仮面の慟哭と凶宴   作:咲野 皐月

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 皆様、おはこんばんにちは。

 時の流れは早いもので、秋すら通り越してもう冬に……って、よく考えたら3ヶ月以上も遅刻してましたね私。申し訳ありませんでした埋めろ(迫真)


 今回は前回のお話の続きからになりますが、次回投稿話のお話から少しタグの追加を行ないまして、お話を進行して参りますので、よろしくお願いします。


 それでは、本編スタートです。

 最後までごゆっくりお楽しみください。


In proelium eamus.


↓ ↓ ↓ ↓ ↓


私たちは戦いに赴く。



#16 In proelium eamus.

「まさか、またパスパレの皆さんと戦う事になるとは」

「正直に言わせて貰えば、私は予想外でした。あんな負け方をしておいて、よくリベンジする気になった物です」

 

 

 そして色々あって……数日後。

 

 僕たちはヴァンガードのイベントが行われる会場に現地入りを果たし、控え室で各々のデッキの最終調整をしていた。当の企画した側であるパスパレはこの数分後に到着するみたいで、最初に彼女たちによるティーチングイベントがあって、その後にsumimiとのチーム対抗戦をする手筈となっている。

 

 万が一と言う場合を想定し、控え選手として千歌にも招集をかけ、彼女には急な選手交代があった時の為に、控えて貰う事にしている。

 

 

「ですが、それは裏を返せば……向こうには、絶対に負けない自信があると言う事ではございませんこと?」

「それはその通りですが、凄い自信ですね。ご自身が負けた時の様子が想像できないみたいに」

「ええ、しておりませんわ。もちろん、緊張も。私は颯樹様の為に……この手腕を振るいます。それが例え、颯樹様が目を掛けていた名のあるアイドルグループであろうと……元天才子役の若手女優が居ようとも」

 

 

 美優の問い掛けには千歌が釘を刺す言い方で返したが、それを彼女は一度鼻で笑った後に毅然とした態度で答えた。……ここばっかりは流石、大病院を経営する院長の一人娘、と言った所なのだろうか。堂々としていて、ここまでわかりやすいと寧ろ清々しいくらいだ。

 

 

「それに……その元天才子役さんは、どうやら颯樹様の幼馴染を謳っているのだとか。もし対戦する機会があったなら、存分に遊んで差しあげませんと……♪」

 

 

 ……その言葉に、僕を除いた全員が戦慄した。

 

 美優とは数度邂逅している京介でさえ、彼女のこの言葉には驚いていたのだから、画面越しでしか会話した事が無い千歌は勿論の事、まなや初華も思わず背筋を震わせていた。

 

 

「……それはともかくだ。颯樹さん、今回もアンタからデッキを借りてる身だ……無様な真似は見せないと約束する」

「問題無いよ。むしろ、向こうもそれなりに強くなってるはずだからね……存分にやっておいで」

「了解した」

 

 

 そう話している傍らで、控え室に備え付けられているスピーカーからアナウンスが聴こえた。……どうやら出番みたいだな。

 

 

「呼ばれたね。それじゃあ……」

 

 

信じてるよ、みんな

 

 

『……はいっ!』

 

 

 そんなやり取りをした後に、僕たちはステージの方に向かう事となった。この先に待つのは希望か、絶望か……僕たちは、各々が必ず勝つと言う意気込みを胸に秘め、戦場(ステージ)に赴く。

 

 

「あっ、颯樹様。少しだけお話を」

「……手短にね。みんなは先に行ってて」

「了解。時間は無い、先に行って待ってる」

 

 

 そうして京介たちを先に舞台袖に向かわせ、僕は美優の方に向かい合った。彼女の真意は未だに分からないが、ここまですると言う事は……今から話す事は、なるべく内密に済ませておきたい事なのだろうと伺えた。

 

 

「んで、どうしたの?」

「……颯樹様。この場を借りてお伝えしますわ」

 

 

パスパレの皆様とは、

これ以上関わらない方が良いかと

 

 

「……どう言う意味?」

「私、何か嫌な予感がするのです。聞く所に拠ると、今回の様なイベントは……今回が初めてでは無い、と。それに間違いはありませんか?」

 

 

 ……誰かから聞いたのか、若しくはうっかり聞いてしまったかの二択か。

 

 恐らくその情報の出処はまなか、京介か……それとも、先程合流したばかりの千歌か。誰がそれを言いふらしたのかはさて置くにしても、ある程度の事情を知っている以上は、これ以上隠し通すのは愚策に近いだろう。

 

 

「そうだね、これで2回目だ」

「……っ、そうでしたの。その時の戦績は完勝したと小耳に挟んだのですが、それは真実でして?」

「そうだ」

「……で、あれば。失礼とは存じ上げますが、颯樹様がこれ以上あの方々に目を掛ける理由は無いと思うのです。まして、前回完膚無きまでに苦渋を舐めさせているなら尚の事……なぜ、今回受ける気概になったのです?」

 

 

 そう言われると確かに、美優の言い分は筋が通ってる。

 

 

 今回の事案はパスパレから持ち掛けて来たので、此方としては断る選択肢を取れたのも事実。だが、向こうからすればAve Mujica解散の話を聞いている都合上……この絶好の機会を逃す手は無い。

 

 

「……向こうがやる気になっているなら、その土俵に合わせて戦うのも一興だと思ったんだ。そこに変な意味は無いよ」

「そう、でしたの……。不躾な事を聞いて、大変申し訳ございませんでした」

「……構わないよ。むしろ、今までの僕を知ってる人からすれば、そう言いたくなってもおかしくないくらいだ……って、え?」

 

 

 僕が扉の方に身体を向けた時、何やら後ろから柔らかい感触に見舞われた。後ろを確認していなかったので、その正体には気づかないでいたのだが……どうやら、美優が背中越しに抱き着いているのだと理解できた。

 

 

 

「……私は、颯樹様が居てくれれば、それだけで充分な幸せですわ。例え他の誰に言い寄られたとして、私の想いは颯樹様ただ一人に向けた物……この身が朽ち果てようとも、未来永劫変わる事などございません」

「……美優」

「だからこそ、私は……イタズラに颯樹様を振り回して、自らの所有物として扱き使う者たちの事が、最も許せないんです。颯樹様は、ただ自由に人生を謳歌して頂ければ、それで良いのですから」

 

 

 紡がれる言葉の数々に、胸が締め付けられる感覚に襲われてしまう。……参ったな、こんなになるって思わなかった。

 

 

「……ですので、パスパレの皆さんとの関わりは、どうかこれっきりにして下さいませ。今は私が傍に居ますから、不測の事態にも対応できていますが……何かあってからでは、遅すぎるんですのよ」

 

 

 美優の言葉が、僕の心に否応無しに突き刺さる。

 

 所々事実があるだけに否定は出来ないが、それを抜きにしたとしても耳が痛い話だ。

 

 

「……考えてみる。彩たちだって、一度負けてから何も学んで無い訳じゃないんだ、舐めてかかれば返り討ちに遭う羽目になる」

「……颯樹様、私は……」

「無論、美優の言った事を忘れるつもりは無い。ここでキッチリ負かせば、問題無い」

「……ええ、そうですわね。では、参りましてよ!」

 

 

 ……良かった、美優もやる気になったみたいだ。

 

 そう思いながら僕は彼女を連れて、舞台の方に向かう事となった。今頃千歌やまな……初華は待ちかねてる頃だろう。京介には先導役を任せてしまったから、後でキチンと詫びを入れないとね。

 

 

「藤宮 美優……やれやれ、強かだな。まさかこの機会まで利用するとは。俺も少し警戒してみるか」

 

 


 

 

『Hey,Boys&Girls! お前らぁ、ここから盛り上がる準備は出来てるかーーッ!』

 

 

 司会を担当している人の挑発とも取れる発破に、その影響を受けたであろう観客たちのボルテージが最高潮に高まっていた。先程までは初心者講習会を行なっていたとの事で、その熱が冷めないうちにメインイベントをやってしまおうと言う魂胆みたいだ。

 

 ……と言うか、女性でそんな煽り文句を言うってアリなんですか。普通にちょっと引くんですが。

 

 

『良いねぇ、絶好調だなお前ら……だったらその勢い、最後まで飛ばしていくぞぉぉぉーーー!』

 

 

 ……うわっ、見るだけで暑苦しいなこれ。

 

 前回やった時こんなんじゃ無かったぞ、スタッフ側は一体何を考えてんだか……。

 

 

『それでは、先ずは互いに熾烈なる戦いを繰り広げる……闘争心に満ち溢れている、かわい子ちゃんに野郎共を紹介するぜぃ!』

 

 

 そう言うと僕たちから見て正面の舞台袖に眩いスポットが当たり、そこからメンバーたちがゾロゾロと出て来た。

 

 

『前回! 敢え無く完敗を喫した乙女たちは、光を見失う事無く再び舞い戻った……その軌跡は、今度こそ大輪の花となって希望と共に開くのか! 丸山 彩率いる──チーム、Pastel*Palettes!』

 

 

 観客席から見て右の方に陣取った5人は、思い思いにアピールをしていた。……あっ、日菜が彩をからかってる。全く緊張感と言う物が無いな。

 

 

「随分と余裕そうですわね、あの方々」

「私たちに挑戦状を叩きつけるくらいです、相当な自信があるのでしょう。ですが、それも直ぐに消え失せます」

 

 

『続いては、こいつらだぁ!』

 

 

「……行くよ」

 

 

 進行役の人から呼ばれたので、僕たちは揃って舞台袖から姿を現した。千歌と京介と初華は、Ave Mujicaで顔が割れている為、出て来たのを見た人たちにとっては驚きが強かっただろう。けれど、今回はあくまでsumimiとして参加している為、その辺の不満等は勘弁蒙りたい所だ。

 

 

『前回、圧倒的な実力で完勝を成し遂げた実力者たち! 今回も実力差を見せ付け、完封勝利なるか! 純田 まな率いる……チーム、sumimiーーーっ!』

 

 

 中央まで進んだ僕らは、彩たちと同じ様に正面にある観客席の方を向いた。

 

 

 ……すごいな、これが会場の熱気か。

 

 一度は出た事があると言えど、この思わず立ち眩しそうになってしまう熱気は予想外だ。それだけ今回の対決を楽しみにしていたんだ、と言う事はよく伝わって来るが、一体何処からこんなボルテージの高さを……。

 

 

『ノンノンノン、焦るんじゃねぇぞー? 今回は前回と同じ様に5対5のチーム戦で行なうが、その対戦会場はひと味違う……あれを見よッ!』

 

 

 そんな言葉が聞こえたので、僕らは変わらず正面を見ていたのだが……その時、センターステージの床にある扉が開け放たれ、その下からファイトテーブルが迫り出して来た。そしてその上には二階席からでも見える様に、モニターが円形状に設置されているのがわかった。

 

 

『今回は四方を観客(ゲスト)に囲まれながら、持てる力の全てを発揮して貰う……しかも、ファイト中に照明が当たるのは、何とセンターステージのみと言うこれまた驚きの仕組みだぁ!』

 

 

 ……これはもう、どんな振る舞いをしようが、嫌でも観客の目に晒されると言う事だ。前回だってファイトの様子は、その脳裏に焼き付いている者も少なからず居たはずだ……しかし、今回はそれとは全く程度が違う。

 

 もし仮に実力行使に出ようとした場合、運が悪ければ場外に飛ばされる危険性を孕んでいる。しかも、その程度が本人の抵抗できる力加減を大幅に超えていた場合……大怪我は免れられない。

 

 

「おいおい、ここまでするかよ普通……!」

「やれやれ……これはより一層、気を付けないといけなくなったじゃあねぇか」

 

 

 ……全く、京介の言う通りだよ。

 

 もし当たり所が悪ければ、今後の芸能活動に支障が出る危険性があるし、場合によっては……生命の危険性がある事すらも、この時点で考慮に入れなければならない。

 

 

『さぁてお前ら、ここからは対戦カードの発表だ……耳の穴かっぽじって、よぉ〜く聞けぃ! まずは、先鋒戦!』

 

 

 実況の人がそういうと、ホール全体の照明が落とされ、一人ずつ名前を呼んで紹介をして行った。これは後にわかる事となるのだが、入口付近の電光掲示板下に勝敗予想と記載されたボードがあったのだと言う。既に来場者全員の回答は済んでおり、あとは僕たちが実際にファイトをして、その結果を出すだけみたいで。

 

 

 ……うん、これは企画側に1個文句を入れようかな。

 

 こんな形で露呈するとなれば、前身で多かれ少なかれバッシングを受けた面々にとっては、確実に泣きっ面に蜂だ。……最近は少々目に余る行いも見かけるし、それを知らぬ存ぜぬで過ごさせようなど言語道断だろうしね。

 

 

 そんな事を僕が思っているのを他所に……五分間の休憩の後、チーム対抗戦の火蓋が切って落とされる事となったのだった。




 今回はここまでです。如何でしたか?

 ……えー、作中でも言及がありましたように、次回からはヴァンガードの対戦Partを数話に渡ってお届け致します。誰が誰と戦い、どんなデッキを使うかはある程度制作側の方で協議を重ねておりますので、楽しみにして貰えると幸いです。


 それでは、また次回の更新にて。

 そして今回を持ちまして、2025年の小説投稿はラストとなります。今年も変わらぬご愛顧……誠にありがとうございました。来年もこんな作者ですが、宜しくお願い致します。


【追記】



 この場を借りまして、皆様にお伝えするべき事が一点だけあるのを思い出しましたので、忘れぬうちに共有致します。


 次回よりお届けしますヴァンガード回ですが、本小説のサブタイトルのパターンより外れる形となります。本音を言うと探すのが少し億劫になったとか言う瑣末な理由なのですが、各々の使うデッキやその他諸々を表現する策として、この小説が従来採用している形式はあまり相応しく無いと思った次第です。

 ですので、ヴァンガード回をしている間は、話数表記の頭に番外編を表す旨の表記をさせて頂き、そのうえでサブタイトルを載せてから投稿したいと思います。


 本小説の更新を楽しみにされている方には、少しご不便をおかけする事になりますが、ご了承頂けると幸いです。
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