仮面の慟哭と凶宴   作:咲野 皐月

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 皆様、おはこんばんにちは。


 予定通り二週間の間が空きまして、本日1月最終日と言うこの日に第3話をお届けする次第です。次回更新予定日を先にお知らせしておきますと、Ave Mujicaのバンドリーダーであるオブリビオニス──豊川 祥子の誕生日当日となるのですが、本小説ではご用意出来ないのですが、共同制作を行なっている方の作品の方では、誕生日回が投稿予定となっております。

 もしお時間がありましたら、ぜひ其方の方も覗いて貰えると幸いです。該当作品のリンクはあらすじページに掲載しておりますので、そこから飛んで頂けると見やすいかと思います。


 さて、長々しい話はここまでにしまして───。

 今回はアニメ第2話を準拠とした話展開となりますが、最初は前回のお話の内容を軽く振り返った物となる事をご了承下さい。その後からは少しずつ第2話の内容に入って行きますので、是非とも最後までお楽しみ下さい。


 それでは、本編スタートです。



「 Cogitare Mortis. 」

↓↓↓

死を想え。



#3 Cogitare Mortis.

「……知らなかった、そんな事があったなんて」

 

 

 dubでのライブが終わって、祥ちゃんたちAve Mujicaのメンバーと一悶着あって暫く時間が経った頃……私は一人お風呂に入っていた。普段なら何の気も無くただ楽しんでいるはずの時間は、帰宅前に聞かされたある一件がかなり尾を引いていた。

 

 

「……そんな事、言ってなかったじゃん」

 

 

 私以外に誰も居ない空間で、そんな事を零す。

 

 

 私は愛音ちゃんに今回の連番相手として誘われて、そこで偶然知り合いと目が合っただけだった。そのはずだったのに……私としてはそこで終わりだったのに、ステージに立っていたのは睦ちゃんと祥ちゃんで、あろう事か……そのサポーターとして颯樹さんが居た、と言う現実だった。

 

 獅音くんがAve Mujicaに居る、と言う事は何となく予想は出来ていたし、立希ちゃんからMyGO!!!!!(マイゴ)を追い出された仕返しと言うのもあったのかもしれない。

 

 

 でも、その場に獅音くんだけじゃなくて颯樹さんも居たと言うのが予想外だった。その所為で取り乱してしまったし、人目も憚らず暴行に出てしまうと言う事態をやらかした。

 

 そこまでだったら、まだ謝り倒して許して貰えたかどうかなのかもしれないけど……私が今こんな状態になっているのは、そのあとの事が原因で。

 

 

「……辛すぎる」

 

 

 その後に颯樹さんから語られたのは、彼自身の事。

 

 話される前に愛音ちゃんを遠ざけようとしたけど、時既に遅しと言った所。彼の中にある闇と言う闇をこれでもかと聞く事になってしまったのだ。確かに幼馴染などの身内に有名人が居ればそう言う心境にもなるだろうけど(睦ちゃんがその類なので、そこは別に良かった)……それを差し引いたって、あんまり過ぎる。

 

 

 聞けば……颯樹さんの父親は、外では模範的な良い父親を演じながら、その裏では夜遊びが絶えない人だったらしい。添い遂げると誓った人を放って他の女性と関係を持った事は勿論許せないけど、それ以上に許せなかったのは……。

 

 

「……実の子供に、その事を隠蔽する様に頼むんだ……」

 

 

 ……これが、私の最大の怒り。

 

 

 やった事が事実であれば、経緯はどうであれ反省するのが道理だし、その後のお咎めも受けるべき物だ。でも、その時の颯樹さんはまだ小学生になったばかり……それも、周りからたくさん可愛がられて人を疑う事を知らない、そんな状態の彼を。

 

 

 ……その人は惜しみ無く利用した、自分の利得の為に。

 

 

「(……どうして、人は身勝手に他人を利用するのかな)」

 

 

 これは私が言えた事じゃない。と言うのは、それを口に出せば私も同じ様な事をしていたからだ。CRYCHIC再結成の為に、愛音ちゃんを追い出そうとしたり……ライブハウスから一人で去ろうとしていた祥ちゃんを引き留めもしたから。

 

 前のバンドに未練が無いと言えば嘘になるし、もし願いが叶うならと思うけれど、私がそんな事を願う資格は無い。……それでも。

 

 

「……颯樹さんには、近いうちに聞いてみようかな」

 

 

 彼は不定期ではあるものの、私たちのバンドにも顔を出してくれる。獅音くんよりは信用できるし、颯樹さんが居てくれると私の苦労も少しは和らぐから。

 

 

「(そう言えば確か、dubを去る前に……)」

 

 

※※※※※

 

 

「やれやれ。月ノ森の生徒のお守りをするのはMorfonicaで事足りてるっつーのによぉ」

「あの…」

「あん?もしかして月ノ森(そっち)生徒会長(トップ)が俺や瑠唯の知らないところで粗相やらかした?」

「違います。そんな、至極どうでも良い下らない事は置いておいて……さっきの話は本当なんですか?」

 

 

 私がさっき起こった事を京介さんに尋ねると、彼は何処か顔を青ざめた様子で私の問いに答えた。

 

 

「……本当だよ。だけど俺が聞かされたのはほんの一年前だ」

「そうだったんですね……。だから先程颯樹さんが話を語り出した時『またか……』みたいな感じでしたから」

「良い勘してるな。ウチの生徒会に欲しいくらいだ。お前さえ良ければにはなるが……どうだ? もし月ノ森を退学処分にされたら羽丘(ウチ)に来ないか? そしたら生徒会のメンバーに即座に勧誘する」

「有り難いお話ですが、私は結構です。それに退学になっても祥ちゃんや獅音くんもいる上に一番厄介な存在(あのんちゃん)と同じ学校はイヤなので、多分花咲川に転入するかと」

 

 

 ……羽丘への編入は、私としては最悪のパターン。

 

 燈ちゃんはまだ良いとして……ただでさえ祥ちゃんや獅音くんとは相容れないうえ、そこに愛音ちゃんも加わるとなると、私の精神がいくらあっても足りなくなって来る。京介さんからの誘いは嬉しかったけど、もし月ノ森を退学されたと仮定したのなら、一番の編入先は立希ちゃんの居る花咲川女子学園になる。

 

 

 そこならまだ、落ち着ける気がするから。

 

 

「あらら、残念。……それで? 何故急にそんな事を俺に聞き出した? ……まさかとは思うが、もしかしてお前って颯樹さんに気があるのか?」

「!」

 

 

 私の反応を見逃さなかったのか、京介さんはダイレクトに質問を投げかけて来た。それが予想外だった私は、思わず驚きのあまりに息を呑んでしまった。……その答えがクロだ、と言うオマケまで付けて。

 

 

「(脈アリ、か)まあ、さっきも聞いたと思うが……あの人は過去にあった親父さんの影響で、恋愛関係とかは人一倍奥手になったんだ。けどそれとは裏腹に……無意識のうちに人を引き寄せてしまう才能も備わっているんだよ。複雑だろ?」

「そうですね。でもそれのお陰で、何人かフラグを立ててるようですけど」

「……それも事実だから何も言えん」

「(いや、貴方も似たり寄ったりでしょ……)」

 

 

 ……特に倉田先輩とか、八潮先輩とか。

 

 月ノ森(ウチ)で京介さんを噂する人と言えば、だいたいの予測だけれど、その二人が多い(Morfonica(モルフォニカ)全体なのは間違いないけれど)。それを言うなら生徒会長も生徒会長でその気質はあるんだろうけど……あれは異次元だ。私が突っ込む場面じゃないのは確かで。

 

 

「……まあ、せっかくだ。俺から人生の先輩として、お前にアドバイスがある」

「?」

 

 

 私がそう思っていると、京介さんは私に向き直ってこう言って来た。後から構って欲しそうにしてる愛音ちゃんには、少し手荒にしたけど。

 

 

「颯樹さんの周りを嗅ぎ回るのは、お前の自由だ。それに関しては俺は何も言わんし干渉もしない。……だが、これだけは心に刻め」

『……』

「世の中には、安易に触れちゃ行けない闇ってのがある。お前が触れたのはほんの一節……そのパンドラの箱を力任せにこじ開けた事、いざと言う時にそれを後悔するなよ。それだけだ」

 

 

※※※※※

 

 

「(……よし、近いうちに機会を作ろう)」

 

 

 そう考えた私は、湯船から出て脱衣場の方へ向かった。彼の事はまだ知り始めて間も無いし、傍から見れば余計なお世話だと思うかもだけど……でも、私は……私なりのやり方で、あの人に手を伸ばしたい。

 

 

その先に一筋の光が無くとも……

手を伸ばし続ければ、奇跡は舞い降りるはずだから

 

 


 

 

「では、これよりAve Mujica……緊急ミーティングを執り行います。颯樹さん、この度は自宅を練習場所として提供していただける事、とても感謝していますわ」

「構わないよ。一人暮らしをするには広すぎる家だし……祥子たちが迷惑じゃなければ」

「では、遠慮無く。有り難く使わせて頂きますわ」

「それでは、話も纏まった所で……先ずは資料として此方をご覧下さい」

 

 

 dubでのライブを終えて自宅まで移動した僕たちは……リビングのテーブルを五人で囲み、話し合いをしていた。確かにこれから活動をするに当たって、練習場所の確保は最重要事項となる。また、ここからは各々のスケジュールと相談しながら、バンド全体での活動方針を決めて行かねばならない。

 

 もちろん、誰かが過剰になりすぎる事は避けなければならないものの……止むを得ず実施する場合は、それなりの補完をしなければならないのも事実だった。

 

 

「……これは」

「私と豊川さんで考案した、今後のAve Mujicaの活動スケジュールです。ある程度本人の体調や都合なども考慮して、その都度組み替えられる様に対応しては行きますが、一先ず初期案として、ですけれど」

 

 

 そう言う千歌が広げた掲示物に使われる紙を見ると……そこには、直近の予定として全国ツアーが組み込まれていた。最終日には新曲を披露する手筈となっていて、それまでにも雑誌の取材やインタビューなど……メディアに露出をする機会がチラホラ散見された。

 

 

 この場に会席している僕や京介を始めとする(獅音を除いてだが)サポーターの面々に、祥子だったりはまだ……不測の事態があっても対応が出来るかもしれない。初華は初華でsumimiでの経験もあるし、にゃむも動画配信者として活動している側面があるので、メディアに顔を晒してアピールする、と言う点においては問題は無いだろう。

 

 獅音と海鈴は今回がそもそも初めての経験な為、多少拙い所が散見されるかもしれないが……そこは僕たち経験者が力添えをしたのならば、相手方に不満を持たせる事は起こらないと思う。

 

 

 ……だが、ここで一つだけ懸念点を挙げるとすれば。

 

 

「……見た限りだと、睦の仕事がかなり多いな」

「そうですね。今把握出来ている期間の中でも、初華さんが颯樹と一緒にsumimiの方にお仕事へ行く事も決して少なくありませんので……その抜けた分を若葉さんにカバーして頂こうかと思っていますが、少し配分を間違えてしまったかもしれません」

「それに、だ。アイツはさっき狼狽えてる様子だった……俺の勘が正しいとするのなら、彼女がメディアに顔を無闇に晒すのは相当危険な物だろう。何かの拍子に放送事故が起これば目も当てられない」

 

 

 そう、割り振られた仕事の中で特に多かったのは……睦の受け持つ担当の物だった。先程にゃむが強引に仮面を剥ぎ取った事もあって、彼女の精神はかなり疲弊している所だろう。そこへ追い討ちと言わんばかりに立て続けのお仕事……そこまで思い至れば、睦のメンタルケアが当面の最重要事項になるのは明らかだ。

 

 

「私としても、睦に酷な事を言うのは承知していますわ。できる事なら、他の面々に割り振りたい所ですが……既に私たちはプロです。取材やインタビュー等で自らをアピールするのなら、今後の発言により一層気をつけて頂かないと困ります」

「……そうだね。極論を言わせて貰えば、祥子の言った言葉はとても理に適ってる。それは僕が以前務めてた所でも、口酸っぱくして言って来た事……それが出来なければ話にならない」

 

 

 祥子が言った言葉に僕が続いて、他の三人も同意の旨を現す様に首肯で返答を返した。……とは言ったものの、日程を見てる限りだと今から全国ツアーの初日まで殆ど時間は残されていない。それに各自の体調管理も気にするのなら、もう一分の猶予すら無い状況だ。

 

 

 ……それに確か、全国ツアーの初日は……。

 

 

「そう言えば颯樹、確かこの日はsumimiのお仕事ですか」

「……ごめん、そうだった。まなのソロでのお仕事が入ったもんで、この日から暫くサポートには入れないんだ」

「そうですか……では、颯樹さんの代打を千歌さん。お願い致しますわ」

「お望みとあらば。精一杯尽力致します」

 

 

 僕が全国ツアーの立ち会いが出来ない所を、千歌が補完してくれる事となった。こう言う時に頼れる存在が居るのは、僕としても本当に助かっているので……千歌がAve Mujicaに居てくれて一安心と言った感じだ。

 

 彼女は僕の抜けた代わりとして、裏方の機材整備などを担当してくれるとの事で、後日何か菓子折等を持って差し入れに行こうかと……僕は心の中で思う事にした。

 

 

 そして、暫く時間が経った頃。

 

 

\グゥゥゥ…/

 

 

「何方ですの? ミーティング中にはしたないですわよ」

「……ごめん、祥子ちゃん。僕だ……」

「そうか、もう日暮れか。すっかり話し込んでしまった」

「そうですね……颯樹はここの家主なので良いとしても、私たちはそろそろお暇しないと、日が沈むまでに自宅まで辿り着けるか分かりません」

 

 

 突如として空腹を知らせる腹の虫が聴こえたので、出処を探ってみると……獅音からだった。それもそのはず、時間はもう既に午後7時を過ぎてしまっており、完全に陽が沈みきるまであと一時間も残されていなかった。

 

 千歌の言う通り、僕はここが自宅なので問題は無いが、千歌たちに関してはそうは行かない。京介も引っ切り無しに着信が来ており、千歌も千歌で親御さんから身の心配を綴ったメッセージが届く始末だ。

 

 

 ……このまま空腹の状態で、彼女たちをここから退席させるのは案としてあったが、僕の自宅を出るまでは良いだろうが……家に帰り着くまでに限界が来てしまうだろう。

 

 そうなれば、僕も非常手段だ。

 

 

「……各々、連絡」

「?」

「颯樹さん、一体何をするつもりですの?」

 

 

 祥子の問い掛けを聞き流し、僕はキッチンの明かりを付けて冷蔵庫の中身を確認した。……よし、行ける。

 

 

「獅音、京介。空腹のところ申し訳ないけれど……手伝って貰うよ。夕飯をご馳走する」

「……っ、良いんですか!?」

「構わないよ。明日の夕方に買い足せば問題無い……さ、手伝って。祥子と千歌は親御さんに連絡。……京介は…確か片親だったな」

 

 

 女性陣には先に親御さんへの連絡を促し、僕は京介にも同様に促したが……そう言えば、彼の家族は片親だったのを思い出す事になった。

 

 

「親父は毎日多忙だから連絡の必要は無い。でも桜雪が五月蝿いか」

「それもそうだね。なら……桜雪には僕の方から連絡しておく事にするよ。獅音は」

「僕の方は連絡する必要はありませんよ。なんせ養母(はは)は夜勤で、養父(ちち)は単身赴任で不在ですので」

「……そうか」

 

 

 僕は獅音からそんな事を聞いた後、エプロンを付けようとした手を一度スマホの方に向かせ、京介の妹である桜雪に連絡を入れる事にした。最初こそ驚いてこそ居たが、そこは月ノ森の現生徒会長……こう言う不測の事態にも毅然と対応していた。

 

 まあ、後で桜雪のこの対応の速さは前生徒会長からの入れ知恵である事を……京介から聞く事になるのだが。

 

 

 そんなやり取りを挟んだ後に……僕たちは先程までのピリピリした空気から一転して、賑やかな夕食会をする事となった。その場には笑顔が満ちていて、この場をこころがもし見かけでもしたら、軽く大騒ぎになっていた事だろう。

 

 

 ……こんな楽しい日々が、ずっと続いていく……。

 

 そんな僕の心の中にあった儚い希望は、後に音を立てて崩れ去ってしまう事を、この時はまだ知らなかった。




 今回はここまでです。如何でしたか?

 次回更新予定日は、前書きにてお伝えしました通り……2月14日を予定しております。此方では本編の内容を進めて行きますので、温度差を感じて風邪をひいてしまわない様に何卒ご自愛くださいますよう、お願い致します。


 それでは、また次回の更新にてお会いしましょう。


 最後にはなりますが、一つだけこれ以降のお話を読む際の注意事項がございますので……もしよろしければ、目を通して貰えると嬉しいです。



◤◢◤◢⚠︎注意⚠︎◤◢◤◢



 ここから先のお話では、本作品が現在放送中の冬季アニメである、「BanG Dream! Ave Mujica」の内容を準拠にして制作をしている都合上……思わず目を覆いたくなる様な衝撃的な展開や、場合によっては読者の気分を害しかねない程の描写をする事がございます。

 もしその場面をご覧になり、ご自身の気分が万が一にも害されてしまった場合には、迷わずブラウザバックして頂く事をオススメします(それくらい本元の内容がすごいので)。


 また、本小説のタグにもあります様に……当作品では残酷な描写がございます。今はまだその手の描写をしておりませんが、今後のお話の内容如何ではその描写が入る可能性があります。

 私共も、皆様が成る可く楽しめる様な作品作りをして参りますが、今後はその事案に対しての保証が軽率にお約束できない状態です。ですので皆様どうか、ご自身の健康を最優先にした上で、この先のお話を閲覧頂きます様、切にお願い申し上げます。
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