仮面の慟哭と凶宴   作:咲野 皐月

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 皆様、おはこんばんにちは。

 今回も土曜更新です。



 それでは、本編スタートです。

 最後までごゆっくりお楽しみください。


EX3 溟道は標の先に何を見る①

「……先ずは、大和さんが一勝ね」

「ええ、素晴らしい対戦でした。直前に講習会が開かれていたので、始めは対戦中の流れについて行けるか不安はありましたが」

「ホントホント。麻弥も京介もやる〜☆ アタシもあんなのが直ぐに出来る、とはあまり思わないけど、それでも見ててドキドキしちゃったなー」

 

 

 麻弥と京介の先鋒戦が終わって直ぐの頃、アタシたちは客席に座ってそんな事を話していた。アタシの左隣に座っている友希那や、アタシから見て一番右端に居る紗夜でさえ……行なわれてる最中は息を呑む程に魅入っていたのだから、その様はもう語るまでも無い。

 

 

「あ、あこ……あんなの初めて見ました……」

「はい……。大和さんも、流川さんも……どっちもすごかったです……」

「あははっ、そーだよねー。まあ、アタシも途中から何を言ってるのか分からなかったけど、雰囲気で何となく理解出来たよ。麻弥が勝つ、その瞬間が」

 

 

 ……そう、かく言うアタシもその一人。

 

 あの二人には言わなかったけど、胸の中から込み上げて来る物があった。アタシもいつか、あんな風にやってみたい……そんな感じがした。

 

 

「ところで、リサ」

「んー?」

「次の対戦相手はわかってるのかしら。入口で貰ったパンフレットには記載されていなかったのだけれど……もしかして、次以降も実況の人から伝えられるの?」

「あー、そうかもねー。一戦ごとに休憩を少し挟む、ってなってたからたぶん……『えー、テストテスト……マイクチェックー。あーあーあー』おっ、始まった☆」

 

 

 友希那の問いかけに答えていると、それを遮る様にさっきの女性が出て来てマイクテストをし始めた。……始まるんだ、次の戦いが。

 

 

『さあさあさあ! どんどん続くぜチーム対抗戦! 次にファイトするのは〜、この二人だー!』

 

 

次鋒戦

チームPastel*Palettes 氷川 日菜

VS

チームsumimi 三角 初華

 

 

「……うそっ」

「日菜……あの子ったら、何かやらかさないか私は気が気じゃないわ……!」

 

 

 対戦する両者が発表された時、アタシは思わず開いた口が塞がらなくなり……紗夜は頭を抱え始めた。この分だと相当参ってしまってるみたい。

 

 

「ひ、氷川さん……ちなみに、ですけど……」

「日菜が以前、いつにも増して機嫌悪く帰って来た時があったんです。私は当然気になったので、それとなく日菜の部屋を訪ねてみたら、話を聞く前に門前払いでした」

「そうだったの。それで、日菜のその後は?」

「事ある毎に聞いてみても、私には関係無いからの一点張りで。流石に我慢の限界だったので、白鷺さんに聞いてみようと思ったら……耳を疑う様な言葉を聞いたんです」

 

 

 ……何だろ、耳を疑う様な言葉?

 

 そんな事を頭の片隅に思いながらも、アタシは紗夜から続けられる言葉に耳を傾けた。……すると、飛び出して来たのは。

 

 

「『独り善がりなPastel*Palettesなど、利用する事はおろか、存在価値は無い』と」

 

 

 ……えっ、ちょっと待って。

 

 それってさ、完全に喧嘩を売ってる事にならない?!

 

 

「もちろん、私は白鷺さんから聞いただけなので、本人が一番この事には理解があるでしょう。ですが、その言葉を聞いた時、自分が言われた訳では無いのに……無性に腹が立って来たんです。そしてその場に自分が居なかった事を、心底悔やみました。あんな事を平気で言える人が居るのだと……絶望してしまうくらいには」

 

 

 ……日菜……。

 

 


 

 

「へー、あたしの相手って初華ちゃんなんだー?」

「……不満ですか?」

「別にいいよー。まあ、あたしが負けるなんて絶ッ対に有り得ないけどねッ!」

 

 

 あたしと初華ちゃんはセンターステージに立ち、ファーストヴァンガードを伏せて向かい合った。その後に山札をシャッフルしたり、手札の交換も恙無く終わらせて、あとは開始の合図を待つだけになった。

 

 

 ……負けるもんか、彩ちゃんを思いっきり貶して……あたしたちの事をバカにしたくせに、無様に解散なんて醜態を晒したアイドルなんかに!

 

 

「コイントスの結果、先攻はチームPastel*Palettes 氷川 日菜となった……それじゃ行くぞお前らぁぁぁぁ! チーム対抗戦、次鋒戦! READY?」

 

 

スタンドアップ・ヴァンガード!

 

 

ブリッツチーフメカニック バートン

占術の賢者 スーロン

 

 

 初華ちゃんのデッキは、千聖ちゃんと同じ国家かー。

 

 最初に彩ちゃんを完膚無きまでに叩き潰した、あのデッキじゃないのは残念だけど……あたし、そんなに小細工に付き合ってあげるほどお人好しじゃないんだよねー!

 

 

「あたしの先攻。スタンド&ドロー、手札を1枚破棄して《ブリッツベストプログラマー ストラーザ》にライド。ライドした時《エネルギージェネレーター》をセット。ここで手札から破棄した《ブリッツセールス アスティル》のスキル発動。自身をソウルに入れて、CC1かEC2できるよ。あたしはEC2を選択」

(手札5→6→5/ドロップ0→1→0)

(ソウル0→1→2/エネルギー0→2)

 

「最初からEC効果……エネルギーを多めに使うデッキなんですか?」

「ほざいてなよ。もし知ってたとしても、初華ちゃんには教えてあげないから。あたしはこれでターンエンド」

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、初華ちゃんの眉がピクリと動いた気がした。この手のゲームは使い手次第になるけど、高度な心理戦の一面を持っていたりする。……もしかして、今からイライラを貯めさせておけば、何れどこかで爆発する……?

 

 

 あっ、いい事を思い付いちゃった♪

 

 じゃあ今日は初華ちゃんを使って、あたしの好きに遊んじゃおっかなー!

 

 

「私のターンです。ドロー、手札を1枚捨てて《霊薬の賢者 エリロン》にライド。私も《エネルギージェネレーター》をセットして、今回は私が後攻なのでEC3。続けてスーロンのスキルで、1枚ドロー。これでバトルに入ります、エリロンで攻撃」

(手札5→6→5→6/ドロップ0→1)

(ソウル0→1)(エネルギー0→3)

 

「んー、ここは〜。《ブリッツドクター ゲイズン》でガードしよっかな」

(手札5→4/ドロップ0→1)

 

「……ドライブチェックです。《加護の魔法 プロロビ》。ゲット・ドロートリガー。エリロンのパワー+10000、デッキから1枚ドロー。ターンエンドです」

(手札6→7→8)

 

 

 そんな初華ちゃんは、やる事をやって早々とあたしに向かって殴って来た。ドロートリガーで手札の補充を済ませて、次のターンの為の準備を確実にして来てる。……確かに彩ちゃんを盛大に負かした実力はあるし、あたしもちょっと気を抜けば間違い無くやられてしまう。

 

 

 でも、それって冷静に立ち回れてたら、の話。

 

 じゃあ……すこーしだけ、揺さぶりかけてみよっかー!

 

 

「あたしのターン。スタンド&ドロー、EC3。手札を1枚破棄して《ブリッツ主任研究員 ユーバ》にライド。ストラーザのスキル発動。SB1をコストに支払って、山札から相手のヴァンガードのグレード以下のプロダクトカードを1枚手札に加える。……あたしが手札に加えるのは、グレード1の《機動犬舎 アインガルテン》」

(手札4→5→4→5/ドロップ1→2→3)

(ソウル2→3→2)(エネルギー2→5)

 

 

「日菜の方も、立ち上がりは順調ね」

「ええ。……でも、少し嫌な予感が拭いきれません」

 

 

「メインフェイズ。手札から《強襲飛翔母艦 リューべツァール》をオーダーゾーンにセット。このカードをセットした時、デッキから1枚ドローして、その後にSC1するよ」

(手札5→4→5/ソウル2→3)

(オーダー0→1)

 

 

【ソウルチャージされたカード】

《強襲飛翔母艦 リューべツァール》

 

 

「……ねーねー、初華ちゃん」

「何ですか?」

 

 

 あたしはユーバに手を添えるのと同時に、初華ちゃんに話しかけた。対する彼女はと言うと、毅然とした対応で何を聞かれても大丈夫ですよ、って面持ちだった。

 

 

 ふーん、そう来るんだぁ……。

 

 でも、そんな余裕で居られるのは今のうちだよー?

 

 

「初華ちゃんにとってさー、バンドってなーにー?」

「……なぜその事を聞くんですか?」

「あたし、他人が何を考えてるかわかんないから、目に映る全てが面白く見えるんだよねー。特に彩ちゃんなんて、いつも見ててすっごく面白いし、一緒に居ると色んなるんっ♪てする事にも出会えるんだー」

 

 

 ……あーあー、無反応かー。

 

 少しはこの気持ちを共有できるかなー、と思ったけど、結局初華ちゃんにとっては、何処まで行っても祥子ちゃんが第一でしか無い。たぶんこの感じだと、まなちゃんもかわいそー。せっかくユニットとして活動してるのに、その相方から見てすら貰えないなんて。

 

 

 まあ、さっくんがそれを見逃す様な事は勿論しないんだろうから……まなちゃんの事に関しては、余計なお世話かもしれないけど。でも、あたしとしては、初華ちゃん……ひいては、その後ろに居る祥子ちゃん達に苛立ってるんだよねー。

 

 

「それを初華ちゃんは見て見ぬフリ。こんないい加減な子が相方なんて、まなちゃんかわいそー。最悪ー」

「……何が言いたいんですか」

「要はさー、初華ちゃんって。実は……祥子ちゃん以外がどうなろうと、心底」

 

 

どうでも良いんでしょー?

 

 

「……っ、それはどう言う意味ですか?」

「言葉通りの意味だよ。それとも、こんな至近距離で事実を言われたのに、我関せずとシカトを決め込んだとかそんな感じー?」

「御託は結構です、本当の事を言ってください」

「ちぇっ、面白くなーい!」

 

 

 なーんだ、すっごく面白くない。

 

 事前に予め全ての回答を決めていた様な、模範解答の様な受け応え。多少取り乱しはしたけど、それも直ぐに立ち直って、毅然とした態度で反論して来た。

 

 

 ……でも、突破口なら……ある。

 

 

「ユーバで攻撃。ユーバのスキルで、EB3をコストに支払う事で、リューべツァールを稼働させるよ。稼働させた時、それがバトルフェイズの場合は、デッキから1枚ドロー」

(手札5→6)(エネルギー5→2)

 

「ノーガードです」

「ドライブチェック《警邏ロボ デカルコップ》。ゲット・クリティカルトリガー! ユーバのパワー+10000、クリティカル+1!」

(手札6→7)

 

「……ダメージチェックです。1点目《流記の学士 ライティン》。2点目《龍樹の落胤 エレメ・ダァト》。トリガー無し」

(ダメージ0→2)

 

「ターンエンド」

 

 

 あたしの初手回りは順調に行ってるし、それは初華ちゃんだって同じはず。恐らくだけど……あのデッキはさっくんが手間暇掛けて確りチューニングした物だから、想定外の行動をしたとしても予測の範囲内だと思う。

 

 きょーくんがついさっき使っていたデッキも、元はさっくんの使っていた物……そう考えたら、あの殺意の高さも妙に納得してしまうけれども。

 

 

「私のターンです。スタンド&ドロー、EC3。手札を1枚捨てて《強壮の賢者 ストグロン》にライド。ここでエリロンのスキル発動。ストグロンにライドされた時、私はノーマルユニットかトリガーユニットのどちらかを宣言します。その後山札の一番上を捲ってそれを公開し、そのカードが宣言したカードタイプであれば手札に加えます。もし加えなかった場合は、それをソウルか山札の上に置きます」

(手札8→9→8/ドロップ1→2)

(ソウル1→2)(エネルギー3→6)

 

「良いよ、どっちを宣言するのー?」

「私が宣言するのは……ノーマルユニットです」

 

 

 ふーん、ノーマルユニットかぁ……。

 

 まあ、予想する所としては無難だよね。ノーマルユニットの方が、トリガーユニットより圧倒的に数が多い。トリガーは全部で16枚あって、そのうち前のターンで1枚は見えた……だから残りは15枚。

 

 そしてそこから、最初の手札交換の際に何枚手札に引き込んでしまってるかを、ある程度計算に入れないと行けないから……。

 

 

「……チェック」

 

 

【デッキトップ】

《龍樹の落胤 ペガス・ディーシェス》

 

 

「へぇ、良い勘するー」

「……公開されたペガス・ディーシェスは、そのまま手札に加わります。そして、ライドコストとして破棄された《龍樹の落胤 エレメ・ダァト》のスキル発動。山札の上から7枚を見て、その中にあるこのカードと別名の、カード名に龍樹マスクスを含むユニットカードか、《マスク・オブ・ヒュドラグルム》を1枚まで選んで公開して、手札に加えます。……チェック」

(手札8→9)

 

 

【山札の上から7枚】

《講究の学士 レクチャス》

《龍樹の落胤 エレメ・ダァト》

《パラディウムジール・ドラゴン》

《燦爛たる光明の宝剣》

《加護の魔法 プロロビ》

《天道の大賢者 ソルレアロン》

《焼尽の精霊王 ヴァルナート》

 

 

「……ヒット無し。山札に戻してシャッフルします」

 

 

 あーあー、せっかくのチャンスを無駄にしちゃったー。

 

 

「《龍樹の落胤 ペガス・ディーシェス》をコール。その登場時にスキル発動。EB3をコストに支払って、山札から《マスク・オブ・ヒュドラグルム》を手札に加えます。そしてそのまま起動効果も使用。CB1をコストに支払って、自身をバインド。そうしたら先ずは龍樹マーカーを右前のサークルに置き、山札の上から7枚を見て、その中にあるカード名にマスクスグリフォギィラを含むカードを1枚手札に加える事が出来ます」

(手札9→8→9)(バインド0→1)

(エネルギー6→3)

 

「へぇ、またデッキの中身を見るんだー?」

「……何か問題でも」

「良いよ、続けてー?」

 

 

 また初華ちゃんは性懲りも無く山札を見て、対象のカードを探そうとして来た。どうせヒットしないのに……と思ったあたしの思考は、その次の言葉で否定された。

 

 

「この時、バインドゾーンにあるペガス・ディーシェスが1枚以下だった時は……山札の上から7枚では無く、山札を全て見る事が出来ます」

 

 

 なるほどねー、そう言う事かぁ……。

 

 

「私は山札から《溟道の大賢者 ソルレアロン・マスクス》を手札に加えて、残りをシャッフルします。……バトルです、ストグロンで攻撃」

(手札9→10)

 

「ノーガード」

「ドライブチェック《ブレードフェザー・ドラゴン》。ゲット・クリティカルトリガー。ストグロンのパワー+10000、クリティカル+1」

(手札10→11)

 

「ダメージチェック。1点目《ブリッツオペレーター トゥール》。2点目《アメリオレート・コネクター》。ゲット・ドロートリガー。ユーバのパワー+10000、1枚ドロー」

(手札7→8)(ダメージ0→2)

 

「ターンエンド」

 

 

 痛ったぁ……さすが、やってくれる……。

 

 

 お返しと言わんばかりにクリティカルを引いて来たし、もう予めあたしがどんなデッキを使うのかは、既に知ってる感じかな。リアガードを敢えて1枚だけコールして、直ぐ様退却させたのは盤面干渉効果から逃がす為。

 

 こう言うのを見逃すと、後々大きなミスに繋がる事なんてよくある事。

 

 

 ……でも、今回のあたしは……違う!

 

 

「あたしのターン。スタンド&ドロー、EC3。手札を1枚破棄して……あたしの頼れるCEO、その勇姿をしかと見よ!」

(手札8→9→8/ドロップ3→4)

(ソウル3→4)(エネルギー2→5)

 

 

我が決断、未踏の彼方を切り拓く!

《標の運命者 ヴェルストラ “ブリッツ・アームズ”》に、

ライド!




 今回はここまでです。如何でしたか?

 次回はこの試合の決着までやって、その後の話ができると良いかなと思ってます。


 それでは、また次回の更新にてお会いしましょう。
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