予定通りに2週間のスパンを経まして、本日……凶宴の2話目をお届けしたいと思います。実はこの前書きを書く前に、新春第発表会をサッとライブ配信で見て来たので、ちょっとその余韻を纏いながらになるのはご了承ください。
今回はアニメでは1話の後半に当たる内容から、そのまま2話の内容に入って行きたいと思っていますので、最後までお付き合いの程をよろしくお願いします。
それでは……本編スタートです。
最後には軽くお知らせもしたいと思いますので、どうか本編をご覧になった後も、どうかブラウザバックせず……後書きの方も読んで貰えると嬉しいです。
【G-WAVE】でのライブから数日後……今日は大学の講義に出ていた訳ではなくって、初華が今現在もう一つ活動しているバンドである、sumimiの仕事に参加しているのだ。
幸い、この時間には講義は入れてなかったので、出欠に関しては特に支障はなかった。だけど今回の仕事の内容がいつもより多少多めだったので少し遅れていた。集合時間には少しギリギリになるけど、仕方がないと感じた僕は車を用意しようと準備をしていたのだが……。
「颯樹先輩は先に行っててください。私は後から必ず合流しますので」
そんな言葉で初華に先に行く様に促された。流石に彼女を置いて先に行くのは罪悪感を抱くけど、此方としてはライブの準備があるため、初華に一瞥すると共にdubまでのタクシー代を渡して先に行く事になった。
今は車を走らせているが、不幸中の幸いか……道路は渋滞していなかったので、ものの数十分で到着する事が出来た。
そうして辿り着くと、先には獅音と千歌……そして海鈴が居た為、詫びの一言を三人に入れた後、ライブの打ち合わせに取り掛かった。聞けば祥子がまだ来ていないみたいで、初華と同じ様に諸用を片付けてから来るのだろうと思っていた。
「では、私は祐天寺さんの監視をしながら、リハーサルの方に入ります。颯樹と八幡さんに雨宮さんは、裏の機材などを調節して頂けますか。手分けすれば程なく終わるはずです」
そう言って千歌はステージ袖の方に向かい、先に来ているにゃむと睦に指示をかけてリハーサルをしに行った。その間に僕たちは事前に言われた通り、ステージ裏にある一室で機材調整をしていた。音響機器等の精密機械の調整は、かつて所属していたパスパレで麻弥に享受を貰っていたので、始めたての頃よりはスムーズに出来ていた。
「さすがですね、颯樹先輩。手際がとても良いです」
「お褒めに預かりどうも。海鈴だって、それは同じだよ。たくさんバンドのサポートに入った賜物かな」
「いえ、褒められる事じゃありません。私にとってはごく普通の事なんですから」
「そっか。無理はしないでね、僕や獅音も居るし。それに他のメンバーだって」
僕が海鈴にその言葉をかけると、何処か暗い表情を彼女はしてしまった。流石にズケズケと踏み込んで無粋が過ぎたかな、とは思っていたけれど……それは直後の海鈴の表情を見て杞憂に終わった。
そして初華が到着し、その後遅れて祥子も到着して……少しした頃だった。
「すみません、この場は少し席を外してくれませんか」
何とその言葉を言って来たのは、獅音だった。
彼から見れば祥子の様子で一個一個は特に気にならなかったものの、何処か苛立ちを感じていると言った具合だったのだ。僕もだいたいこう言う時は、部外者を外に出す派のため……今の祥子の気持ちを一番理解できる獅音にここは任せても良いかと考えていた。
「わかった」
「良いのっ、さっきー!」
「ただし時間は30分。それ以上の譲歩は無いと思え」
「ありがとうございます」
そう言って僕は祥子と獅音を控え室に残して、他のメンバーと一緒に最終調整を兼ねた打ち合わせを行なった。所々でにゃむが暴れそうにはなっていたけれど、それは千歌が睨みを利かせる事で何とか制止出来ていた。
そうして約束の30分が過ぎ、獅音と祥子が戻ってきたのを皮切りに……僕たちは各々の衣装に身を包み、仮面を付けて円陣を組んでいた。
「皆さま、準備は出来まして?」
獅音と一頻り話して何処かスッキリしたのか、祥子はオブリビオニスとしてのスイッチを入れ、完全に気持ちをライブモードに切り替えていた。そしてそのまま僕たちの方を見回し、確認を促していた。
「……結構。では、参りましょう」
そんなオブリビオニスの言葉と共に、俺とオディウミスは不測の事態に備えて舞台袖に待機し……ソリトゥスとオブリビオニスを先頭に、メンバーたちはステージの方に向かって行った。
……だが、俺たちは、この数分後に行なわれる
「お前はッ! 何て事をしてくれたんだ、こんな大事な時にッッッッッッ!」
……結果から行けば、惨憺たる物だった。
オブリビオニスと俺が事前に決めたシナリオの中に、アモーリスがとんでもない大爆弾を投下したのだ。
その時の衝撃が微々たる物であればまだ良かった。
だが、アモーリスが敢行した強引な剥ぎ取り行為は……その場に居た全ての者を震撼させ、ライブどころでは無い状態にしてしまった。おかげでドロリスを始めとしたオブリビオニス以外の全ての素性が白日の下に晒され、
「だってさー」
「だっても何もあるか! お前がやった事がどれだけ重要な事なのか、その頭で考えて行動したのかよ!」
……自分でも酷い剣幕だと思う。
しかし、あの場で起こった事の状況説明をするにはこれくらいがちょうど良いだろう。不平不満などあった物じゃないし、元凶にとっては良い薬だ。
「と言う事です、祐天寺さん。何か反論はありまして?」
「……ごめんなさい」
「謝って済む様ならこんな始末にはなってないんだよ!」
そう言って僕は、自らのスマホの電源を付けてスレッドがあるサイトを開いた。するとそこには……。
「……な、何ですかこれはっ!」
「とうとう明るみに出ましたわね。全く、こんなシナリオではありませんでしたのに……」
「そうだね……。それもこれも、全部にゃむさんが」
「止せ、これ以上にゃむを責めても解決する訳じゃない」
千歌が自分でそのサイトを開いて確認したのか、驚きとも絶望とも取れる表情になった。この事案を引き起こしたのは確かににゃむなので、責める矛先はにゃむで間違い無い。先程僕が盛大に叱りつけたので、これ以上の粗相はやらかさないはずだと思っているが。
「あっ、ぁぁぁっ……ぁぁぁっ……」
「睦ちゃん、気を確り。もう大丈夫だよ」
「しかし弱りましたね、颯樹先輩。こうなるとこの先が心配ですよ」
「そうだね……。ステージに立つ海鈴たちは勿論として、こうなってしまうと、サポーターとして入っている僕や千歌も危なくなる。それに一度起こった波乱は、余程の事が無い限りは時間経過での解決が難しい。せめて何か対策を考えないと……はい」
この状況を見た僕と海鈴は、千歌をその場に呼び寄せて今後の事を話し合おうとしていた。しかし、それを遮る様にドアがノックされた為……僕は二人に断りを入れて対応をする事にした。
「邪魔する」
「京介。すまない、今取り込み中で」
「こっちもだ。さっき愛音に見つかって、そしたら……」
「颯樹さんと獅音くんはここに……はっ!」
……マズイ。寄りに寄って、そよに見つかるかよッ!?
先程扉をノックして来た京介より先に、何やら血相を変えた様相で飛び込んで来たのは、なんとそよだった。彼女が進んでこの会場に居る事に些か疑問を覚えたのだが、誘われる経緯を当ってみた所……同じバンドメンバーの愛音が言い出しっぺなら有り得そうだ、と思えていた。
そんな彼女はと言うと、この場に集っているメンバーの顔触れを見て、顔を伏せたままある所に向かっていた。
「何ですか、そよさん」
「祥ちゃん……これは一体、何のつもり?」
「なんのつもり、と仰られましても。私たちは先程までライブをしていたのですわ。それは貴女もご存知ではありませんか?」
「……減らず口、をっ!」
そう言うや否や、そよは祥子の胸倉を掴んでその場に持ち上げていた。
「祥子ちゃん! くっ、やめてくださいそよさん!」
「獅音くんはどう言うつもり! 立希ちゃんに追い出された腹いせに、祥ちゃんの所に居るなんて!」
「そ、それは……」
「颯樹さんもです! なんで貴方がここに居るんですか、パスパレの先輩方が心配します」
「長崎さん、その手を離しなさい」
今にも人をも殺しかねない姿のそよに、待ったを掛けたのは千歌だった。彼女は普段こそ冷静で聡明ではあるが……何かの拍子に怒らせでもしたら、幼馴染である僕ですら止める事が難しくなってしまう程だ。
その証拠に……鬼気迫る表情のそよを見ても、何ら臆する様子は無く……それどころか、その勢いごと食らってしまいかねないくらいの目付きをしていた。
「貴女……どう言うつもりなんですか! このまま祥ちゃんの好き勝手にさせて」
「二度目の警告です」
「くっ……!」
「お聞きになりまして? その手を下ろしてください、私に責められる謂れはありませんわ」
「……っ! ……勝手にすれば!」
そう言って捨て台詞を吐いたそよは、そのままの勢いで祥子を床に叩き付けた。その近くには獅音が居たので、何とか尻餅を着くくらいで助かっては居たのだが……未だに憤りは冷める事が無く、絶えずそよの中で燻り続けていた。
「そんなに調子を乱すとは。私や颯樹がこの場に存在して居る事が……大層不満ですか?」
「貴女には関係ありません。私は……颯樹さんが何故ここに居るのか、それを問いたいだけです。別に貴女が祥ちゃんの所に居ても居なくても至極どうでも良いので」
「気の短い女性は愛想を尽かされますよ」
「……っ、さっきから下手に出ていれば余計な口を」
「「……っ!」」
「千歌、良い。僕から説明する。……僕は祥子の指示でこっちに居るんじゃない……自分の意志でここに居る。それに、契約なんでね」
「け、契約……?」
「そよさんがご存知無いのも無理はありませんわ」
そよが漸く振り絞って出した声に、祥子は毅然とした態度で返答をした。……そう、あの場にそよを始めとしたMyGO!!!!!のメンバーは居なかった。だから、ライブ直後に何があったのかは勿論知る訳が無い。
「先日、武道館でPastel*PalettesとAve Mujicaが、対バンライブを行なったのは……もう耳に入っていますわよね?」
「……愛音ちゃんから聞かされた」
「千早さん……あまりにもお喋り過ぎるのは、少し目に余りますわ。……っと、そうでは無くて。パスパレの皆さんには、ある条件を呑んで頂いた上で私たちとライブを行ないました」
「ある、条件?」
「……そんなの、ただパスパレの人たちが損をしているだけじゃない! それに対して、あの人たちは何も言わなかったの!」
「いいえ、言って来ましたわ。ですが、黙らせました……圧倒的な力の差を見せつけて」
祥子から齎される覆しきれない事実が、そよの顔を更に青ざめさせて行く。自分と祥子が中学の頃に
「何、それ……じゃあ、あの時獅音くんが颯樹さんと一緒にライブハウスに来てたのは!」
「お察しの通り、あの時から既に……」
「そ、そんな……っ!」
祥子からの言葉を受け、段々と信じられないと言う面持ちになるのが分かった。昨今のガールズバンドを渦巻く環境は、勢いのある新人に古参が追い抜かれる事が普通に有り得る位なので、心の何処かで理解出来てはいたものの……実際にその様な出来事が起こっていたのだ、と言う事には驚きを隠せないだろう。
「……祥ちゃん、やっぱり私は……貴女の事が許せない。獅音くんだけならふーんと見逃せた……。確かにMyGO!!!!!で一緒に活動はしてたし、やりきれない思いがあるかと言われたら絶対に違う。でも、もう……我慢の限界」
「長崎さん、何か言いたい事がある様ですが……この場はお引き取り願います。伝言でしたら私が代わりに……痛ッ!」
控え室からの退室を伝えようとした千歌の手を、そよは思いっきり払い除けた。その影響で千歌は、叩かれた右の手の平を抑えてその場に蹲ってしまった。そしてそんな彼女の様子も気に留めず、そよは祥子と睨み合う形になった。
……全くもう、仕方ないな……。
「……僕はさ、そこまで期待を寄せられる様な大層な人間じゃない」
僕の発した言葉に、この場にいる千歌以外の全員の顔が驚愕に変わる。それは今まで僕が口を挟んで来なかった事が原因なのだろうが……こうなってしまっては、もう致し方無しだろう。
「僕はね、みんなみたいに何か光る物がある訳じゃない。ただ誰にでも出来る事を、必死こいて努力して来た側の人間だよ。分かるかな、白鷺千聖の幼馴染と言うだけで持て囃され……その挙句有名人とお近付きになりたいが為に利用され、果てには誰かの言いなりにならなければ何かを守る事すら出来ない様な奴の苦労がさ!」
僕自身……さっきの段階で済まされるのなら、ここまで感情的になる事は無かったのかもしれない。でも、もう良い頃合だ。隠してたって何れ白日の下に晒されるのなら、この場でぶち撒けてしまう方が都合が良い。
「……申し訳ありません、颯樹さん。私がもっと、こんな事にならない様に気をつけていたら」
「祥子が謝る必要は無い。全ては僕の責任だ」
「しかし!」
「……良いよ、あの場で千歌が語らなかった事……知りたいんでしょ?」
そんな僕の言葉に、空かさず反応した存在が居た。
「……千歌先輩が、語らなかった……事?」
「私もこんな時が来るのは避けたかった。ですが、もう四の五の言ってる暇は無いみたいですね」
「……千歌さん、お聞きしてもよろしくて?」
「これはどうか……皆さんの胸に留めておくだけにしてください。この情報が何らかの拍子に広がれば今度こそ……」
「……よろしいですか?」
その千歌が発した言葉に、祥子を始めとした全員が首肯をする事で同意を示した。内心何が何だかわかってないのが約一名居はしたが、この場でそれを聞くだけ時間の無駄だろう。
「そよりーん、早く行こ〜?」
「愛音ちゃん、今すぐここから離れてッ!」
「ふぇ?」
僕は……千歌からの合図を受け、話し始めた。
今回はここまでです。如何でしたか?
次回の更新は、今回と同じ2週間のスパンでは無く……1週間後の投稿になります(予定にはなりますが)。その時までに書きあげて投稿したいと思いますので、更新の通知をお待ち頂きます様お願い致します。
次回の内容は、本編中で語られなかった事を別キャラの視点で振り返りながら……そのままアニメに準拠した内容をお届けする予定ですので、お楽しみに。
それでは、また次回の更新でお会いしましょう。