出会ってしまったツインテイルズと仮面ライダーの少年。

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ツインテイルズと仮面ライダー

 俺たちがエルメリアンを目視で確認できる距離まで接近した時、今回のアルディメギルから送り込まれた敵である、男の娘属性(ガールズボーイ)であろうミミズのようなエレメリアンともう1体のカタツムリのエレメリアンはボロボロになっていて、既に何者かと交通規制のかかった交差点で交戦していた。

 上半身に重点を置いた重装甲、両肩部には大口径のバルカンの様な物が付いている。あいつは一体……?

 

「あ、あれは! 仮面ライダー! 仮面ライダーですわ!」

 

 ツインテールが喜びの舞を踊っており、ひどく興奮している様子のイエローは知っているみたいだ。エレメリアンではなさそうだけど、なんだ? 仮面ライダーって。

 トゥアールなら知ってるかな。

 

「なぁ、トゥアール。なんなんだ? 仮面ライダーって」

『あ、いえ、私も詳しくは…………確か、日曜日の朝に放送している特撮もの、だったかと』

 

 トゥアールにしては珍しく歯切れが悪そうにそう言う。

 あぁ特撮ヒーロー系か。だからイエローはあんなに興奮してるんだな。っていうかなんで特撮ヒーローが現実に?

 

「加勢とかしなくてもいいの? あれ」

 

 なんか勝っちゃいそうだけど、と口にするブルー。確かに普通に押してるしこのまま放っておいても勝ちそうだよな……。

 うーん、でもやっぱり。

 

「あの人に任せきりにするのも違うと思うし、加勢しに行こう!」

 

 そう言って戦闘が行われている場所まで行こうとするが、そこでイエローの姿がないことに気づいた。どこに行ったんだ。

 

「レッド! あれ! あそこ!」

 

 ブルーが大声で指し示す方向を見ると、イエローが仮面ライダー(?)とエレメリアンの少し離れたくらいの所まで移動して体育座りで見学している。その姿は噂に聞く日曜の朝に早起きしてニチアサタイムを真剣に見る子供のように真摯だった。

 なにやってんだアイツ……。

 

「イ、イエロー? あの仮面ライダーに加勢しようぜ」

 

 とりあえず呼び方は仮面ライダーで固定。

 イエローの近くまで行って声を掛けるもピクリとも反応しない。むしろ「今いいところだから!」みたいなオーラを感じる。

 大分近くまで接近したので気づいているのかな、と思ったがライダーもエレメリアンもまだ俺たちに気付いていないのか戦闘を続けている。

 

「ぐうっ……! ワームギルティ! ここは一旦退くぞ! まさかツインテイルズにこの様な伏兵がいるとは……!!」

「う、うん! わかったよスネイルギルティ君!」

 

 え? ツインテイルズ?

 言うと即座に反転し離脱しようとするワームギルティとスネイルギルティ。あ、逃がすものか!

 すぐさま彼らを追おうとした俺とブルーを、イエローが片手を上げて制止する。

 

「何をするんだイエロー! このままじゃ逃げられもがっ!」

「しっ」

 

 声を荒らげると、イエローは自分の唇に人差し指を当てる動作をしながら素早い動作で俺の口を塞ぐ。

 

「……逃がすか」

 

 そう言った重装甲の仮面ライダーはベルトのバックル部分に付いているクワガタの角を少し広げる、すると次々と空気の抜ける音と共に装甲が浮き上がってくる。

 次の瞬間――――。

 

「「キャストオフ(!)」」

 

 そう言うと共にクワガタの角を一気に広げる。イエローが思いっきり大声でセリフを被せていたが仮面ライダーの目には逃げようとしているワームギルティとスネイルギルティしか入っていないらしく、俺たちに気付いた様子はない。

 

『Cast Off』

 

 電子音声が鳴り響くと装甲が一気にパージされ全方向に飛ぶ。それを知っていたのか、イエローはあらかじめ俺とブルーを伏せさせていた。

 装甲がパージされた中から現れたのは両肩部にバルカンの代わりに剣を付けた蒼色の戦士だ、頭部の左右に倒れていた二本の角が側頭部まで起立して定位置だろう場所に収まると目が赤く光る。

 

『Change Stag Beetle』

 

 俺とブルーが呆然とその様子を見ていると、ふといつの間にか移動してこれまたいつの間にか全武装脱衣(キャストオフ)していたイエローが視界の端に入った。あいつさっきから人の動きしてないな、いつ脱いだんだよ。

 イエローにそんな感想を抱いていると、仮面ライダーはベルトに横にあるボタンを押して両肩の曲剣の柄に手をかけ――――。

 

「「クロックアップ(!)」」『Clock Up』

 

 消えた。またイエローが大声で声を重ねたが気にしないでおく。

 どこに行ったんだろうと首を回すとエレメリアン達の悲痛な叫び声が聞こえてきた。

 

「ぐおおぉ! う、動きが見えぬ、見事なり!」

 

「せ、せめて最後に! テイルブルーが本当に男の娘なのかどうか知りたかった……!!」

 

 ハッとそちらを見ると2つの爆発を背に仮面ライダーが空を見ながら歩いてきていた。思わず身構えてしまう。まだ敵じゃないなんて分からないから、一応はと思ったんだけどブルーも同じ気持ちみたいだ。ただしイエローは完全に無防備で仮面ライダーをキラキラ見ている。

 ……あれは理想のツインテールを見ている時の俺の目だな、うん。

 そんな感想を抱いていると、俺の頭にコツンと何かが当たる。なんだこれ。

 咄嗟に手に持って見る、恐らくスネイルギルティの殻だな。

 

「こんなところまで飛んできたのかぁ……わっ」

 

 まじまじと見ていると突然殻が弾け、粉の様になって俺の体に降り注いできた。

 ……消えたのか?

 体に害もなさそうなので放っておこう、と思って仮面ライダーの方を見るとまだ空を見ている。な、何をしてるんだろう。

 俺もブルーも頭の上に「?」と疑問符を浮かべていると、仮面ライダーは突然変身を解除した。バックルに付いていたクワガタは勝手に外れてその姿を消す。

 中から現れたのはどこにでもいそうな少年だった。強いて目を引いたところを挙げるなら、俺たちが通っている学園。陽月学園高等部の制服を着ていたところだろうか。

 ……ん? いや、見覚えがある。俺はこの人を知ってるぞ!? あれ、誰だっけ!?

 

「戦いとは虚しいものだ……」

 

 そう呟いた男は、静かな動作でこっちを向いて固まった。

 

「え、何? え? ツインテイルズ? テイルレッドちゃん?」

 

 思い出した――! ウチの常連客で、母さん言うところの『黄昏系で自覚なし系』中二病、鏡先輩(かがみせんぱい)――!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇     ◇     ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 やぁ、俺の名前は『鏡 誠也(かがみせいや)

 突然だが、俺は転生者だ。

 いや転生者って言っても別に何かあるわけでもなくて、14歳の誕生日に突然前世の記憶が、何というか……フラッシュバックしたんだよね。

 

 現在の俺は16歳、高校2年生。

 中学時代は、ただでさえ中二病気味だったというのに前世の記憶なんてものを思い出したが為に散々な思いをしたので黒歴史である。今は中二病は脱しているがな、なぜあんな醜い行動をしてしまったのであろうか今考えると……全く、もっとスタイリッシュにできなかったのかと思わず黄昏てしまうね。

 まぁ、それで恥ずかしいからって勉強して頭の良い所に行くのも格好悪いし、遠くの学校に行くとかの行動力があるわけでもないので普通に通っていた学園の中等部から高等部に進学した(私立の学園で中高とエスカレーター式なのだ)。友達も普通にいたし、なにより学園から我がバイクで7分程の場所にある喫茶店が素晴らしいから地元から離れたくなかった。

 

 店長の一人息子と幼馴染であろう女の子が繰り広げるラブコメ、女の子の想いに気付かない鈍感系少年と、少年が好きだと豪語して止まないツインテールを健気に維持している恋する乙女。胸はないが美少女であり、この二人のやりとりは見ててとても微笑ましいのだ。近頃気付いたのは、幼馴染ちゃんのお姉さんも恐らくツインテール大好き少年の事を憎からず思っているのではないか、という事。

 最近は銀髪巨乳の娘や、我が高等部の素敵ツインテール生徒会長が加わって少年の取り合いをしているのだが、かなり微笑ましい

 店の名前はなんだったか……そう、喫茶『アドレシェンツァ』、イタリア語であるが、直訳すると思春期である。マスターも粋な名前を付けるものだ……。

 まぁともかく、俺はこの喫茶店に通い続けるために地元に残ったといっても過言ではないのだ。

 

 話が逸れたが、俺がいきなり転生者云々言いだしたのには訳がある。

 前世の記憶が戻ったのは14歳の誕生日だがそれはまぁ置いといて、さる16歳の誕生日、俺はいつものように一人で過ごそうと学校帰りに自転車でアドレシェンツァに寄りコーヒーを飲んで家に帰ると、随分とバカでかい荷物が俺宛に届いていたのだ。動かそうにも重くて動かせず、ひとまず梱包を解いてみると中には蒼色の見たこともないバイクと白銀のベルトらしき物が入っていた(このバイクはかなりストライクなデザインだったので今でも愛用している)。

 ベルトも、まぁ、人生初の誰かからの贈り物だったから、今でも着けている。というかアレから毎日着けている。去年の秋から着けていて今は春なのでブレザーで目立たないからいいんだけど、夏になったらどうしよう。別にここまで義理立てしなくていいのかな。プレゼントって別に着けたりしなくてもいいのか? 前世含めてこれしか貰ったことないからどうすればいいのか全然分からない。

 

 ま、まぁそれはいい。ともかくプレゼントを貰って半年と少し……かな、ついひと月くらい前に突然蒼色のクワガタロボットが俺の前に現れたんだよね。「ゴシュジンーヤットミツケター」とか言いながら。

 部屋でゴロゴロと漫画読んでたからそりゃビックリしたよ。自分の事をガタックゼクターって言ってたからガタちゃんって呼んでるけど、去年の秋にベルトを着けた時にご主人様はこの世界のどこかに居るって事は分かってたらしいんだよね、それで延々と大雑把な感知能力を活用してひと月前にようやく見つけたってわけだ。

 そう言われた時に何気なく聞いた「俺以外が着けててもそいつがご主人様だったの?」って質問に微妙に怒った感じになって「ボクノゴシュジンハズットキミダケダヨー」なんて言うから可愛くなっちゃってここひと月ですっかり相棒みたいな感じになってる。

 

 それからこのひと月で色々聞いた、ライダーに変身できるとか(変身は男の子の永遠の夢だよね)、どんな装備があるとか、キャストオフっていう奴をすると超速で動けるようになるとか。俺の部屋に入ったのはワープみたいな事をしたからだとか。それで、ここからがようやく本題なんだけど、どうやらベルトとバイクって神様からの転生者特典って奴らしいんだ。うん、これが言いたかっただけ。

 

 ちなみにガタちゃんは前世の頃から俺の周りをウロウロしてたらしい。元々ついてくる気だったようだ。

 

『どうしたーごしゅじんー。ぼけっとしてるぞー』

『ああいや、気にしないでくれ。ふっ、また思考に没頭してしまったようだ』

『…………はぁー』

 

 ガタちゃんは口頭で会話すると電子音声で結構聞き取りづらいんだけど、ガタちゃんが俺の思考を読んで、ガタちゃんの思ったことを俺に送る俺とガタちゃんの間でしか使えない『思考会話』だとスラスラ喋って可愛い、俺の深い思考は読み取れないらしいけど。深い思考だってさ、深い思考、ふふ。それにしても思考で会話って格好良いよなぁ。

 今はいつもの喫茶店にいるんだが、ガタちゃんは透明化して俺の頭の上に乗ってる(らしい。全然重さとか感じないから本当かどうかは分からない)。

 窓の外の雲を眺めながらガタちゃんとそんな会話をしていると、女店主が話しかけてきた。フッ、今日も快活な笑顔が人を惹き付けるな、女店主よ。

 

「ウチのコーヒーはどうかしら?」

「なに、いつも通りの味だ。誇り高く、どこか切ない。そんな味だよ」

『いや、いんすたんとじゃーん』

「ふふ、ありがとう。それで、今日も貴方は平和なこの町の雲を眺めて、一体なにを想っていたのかしら?」

「なんだろうな……俺には、雲のことなど分からない」

 

 そこまで言って言葉を切り、俺は窓から雲を眺め、苦笑を漏らす。

 

「ただ、空はいつも変わらずそこにある。この町も、そうなのかもしれない……なんてな」

『なにいってんのかぜんぜんわかんねーやー』

「そうね……私から言えることは、この店はいつまでも、変わらないまま貴方を待ってる。……それだけ」

「……ありがとう」

『あー、またへんなスイッチはいっちゃったじゃーん』

 

 そう言って俺は席を立つ、料金を机の上に置き一言「釣りはいらない」。そのまま出口に向かう時にチラリとカウンターの方を見ると「俺は、怖い。いつまた俺の中の怪物が暴れだしてしまうんじゃないかと。いつも震えてる……!」と自分の中の獣と戦っている者がいた。この世界は、いつだって戦争だ。今も、彼のように戦っている者は大勢いる。

 

 そして、その筆頭に立つ者達が『ツインテイルズ』。この星の侵略を企む悪しき存在『エレメリアン』からこの地球を守る正義の味方だ。ちなみに俺は断然テイルレッドちゃん推しである。ブルーイエローといるんだがどうにもイマイチなんだよな。ブルーは俺のパーソナルカラーの青と被ってるし、まぁ俺は蒼だから別にいいんだけどね! いいんだけどね! テイルレッドたんマジテイルレッドたん。テイルレッドたんの可愛さで世界救えるんじゃね? あの可愛さは反則だよなホント。

 

『ごしゅじんー、しこうがあぶないほうにいってるよー』

 

 危険が危ない(錯乱)! おっと、ありがとうガタちゃん。危うく危険なお兄さん(意味深)になるところだったよ。

 

『暇だね、どこか行く? ガタちゃん』

『いくけどー、うーん、どこにー?』

『風が導く方に、さ』

『…………うーん、じゃーあっちー』

 

 そこでガタちゃんから何となくどっちの方向に行きたいか念波が送られてくる。よしよし、あっちだな。

 

「我が愛機『エクステンダー』よ! いざ行こう!」

 

 ガタックエクステンダーって言うらしい、このバイク。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇     ◇     ◇

 

 

 

 

 

 

 

 この先に行ったら女子高があるな……。

 そんな邪念を感じたのか、ガタちゃんが急に透明化を解いて俺の目の前に降りてきた。

 

『うおっ!? 危なっ!? 女子高行ってみようとか考えてません許して!』

『? なにをー? それにあかしんごーでとまってるんだからあぶなくないだろー』

『え、いや、ちょっとね……はは』

『はいはいー、いまはそんなこといってるばあいじゃないよー』

 

 いつもに比べ少し真面目なトーンのガタちゃんに俺も真面目な顔をする。

 

『どうした?』

『えれめりあんってやつかなー、このさきのこうさてんふきんにいるよー』

『…………まじ?』

『まじもまじー、ひとがいっぱいいるところにむかってるからー、さっきいってたじょしこうにいこうとしてるのかもねー』

『……で、俺に話したってことは?』

『さぁー? このさきにいったらあぶないっていっただけだけどー?』

 

 絶対それだけじゃないだろこの腹黒。

 

『はらぐろっていうなあほー、ただついんているずがいつとうちゃくするかわからないからー、かわりにたおしたらかっこいいなーっておもっただけー』

『…………格好良い?』

『うんー、ぼくはそうおもうー』

「…………行くかっ!」

『(ちょろー)』

 

 青信号になったと同時に俺は颯爽とバイクを発進させ、エレメリアンがいるらしき場所に向かった。

 エレメリアンってTVでしか見たことないから実際どんなやつなんだろうなぁ、なんて思いながら交差点に近ずいて行くと少年っぽいショートカットの怯える金髪少女に近ずく変態ミミズ野郎を見つけた。

 その光景を見た瞬間、俺の中の何かがブチッと切れる音がする。俺は金髪属性だ、金髪が大好きだ。その金髪属性の俺が綺麗で素晴らしい金髪を持つ美少女に近ずく変態を見つけたならそれはもういつもの3倍怒りボルテージが活性化するってものよ(ちなみにテイルレッドちゃんだけは別。あの娘の可愛さは属性とかそういう次元を超越している。あの娘を見たら誰でもツインテールが好きになっちゃうレベル)

 

「…………このまま突っ込むか、ガタちゃん、この状態で変身できる?」

『え!? どうしたの? なんからしくないけど』

「初変身がバイクってなんだか格好良くないか?」

 

 言いながらヘルメットを脱ぎ捨てブレザーのボタンを外していく、いつも通りこの下にはベルトを着けてる。

 

『……できるよー』

「じゃあ行くぞ、変身!!」

 

 俺が叫ぶと共にガタちゃんがベルトのバックル部分に突っ込み、装着された。

 

『HENSHIN』

 

 その電子音声と共に俺の全身が装甲によって覆われていくのが分かった。よし、聞いてた通り防御力高そうだなこれ。

 このまま突っ込んでも問題なさそうだ。

 

『なるほどー、あのおびえてるこどもをみて、きれちゃったかー』

『うおっ!? こ、この状態でも喋れるのか』

『うんー、びっくりさせたくてかくしてたー』

『……なるほど、で、満足かな?』

『うんー』

 

 じゃ、行くぞ! と、もう一度気合を入れてミミズ野郎に向かって思いっきり突っ込む。

 こっちを全く見向きもしていなかった為直撃して吹き飛ぶ、すると突然、吹き飛ぶミミズ野郎を支えるように背中に殻を背負ったカタツムリっぽい奴が姿を現した。

 

「だ、大丈夫か!? ワームギルティ!」

「う、うん。スネイルギルティ君」

 

 もう一体いたのか……なんて思いながらバイクから降りて警戒していると、涙目になっている先程の金髪少女と手を繋いでこっちに近ずく少年が居た。

 

「もしかして、かめんらいだー?」

 

 すごくキラキラした瞳でこっちを見てくる。こ、こんな感情を向けられたことがないからどう応えたらいいか分からない! 圧倒的経験不足っ!

 

『こういうときこそ、いつもみたいにふるまったらいいんだよー』

『そ、そうか』

 

 そ、そうだ。俺には相棒が付いていたんだった。何も緊張することなどない!

 自分に喝をいれ、少年少女の目線とできるだけ同じになるようにしゃがむ。

 

「そうだよ、俺は仮面ライダーガタックだ。君達を守るためにあの怪物と戦いに来たんだ」

「やっぱりそうなんだ! やったー!」

「ほら、早く逃げるんだ」

「うん!」

 

 逃げて行きながらも時々こっちを振り返ってくる子供に苦笑しながら手を振る。

 それにしても、最近ではもうエレメリアンはあまり怖がられていないというのに、やっぱりアレくらいの歳の子はまだ怖いんだろうか。

 ……まぁ、あの見た目だしなぁ……。目線をエレメリアン達に移すと二体ともこちらを見て構えていた。

 

 うねうね、ヌメヌメ。

 

 ワームギルティと呼ばれた方は触手みたいにうねうねしてるし、スネイルギルティと呼ばれていた奴は殻の部分以外ヌメヌメしていた。

 あれが近くに来ると……誰でも泣きたくなるよなぁ、うん。一人でそう納得しているとワームギルティが質問してきた。

 

「き、君は一体何者なんだ……? ツインテイルズ……じゃないよね?」

「まぁ、ツインテイルズに連なる者と考えてくれればいい」

『ぜんぜんかんけいないのにずうずうしー』

 

 そんなガタちゃんの言葉に思考会話で、やかましい! これも作戦なの! 作戦! と返す。

 えーほんとうー? ほんとうにしよくはないー? と詰め寄ってくる(感じがする)ガタちゃんを華麗にスルーして驚愕している様子のエレメリアンを改めて見直す。本当に私欲など無い。ここでこうして発言することでツインテイルズの関係者と思われ、それを耳に入れたテイルレッド達が接触してきてあわよくば仲間とかそんな感じになってテイルレッドたんとキャッキャウフフとかそんな事は全く考えていない。

 と、そこでいち早く驚愕から立ち直ったらしいスネイルギルティがこちらにバリバリの敵対心と警戒心を向けてきた。

 

「貴様、ツインテイルズの仲間だというのか! 見た目とか全然違うし嘘なんじゃないかと思ったが、先程からの様子を見るとどちらにしろ我らの障害となることは間違いない! テイルブルーではないこいつならば腹をくくる必要もないだろう? ワームギルティ!」

「う、うん! 重装甲で隠れている上半身はともかく、下半身から見るにこの人は完全に男だから、男の娘属性(ガールズボーイ)かどうか聞くまでもないよ!」

「あぁ! 例え性転換属性(トランスセクシャル)だとしても女から男になるなど誰得なのか分からんからな! 問題なく倒すぞ!」

 

 ……なるほど。彼らにも、彼らの信念があるということか。

 

『いやー、きいてはいたけど。じつぶつはなかなかきわものだねー』

 

 だが彼らの信念を貫くには、これから更に多くの男の娘っぽい金髪美少女や性転換しているかもしれない金髪美少女が犠牲になるだろう。そんな事は断じて許せない。俺は、俺の信念を貫くために彼らを倒す!

 

「行くぞ!」

 

 叫ぶと同時に俺はエレメリアンに接近しようと飛び出す、向こうもスネイルギルティが突撃してきた。

 正面から思い切り激突する直前に拳を繰り出す。これでも前世では空手とかやってたみたいだから多少の心得はある。

 咄嗟に殻でガードをするスネイルギルティ。拳は当たると同時にガァン!という音が響いて弾かれた。痛い! ちょ、思ってた数倍堅かった!

 

『がまんだよー、ほらーかたまったままうごいてないよー、いっきにやっちゃえー』

 

 ガタちゃんの声が聞こえる。確かにガードしたまま動いてないなコイツ。よし、連打連打ァ! オラオラオラオラオラオラオラオラ!

 ガガガガガガガガガガガッと連打した分だけ弾かれた。いたたたたた! 痛いよ! 堅すぎだろコイツ! 俺ってパワーアップしてるんじゃないの!?

 

「いいのか? 俺ばかりに攻撃を集中していて」

 

 スネイルギルティがそう言った瞬間、背後に気配を感じた(気がした)ため思いっきり横に転がると先程まで自分がいたところに触手が鞭のように唸って叩きつけられていた。

 

「ああ! スネイルギルティ君が言わなければ当たっていたのに!」

「まぁそう言うなワームギルティ。どうやら彼奴も貴様同様、あまり戦闘慣れしていないようだ。攻撃力は思わず俺の殻に罅が入るほど高いが、なに、俺とお前が落ち着いて対処すれば負けることはない」

「な、なるほど。分かったよ!」

 

 お、思ったより強いぞこいつら。俺ならばこれくらいの敵サクサクっと倒せるぜ! なんて実は思っていたのだが改めなければ。さて、ど、どうしよう。

 

『あいつら、いまいっかしょにかたまってるしー、うっちゃえばー?』

 

 はっ! そうか、俺にはこの両肩の超威力かつ超連射可能のガタックバルカンがあるんだった! 喰らえ! 弾倉無限かつビーム光線毎分5000発の威力! うおおおおおおおお!

 

「ぐおおおお! なんだこの威力はああああ!!」

「うわあああああああ!!」

 

 ふはははははははははは!! なすすべなく! なすすべなくやられているぞ!

 俺は撃っている内に気持ちよくなってきたためひたすら撃ち続け、爆炎でエレメリアン達の姿が見えなくなってようやく撃つのをやめた。

 

「やりすぎたかな……」

『そうおもうならもっとはやくやめてあげればよかったのにー』

 

 いっぷんくらいずっとうってて、はたからみるとこっちがあくやくみたいだったよー。と続けるガタちゃん。

 いや、思ったより反動なかったし、なんか楽しくなっちゃって……。

 内心で言い訳を続けていると、段々と煙が晴れてくる。煙が晴れた先にいたのは、ボロボロのワームギルティと奴を庇うように構えていた最早原型を留めていないほどボロボロの殻のスネイルギルティだった。1番ボロボロになっているのは道路のアスファルトだったが、あえて目を逸らそう。あえて。

 

「…………これ、いまなら倒しきれるよな」

『そうだねー』

「…………………よし、慈悲は無い」

『げどうだー』

 

 何も聞こえん。俺は正義の味方なのだ、断じて外道などではない。ふふ、やはり俺は選ばれし者だった。

 ボロボロのエレメリアン達に近ずいて一方的にボコっていく。オラオラァ!さっきまでの威勢はどうしたぁ!(ゲス顔)

 

 5分くらいそうしていただろうか、そこで俺はようやく気付いた。

 はぁ……はぁ……た、倒しきれない……。やっぱりライダーキックとかじゃないとダメなんだろうか。ガタックバルカンは道路に壊滅的な被害を与えると分かったし無闇に使えないな……。かといって今更キャストオフするのも格好悪いし……、タイミングってのは重要なんだなぁ。

 

「ぐうっ……! ワームギルティ! ここは一旦退くぞ! まさかツインテイルズにこの様な伏兵がいるとは……!!」

「う、うん! わかったよスネイルギルティ君!」

 

 俺がどうやって倒そうかと考えながら戦っていると、動きが鈍ったのが分かったのかエレメリアン達は離脱しようと俺に背中を向けて全速力で駆けていく。

 なんということだ。あいつら地味に足速いんだな、このままじゃ追いつけないぞ(棒)。

 チャンスきた! タイミングきた! 今しかない!

 

「ふふふ……逃がすか」

 

 言うと同時にガタちゃんの角を少し広げる、するとガシュ、ガシュという音と共に上半身の厚い装甲が浮き上がっていく。

 おぉ…おおぉ……! なんだこれ、思ったよりワクワクするぞ!

 顔の部分が浮き上がったのを確認してから重要な一言を精一杯格好付けた声で言う。

 

「キャストオフ」

 

 発声すると同時にガタちゃんの角を一気に限界まで広げる。うおおおおおおお気持ちいいいいいいい!

 

『Cast Off』

 

 ガタちゃんから電子音声が鳴ると一気に装甲が弾け飛んで行き顔の側頭部に何かが装着されたのを感じた。

 

『Chage Stag Beetle』

 

 キタ! 確かこれがキャストオフが完了してマスクドフォームからライダーフォームになった合図だったよな!?

 

『そうだよー、ほら、はやくしないとにげちゃうよー』

 

 了解だ! ガタちゃんにライダーフォームの姿形を伝えられてから精一杯考えた格好良いクロックアップをやってやるぜ!

 かなり興奮している俺は腰のボタンを押して両肩の曲剣『ガタックダブルカリバー』の柄をかなりの勢いで掴み、ライダーフォームの特徴その1のワードを口にする。

 

「クロックアップ」『Clock Up』

 

 ――――瞬間俺は、世界から自分という存在が切り離されるのを感じた。

 お、おぉ凄い。これがクロックアップか。超速で動いてるだけらしいけど、まるで時間でも止めたかのような気分だ。

 確か身体にかかる負担が凄いから、最長でも1分しか継続できないんだっけ? よし、ならさっさと倒すか。

 俺は両肩のガタックダブルカリバーを掴んだまま、エレメリアンに向かって一気に走り、接近すると同時に曲剣を抜き放ってスネイルギルティとワームギルティに斬りかかる。

 

「うおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 体感で30秒ほど斬り続けたところで、ワームギルティを思いっきり蹴りつけてスネイルギルティと一つに纏める。

 たしかこのボタンを3回押すんだったよな?

 一つに纏めたエレメリアンに背を向け、曲剣を両肩に装着し、ガタちゃんの後部に内蔵されているスイッチ『フルスロットル』を3回押す。

 

『One,Two,Three』

 

 聞いていた通りに音声が鳴ったので落ち着いてガタちゃんの角を一度元に戻す。

 

「ライダーキック」

『Rider Kick』

 

 続けざまにそう言って角をもう一度大きく広げると連動して音声が響き、大きなエネルギーがガタちゃんを通じて頭から足に集約していくのが分かった。

 おおおぉぉ来てる、来てるぞぉぉ……!

 足のエネルギーが溜まり終わったことをなんとなく感覚で理解して振り向きざまに大きくジャンプ、体の捻りを加えてジャンプしたまま、2体同時に思いっきり回し蹴りを当て、再び背を向けて着地。

 今の俺、最高に決まってる……!

 そんな感慨にふけっていると、エネルギーが尽きたのか、はたまた俺の身体が限界だったのかタイミングよく体が元の時間に戻っていくのを感じる。

 

『Clock Over』

 

 その電子音声と共に完全に元の時間の速さに戻った。

 

「ぐおおぉ! う、動きが見えぬ、見事なり!」

 

「せ、せめて最後に! テイルブルーが本当に男の娘なのかどうか知りたかった……!!」

 

 ワームギルティとスネイルギルティは自分の最後を悟ったのか、それぞれの言葉を残して爆発する。

 それに応えるように俺は爆発に背を向けたまま歩き出し、雲を見ながら呟く。

 

「彼らは最後まで戦士だった……やはり、俺は戦いが嫌いだ」

『なにいってんのーきょうがはつせんとうでしょー、ほら、かえろー』

『少しくらい格好付けてもいいだろ! ところでクロックアップしてる時全然話さなかったけどクロックアップ中は話せないの?』

『そだよー、ちょーえねるぎーつかうからねー』

 

 あ、やっぱりそうなんだ。それじゃ戦いも終わったし、帰ろうかな。空を見上げながら恐らくバイクを置いていた方向へ歩く。空を見上げて黄昏る蒼き戦士……格好良い……。

 

『じゃーへんしんとくよー』

 

 え、ちょま。

 俺の返事も聞かずにさっさと変身を解いてしまうガタちゃん、せっかく良いところだったのに……。

 しょうがない、本当なら変身したまま言いたかったんだけど、解かれたのならそのまま言うまでよ!

 

「戦いとは、虚しいものだ……」

『それすきだねー、きょうだけで10かいくらいきいてるよー』

 

 ガタちゃんの言葉を無視して「(そろそろエクステンダーのある場所に着いたかな……)」と視線を正面に戻すと鮮やかな赤青黄のツインテイルズがいた。

 思考停止。テレビの向こうの麗しのテイルレッドちゃんが突然目の前にいたのだ、フリーズもする。

 

「え、何? え? ツインテイルズ? テイルレッドちゃん?」

 

 思考がフリーズしている俺の口から出たのはそんな情けない声だけだった。え? いたの? いつから?

 

『ごしゅじんがえれめりあんをふるぼっこしてたあたりからだねー』

『気付いてたのかよ!』

 

 まあねーなんて呑気な返事をするガタちゃんに来てたのなら教えてくれよなんて今更なことを思いつつテイルレッドに話しかけようと思考をフルに回転させる。オーバーヒートしそうである。

 よし、完璧だ。「今日はいい天気ですね」。これほど日常会話において完璧な切り出しはないだろう。話しかけちゃうぞー、言っちゃうぞー!

 

「今「鏡先輩!?」」

 

 話そうとした瞬間に言葉を被せられる。いや、それは良いんだけど…………今なんて? 

 鏡先輩って言ったよね? テイルレッドが慌てて口を押さえてるけど可愛い。俺は誤魔化されないぞ可愛い。

 

「もしかして、陽月学園の後輩?」

 

 俺のその一言でレッドブルーイエロー全員が目に見えて慌て始めた(いや、イエローはそうでもないかも。なんかスゲーキラキラした瞳で見られてる、さっきの少年みたいな)。

 どうしよどうしよなんてあわあわしているテイルレッドが可愛くて鑑賞していると、携帯に電話が掛かってきた。テイルレッドを眺めていたい為電話を無視しようとするが、ガタちゃんが『でなよー』なんて言うからため息をつきつつ出る。このタイミングで俺に電話をかけてくる者……ふっ、奴か。

 

「もしもし、貴様か」

『いや初めて話しますしまだ会ったことすらありませんけど』

 

 違った……だと。全くこれじゃあ俺が中二病みたいじゃないか。

 

「何の用だ」

『事情を知ってしまったっぽいので私達ツインテイルズの拠点に来てもらおうかと、詳しくはそこで話そうかと思います。私は反対なんですけどレッドが言うので仕方なくです仕方なく』

「ふっ、ツンデレか」

『違いますよ!? 何とんでもない勘違いしてやがるんですか!?』

「ふむ、とりあえず分かった。案内はレッドに頼むとしよう。さらばだ」

『え!? ちょ』

 

 容赦なく切る、貴様と話しているうちにレッドが落ち着いてしまってるじゃないか。万死に値するよね。

 

 さてと、レッドに拠点の場所を聞くか。

 

「レッド、拠点の場所はどこなんだ?」

 

 小さい子に話しかける時特有のちょっと優しい声で問うと、レッドは多少ぎこちない笑みで。

 

「あ、あの……喫茶『アドレシェンツァ』っていう所なんですけど……」

「なに!?」

 

 足繁く通っていた喫茶店が実は正義のヒーローの秘密基地だったとか超テンション上がるんだけど!?

 よしすぐ行こう今すぐ行こう!

 

「あの、俺が担いで運びますんで……」

「いや、俺にはバイクがあるのでそっちで向かう。それと、敬語もいいぞ」

「あ、ありがとう……え、バイク?」

 

 少し興味があるのだろうか、ツインテールにしか興味がないものだと思っていたがやはりまだ子供だな、大変微笑ましい。

 

「君たちの秘密を教えてもらうんだ、乗っていくかい?」

「いいのか!?」

「ああ、遠慮などするな」

 

「ま、まぁ……男ならいいか。あの人もレッドにあんまり興味なさそうだし……」

「えぇ! 仮面ライダーのバイクに!? う、羨ましい……羨ましいですわレッド~」

 

 ブルーとイエローが何か言っているが少し距離があるためよく聞き取れない。まいっか、ブルーイエローだし。……イエローは綺麗な金髪なんだけどなぁ……レッドの前じゃ霞んじゃうんだよな。

 

「よし、じゃあ行こうか」

「おう!」

 

 いつも俺が使っているヘルメットを被せようとするがツインテールが邪魔で着けられない、レッドもツインテールを解くのは嫌だろうと思ってどうするか聞くと「認識攪乱装置で見えないようにしてもらうから大丈夫」らしい。どっちにしろヘルメットは一つしかなかったので助かった。さっき気づいたんだよね。それに免許取ってから1年経ってないから本当は二人乗りしちゃいけないし。

 バイクの後部にレッドを乗せるとひしっと俺にしがみついてきた。やばい鼻血出そう。

 

『ここでだすとこうかんどばくさげだよー』

『わかってる……! わかってるがこれは破壊力が凄まじい……!』

 

 内心凄まじくテンションが上がっているがそれを表に出すのはみっともないんじゃないかと思った為、努めて冷静に振舞う。

 

「発進するよー」

「オッケー!」

 

 元気なテイルレッド可愛いと思いながらバイクを発進させる。今ならこのまま飛べそうな気がする、うひょおおおおおおおおおおおおお!

 

 

 

 

 

 

 

 ◇     ◇     ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 喫茶『アドレシェンツァ』に着いたのはそれから20分後のことだ。もちろんブルーとイエローは先に着いているだろう。だって不自然にならない程度のできる限りの遠回りをしたもの。

 わざと道を間違える度にレッドが「そっちじゃないよ!」って言うのが可愛かったからしょうがない。

 

 さて、ツインテイルズの秘密とは一体どんなものなんだろうな、レッドが実は男の子でしたーとか突拍子もない事じゃなきゃいいけど。フッ、流石にないか。




読んでいただきありがとうございます。

短編ですね。『俺ツイ』アニメ放映記念、オリ主ものです。
1話リアタイ放送から大分経ってしまいましたが、好きな作品だったのでアニメ化嬉しいです。

ガタックゼクターなんで喋ってるんですかね、気が付いたら喋ってました。

別の作品が完全にスランプというか何故か書けないので息抜きみたいなものですね。

※10/31追記
『ガタックエクスカリバー』→『ガタックダブルカリバー』に修正。
ご指摘ありがとうございました。

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