾を楽郎が!!!」

 

「えっなになにキモいキモいお兄ちゃんキモい!!!!」

 

おいざけんななんで俺が気持ち悪いことになってんだよ。

帰ってくるや否や恐る恐る逃走を図ろうとする瑠美だがあっさり母さんに捕まり、その手に持っていたゴーダチーズのホールを取り上げた母さんはテーブルの上でそれを開封する。この状況で母さんがやることなのだから碌なことにはならないだろう。てかなんで瑠美がチーズのホールを持ってるんだよ、え?バイトでのお裾分け!?嘘だろその職場、ピザでも焼いてんのか!?

 

「ただいまー!!見ろ!土佐土産の鰹節だ!!!」

 

裏口からは父さんが帰ってきて鰹節の塊を見せびらかす。この状況に動じてない辺り、流石は母さんと婚約しただけはある。そして目を輝かせて鰹節を見る母、まあそういうことなのだろう。

 

「きゃぁあ!私のチーズホールが!!」

 

「なんだなんだ!?」

 

大好物を目の当たりにして我慢できる知能を虫が持っているはずもなく、チーズと鰹節に飛び掛かるチャタテムシと母。涼羽も適応してきたのか自室から持ってきたビスケットの袋を開けるが当然それも餌食になる。おい落とすんじゃねぇ、話の流れ的に俺が掃除する可能性が高いんだぞ。てかさっきからサイレンが聞こえるんだがこっちに向かってきてないか!?うっわパトカーじゃんなんか事件だと思われてるって!

 

「じ、地獄絵図・・・・・・・・・・・・!!」

 

家の中に警察官と消防士と救急隊員と謎のおばちゃん・・・・・・あまりの情報量に半ば放心状態となった俺は、改めて我が家の異常性を強く感じることになったのであった。

 

 

 

 

ちなみに大量発生した虫達は今回届いた「世界の蛾セレクション」という標本セットの管理が杜撰だったために湧いたものだったようで、後日母の全力の抵抗も虚しく無事に返品されましたとさ、めでたしめでたし・・・・・・・・・・・・




流石に原作時空ではここまで酷くないとは思います、多分。

こういう原作の小ネタをどんどん回収していきたい。
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