並行時空のフロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに初日突貫す〜   作:栗実成

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第八話 虎視眈々と過去が覗く

 

数々のゲームがリリースされているこの現代において、大半のモンスターには定石というものが存在する。例えば蛇型モンスターは、巻きつきに噛みつき、丸呑み、叩きつけ、脱皮に毒といったものが主な攻撃手段であり、頭が弱点である。これらを意識すれば、奇を衒って突然爆発するなんてことがない限り自ずと立ち回り方が見えてくるものだ。

 

さて、この目の前にいる貪食の大蛇は幸いにも例に漏れず、噛みつきや尻尾を使った叩きつけ、そして尻尾からの毒噴射という行動をメインにして襲ってくるのだが・・・・・・その毒が余りにも厄介な代物だ。

 

「ご・・、サ・・・・ク、・・もぅ、・・・・・になぃ」

 

「わかった!何とか死なないように待機しといてくれ!」

 

どうやらあの毒は継続ダメージに加え、プレイヤーの行動阻害と呼吸困難によるSTMの消費量大幅増加というとんでもない効果を秘めており、それを真っ向から浴びてしまった京極は残った片腕がだらりと垂れてしまっている。

あれでは剣を握るどころかインベントリの操作すら難しいだろう。

そして俺も、少し毒がかかっただけで十秒に一の継続ダメージを負っている。

 

・・・・・・正直なところ、俺はシャングリラ・フロンティアを舐めていた。

大衆が遊ぶような神ゲーだ、どうせヌルゲーなのだろう、と。

フェアクソをクリアして有頂天に昇ってしまっていたが、叩き戻してくれた貪食の大蛇には感謝すべきだな。

 

「だからお礼だ・・・・・・出し惜しみせずに速攻で倒してやるよ!」

 

現在のHPは二十七、いや二十六になった。既に薬草は京極の分も合わせて使い切ってしまっている。残り四分半を切ったタイムリミットの中で勝ち筋を探す。

 

このゲームのクリティカルは攻撃が理想的な当たり方をした場合、もしくは攻撃対象の急所に当たることで発生し、幸運はその際の判定を緩めてくれるらしい。

例えば急所の近くに剣を刺した場合、剣先がズレて急所に命中する、そんな感じだ。

 

とはいえ先程よりも動きにキレが増した貪食の大蛇の攻撃を掻い潜り、弱点である頭をもう一度狙いに行くというのは中々難しい。

 

しかしそれ以外の箇所は鱗に覆われており、弱点といえるところは見当たらない。だが、弱点がないなら作ればいい。

 

「スクーピアス!!」

 

鱗を削ぐようにスキルを発動、致命の包丁の先端が鱗同士の僅かな隙間に突き刺さり、鱗を丸ごと引き剥がす。

 

「訳あって魚の捌き方は慣れてるんでなぁ、お前も三枚おろしにしてやるぜ!」

 

尻尾からの毒霧を回避、攻撃の合間を狙って先程引き剥がした部位に連撃を加える。

軟弱な肉体を守る盾は無く、弱点と化した傷口から次々とクリティカルが発生、耐えきれずに大蛇が仰け反って弱点を引き離して正面から突っ込んでくる。

 

「余りの痛みに我を忘れてしまってるみてぇだな、すぐに楽にしてやるぜ!」

 

そもそも俺が態々鱗を引き剥がした理由は何なのか、命の危機に瀕して大蛇はそんなことも忘れ、本来の弱点で俺を攻撃しようとする。命の危機に頭を働かせるのは正しいことだが、使い方を間違えれば自滅して当然である。

スタミナが回復し、スクーピアスのリキャストも終わった、これで決める。

 

「くたばれっ!!」

 

スクーピアスが大蛇の眼に命中し、クリティカル判定によって強化された致命の一撃が確かな手応えと共に大蛇のHPを削り切る。

 

「しゃぁおらぁ・・・!!」

 

大蛇が大量のポリゴンと化して爆ぜる様を見届けた俺は、スタミナ切れによる疲労の余り地面にへたり込む・・・・・・いやそれよりもドロップアイテム!俺のHP!街までに間に合うか!?そうだ京極もいるじゃん!この際捨てて行こう!!

 

「・・・・・・今僕のこと捨てて行こうって思ったよね」

 

バレたからには仕方ない、可哀想だが放置して・・・・・・あれ?

 

「お前、傷はどうした?」

 

流石に俺が切り落とした右腕はそのままなものの、京極の姿は大蛇との戦闘が始まる前のそれと大差ない。なんなら先程まで声を出すことすら辛かった筈だが・・・・・・

 

「・・・・・・自分の体力を見て、気づくことはないの?それと周り」

 

そう言われて自分の体力を確認するが・・・・・・うわホントだ、戦闘前の状態まで回復している。そして周囲には大量の人・・・・・・

 

「えっ今からリンチにされるやつ?」

 

「一瞬僕もそう思ったけど、違うみたいだよ。回復してくれたのもあの人達だし」

 

幕末なら一度回復して恩を売った上で背後から奇襲、それどころか回復しようと近づいた時点で四方から襲われるものだが・・・・・・まさか。

 

「えっどうしたサンラク、泣いてる?」

 

「あったけぇ・・・・・・流石神ゲー、プレイヤー達まで神のようだ・・・・・・」

 

俺は相互扶助という、MMORPGにおける本来の楽しみ方の一端に触れ、感動の余り涙を流すのであった。

 

・・・

 

・・・・・・

 

「というわけで、貴方達に便乗してこの橋を渡りたいのだけれど、いいかしら?」

 

俺達を取り囲む集団のリーダーはそう俺達に取引を持ちかけてくる。内容としては回復してやったんだから道を通させてくれといった、見方によっては恩着せがましいものなのだが・・・・・・彼女達がいなければ俺達もセカンディルへ行けたかどうか怪しくなる。

 

「Animaliaとやら、俺は別に構わないが・・・・・・京ティメット、お前はどうだ?」

 

「僕も回復して貰った恩があるしいいんだけど・・・・・・先に僕達に橋を渡らせてくれないかな」

 

京極の言う通り、大蛇を倒したのは俺達二人。強いて言えば俺達を回復してくれた人も含めて数人だけで、Animalia含め大多数は先程の戦闘をただ見ていただけだ。もし戦闘に参加した人数分しか渡ることができないとなったら真っ先に渡るべきは俺達であり、京極の言い分は尤もなことだと言える。

 

「わかったわ、私達が橋を渡るのは貴方達が渡りきった後、それでいいわね」

 

「・・・ああ、助かるよ」

 

そう言って俺達はようやく橋を渡ろ「あーっ!思い出した!お前さっき俺を殺した奴だろ!!」

 

その叫び声と共に俺は走り出す。背後では京極が捕まって俺の助けを呼ぶ声が聞こえるが気にしない。

 

「うっわ地面から大蛇生えてきた!!」

 

そうして俺だけが橋を渡りきった瞬間、京極達の足元から大蛇が飛び出し、何人かのプレイヤーが吹き飛ばされて崖下に落ちていく・・・・・・あっ京極が死んだ。

 

「さらば京ティメット、これも天からの報いってことだ」

 

そう言い残して俺は阿鼻叫喚に溢れた森を後にし、遂に二番目の街、セカンディルに辿り着いたのであった。




ちなみに初期案ではベッドダイブ寸前でほうれん草ちゃんが萎びる予定でした
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