仮面の慟哭と凶宴   作:咲野 皐月

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 皆さま、おはこんばんにちは。咲野 皐月です。


 今回は前回の予告通りに2週空きまして、本編の第4話をお届けしようと思います。そして今更なのですが、今回よりサブタイトルに数字を付ける事と致しました(過去投稿話も含めて)。理由としては……今後何処かで幕間を執筆する機会がある為、それと混同をしない様にと思い立ってこの形を取っております。


 それでは、軽く余談も済みました所で……。

 第4話、本編スタートです。


 最後までごゆっくりお楽しみ下さい。

 後書きにて今回から登場するオリキャラのプロフィールを掲載致しますので、よろしければ見てもらえると幸いです。


「 Puritas impura et tincta nigra. 」

↓↓↓

純潔は穢れ、黒く染まる。



#4 Puritas impura et tincta nigra.

「……何故、あの時私は……」

 

 

 私はそんな事を考えながら、次の講義が行なわれる場所へと荷物を持って移動していた。高校の時も同じ様に手提げバッグの中に教科書などを入れて持ち運びしていたので、いつしか私の中でのお決まりになっていた。

 

 今はお昼休み中で、もうじき講義開始の予鈴が鳴り始めるかどうかと言った所。なるべく早めに講義室に着いて、準備を進めておきたい所だ。

 

 

「……颯樹は仕事でしたか。私の方はAve Mujica以外に要件が無いので、こう言った時には少し物足りなさを感じますね」

 

 

 肝心の幼馴染(さつき)はと言うと、今日から数日間のお仕事に出ている。彼はAve Mujicaに付きっきりなのでは無く、ウチのギターボーカル担当である初華さん(ドロリス)と……その相方として純田 まなさんが二人で活動するユニット──sumimiのマネージャーも務めている。

 

 その事もあり、颯樹の仕事も無くてフリーと言う日は極端に少ないらしく……私の覚えてる範疇で記憶を辿るなら、土日と言う本当に学校も何もかも休みで、と言う時くらいだったと思う。

 

 

 それが今ではどうだろう、休む間も殆ど無く……東へ西へと忙しなく引っ切り無し。私や京介さんだったり……その他の人たちの苦労も少しは考えて欲しい程に。ただ、颯樹のおかげで事なきを得た事案は多数ある為に、あまりガミガミと言える物では無いのだが。

 

 

 彼は少々無理をしやすい性分の為、誰かが傍で見ていないと想定外の事態を起こしやすかったりする。ましてや現在担当しているのは、前任と同じくアイドルの部類ではあるものの、所属する事務所が変わって最初の担当だ。

 

 颯樹からすればちょっとだけ気味悪がられたり、少しずつ嫌悪感を抱くのだろうが……そんな事は関係無い。私の眼が黒いうちは、そう安易に壊れさせてなる物か。

 

 

 私の行ないは彼の為。

 

 私のした事は小さな事かもしれないけど、それが颯樹にとって大きな後押しとなる……それは揺るぎない事実だから。

 

 

「……ふふっ、今度は思いきって手料理でも……」

「こんにちは、水澄さん♪」

 

 

 そんな夢見心地になりかけた私の思考を、突如として遮る存在が現れた。振り返ってみると、そこに立っていたのは栗色の髪を肩口まで伸ばしていて……瞳はアメジストを思わせる物で、桃色のTシャツに焦げ茶色のミニスカートを合わせている、一人の少女だった。

 

 

「何の御用でしょうか、私の名を何処でお知りに?」

「やだなぁ、私も貴女と同じ文学部だよ? 新学期になって直ぐの頃に自己紹介したじゃ〜ん。と言うか、同じ花咲川出身なんだけどっ!?」

「貴女の様な人、覚えていませんね」

「……んもぅ、私の事を忘れてるんなら仕方がないなぁ。私は(かなえ) 優花(ゆうか)。よろしくね、水澄さん♪」

 

 

 ……何で彼女が、私の所に?

 

 

「鼎さん、何か御用でしょうか。大した用で無いのなら」

「あー、こりゃあ重傷かなぁ……。せっかく私、この前のライブでとばっちり食らった貴女の事、心配してたのに……」

「……どう言う意味でしょうか」

 

 

 私は鼎さんの言った言葉が気になり、質問を返した。

 

 確かにあの時は祐天寺さん(アモーリス)の蛮行を止めようとした事が理由で、その彼女自身から強引に仮面を剥がされた……それは私だけじゃないから別に良いとしても、鼎さん自身は何をしに私の所へ……?

 

 

「にゃむちにさ、仮面剥がされてたよね?」

「……そうですが」

「いやー、私これでも結構ビックリしたんだよー? まさか歳に見合わない学生服を模した服装で現れて、仮面を付けているそんな存在が……水澄 茜の一人娘、だったなんて」

「(こ、この(アマ)……っ!)」

 

 

 鼎さんに対して心の中で毒を吐いた私は、彼女が私に声をかけて来た最大の理由に気づく事が出来た。詰まる所、鼎さんの目的はと言うと……。

 

 

母をダシに使い、私を脅かそうと」

「と〜んでもないっ! 寧ろ、私は水澄さんが心配で」

「では何故、母の名前を出したんですか。私個人が心配になったのなら、母を引き合いに出す必要は無いはずですが」

「水澄さんってさ、もしかして冗談とか通じない」

「御託は結構。本音を聞きましょう」

 

 

 ……さて、彼女から何が聞けますか……?

 

 

「じゃあ、言わせて貰うけどさ……」

 

 

盛谷くん(私の推し)に変な事しないでよ

あんたを見てるとイライラするの

 

 

「……それはどう言う了見でしょうか」

「私、知ってるんだよね……水澄さんの悪行。品行方正で容姿端麗、尚且つ文武両道。そんな完璧を素で行く絵に書いた様な美人の水澄さんが、盛谷くんに対しては異様なくらいの愛情を注いでるの。ハッキリ言って止めなよ、キモイから」

「貴女がどう思おうと、私の成すべき事は変わりません」

「じゃあさ、たった一人の男の為に輝かしい未来を全て捨てるんだ? 良いなぁ、音楽家の家系に生まれて居ながら……そこから逸れた道を歩もうとしてるなんてね。どう言う贅沢を経験したらそうなるのかな、心底理解できない」

 

 

 鼎さんの言っている言葉は、ある部分で理解は出来る。

 

 私の両親は確かに父も母も音楽関係者……その家に生まれたのなら、その道を歩くのが至極当たり前。今この状況に立たされたのが仮に私でなかったのなら、親の敷いたレールの上を辿り歩く様に、約束された将来に向かって行ったかもしれない。

 

 

 ……でも、私は違う。

 

 自分の未来は自分で決めていい、そう両親から背中を押されてますし、そんな道に進めたのは全て颯樹と出会ったから……これ以外に理由なんて要りません。

 

 

「持論語りは済みましたか。貴女が何をほざこうと、私にとってはただのノイズでしか無い……貴女に私の未来を決められる権利はありませんし、強制された将来など必要ありません」

「あくまでも非は認めないって事?」

「何を考えているのか知りませんが、分かり易く先程の言葉をもう一度言いましょう」

 

 

貴女が何をほざき、何を(のたま)おうと、

貴女に私の全てを決められる謂れはありません

 

 

「……あんた、本ッッ当に私の忠告を聞かないつもり? これでも最大限の譲歩はしたんだけど」

「貴女が言った言葉は、私に対して……いいえ、もっと言うのであれば颯樹に対する侮辱そのもの。貴女の毒牙が彼に触れようものなら、私がその(ことごと)くを振り払います」

「ふぅん……ま、認めてあげるよ。あんたの諦めの悪さ、どうやらもう手遅れみたいだし。でも、あんたみたいな境遇の人……もう一人居たよね?」

 

 

 ……!?

 

 

「貴女、今度は若葉さん(モーティス)に何をッ!」

「あはははっ! さっきまで冷静だったのが嘘みたいに驚いてるー! そこまで刺激されるのがそんなに嫌なんだ、この方法ならあんたを絶望に堕とす事が出来る……!」

「……鼎さん、どこまで貴女は……ッ!」

「いいよ……もうあんたには一切興味なんて無いよ、そこは安心して? 私からこれ以上手出しはしない。でも」

 

 

いずれはあんたの大切なモノ、

ぜ〜んぶぶっ壊してあげるからっ!

 

 

 

「……それは、私に対しての宣戦布告と言う解釈でよろしいんですね?」

「好きにすれば〜。あっ、もう予鈴だ」

 

 

 鼎さんとの口論に意識を集中させていたからか、既に時計は講義開始5分前を差していた。その証拠に予鈴も鳴り始め、昼休み中だった生徒の足を急かさせていたのだ。

 

 

「じゃっ、私は別の講義室だから。これに懲りたら、盛谷くんには近づかないでね〜」

 

 

 そう言って鼎さんは、軽く私に後ろ手でヒラヒラと手を振った後……自らの受講する講義が行なわれる場所に向かった。それを見た私は直ぐ様思考を切り替え、階段を上がって同じ様に講義室へ向かう事にした。

 

 

 ……鼎さん、貴女と言う人は少し私の地雷源で暴れすぎたみたいですね。私が下手に回っていたのを良い事に、好き勝手言った挙句に宣戦布告をするなど……己の愚かさをまるで理解していない様子。

 

 

……其方がその気ならば、私も考えがあります。

 

 

貴女のその行ないは、いずれ裁かれるべき罪。

今は束の間の幸せを噛み締めなさい……。

最後には全て無に還るのですからッ!

 

 


 

 

 鼎さんとの一件が終わって午後の講義を終えた私は……颯樹からの送迎を受けて、事務所の方に訪れていた。昨日の打ち合わせで話し合った内容を、メンバー全員に伝達しなければ行けなかったからだ。

 

 そんな私たちはタブレットなりスマホの画面を見れば、自ずとやるべき事が見えて来るのだが、他の面々はそう易々とは行かない。そこまで思い到れればどれほど手が掛からなかったか……と思っていたのだが、そこは颯樹が先程事務所で事務作業をしている傍らで予め印刷をしていたらしい。

 

 

 ……本当に、私の気苦労も知らないで。

 

 よくもまあ細かい所まで気配りができる人ですよ、貴方と言う人は。幼馴染としては大変誇らしいですが、少しは私にも格好を付けさせてくださいな。

 

 

「ねぇ、なんで〜!? にゃむが全然話題になって無いんだけど〜!」

「そりゃあお前、普段から匂わせ動画をアップしていたらそんな始末にもなるだろうよ。同じネタで簡単にバズれると思うな、って所だな」

「むぅ〜。てか、ういこやむーこなら兎も角としても……うみこは一般人のクセに話題になってるの、なんかムカつく〜」

 

 

 こらこら、祐天寺さん。貴女は一体何処にヘイトを向けてるんですか。八幡さんはこれまで多数のサポートバンドに入った経歴の持ち主ですから、当然今に至るまでにそう言う事があったのは紛れも無い事実でしょうに。

 

 ……これは意識して目立とうとする者と、無意識で知らず知らずのうちに目立ってしまう者の違い、と言うべきでしょうね。

 

 

 と言うより貴女はまたそんな事をしていたんですか?

 

 ……これは後程練習をした後に、軽く時間を貰ってお説教しなければ行けませんね……。

 

 

「私も綺麗な顔してますから」

「自分で綺麗って言うな」

「なら京介さんが言ってみてください。海鈴は綺麗な顔をしていると」

「そう言うのは誰かに催促する物では無いからな?」

 

 

 ……ああ、ここにも悩みの種が……。

 

 

「雑談はその辺にして、本題に入りましてよ。千歌さん」

「はい。では……昨日、豊川さんと考案したスケジュールを全員に共有します。お手元にあるプリントをご覧下さい」

 

 

 豊川さんからの指示を受けて、私はディスプレイに表示されているスケジュールを読み上げて行った。その都度颯樹や京介さんがホワイトボードに記入を進めていたおかげで、紙媒体ではあくまでも確認程度……ボードに書き写された物と交互に見る事が出来ていた。

 

 ……そして念の為、全員のスマートフォンに今表示されているスケジュールの内容を送信するのは忘れなかったが。

 

 

「ツアー最終日に新曲の初披露がありますね…」

「すっごい! ツアー中にテレビに雑誌に大忙しじゃん。やっぱ仮面外して正解だったな〜」

「私語は慎みなさい。後で貴女はお説教です」

「えーっ!」

「……どちらにせよ、この状況は長くは続きませんわ」

「てかさ、むーこだけ仕事多くない?」

 

 

 ……祐天寺さんのツッコミはご最も。

 

 私が昨日颯樹から指摘された通り、手元に映っているスケジュール表の中身は若葉さんに向けての仕事が多かった。他のメンバーも均等に組んでいたのだが、こうなってしまったのは私の不甲斐なさが招いた結果だろう。

 

 

 ただ、そこは豊川さんが先方からの指定と言う理由付けをしてくれた事で、何とか理解は貰えていた。

 

 

「若葉さんのお仕事が多い理由なのですが……初華さんがこことは別にsumimiの活動にも参加される都合上、彼女にはそのカバーをお願いしたいと思います。なのでそこに関しては」

「千歌さん。それについては私の方から訂正を」

「……どうかしましたか?」

「睦の仕事に関しましては、京介様にサポートをして頂く様にお願いをしました。既に本人や颯樹さんからの了承は貰っていますわ」

 

 

 ……なるほど、そこまで考えられているなら。

 

 

「分かりました。では、京介さんはその通りに」

「了解」

「てかむーこ、うらやま〜。まあ、森みなみの娘ってだけでデカイから、そりゃ仕方ないか〜」

 

 

 森みなみさん……そう言えば、その人は白鷺さんと同じく女優をしていましたね。確か過去にその方が出演されたドラマを見た事があります。生憎と私はその手の関係者にあまり人脈が無いので、今の話を聞いての感想になるのですが……若葉さんのご両親は何方も芸能関係者との事みたいで。

 

 前述したみなみさんは兎も角として……お父様の方も芸人として名が売れている方の様で。私も両親に今でも名を馳せている存在がいる関係上、若葉さんの気苦労は何処か理解出来る物がありますね。

 

 

 そんな事を思っていると、若葉さんの持っているスマホから着信音が鳴り始めた。ディスプレイにはみなみちゃんと表示されていたので、恐らく先程まで話に挙がっていたお母様の事だと理解出来た。

 

 

「うそっ! みなみって、森みなみ!?」

 

 

 ……祐天寺さん、貴女は少しうるさいですよ。

 

 私のそんな彼女への無言の圧など気にせず、若葉さんは突如かかって来た着信に応答し始めた。そうして暫くした後、今度は私たち全員で自宅に伺う事になった。いきなり押しかけて良いのか非常に躊躇われたが、それは若葉さんからの一言があって何とか問題無しとなった。

 

 

 そうと決まった私たちは、人数が9人と多い都合上……車を2台に分けて若葉さんのご自宅に向かう事となった。私の運転する車で京介さん、八幡さん、祐天寺さん、若葉さんの4人。颯樹の運転する車で雨宮さん、初華さん、豊川さんの3人を乗せて行く形で話が纏まった。

 

 その後各々が動き始めた頃合いを見て、私は京介さんに個別である事を伝える事にした。

 

 

「京介さん。(かなえ)優花(ゆうか)という人物には最大限の警戒をして下さい」

「……何故だ?」

「実はここに来る前、彼女から接触を受けました。若葉さん(モーティス)に狙いをつけてます」

「……それは穏やかじゃないな。何かその後はソイツからはされたのか?」

 

 

 ……よし、話は通りました。

 

 今のうちに対策を講じなければ。

 

 

「今回は宣戦布告でしたが、次からは何をして来るか分かりません。もし何かの拍子に彼女の地雷を踏めば、私たちと親しい者たちの生命が危険に晒されます」

「……わかった。いざとなれば」

「はい。如何様にして対処するかは貴方にお任せします。生死は問いませんので」

「(あんたがそう言うってことは、それなりの事をソイツはしたのか……)No problem.引き受けた」

「お願いします。私の方でも警戒に当たります」

 

 

 そう私は彼に報告を済ませた後、事務所から少し離れた青い乗用車に先程割り振った4人を乗せて、颯樹の車を導く形で移動をし始めたのだった。




 今回はここまでです。如何でしたか?

 次回もこの話が投稿された日より、2週空きましての更新となりますので……完成の程をお待ちくださいます様にお願い致します。


 それでは、また次回の更新にてお会いしましょう。





 最後に、今回より初登場しましたオリジナルキャラクターのプロフィールを公開致します。当初の原案より少し変わってる所はありますが、読む分には支障は無いと思いますので、ご了承ください。


【名前】(かなえ) 優花(ゆうか)
【性別】女【年齢】19【在籍校】東京都立洸星大学
【性格】明るく気さくだが、かなり腹黒い
【身長】160cm【体重】(本人の意向により非公開)
【誕生日】5月7日【血液型】AB型
【設定】
 東京都立洸星大学に通う大学一年生で、花咲川学園(現:花咲川女子学園)のOG。颯樹と千歌とは高校在籍時には別クラスだったものの、大学進学を経て専攻学部で同じ文学部となる。インフルエンサーとしての祐天寺 若麦(にゃむ)を既に知っている事から、かなりミーハーな気質を持つ。

 自らの親しい者には、傍から見れば人畜無害な明るい振る舞いで接するが、それ以外の者には基本的には無反応だったり……運悪く琴線に触れたなら、目の敵を思わせる程に相手を精神的に攻撃して行く。


 好きな物はカフェオレとチーズケーキ。その日の講義が終わった帰りに喫茶店に立ち寄り、それらを嗜んでから帰宅の途に着くのがお決まり。その事が理由で店員さんや常連客には窓際の天使と呼ばれる。

 反して苦手な物は無し。曰く「え? 何でも美味しく食べるのが普通じゃないの?」らしい。

【イメージCV】若山詩音
【容姿】
 栗色の髪を肩口まで伸ばしていて、眼はアメジストを思わせる程。明るめの服を基本的に身に付ける(冬は焦げ茶色のロングコート)。可愛ければ多少スカートの長さが短くても気にしない。靴はハイカットスニーカーが多く、本人がよく動く事に由来している。
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