並行時空のフロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに初日突貫す〜 作:栗実成
この話が世に出る頃には、私はきっと精神崩壊していることでしょう
地獄へ行ってきます(共通一次)
◆
ファイヴァルに到着してセーブポイントを更新した俺は、リュカオーンと戦うために死火口湖を逆走していたのだが・・・・・・
「間に合わなかったか・・・・・・!」
ウィンプを支部に預けていて先に進んでいたアセリルと差が開いていたのもあり、俺が辿り着いた頃には全てが終わった後だったようだ。
「・・・・・・なんかすみません!」
「いえいえ、俺が色々と手間取っただけなのでアセリル氏は気にすることないですよ。
ところで、なんでこの格好を?」
今俺はアセリルから頼まれて白布───例のメジェド様装備を着ているのだが、そこまで人目を気にする必要があるだろうか?
いや街中で半裸と共にいることがキツいってのはありそうだが、注目を浴びるという点では今の格好でもそこまで変わらないだろう。
「まぁそれは追々ってことで、さあさあ入ってください!」
アセリルに呼ばれてやって来たのは、サードレマの隅にある「蜜と子牛」と看板に書かれた小洒落たカフェだ。
現在サードレマにはリュカオーン戦後ということもあって大勢のプレイヤーに溢れているはずだが、カフェの中には俺達以外に店主らしき男性がいるだけだ。
「あー、皆さんが到着するまでもう少しかかるそうです。他のプレイヤーは来ないと思いますし、白布はもう外してもらって大丈夫ですよ!」
俺目線誰と待ち合わせているのか知らないし、なんなら誰かと待ち合わせていること自体初耳なのだが・・・・・・まぁいい、色々と疑問は残るが後にしっかりと回収されることを祈っておこう。
いつまでも白布でいるのもあれなので頭装備を付け替える。
突如現れる半裸の変態に一瞬店主が驚くも、流石はプロと言ったところだろうか、すぐさま平静を取り直してコップを磨き始める。それさっき磨いたやつですよ。
「店主さーん!このヴォーパルバニーの耳焼きとダストゴートのミルクをくださーい!」
耳焼きなんてものもあるのかと思ってメニューを見るとこの店の目玉だそうで、デカデカと一番上にそれが表示されている。
なんとなーくこの店に客が来ない理由を察したのだが、その分秘密の話し合いに向いているってことなのだろう。
アセリルのような興味本位で頼む開拓者もいるようだし、案外需要はあるのかもしれない。
「サンラクさんも何か頼みますか?誘ったのはこっちなんで奢りますよ?」
そう言われても、メニューにはなんと言うか奇抜なものばかりであり、味覚制限があるとはいえどれも初見の店で頼むには躊躇してしまう。
「じゃあ俺はダストゴートのミルクと・・・・・・蛙の姿焼きで」
悩んだ結果、訳あって食べ慣れている蛙をチョイス。ちゃんとした店であるため下処理はきちんとしていて欲しいが・・・・・・
「てかこの店、もしかしなくても太陽の・・・・・・」
「どうかしました?」
「あぁいや、なんでも」
危ない危ない、これでも太陽の麦関連はユニークシナリオ絡みであるため、あまり名を出すべきではないだろう。
さっきの俺の発言に一瞬だけ反応した店主の様子を見るに契約店であることは間違いないはず。
とはいえ証はウィンプに渡しているので割引を受けられるかは怪しいところだ。ワンチャン顔パスならぬ鳥面パスでどうにかならないかな・・・・・・
「初期装備でパス代わりは無理でしょ」
「俺以外に使ってる奴見たことないからいけるだろ」
どうやら一部の覆面装備はキャラメイク時にしか入手できないらしく、そのせいかは知らないが覆面を被っているプレイヤーは馬面の奴を一度見たきりであり、鳥面のプレイヤーは未だ見たことがない。てかあれ?今の声は・・・・・・
「お前かよ、ハルナク」
「なーんで若干残念そうにしてるんですかねー?私これでもシャンフロ内で有名なんだぞ?」
「
「|クソゲーのせいで認知フィルター濁ってるんでしょ《世間知らずがよく言うよ》、
「えっもしかして仲悪かったですか?すみません私の配慮が足らなくて!」
「「イヤイヤスッゴイナカヨシデスヨ」」
・・・
・・・・・・
満席となった六人用のテーブルの上に注文の品が置かれ、メニューを読み込んでいたアセリルが手際よくそれぞれの手元へと運ぶ。
「このエンパイアビーのお頭煮は誰のですか?」
「私が頼んだものだ」
「ボルテクスグースの羽ジュースって誰か頼みました?」
「それは私のだな」
「スパイクイールの足炒め「ハイそれ私の!」
「オレンジジュースは誰のやつですか?」
「アッそれは・・・・・・私のデス」
・・・・・・俺以外の全員が一人称を「私」にしていてややこしいので補足しておこう。
エンパイアビーのお頭煮を頼んだのは「キョージュ」という魔法少女アバターのプレイヤーであるが、そのなりに反して無茶苦茶渋いおっさんボイスという所謂ネカマプレイヤーである。
ネタに走るネカマプレイヤーというのは今まで沢山見て来たつもりだが、ここまで見た目と中身のギャップが極端なものはいなかっただろう。
ボルテクスグースの羽ジュースを頼んだのは「サイガ-100」という女性アバターのプレイヤーであり、こっちはれっきとした女性プレイヤーであるようだ。
シャンフロではアバターの見た目こそ自由だが、声は自身のものから変わらないため、よほどのことじゃない限り声と性別は一致する。
そしてスパイクイールの足炒めとオレンジジュースを頼んだのは、それぞれハルナクとサイガ-0であり、中身は当然涼羽と斎賀さんだ。
てかサイガ-0にサイガ-100ってもしや・・・・・・いや、人様のプライベートにはあまり踏み込むべきではないのでここまでにしておこう。
「さて、サンラク君、単刀直入に言おう。今回君を呼ばせてもらったのは、その胴体に刻まれた傷跡、呪いについての話を聞きたいからだ」
そう切り出すのはエンパイアビーの頭を飲み込んだキョージュ。
どうやら先程のリュカオーン戦でサイガ-100が呪いを与えられたようで、既に呪いを持っている俺が何かを知っているのではないかということで声を掛けたそうだ。
確かにサイガ-100の顔と胴体には呪いのような紋様が刻まれており、俺と同じように装備をつけられなくて困っているのだという。
・・・・・・非常に厄介なことになった。
俺はリュカオーンの呪いについて何も知らないし、知っているはずがない。
俺の持つ呪いはウィンプ───八番目のゴルドゥニーネによるものであり、その違いは模様にも現れている。
サイガ-100の呪いは爪による引っ掻き傷のような模様であり、ヒビ割れのような模様である俺の呪いとは全く別物であることは瞬時に見て取れる。そしてそれは向こうも同じだろう。
もし俺の呪いがリュカオーンの呪いだと嘘をつけば、サイガ-100のものと比べられて即座にバレることだろう。その路線での嘘は絶対にしてはいけない行動だ。
よって問題なのは俺の持っている情報をどれだけ開示するかであり、それによってこの後のシャンフロライフが左右されると言ってもいい。
現状における最悪のパターン───それは俺の持つゴルドゥニーネについての情報の流出であり、そうなった場合ウィンプが多くのプレイヤーに狙われる可能性が高まり、ゲームオーバーになるリスクが増加する。
神ゲーとはいえ全てのプレイヤーが善良なわけではないのだ、中には少なからず邪悪な者も存在する。
例えばペンシルゴンとか鉛筆戦士とか天音永遠とか「先に言っておくけど、私達はペンシルゴンの手先でもなんでもないし、サンラクの誠意によってはここでの内容をある程度秘匿したって構わないとキョージュから了承を得ているよ」
「だから心読むのやめろ、それに曖昧な表現も」
「誠意」、「ある程度」・・・・・・詐欺師とかヤのものが使いそうな表現でよく俺を説得できると思ったものだ。
「てかなんでキョージュ氏の名前が出てくるんだ?」
「あのさぁ・・・・・・ほんっとに何も知らないんだねお、サンラクは!!」
こんな所でお兄ちゃん呼びはやめろよ?幾らお前でもそういうマナー違反はしないってお兄ちゃん信じてるからな?
「・・・・・・シャンフロWIKI、シャンフロライブラリ、この二つのサイトに聞き覚えは?」
「それはある、WIKIに関してはちょっとだけ見た」
「それらを主導してるのがこの人、シャンフロ最大手の考察クラン『ライブラリ』のリーダーであるキョージュ!」
「私が主導してるのはクラン管理のサイトだけで、WIKIは積極的に参加しているというだけなのだがね」
「まぁそういうことで、少しでもサンラクが嘘喋ったらキョージュ名義で晒すから覚悟しといとね」
嘘ついた瞬間
ちょーっと爆風が頬を掠った気がしなくもないが。
「じゃあ早速、その呪いが何によってかけられたものなのか、洗いざらい話して貰おうか」
こうして、話し合いという名の尋問が始まったのであった・・・・・・
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