並行時空のフロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに初日突貫す〜 作:栗実成
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動かないことを是とするこのモンスターにとって、その状態での戦闘は誉あるものであり、動き回るその身に深い傷を与えたものだけに与えられる敬意の表れである。
故に眼前より来る鳥頭の変態───先程より様子を見るだけで一向に戦闘に参加しなかったこの開拓者は不動に値しないものであり、本来ならば不意をついた突進で粉砕されるはずだった。
しかしその胴に刻み込まれた■■の残滓に強者としての覚悟を見出したファミネスバイソンは、不動を貫くことを決めたのであった。
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ファミネスバイソンの背後はファイヴァルへと繋がる橋であり、その手前が尻尾の攻撃範囲である以上、背後からの遠隔射撃は不可能だろう。
先ほどから魔術師達が左右で魔法を打ち続けてはいるがそこまで効いた様子を見せず、奴の視界に入ったものから順番に土弾に潰されていく。
「よそ見してんじゃねぇぞ!」
左右に気を取られている隙を突いて俺含め三人が接近、奴の頭部へとスパイラルエッジを叩き込みその硬い皮膚を裂く。
ダメージが入るのと同時にファミレスは振り向き噛みつこうとするがフラッシュカウンターで弾き返す。
「バーニングショット!」
「サンダースナイプ!」
そして俺達に気を取られた隙に魔術師達が攻撃を再開するが、皮膚が燃え全身が痺れようとその不動が崩れることはない。
「連射モードもあるってことか!結構器用なんだな!」
尻尾の回転により周囲の土が巻き上げられるのと同時、先程よりサイズの小さくなった土弾が三方向へと放たれる。
どうやら一食い一発ではなく、大量に土を貯めれば連続で撃てるらしく、土煙に紛れながらペースの増した弾幕を掻い潜るのはなかなか難しい。
「だが避けられないわけではない!」
アクセルを再起動、シーフスライドで弾幕の嵐を下から潜り避けファミレスに肉薄する。
丁度リロードのタイミングだったようで目線が合い、再び噛みつきのモーションに入るがスライドステップでこれを回避、攻撃を加えようとするが頭突きがくるので後ろに下がる。
噛みつきの際に土を食べたファミレスがすかさず土弾を撃つがここは気合いで避けて距離を取る。
「向こうも慣れてきたのか、中々攻撃できないな・・・・・・」
俺達相手には連射モードが良いと判断したのか、最初よりも遥かに密度の増した土弾を一度も当たらずに接近するだけでも大変だが、その後の噛みつきや頭突きを避けて攻撃を通すとなるとかなり難しくなる。
「一応俺達がヘイトを稼いでいる間は魔法を当てられるが、大したダメージを与えられない上に魔力という制限がある」
それに俺はまだ大丈夫だが他のメンバーは十回目の挑戦ということもあって集中力が切れかけている。このまま戦いが長引けば先にこちらの戦線が崩壊するだろうし、それ以前にウィンプが被弾するリスクが高まる。
とはいえ鉄裂の爪刃も耐久値が減ってきており、残った湖沼の短剣や致命の包丁では火力が下がって倒すのにかかる時間が増えてしまう。
ファミレスもファミレスで既に泥掘りを倒せるだけのダメージは受けており、そろそろ倒れてもおかしくないが、依然として苦しんだ様を見せていない。
「何か決定打にっ!なるっ!ものがっ!あればっ!なあっ!」
そう思案しながらヘイトを維持し続けるが思考が途切れ途切れになって中々纏まらない。
ファミレスが不動を貫く以上、背中に乗りさえすればどうとでもなりそうなのだが、先程ハリゴ、いやハリロクだったかな?をワンパンキルしたあの尻尾がある限りそれも難しい。
いっそのこと全員で尻尾を攻撃するか?結構な犠牲が出るが戻ってくるまで待っていれば「皆さん聞いてください!」・・・・・・ん?
「たった今入った情報なのですが・・・・・・
死火口湖の入り口にリュカオーンが出現しました!!復帰は難しいそうです!!!」
流石にこっちまでやってきてボス攻略の邪魔をするとは考えられないが、増援を潰されたのはかなりキツい。
生き残っているプレイヤー達の間にどことない負の感情が流れる。どうやらリュカオーンと戦うと追加のステータスポイントが貰えるらしく、前に一度戦った者でもそれが適応されるそうだ。
ただでさえジリ貧な状況だ、ここで勝てるかどうかわからない上いつでも再戦できる相手より、ユニークかつ確実な強化イベントに惹かれるのも訳がない。
故に、彼らは攻略を諦めようとし、
故に、一人・・・・・・また一人とデスルーラの準備を始め、
故に・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ここに勝機が生まれた。
「お前らぁっ!!奴はもう一歩も動かないつもりらしい!!!」
「尻尾を切り落とせ!!!!ガラ空きになった背中を俺が叩っ斬る!!!!!」
俺のその言葉に呼応して皆が一斉に動き出す。
彼らがファミレスに挑んだ理由はなんだったのか、答えは簡単。
『鐵遺跡に行った奴らにマウントを取りたい』からだ。
いやまぁ多少の語弊があるだろうが、その本来の目的と目先の欲望、それらを両立する至高の策。
「題して、『俺に任せて先に死ね』作戦!!」
流石は最前線のプレイヤー達だ、察しが早くて助かる。
ファミレスの尻尾に飛び掛かる大量のプレイヤー達。
荒れ狂う尻尾によって魔術師が裂かれ、振り向きの土弾によって遅れていた剣士が吹き飛ぶ。
だが見てみろ、死んでいった奴らの顔を。
最高にゲームを楽しんでいる顔をしてやがんじゃねぇか。
生き続けるメリットよりも特攻して死ぬメリットの方がデカいんだ、そりゃあんな顔にもなるさ。
彼らの決死の猛攻によって尻尾の付け根へとダメージが叩き込まれ、みるみるその動きが鈍っていく。
僧侶が真っ二つになり、修行僧の首が時計回りに高速回転し、そして最後に傭兵ジョブであろうプレイヤーが破壊の一撃と引き換えに吹き飛んだのを合図に、アクセルを起動し全速力でファミレスへと近づく。
「既に見切ってんだよ!」
迫り来る土弾を避け、尻尾の攻撃範囲に入る。
薙ぎ払いをシーフスライドで回避し、折り返しの一撃はスライドステップとフラッシュカウンターの合わせ技で凌ぐ。
そして反動で飛んだ先は目標地点。
「お前らの犠牲を無駄にはしねぇ!!」
短剣から持ち替えた鉄裂の爪刃を握り、渾身の力を込めて突き刺す。
「スパイラルエッジ!!!!」
閃光を纏った蒼の刃がファミネスバイソンの尻尾を完全に断ち切り、勢いを保持したそれが宙に舞う。
間髪入れずにエッジクライムを起動、背中に乗った俺は奴の首元へと刃を向ける。
・・・・・・ファミネスバイソンは動かない。
「なんていうか、お前はアイツらとは正反対だな」
片や目先の欲望のために命を捨てる者。
片や己の誇りのために命を差し出す者。
別にどちらかが間違っているというわけではない。ただ、皆それぞれ己の生き様を持っているってだけだ。
「じゃあなファミネスバイソン、お前の生き様、俺は嫌いじゃないぜ!!」
首筋に刃を突き刺し、一思いに振り抜く。
「
ポリゴンと化して崩れ去るファミネスバイソンから飛び降りる。
レベルは・・・・・・おっ二十四レベルにまで上がっている。スキルも結構進化したし、だいぶ戦いやすくなるだろう。爪刃も壊れる寸前だがなんとか耐えているし、ウィンプも無事で・・・・・・
「あっ!そうじゃんウィンプ!!アイツどこいった!!まさか死んでないよな!?」
いや落ち着け、もしウィンプが死んだのだとしたら俺がこうして無事でいるわけがない。でも被弾して虫の息なんてことも「あのーサンラクさん?」
「えっ、アセリル氏!?まだ死んでなかったんですか?」
「そこだけ聞くと、主人公の故郷の村を襲って村人全員を殺害した後、生き残った幼馴染に驚く魔王軍幹部のサイコパス幼女みたいですね」
なんだその無駄な長くてかつわかりづらい例えは・・・・・・にしてもサイコパス幼女か、若干違うが懐かしい響きだ、ってそんなことより!
「アセリル氏、もしかしてさっきの奴って聞いて「あー、いつもこんなノリで?」んぐふぅ!」
うわもうこれ全部聞かれてるやつじゃん恥ずかしい!なんであんな独り言ベラベラと喋ってたんだ俺!
「まぁお互い様ってことで、今はファイヴァルに急がないといけませんしね!素材は半分回収したので後はお好きにどうぞ!」
「途中から参加したのにすみません、ではありがたく貰っていきますね、あとウィンプも」
ウィンプはアセリルに抱えられたまま寝てしまっており、それを返してもらった俺は次の街、ファイヴァルへと向かうのであった。
だいぶサンラクのセリフがアレですが、原作開始よりも前ってことで許してください。
それと、ストックが切れたのでしばらく投稿頻度が落ちると思います。