「あたしのターン。スタンド&ドロー、EC3。手札を1枚破棄して……あたしの頼れるCEO、その勇姿をしかと見よ!」
(手札8→9→8/ドロップ3→4)
(ソウル3→4)(エネルギー2→5)
「標の、運命者……」
「この時にユーバのスキル発動。このユニットがヴェルストラを含む【ディヴァインスキル】を持つグレード3以上にライドされた時、SB1と手札の1枚破棄をコストに支払って、山札からオーダーゾーンに同名の無い、それぞれ別名のプロダクトカード2枚を手札に加えるよ!」
(手札8→7/ドロップ4→5→6)
(ソウル4→3)
さーて、何を加えよっかなー♪
まあ、退却効果を警戒されてるのは予想通りだけど……せっかく先に全力を出せるのなら、相手にガード値を多めに使わせても良いかも♪
「あたしは山札から《極大衛星兵器 オイリアンテ》と《殲滅機動要塞 フライシュッツ・マクシム》を手札に加えるよ。そして手札から棄てられた《ブリッツパブリシスト フェンリッタ》のスキル発動。このカードが手札から破棄された時、あたしのヴァンガードがヴェルストラを含むグレード3以上なら、自身をコール!」
(手札7→9/ドロップ6→5)
「くっ……ですが、それだけならまだ!」
「特別CEO権限……」
「CB1をコストに支払って、手札の《極大衛星兵器 オイリアンテ》と《殲滅機動要塞 フライシュッツ・マクシム》をオーダーゾーンにセット。この効果で2枚置いた時、プロダクトカードを1枚選んで稼働させる……あたしが稼働させるのは、フライシュッツ・マクシム!」
(手札9→7)(オーダー1→3)
「くっ……!」
「退却させるリアガードは居ないけど、相手ヴァンガードのパワー-5000! 更にオイリアンテのスキルに因り、1枚ドローしてEC3!」
(手札7→8)(エネルギー5→8)
「始まった、日菜ちゃんの十八番!」
「それにグレードも先行してるから、最大理論値を出すとパワーは-15000まで下がる……単純に考えると、アメリオレートが攻撃したなら、初華ちゃんはそれを凌ぐなら最低でも20000のガード値を払わなければいけないわね」
「《オペレート・マスター フライハイツ》をコール。登場した時にスキル発動! CB1と手札の1枚破棄をコストに支払い、山札からヴァンガードと同名か、プロダクトカード1枚を手札に加えるよ。……あたしが加えるのは《標の運命者 ヴェルストラ “ブリッツ・アームズ”》!」
(手札8→7→6→7/ドロップ5→6)
「これでペルソナライドの準備も万端、ですわね」
「ああ。そのうえ、手札にプロダクトカードがあれば、この後にセットできるが……この分だと当然」
「その後、手札からプロダクトカードを1枚セットできる……フライシュッツ・マクシムをオーダーゾーンにセット!」
(手札7→6)(オーダー3→4)
「くぅぅっ……!」
あたしのカードを繰り出す様を見て、初華ちゃんの顔が次第に予想外と言った物に変わって行った。その表情はここまでやるなんて聞いてないって感じだろうし、もっと言うなら苦戦するはずの無い相手として見ていたのかもしれない……。
あっ、それだったらごめんね〜♪
実の事を言うとあたし、初華ちゃんの思った通りに動いてあげられるほど……そこまでお人好しじゃないんだー。
「この時、手札から棄てられたアスティルのスキル発動。自身をソウルに入れてCC1か、EC2。今回はCC1の方を選ぼっかなー♪」
(ソウル3→4)
「……何が、狙いですか」
「えっ?」
リアガードを並べて攻めて行こうと思ったら、初華ちゃんからそんな事を聞かれた。苦し紛れの舌戦であたしの戦意を削ぐつもりなんだろうけど……それってさ、自分の首を自分で絞めてるだけって分からないのかなー。
「べっつにー? あたしは初華ちゃんと張り合うつもり無いし、正直初華ちゃんの事なんて眼中に無いんだよねー」
「……っ、さっきあそこまで言っておいて随分勝手な言い草ですね。私の何を知ってるんですか?」
「あー、興味無いって言ったばっかりなのになー」
「答えて下さい」
「んもー、しょーがないなー」
……あーあー、これ本気で怒らせちゃうかも。
おねーちゃんには怒る気持ちはわかるけど、相手の神経を逆撫でするような事は言わないでって言われてるけど……もう、こうなったら仕方ないよね。
『!?』
「あ、あの子ったら……何を言い出すのよ!」
「ちょっ、紗夜!?」
「あの子を止めてきます、今井さんはここに居て下さい!」
「ちょっと、紗夜ーーーー!?」
「……それは、本気で言ってるんですか」
「だってー、これ以上初華ちゃんとやっても1ミリも楽しくないんだもん。まなちゃんと一緒にアイドルをしてたのは、祥子ちゃんに自分を見つけて貰う為……要は、相方を使い捨ての駒だと思ってた訳でしょー?」
「う、ういちゃん……じょ、冗談……だよね……?」
「(あのアホ……何て事を言いやがるッ!)」
「ひ、日菜ちゃんっ!?」
「あれは言い過ぎよ、何かしらの報復があっても文句は言えないわ」
「そしてそんな目的も果たして、楽しくバンド活動してたんだよねー。でも、そのバンドはもうおしまーい!」
「……っ!」
「ねっ、何をこれ以上頑張る必要があるのかなー?」
「……黙れ……」
「祥子ちゃんとバンドする為に頑張って、その頼みの祥子ちゃんは今や何処にいるかわかんない……そんな状況で、アイドルを続ける意味なんてあるの?」
「お前には関係無い……」
「あはっ、もしかしたら獅音くんとそのまま駆け落ちしてたりしてーっ! それならよくわかるよ、だって今の初華ちゃんからは全くるんっ♪てしないんだもん!」
……それが、あたしの覚えている最後だった。
記憶が途切れる前に経験していたのは、右頬に感じる強烈な痛みと、左側頭部に強く響いた鈍い音だったのは覚えてる。薄れ行く意識の中で彩ちゃん達が駆け寄って、あたしを抱えてくれていた……そして、再び目を覚ました時は。
「……ん、んん……」
「日菜ちゃんっ!」
「気が付いたのね、大事にならなくて良かったわ」
「あ、あれ……あたし……」
「ここは医務室でしてよ、氷川 日菜さん」
そう言ってベッドの前にあるカーテンレールを開けて、あたしたち三人の前に姿を現したのは……美優ちゃんだった。口調を聞いてると、何処と無く祥子ちゃんを思い起こすけど……その視線はただ真っ直ぐあたしの方を見ていた。
「貴女は初華さんから平手打ちを喰らい、その衝撃でステージから落下したのですわ。幸いな事に軽く気を失う程度で済みましたので、その後の処置は安静と言う事で落ち着きましてよ」
「あ、ありがとうございます……! あ、あの……」
「私たちの大切なメンバーの怪我を診て下さって、本当にありがとうございました。それで、結果は……」
そうだ……あたしは初華ちゃんと、さっきまでファイトをしていた。あの時頬を叩かれた勢いで手札を落としちゃって、全てが有耶無耶になってしまってたんだ……。
「結果から申し上げますわ。次鋒戦は両者に過失があった事が正式に認められ、無効となりました。因ってゲームカウントは1対0。パスパレの皆さんが1点差を付けています」
「そ、そうですか……」
「私はここで席を外しますが、貴女には面会を希望されてる方がいらっしゃいますわ。その方とお会いになってくださいませ」
……そう、だよね……。
「わかったよ……」
「では、私はこれで。……それと白鷺 千聖さん」
「何かしら」
「少し……私とお話しませんこと?」
そんな会話の後に、千聖ちゃんと美優ちゃんは医務室を後にして行った。これは後々に聞く事となるんだけど、どうやら美優ちゃんはかなり良い所の出身で、さっくんから指示を受けて医務室を特別に借りる事ができていたんだとか。
すごいよねー、祥子ちゃんとは大違い。
なんてあたしが思うより先に、勢いよく美優ちゃんと入れ替わりで医務室に入って来たおねーちゃんに、さっき叩かれた所とは逆の頬を引っ叩かれちゃった。
……うん、これに懲りたら、少し人を揶揄うのはやめよっかなー。
「……さっきはありがとうございました。パスパレの大事なギタリストですから」
「ご心配には及びませんわ」
美優ちゃんと二人っきりで話がしたいというのに、私は何故こんな茶番を演じているのかしら。此方としては早く終わらせて欲しいのだけれど……。
「それで白鷺さん。貴女は早く本題に入って欲しい……遠回しにそう顔に書いているように思えますが?」
この子と来たら……! どれだけ人の揚げ足を取ろうとするのかしら、身勝手にも程があるわ。
「……そうね。単刀直入に言うわ」
「目的?それはなんの事でしょう?」
この子、あくまでもシラを切る気ね……。だったら。
「……貴女が何も言わないのは理解したわ。それならファイトの時に貴女の醜態を公衆の面前で晒した上で、勝利を勝ち取るとするわ」
そう。この子の考えている事を白日の元に晒せば、これ以上何を考えても出来る事は限られてくる。この女の顔に泥を塗ってから、私が勝利を掴み取ってみせるわ。
「……それは私に対しての挑発、と捉えてもよろしいのでしょうか? それでしたら貴女のしている事は、先程貴女の仲間がしていた愚行と同じでしてよ。それなら貴女は『同じ穴の狢』……になってしまいますわ」
ぐっ……確かに痛い所を突いてくるわね。日菜ちゃんと同じで挑発しているかもしれない……けど、この子ならそんなに痛手にならない上に言い返してこないはず。
なら、それを逆手に取らせて貰うわ。
「あら、ごめんなさい。でも私が言った事に対して貴女は即座にその場から立ち去って、近くの係員に告げ口したり無視すればいいはずよ。でもそれをしない、と言う事は貴女自身、
私がそう言うと美優ちゃんはピクリと止まった。どうやら私の指摘が効いてるみたいね。それならチャンス。
「そう言うのを『同じ穴の狢』と言うのよ。今さっき投げた貴女がブーメランが、自分に突き刺さった感想は無いかしら? 今なら私の心の中だけに留めておくわ。安心なさい、誰にも言い触らしたりしないから」
そうだ……私がそうだとしたら、それは貴女も同じ事が言えるはず。もしそうであるなら、貴女は私に対してとやかく言える立場じゃなくなる上に、見方を変えれば『颯樹に相応しく無い女』とも捉えられる。
「……わかりましたわ。ここは穏やかに丸く収めたかったのですが、貴女がその気であるなら、此方としても強硬策に出る必要性がありますわね。先に忠告しておきますが、私を怒らせるとロクな目に遭いませんわよ」
美優ちゃんに対しては地雷だったようだけど、そんなの関係無いわ。貴女だって私の地雷を踏んだじゃない。そうなったら貴女の地雷を踏み抜いてあげるわ!
「そんな事、やれるものならやってみなさい。ただし、貴女にそうする覚悟があるなら話は別だけど」
「ご安心を。私に楯突くと言う事は、颯樹様を侮辱するのと同じ愚行……完膚無きまでに叩き潰してご覧に入れますわ」
「私もよ」
そうだ。此処まで来たら私達がやるのはたった一つ。
「それだけ気合が入れば充分でしょう。それでは時間なので私も持ち場に戻らせて頂きます……それでは白鷺 千聖さん、次の試合でお待ちしておりますわ」
一言だけ伝えた美優ちゃんは、自分の持ち場に戻るため踵を返した。
美優ちゃんには色々話をしたかったのだけれど、流石に時間は残されていないようね。それならファイトで勝利を収めるしかないわ!
「ああ、それと」
「?」
彩ちゃんたちの所に戻りかけた私を呼び止める様に……美優ちゃんが言葉を発して来た。何を言い出すのかと身構えていた私に飛び込んで来たのは、こんな言葉だった。
「貴女は、この世で絶対に逆らっては行けない者たちがいる事をご存知ですの?」
「さて、そんなの分かりかねるわ」
「……その言葉、確りと覚えておきますわ。せいぜい私を楽しませてくださいませ、微笑みの鉄仮面」
……決めたわ……あの女だけは……。
『さあさあ、皆様長らくお待たせ致しましたー! 少々ハプニングが発生したものの、進行自体には何の影響も無い……という訳でぇ、チーム対抗戦、中堅戦から再開するぞお前らぁぁぁぁ!』
……相変わらず、熱いわね……。
たぶん同じ事を颯樹も思っているかもしれないけれど、それにしたってこれはやりすぎよ。
『その中堅戦、出場するのはコイツらだー!』
「よろしくお願いします」
「お手柔らかに、お願い致しますわ」
やっぱり私の相手は美優ちゃん。
さっき話した時もそうだけど、あの娘を好き勝手に立ち回らせると、自然と不利になってしまうのは私の方……なら、なるべく一気に攻めていこうかしら。
「コイントスの結果、先攻はチームsumimi 藤宮 美優となった……それじゃ行くぞお前らぁぁぁぁ! チーム対抗戦、次鋒戦! READY?」
本日はここまでです。如何でしたか?
今回は前書き無しで本編に早速入りましたが、次回からはまたいつもの形でお送りしますのでお楽しみに。
それでは、また次回の更新にてお会いしましょう。
それと……今回のお話なのですが、作中でも言及があった様に双方に過失があった為、次鋒戦の内容を無効試合とさせて頂きました。本来試合は公平かつ定められた総則に則って行われる物ですので、本編中であった様な妨害行為は固く禁じられています。
この話を教訓とし、ご覧の皆様方に置かれましては、他者を思いやり平等にゲーム展開を行って頂きます様、お願い申し上げます。