そして気に入らなかったから殺した
中年の女は全身傷や打撲痕だらけで
血まみれのボロ雑巾のように地べたに伏していた
短刀とセスタスを持った異国の者は女から服を剥ぎ触媒も取り上げたが、ある血で汚れた一枚の奇跡の書だけは頑なに離さなかった
「神の…奇跡…よ…」
眼、鼻、声帯も潰れ息も絶えそうな状態でまだ何か呻いていた。
「そんなにそれが大事か、でもどうせすぐに考えも出来ない肉塊になるんだ」
その異国の者は笑いながらボロ雑巾に言い放ち
鉱石で限界まで強化したラージクラブを振り下ろし
女の息の根を止めた。
異国の者は地図描きの男から借りた家の
書庫にいた。あの女が最後まで離さなかった奇跡の書が気になり解読しようと試みていた
しかし自分は信仰の理解が低く、その奇跡をどうやって使うのかもわからなかった。
しかし物語の内容は漠然と解読できた
奇跡の物語は神代のものから別の世界の物語、過去の逸話などがある。果たしてこれは何の物語なのだろう…
頭がよくないなりに解読したものを自分で読み返してみた。
''
…私は錆た鉄屑だ。変わってしまったことは自分が一番よく知っている。
・・・戦いには疲れた。
だが、それでも声を大にして叫んでやる。…
最初の黒い鳥が産まれるより少し前の時代
一部の者たちは様々な知能を産み出した
臆病者たちは知能を頼り自分たちだけは世界中の穢れや争いから遠ざかり俯瞰していた
しかし自分たちが作り出した争いは広がり続けた。彼らは自分自身の作り出した災厄に恐れた、穢れと戦禍は拡がり拡がる。
穢れをばら蒔く獣は暴れ
新たな人形達はひたすら行進し
巨人たちは大地を蹂躙し続ける
そして次々とそれ以上の天災を引き起こす神器は産み出される
弱者は畏怖し哭きわめく
…力が尽きた嘗て
全てが力と共にあった
屈辱を忘れるな
終わり無き力が全てを終わらせるだろう
砕け
何もかもを壊せ…
彼らは恐怖した
彼らは方舟を創り
彼方へ逃れることにした
知能の分身に星を任せて
当などどこにもない彼方への旅へ奔走した
…来たれ、福音よ
来たれ、来たれ、福音よ
来たれ、来たれ、福音よ来たれ
あぁ、恐ろしい
私はとても恐れている
全て分かり得た故に
私は今怖気づいているのか…
彼方へ奔走した者たち
様々な人工の知能と
数々の生き物だった者を加工した知能
そしてインターネサインⅡ
と呼ばれる母なる知能を核とした
機械の群隊
それらは永い年月をかけて彼方を飛来していた
あるとき彼らは自分たちとは違う未知の存在と出会う
未知の存在との対話に成功した彼らはその存在から大量の知識・叡知を学んだ。
そして、その叡知をまた永い年月をかけて自分たちが元居た星の姉妹の知能に送った。
…私の心は…
幾刻ののち
叡知はその星で最後の戦士たちの戦いが始まろうとしている数年前に届くこととなる。
そして元の星では争いは、疲弊や極限の破壊により沈静化しだした。その隙に能達と一部の者は自分たちを封じ込めようとしていた。各地に幾つかの塔を創りだし。そのなかに技術、情報などを封じ込め、史実は隠匿し外の情報なども可能な限り揉み消すことにした。
歴史の断絶と封印、それはあまりにも杜撰で横暴な補完計画であった。
…破壊する、全て秩序の為に 死ね…
インターネサインⅡはあくまで再興の為善かれと思いに元の星の姉妹へ叡知を授けたはずだった。
その結果を間近で観とどけることとなる戦士たちは何を思ったのだろうか。
…私は思考する者、自分だって破壊できる。
私はレイヴン殺すことしか出来ない未熟者だ。
心は乱れ、飛び出しそうだ。この想いを感じてくれ。
この戦場で何を思う? お前の答えを聞かせてくれ。…
''
結局よくわからなかった。
よく見る奇跡の物語としては滅茶苦茶だし、どうせ使えたとしても大したものでもないだろう。
頭も痛くなってきたし休憩でもしよう。
異国の者は興味が失せたようにその血にまみれた奇跡の書を部屋の隅に投げ捨てた。