本日より……新規作品である仮面の慟哭と凶宴を投稿開始したいと思います。内容としてはAve Mujicaのアニメをベースとしながら、オリジナル展開も交えた話の展開をして行きたいと考えていますので、よろしくお願いします。
それでは、本編スタートです。
「……OK。その条件で手を打とう」
「ありがとうございます、ヴァニタス。貴方のお陰で
「これくらい構わないさ、オブリビオニス。お前たちとは既に共犯者……如何なる咎も俺たちの贄となる」
辺りが静寂に包まれた一つの蝋燭が灯された室内にて、ヴァニタスとオブリビオニスはそんな事を口にしていた。この場に居るのは二人だけの様で、お互いに表情は見えずとも互いの感情を共有しているらしい。
らしいと言うのは……二人の顔には仮面が着いていて、一人は白いヒナゲシの花が、もう一人は何処ぞの道化が身に付けている物と酷似した様な、そんな模様があしらわれていた。
「しかし、良いのか? 俺にこれを伝える、と言う事は」
「構いませんわ。貴方も先程申し上げた様に、私たちは既に共犯者……それに、最初にお伝えしたはずです。残りの人生、全て私に下さいませんかと。ならば、あとは早いか遅いか……それだけの事」
「……なら、後悔するなよ」
「私を誰だと存じているんですの? 私は全てを喪い、弱き過去の自分自身すら殺めた……もう光とは相容れぬ存在。それに」
オブリビオニスはそこまで言った後、ヴァニタスの前に毅然と立つと……言葉を続けた。
「貴方ももう、我慢はしなくてもよろしいのですよ。忌々しい記憶も……影に徹した過去も。全て零に還せば良いのですわ。その名に恥じぬ、虚無の生まれ変わりとして」
「……わかった。ならば、俺は俺なりのやり方でこれからを生きさせてもらう。それで構わないな」
「ええ、よろしくってよ」
そうしてヴァニタスは、オブリビオニスと視線合わせる様に立つと……蝋燭に灯った炎を消した後、彼女に続く形で部屋を退出した。そしてその場には再び沈黙が戻り、夜の闇が先程まで誰か居たであろう証拠と共に部屋を包み込んで行った。
「ふぁぁ……」
「こんな時間に眠気など、気が弛んでいる証拠です。キチッとして下さい」
「すまない、千歌。気を付ける」
そんな事を話しながら並んで歩くのは、黒髪黒眼が特徴の少年──
大学に進むと時間割などを個人で決めて履修しないと行けない為、組み方次第によっては今までに無い程の苦労を強いられる危険性がある。だが、この二人にとってはそこまで難しい話では無く……どちらかと言えば、こう言った日常的な事で難儀するのが多いと言う具合だ。
今は今日最後の講義が行なわれる場所に向かう最中で、その時に颯樹が軽く眠気がある事を伝える欠伸をした事が、千歌が窘めた原因となっている。
「
「……全く以てその通りだね。気をつけないと……っと、ごめんね。通知だ」
「大学の学舎内ではそう言うのはなるべく控える様に、とあれほど「待て、獅音からだ」雨宮さんから?」
千歌は颯樹の今の行ないに対して再度窘めるが、直後に聞こえて来たその相手を聞いた途端、彼女も瞬時に思考を切り替えていた。そして颯樹は千歌と共に廊下を少し歩いて、階段の影になる場所へと移動をした後……千歌に内容が見える様に、送られて来た内容を開示した。
実は先程、祥子ちゃんと僕が生徒会室に呼び出されたんですけど……その時に京介先輩から、にゃむさんの事について言及されました。颯樹さんや千歌さんは彼女の本職についてはご存知だと思うので、この場では割愛しますが。
今はまだ匂わせ動画をアップする、だけで治まってるとの事ですが、もしかしたら、ステージ上で素顔を晒す可能性があるんです。そうなれば、同じメンバーであっても容赦無く仮面を剥ぎ取りにかかるかもしれないので、その時は手荒になっても良いので止めて貰えると幸いです。
「「……」」
獅音からのメッセージに目を通した二人は、思わずその場で固まってしまう。話の渦中に居た人物であるにゃむ──
そんな彼女は普段からAve Mujicaのサポートをしている三人だけに限らず、キーボディストでバンド全体を一手に纏め上げる
ある時はバンドメンバーを唆して、個人用の撮影と称した動画撮影をしようとしたり……またある時は、撮影用の口実を作る為にある事無い事を捏造して陥落させようとしている為、同グループ内では一種の警戒対象として目を付けられてたりする。
「……
「その方が良いね。何だったら、今回の台本の件についても苦言を呈して来そうだよ」
「分かりました。先ずは同性である私から話をしてみましょう、それでも無駄なら後をお願いします」
「了解した」
そんな事を話した後、二人は講義の行なわれる教室へと向かって、定刻通りに講義を受講する事になった。双方共に素の学力は高い方であり、赤点を取った事が無い上で……赤点組から講師役を頼まれる程の良さなのだ。
そうしてその日の講義を全て終え、今日の最終目的地であるライブハウス【G-WAVE】に向かおうとした、その時だった。
「……マズイな、雨だ」
「では、酷くなる前に移動しましょう。颯樹、車を出して貰えますか?」
「OK、安全運転で行こうか」
そう思った後の行動は早かった。
二人して小走りで校舎から出た後、階段を降りた先にある駐車場へと向かって……校舎側手前に止めてある白い乗用車を解錠させ、互いの荷物を後部座席に置いた後でそれぞれ所定の席に座った(この車は颯樹が運転する車の為、颯樹が運転席側になっている(千歌は同乗している為に助手席側))。
シートベルトまで着用を済ませ、手早くエンジンを起動させて大学の敷地内を出る事にした。用も無いのに長居をしては、担当の教諭たちに怪しまれる危険性があったからだ。
「ちょっと雨が酷くなって来そうだね……小雨になってるうちに着いておかないと」
「そうですね。初華さん達も既に到着して、そろそろ待ちかねている頃でしょうから」
僕は車を走らせながら、千歌からの言葉に答えていた。
お昼休み中に届いた獅音からのメッセージ……もしあれが現実になろう物なら、冗談では済まされない事態になってしまう。ただでさえ僕はパスパレメンバーから移籍云々の話を認めて貰えてないのに、そのうえで他のメンツの素顔……特に初華や睦に関しては、バレた後の後処理が大変になるのは明白だ。
こればっかりはさすがに、にゃむを止めないと事が治まりそうに無いし……かと言って放置しておくのは、愚の骨頂とも取られかねない事態だ。……なら、少し手荒にはなるけど実力行使も頭の隅に入れてた方が良いかもな。
「……着いた、ここだ」
「早く入って準備をしましょう」
そう言って僕たちは、ライブハウス【G-WAVE】に到着した後……車を停めて関係者用の扉から中に入り、そのままメンバーたちの待つ控え室へと向かった。そして手早く更衣を済ませてリハーサルを終え、ライブを行なった(実際にやってたのは僕と千歌じゃないけど)。
ちなみにライブ開始の数分前の頃合で、祥子と獅音が遅れ馳せながら到着していたので、その後も特に支障無く進める事が出来た。
そしてその後に待ち受けていた取材も、事前に言う事などを纏めていた事で段取り良く終わり……次は【dub】でのライブが決まった……その直後だった。
「だーかーらー、個人的な撮影だってー!」
「クドいですよ、祐天寺さん。いい加減にしてください。個人用でもどんな理由も問わず、バンド活動中の私的な撮影は全面的に禁止です。それがまだ分かりませんか」
「ぶーっ、ちかこのケチー!」
「ケチで結構。身内だからと言って依怙贔屓はしません。裁くなら手加減無しです」
「うわっ、怖っ」
……この分だと、難航しそうかな……。
近くに居た初華に少し断りを入れた僕は、ステージ袖から中央で言い争いをしている方に目を向ける事にした。
「良いですか、Ave Mujicaが重視してるのは世界観です。その世界観は等しく保たれるべき物……今貴女がやろうとしていた事は、イメージを大きく損なう物なんです。言っている意味は理解できますか?」
「そこまで怒んなくていいじゃん。これじゃああたしが何を理由にスカウトされたのか」
「顔と数字でしたか。生憎様、スカウトする時の理由としては確かに有り得た物ですが、活動している今はその理由など論外です。一つの輪の中で少しでも異分子があれば、全体の調律を損なう危険性がある……私はそれを」
まあ、千歌の言いたい事は概ねわかるんだよね……実際にゃむの振る舞いはちょっと度が過ぎる所があるし、祥子が言っても逆効果な所があるんだよな……。それを考えれば、千歌の言い分は至極ご尤も。
……ただ、少し言い方が刺々しいかなってのはあるが。
「ごめんなさーい、あたしが悪かったですー」
「……分かりました。では、ただ無罪放免にすると再犯の危険性があるので、私から貴女に罰を与えます」
……およ? 僕はそこまでやれ、って言ったかな?
「えっ、返してくれるのラッキー!」
「構いませんよ。私からのプレゼントです」
「ふふーん、何を投稿しよっかなー……あ、あれ?」
にゃむの様子がおかしくなった、何があった。
「ね、ねーちかこ…?」
「はい、何でしょう」
「この画面……どういう事なのー?」
遠目にしか様子は伺えないけど、恐らく画面を開いている途中に何か変な物が見えたんだな? 口振りからして千歌がやったのだろうが、果たして何をやったのやら……。
「どう言う事……と言われましても。今起こっている事が全てです」
「そ、それでもこれは……」
……ん、あれ。丁度死角になって分からないけれど……たぶんこの様子だと……。
「先輩、何をやってるんですか?」
「う、……初華ぁ!?」
……あーあー、これは観念して出て来る他無いか……。
「さ、さっきーに……ういこ!?」
「さては最初から見てましたね? 普段ならお説教モノですけれど、もし万が一祐天寺さんが逃げ出した時には、力尽くで制止して貰うつもりでしたので、今回は見逃す事にしましょう」
そう言って千歌はにゃむに向き直り、先程見た時と同じ様にすうっと目を細くしていた。それを見たにゃむは蛇に睨まれた蛙が如く、硬直した様に動けなくなっていた。恐らく千歌が何かやったんだと思うが、経緯が経緯なだけに擁護は出来まい。
「ち、千歌先輩。にゃむちゃんに一体何を……?」
「動画サイトにアクセスする際の、秘密のパスコードを設定したんです。これなら、不用意に私たちの情報が漏れる事はありませんし、本人にとっては良い薬になるでしょう」
「うええええん、ういこぉぉぉさっきーぃー!」
「「ちょっ、にゃむ(ちゃん)!?」」
千歌から事の次第が明かされると同時に、何かに絶望した様な顔をしたにゃむは……僕と初華を一纏めにして抱き着いて来た。後者に関してはまだ良い、だが僕は列記とした男だぞ!? 千歌が更にピキってる、更にやばい事になってるって!
……あ、あれー? 心做しか隣からの圧もやばい事になってる気がするね〜?
「……動画を撮る際は私に一言メッセージを送る事。内容が妥当な物であれば、メッセージにてコードを教えます。ですが、その翌日私にスマホを預けて頂き、新規パスコードに変更をした後にお返しします。これが貴女への罰です」
僕への圧は何とか締まってくれた千歌が、にゃむに対して罰則の内容を明かして来た。これじゃあ人気インフルエンサーの名声とはオサラバになるかもしれないね……SNSって一瞬一瞬の出来事をどれだけ新しいうちに取り込んで、それを拡散するかにかかってるって聞いた事あるし(彩からの経験談)。
……て言うか、さっきから初華さんや、なんか圧が強くないですか? そしてそんな僕たちを他所に、控え室に続く舞台袖から誰かが現れた。……この特徴的な髪型は。
「祥子、遅くなってすまない」
「構いませんわ。獅音には少し待つ様に伝えましたので、このくらい何て事ありません」
「も、もしかして……さきこもグル!?」
「ええ、私から千歌さんにお願い致しましたの。これを自業自得とし、悔い改めると良いですわ。……あ、あと補足で言わせて貰いますと、貴女以外全員知っていましてよ?」
「えっ、そうなのっ⁉︎」
にゃむからの驚きとも取れる問いに……僕たち(この場に居る四人全員)は、揃って首肯で返答を返した。その反応を見たにゃむの顔から生気が消えて行ったのは、傍から見れば酒の肴にしたい程滑稽だったと言えよう。
……だが、この時の僕たちは知らなかった。
彼女を追い詰めるのは、先程の千歌の発言までにしておくべきで……後に痛烈なるしっぺ返しとして、その報いを受ける羽目になる事を。
今回はここまでです。如何でしたか?
本小説は2週に1度のペースで投稿を続けて行きますので、暖かい目で見守って頂けますと幸いです(Ave Mujicaのアニメのストックが2話分貯まって行く、と言うペースと考えて貰えたら)。
それでは、また次回の更新にてお会いしましょう。