前回にて中堅戦が終わりましたので、今回より副将戦の対戦内容を……と思ったのですが、それは次回に回しまして、今回はその間の幕間のお話をしようと思います。
それでは、本編スタートです。
最後までごゆっくりとお楽しみくださいませ。
「んー、あこからは炭酸って言われたけど。……お昼過ぎた辺りだし、飲み過ぎはさすがにキツいよねー」
アタシは観客席から移動して、通路の途中にある自販機に立ち寄っていた。事の発端はさっきの次鋒戦の最中、紗夜が血相を変えて飛び出して行った事で、気持ちを落ち着ける為に何か水分を補給できる様にしようと言う話になったのだ。
今回は事の大小に関わらず、日菜が戦犯だと言わざるを得ないかな。初華だってそんな気持ちは微塵も無かったんだろうに、あんな煽られ方をしたら、思わず手が出てしまうのも道理と言った所。
……でも、アタシが気になったのは……。
「……まな、だっけ。あの子はどう思うんだろ」
今まで一緒に活動していて、アタシから見た感じ仲が良さそうな気はしてたんだけど……当の本人からすると、アタシたちが思う以上に大変な状況かもしれない。
「見かける事があったら、少し話を聞いて……」
そう思っていたら、何処かから荒い息遣いが聴こえた。
アタシはその聴こえて来た音を頼りに、少しずつ近づいて行ったんだけど……そこには、階段の一段目と二段目に跨って腰を降ろして、ちょこんと座っている茶髪の女の子が居た。ステージ衣装のまんまだし、見た感じ何も気にせずに走って来たみたい。
「えーっと……ごめんね、ちょーっと良い、かな」
「……えっ?」
……あれ、確かこの子って……。
「アタシの記憶が間違って無ければ、貴女が?」
「……はい、そうです。純田 まなと言います。ご迷惑をおかけしてすみません」
「いーよいーよ、気にしないで。元はと言えば、アタシの友人がやらかした事だし☆ あっ。アタシは今井 リサ、
そうしてお互いに自己紹介を済ませた所で、アタシはまなの近くに陣取って、彼女から話を聞く事にした。京介や颯樹から話は聞いていたけど……本当に良い子だし、何より素直。人を疑う事を知らない、純粋な瞳。……イヴに近いのかな。
「さっきは、ごめんね。日菜ってば、思った事を直ぐに口に出すし……突拍子も無い事をよく言い出すから」
「ああ、大丈夫です。わざわざごめんなさい……」
「良いの良いの、アタシが好きでやってるんだから」
「私、ユニットって何だろうって思っちゃったんです」
……え?
「さっきの試合、日菜さんの言った事がもし本当なら……私はこれからどうすれば良いのかな、って」
「……アタシだって、日菜の言った事は全部が全部正しいなんて思ってないよ。でも、まなからしたら気になるよね」
「はい。私、ういちゃんとはそれなりに親しかったつもりだし、お互いに支え合ってアイ活してたと思ってます。でも、さっきの話を聞くとどうにも……」
難しいよねぇ……こうなってしまうと。
アタシたちだって、順風満帆に何事もバンド活動やら色々進んでいた訳じゃない。時には大きな困難にぶつかって、解散の危機にまでなったり……自分たちの方向性を見失いそうになった、なんて事もあった。
まあ、それが今のまなたちかもしれないけど……だからと言って、さっきのはあんまりだ。とても褒められた物じゃない。
「ねっ、アタシで良かったら話を……」
「見つけたよ、まな」
「……あっ」
アタシとまながその聴こえた方を向くと……。
「颯樹!?」
「……颯樹さんっ」
「ここに居たんだ、探したよ。何でリサはここに……」
と言った後に、アタシの近くにある何本かの飲料水に目を向けた。ちょうどこの近くには自販機があったし、勘の良い颯樹ならこれで多少は事情を汲んでくれる……と思うけど。
「まなを気がけてくれてありがとう、助かった」
「これくらいオッケー☆」
「……あ、あの……」
「別に連れ戻しに来た訳じゃないんだ。まなには今後の事で少し相談事があったからね」
相談事? あぁ、だったら……。
「あっ、もしもし友希那ー? ちょーっとアタシ、用事があるからそっちには暫く戻れないかも。あこと燐子をお願いねー」
アタシは即座に友希那の番号に電話をかけ、彼女にそう伝言をした後に通話を終えた。
「これで良いよね☆」
「……相変わらず、話のわかる幼馴染だこと」
「フフン♪」
「……」
「さて、遠慮せずに話してみて。リサはこう見えても面倒見が良いんだ……力になれると思う」
むっ、そう言われるとなんかムカつくー。
「……わかりました。颯樹さんは今来たばっかりなので、順を追って説明しますね」
「助かるよ」
「あっ、アタシからも補足させて」
そうしてアタシたちは、今し方合流した颯樹に事の次第を最初から説明した。所々まなの表情が暗くなる所はあったけど、それはアタシと颯樹で宥めていた。
「……なるほど。これは困った事になった」
「そうなんだよねー。日菜が必要以上に煽った所為で……初華は行方知れず、まなはこの通り消沈気味。そのうえ、紗夜はさっき血相を変えて日菜をドヤしに行ったし……アタシだけじゃてんてこ舞いなんだよ……」
「颯樹さん、私……どうすれば……」
あーあー、まなが泣き出しちゃう。
「んー、考えが無い訳じゃ無いけど……。その前に」
「ああ、京介。すまない、今まなを見つけた。さっきのあのバカの所為でで精神がだいぶ参ってしまってる。……とりあえず、お前は千歌と一緒に居ろ。幸い、まなの出番は中堅の後だ。それまでにはそっちに戻る」
颯樹さんは京介さんと連絡を取り合っていて、私の事について説明をしていた。本当なら私がういちゃんを探し出さないといけないのに……。
「了解が出た。今は中堅戦が始まった所だそうだ」
「中堅戦……わかりました」
「ん? でもそうすると、あんまり時間無くない?」
「……リサ、お前が言うな」
「アッハハハ、ごめーん☆」
……そうだ、さっき。
「さっき言ってた、考えって……」
「ん、そうだね。僕から出せる選択肢は主に二つ」
「……ちょっ、もっと他の方法は無い訳?」
「あったら考えたさ。でも、回りくどい事をするより、この方がちょうど良い」
解散するか、一人でも活動するか……。
「でも僕の個人的な話をするなら、まなには以前言った事に対しての責任を果たして貰いたい」
「以前……もしかして」
颯樹さんにそう言われて、私の頭の中に思い起こされたのは、Ave Mujicaに関してのよくない噂が飛び交っていた時に……自分で言及していた、あの言葉だった。
「『誰かひとりが欠けても、それはsumimiじゃない』」
「そうだ、僕はそれに賭けてると言っても良い。まなの想いの強さなら、この言葉に込められた責任を果たしてくれると思っている」
「へぇ〜、まな良いとこあるー♪」
「わ、私は本心から」
「じゃあ、どうする?」
リサさんに突かれてる横で、私は颯樹さんにもう一度問いかけられた。
「……正直の事を言うと。今回の一件で、僕は初華に対しての評価を変えなければいけないと思ってる」
「どう言う事ですか?」
「どんな事情があったにせよ、自分の気持ちを偽ってアイドル活動に参加していた……それは夢に向かって努力し続ける、数多居る同じ志を持つ者たちに対しての冒涜に他ならない。もしこの後に経歴や姓名詐称等が判明すれば、いよいよ言い逃れができなくなる」
……そっか、日菜さんのあの一言……あれがもしういちゃんの本心を言い当てていて、それが本当の事なら、ういちゃんは……。
「気に病む気持ちは分かるけど、これは初華の自業自得でしか無い。まなが庇った所で、事態は好転しない……むしろ、悪化の一途を辿ってジ・エンドだ」
「そ、それはそうですけど……でも、わたしは……」
「初華の事を信じたい、だっけ。アタシ、友達にまなと似たタイプの子が居るから、何となく気持ちは分かっちゃうんだよねー。周りからどんな印象を抱かれても、自分だけは常に信じてるぞー!って☆」
リサさん……。
「……無理して答えを早く出す必要は無いよ。焦らずゆっくり考えて、自分の納得の行く答えを出してくれたらそれで良い。実際に活動するのはまな達なんだから、僕からとやかく言えませんってね」
颯樹さん……。
「……よし、これがまなの支えになるかわかんないけど、僕から餞別。受け取って」
そう言って颯樹さんが手渡して来たのは、1つのデッキケースだった。見た感じは普通の物と変わらないみたいだけど……。
「例え己の信じた物が
「颯樹さん……ありがとうございます。ちょっとだけ……時間がかかるかも、ですけど。納得の行く答えを出して、改めて今後どうするかをお答えします」
「構わないよ。時間は幾らでもあるから、自分が満足するまで考えてみてね」
その後リサさんと別れてからは、颯樹さんに連れられて席に戻った。中堅戦はまだ続いているけど、さっきの場で颯樹さんの問いに答えられて居ない。
解散とソロ、どっちがいいんだろう……?
「……まだ悩んでいるのか?」
私の出番が来るまで待機していると、京介さんが声を掛けてきた。
「はい、正直……。颯樹さんに問い掛けられた事で……」
これは本当の事だ。その答えがまだ分かってすらいないのだから、悩むのは当然の事。
「そうか……俺も分からん」
……へっ?
あの……私、まだ何も言ってないんだけど……。
「颯樹さんの事だ。おそらく、解散かソロの二択を突きつけられたんだろ?」
まさか見透かされてた!?
「その答えは自分で探すのがベスト。俺からある程度の助言は施せるが、それでも自分で答えを導けるとは限らない。だから此処は思いっきり悩んだ方が大きく成長できる」
京介さん……。だよね、答えは自分で見つけないと意味がないから。
「ちなみに言っておくと、俺はsumimiが解散とかになっても全然問題無い」
……へっ?
「解散騒動一つで評価が変わるファンなどいない。なら身が滅ぶ勢いで応援し続ける。それがファンというものじゃあないのか、と俺は思う」
京介さん……。
「一番のファンとしては、まなさんのソロも見てみたいけどな。まぁ、あとは
物騒な事件を起こさないでくださいね……?
……と、そんな事を話している間に中堅戦は終わった。どうやら千聖さんに軍配が上がったみたい。
「ありがとうございます京介さん。少しだけ元気が出ました」
「構わない。推しが悩んでいるのを見たら放っておけないのでね……俺たちの分まで頑張って、最後の颯樹さんに繋いでやってくれるか?」
「はい!」
私はそう言うと、熱狂冷めやらぬファイトスペースに向かうのでした────。
『チーム対抗戦もいよいよ後半戦に突入……さあ、これから行われる副将戦を戦うのはこいつらだ〜!』
「「よろしくお願いします」」
イヴさんとファイトするのは、これで二度目。
一度目は私が勝ってるけど……もう一度勝てるか、と言われたらすっごく怪しい。あの時は首の皮一枚繋がった状態での勝利だから、もう一回同じ事をするのはかなりハードルが高すぎる。
「マナさん、お互いに全力で戦いましょう!」
「はい、よろしくお願いします。今度も負けませんよ」
「それはさせません! 今回は、私が勝ちます!」
「コイントスの結果、先攻はチームPastel*Palettes 若宮 イヴとなった……それじゃ行くぞお前らぁぁぁぁ! チーム対抗戦、副将戦! READY?」
今回はここまでです。如何でしたか?
次回からはいよいよ副将戦の開始となります。イヴにとってはリベンジマッチの側面を持った今回の試合……果たして、勝利はどちらの手に渡るのか、乞うご期待。
それでは、また次回の更新にてお会いしましょう。