並行時空のフロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに初日突貫す〜 作:栗実成
まぁしばらくはあっても週一投稿だけどね!
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ことゲームに関して最も早く帰れる手段というのは、古来から自殺だと相場が決まっている。
太陽の麦ファイヴァル支店、その中にある仮眠室でリスポーンした俺はウィンプの元へと向かおうとするが・・・・・・
「むにゃむにゃ・・・・・・ぁ、ぃ・・・す、どこへ・・・・・・むにゃむにゃ・・・・・・・・・・・・」
ウィンプは俺の隣のベッドで寝てしまっており、とりわけ悪夢を見ているわけではなさそうなのでこのまま放置しておくことにする。
てか一体何の夢を見ているんだよ、アイスなんてもんシャンフロ内でまだ見たことがないのだが存在するのだろうか、そもそもNPCの夢って一体どういう処理がされているんだ?
キョージュ辺りに聞けば即答してくれそうなものだが、わざわざそのためにメールを送るのもあれだし、それで貸しなんて作られたらたまったもんじゃない。
「サンラクさんおかえりなさい、ウィンプちゃんは連れて行きますか?」
いつの間にか背後に立って俺に語りかけてくるのはこのファイヴァル支部の長であるイヌバだ。
「いや、できればこのまま寝かせておきたいのだが、本当にいいのか?」
「はい、サードレマとは違ってちゃんとした部屋は用意できませんでしたが、それでもよければ!」
「助かるよイヌバ、それじゃあ明日迎えに来るからそれまでよろしくな」
「かしこまりました!」
・・・
・・・・・・
「成程、次のエリアに進むためにはそれぞれの街で開拓者の有用性を示す必要があるわけだ」
「ハルナクさんが言うにはそうみたいですね!フォスフォシエでは街道の整備をしたらしいですが、ここでは何をするんですかね?」
「討伐系の依頼ならマシなんだが・・・・・・最悪なのは複数人での攻略が前提になるやつだな」
現状ファイヴァルにいるプレイヤーは俺とアセリルの二人だけであり、後続の大半が鐵遺跡に出張っている以上、ここでのクエストは俺達二人だけでクリアしなければならないだろう。
一応人手が足りなければハルナク達が駆けつけてくれるらしいが、リュカオーン戦で削れたリソースを更に減らすような真似は避けたい。
現在の時刻は午前一時、明日も学校なので今すぐにでも寝たいのだが、せめてクエストだけでも受けておこうと街中を駆ける二人。
てか俺はともかく、アセリルはこんな時間まで起きていて大丈夫なのだろうか、あまりリアルの事情を詮索するべきではないとわかってはいるが、声を聞く限りどうにも年下───それも中学生っぽいんだよなぁ。
あの頃は俺も昼夜問わずに血で血を洗うサバイバルゲームに勤しんでいたから何とも言えないのだが・・・・・・っと、それはそうと。
「あっ、あれじゃないですかサンラクさん!」
「どうやらそうらしいな」
ファイヴァルから次のエリアへと繋がる門の前、野営用のテントから交代で出入りする素行の悪そうなNPCが数名。
そして代表者らしき人物は俺達を見るや否や看板を掲げ、近づいてみると開拓者の進行に反対する旨が書かれていた。
死火口湖側で待たなかったのはせめてもの情けか、それともゲーム的な都合か、彼らは俺達のような他所ものが街を渡り歩くのが気に食わないらしく、サービス開始直後のファステイアを見ている俺からすれば、確かにその言い分には納得できるものばかりである。
「ふぁぁあ・・・・・・ってことで、お前ら開拓者達がこのエインヴルス王国にとって有益な存在か確かめさせてもらうぞ、勿論報酬も込みだ」
『クエスト「ファイヴァルの試練」を開始しますか?』
内容はよくある採集クエストであり、手榴弾を製作するために必要なアーマード・マインの素材を持ってくれば良いらしい。
何に使うのかは内緒のようで、見た目のチンピラ感からして絶対碌なことにならないだろうが依頼は依頼だ。
期限はできるだけ早い方がいいらしいので、アセリルと明日の午後に再集合する約束を取り付けてログアウトする。
◇
サンラクがログアウトするのと同時刻、彼の家の十数倍はあるであろう屋敷にて同じ仮想の世界から帰還する少女がいた。
「・・・・・・っ」
使用人達の目を盗んでのゲームであり、当然この時間に起きていることがバレたのであれば待っているのは説教である。
溢れ出さんとする声を必死に押さえ込み、その少女───斎賀玲が再び倒れ込む。
(・・・・・・っついに、楽郎君と友達になれましたぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!!!!!きゃぁぁぁあああああああ!!!!!!!!!)
寝たふりにしてはあまりにも大袈裟過ぎる寝返りをたてながら心の中で興奮を爆発させる彼女は、あくまでもゲーム内でのフレンド登録であるという現実から目を逸らしつつ、意中の彼との進展を密かに喜び、いつしか夢の世界へと落ちるのであった。
・・・・・・しかし彼女は知らない。
数時間後に待っている死の現実を。
【次回予告】
やめて!サイガ・フィルターの特殊能力で、ダンシング・バードマンの攻撃を受け止めちゃったら、現実世界で楽郎と踊っている玲ちゃんの精神まで燃え尽きちゃう!
お願い、死なないで斎賀玲!
あんたが今ここで倒れたら、真奈や涼羽との約束はどうなっちゃうの?
SAN値はまだ残ってる。ここを耐えれば、楽園が待ってるんだから!
次回「斎賀玲死す」フィロジオスタンバイ!