何とか最新話の制作が間に合いまして……本日、投稿の運びとなります。このペースを出来るなら維持して行きたいな、とは思っていますが、さてどうなるやら。
では、前書きもそこそこに。
それでは……本編スタートです。
「いやー、盛谷くんが来てくれて助かった〜。今日急遽事務スタッフで一人休みが出ちゃったから、大量の書類をどうしようかと思ってたんだ〜」
「構いませんよ、僕で良ければお手伝いします」
そよの自宅にお邪魔して少しした頃、僕は事務所の方に顔を出していた。と言うのも今日はオフの日だったのだが、先程の会話の通りに欠員が一人出てしまい、その穴埋めとして僕が呼ばれたと言う次第だ。
パソコン作業自体は経験も多いし、その手で困っている事が発生したのなら……手伝わない択は無いだろう。
「しかし盛谷くんって本当に仕事が出来るよね……確か、大学生なんだっけ?」
「ええ、そうですよ。高校を卒業して間も無いですが」
「彼女とか居ないの?」
「お話は嬉しいですが、今は学業やお仕事優先です。それに僕より相応しい人が居ると思いますよ」
僕はスタッフさんの問い掛けにそう返した。
……その答えを聞いたスタッフさんは、上っ面では感心してる素振りだったのだが、内心じゃ何処か不満気な様子を浮かべていた。
「……何ですか?」
「いやね、盛谷くん。私は人生の先輩として、キミの将来がすっごく心配だなぁと思うんだよ」
「お気遣いは嬉しいですが、今は色恋沙汰など」
「それって、盛谷くんの意見でしょ?」
……え?
「三十路まであと五年のおばさんに言われるのは癪だと思うけれど、人生の先輩として一言言わせて欲しいな」
「いや、そこまでは言ってないんですが……」
「とにかく。キミはもっと楽しむべきだよ。学業やお仕事優先のその考えはすっごく素晴らしいし、一人の社会人としては誇らしくもあるんだけど、一人の人間としては許容しかねるなぁ……」
そこまでは言ってないと言うのに、その人は自分の経験談を流暢に話し始めた。余程さっきの答えが看過出来なかったらしい。
「……よし、あとは私がやっとく!」
「え?」
「今日はオフだったんでしょ、私が代わりに頑張るから」
「ちょっ、自分の管轄の仕事もありますしご迷惑じゃ」
「問答無用っ! 後で社長には私の方から上手〜く言っとくからね! それじゃあお疲れ様!」
そう言われた僕はロッカーにある荷物を持たされ、事務所から半ば強制的に追い出された。あの時点で残っている書類の束はあと1つか2つくらいだったので、のんびりやってもお昼前には終わる算段だったが……その予定が一気に総崩れしてしまった。
「……ふむ、どうしようか」
さすがの僕でも仕事を早めに切り上げられた上で、オフィスから追い出されると言う事態は初めてだったので……その後をどうしようか非常に悩む事になった。社長への連絡は先程のスタッフさんが既に行なってくれてるはずなので、あとは気にしなくても良いのだが。
……ん、こんな時に通知?
そう思いながらスマホを着けてディスプレイを点け、トークルームを確認すると……。
『ごめん、緊急で対処して欲しいんだけど』
……やっぱりか……。
その文面の後に今居る現在地が送られて来たので、僕は駐車場に停めた車に乗って指定された地点へと向かった。確か今日はお昼前から全員で集まって練習って言ってたはず……だけど……?
『でもりっきー、それじゃあ意味無いんじゃないの? 本心でれおぽんと仲直りしないと』
『ハァッ? 別にいいだろ』
『立希ちゃんは本音と建前を弁えたほうがいいと思うよ?』
『アイツに対してそんな事する必要ある?』
……うわぁ……まぁたこのパターンかぁ……。
僕はそんな事を心の中に思いつつも、RiNGの自動ドアを潜った。カウンターで出迎えてくれた沙綾に反応しながらも、僕はその渦中へと足を運んだ。そして気づいた愛音にはジェスチャーで軽く口止めを頼むのを忘れなかった。
「立希」
「五月蝿い」
……1回目は駄目、か。次だ。
「立希」
「五月蝿い」
……2回目も無理。こうなったら。
「立希」
「あーもう、だから五月蝿いっ!」
「な、何故アンタがここにっ!?」
「私が呼んだの。立希ちゃんがいつまでも獅音くんと仲直りするのを渋るから一度お説教を受けた方がいいと思って」
そよが優雅に紅茶を飲みながらそう答えた。堪らず後ろを振り返って固まってしまった立希に関しては、これはもう確信犯と言って差し支えない物だろう。……あっ、ちゃんとお辞儀してる。楽奈には抹茶味の飴ちゃんをあげないと。
ちなみに何故僕が彼女の好みを知ってるかと言えば、ライブハウスを訪れた際に高確率で抹茶パフェを食べているのを目撃したからだ。
……今日も確かポッケの中に……。
「まっちゃ。良い香り」
「欲しい?」
「うん」
「はい、どうぞ。あっ、食べるのは帰ってからにしてね」
そう言って渡すや否や、楽奈は嬉しそうに飴を受け取って直ぐにポケットの中に締まっていた。その直ぐ目の前では、空になった抹茶パフェの容器が鎮座していた……えっ、あれを一人で全部食べきってしまったの……?
さて、今はそんな事をしたいんじゃなくて。
「……愛音。何故こうなったのか説明してくれないか?」
「あっ、うん。実は……」
僕は愛音から先程まで何が起こったのか、その経緯を聞く事になった。曰く僕がAve Mujicaメンバー全員をライブ後に自宅に呼び付け、数時間のお説教の後に反省文と言う苦行の刑に処したその日のライブで……獅音が素顔を晒した事が理由らしい。
まあ、要は自分の非を認めずに……あろう事か見苦しく食い下がった上で、挙句の果てには頑なに謝罪を拒否するなどの愚行をやらかしたと言う事の様で。
「……なるほど、これは少しばかしオシオキが必要だね。確か今日のバイトのシフトは、この様子だとオフみたいだし」
立希は僕の一言で全てを悟ったのか、その場から逃げる態勢に入るも……それも虚しく僕に腕を掴まれてしまった。その様子を見たそよはと言えば自業自得と頷いていたが、楽奈以外の二人は苦虫を噛み潰したような表情をしていた。
「逃がさないぞ。じゃあ立希、少し話をしようか」
「立希ちゃん、ご愁傷さま」
「ほら、さっさと歩く。ボサっとするな」
「ねぇそよりん。なんか
颯樹さんが立希ちゃんを連行していった後、愛音ちゃんが真っ先に私にそんなくだらない事を尋ねてきた。……ホントにくだらなくて呆れるんだけど?
「気のせい。ていうか急に何言い出すの?」
「もしかしてさっきーと関わったからかな!」
「!」
私がそう一蹴すると、愛音ちゃんが空かさず指摘した。そういう事するのホント好きだよね……愛音ちゃんって。
「あっ、もしかして図星? いやー、そよりんの通う学校は女子校だからそういうの無頓着か……」
「五月蝿い」
「ブホッ⁉︎」
一言……というより、色々五月蝿い愛音ちゃんに平手打ちをして無理矢理黙らせた。すると愛音ちゃんは何処ぞのバトル漫画のかませ犬のようなポーズで倒れ込んだ。
その様子を燈ちゃんは心配そうにしてたけど、楽奈ちゃんは通りすがりの野良猫と遊んでた。温度差がありすぎでしょう……。
「あら、いらっしゃい。待ってたわ」
「おはようございます、みなみさん。今日はAve Mujicaの練習をしに来ました」
「先に何人か来てるわよ。それと颯樹くん、少し顔を貸してくれるかしら?」
「……はい?」
意地でも自分の非を認めない立希に、数時間お説教の後に奉仕活動の刑を降した数日後……僕は若葉邸を訪れていた。今日はバンド練習や今後の打ち合わせを行なう為、それをするなら睦の自宅が都合が良いとの事で……僕は現在その場所に来ていた。
そうして来客用のチャイムを鳴らし、母親であるみなみさんから呼び出され……今に至る訳だ。
「ごめんなさい、来て早々に」
「お構い無く。それで、お話とは」
「実は……今度私と一緒にドラマで共演して欲しいのよ」
……んん?
「と、言いますと?」
「早い話、スカウトよ。予め監督さんの方には了承も貰っているし、
「買い被り過ぎですよ。僕自身、そこまで目立つ事は」
「本当かしら。まあその辺について詮索はしないけど……とにかく。これは貴方のキャリア向上にも繋がるんじゃない?」
……えーっと、つまり?
みなみさんは僕に俳優になれ、と言う遠回しのお誘いをしてる……という事?
「強制では無いから、決めるのは貴方だけど。でも良い機会だと思うわよ。俳優になれば彼女との共演機会も増えるし、Ave Mujicaでのますかれーど……だったわね。それに出ても違和感無く演技が出来ると思ったの」
「分かりました。ただ、僕は事務所の人間です……然るべき手段を踏んで貰いますが?」
「もちろん、どんな手を使っても起用してみせる。この絶大なチャンス、意地でも物にするわ」
うわ、この人相当やり手な人だよ……。
まあ芸能界に長く居るって言う点では、身内に同じ様な人が居るから慣れたけど……それにしてもこの自信は一体何を根拠に出てくるのか。
そう思って話を聞いていると、地下の方が少し騒がしくなって来た。察するに……たぶんにゃむ辺りかな。アイツにはこの前の負債を利子付けて確り返済して貰わなければ割に合わないし、今ちょうど来ているのなら良い機会だ。
「それじゃあ、僕はこの辺で失礼します。みんなも待ってるでしょうから」
「そうね。引き止めてごめんなさい、颯樹くん。良い返事を期待してるわよ」
「ご期待に添えられるよう、尽力します」
そう言って僕はみなみさんとの会話を終え、声の聴こえて来た方向へと歩みを進めた。そこでは階段を降りて直ぐの所で、三人だけで話している様子が目に入った。
「……てな訳で、お前が真っ先にやる事はマルチタレントを目指す事じゃない。まずはラーメン一本で勝負しなさい」
「いやそこはムジカでしょ! なんでラーメンの話にすり替わってるのっ⁉︎」
「まあ、報酬持ち逃げなんて事をされた日には、いくら京介と言えど地獄を見てもらうけど」
唐突に割り込まれた事にビックリしたのか、睦も含めた三人全員が此方を振り向いた。別にそんなに驚く事なのだろうか……この場合だとそれは聞くだけ無駄かもしれないが。
「流石に逃げないさ。まあそれは……
「……っ、確かに。それもそうだな」
「「あはははははは!」」
「いや、驚こうよ! なんでナチュラルに二人とも会話してるのさっ⁉︎」
話の内容はある程度聞いていたので、改めて聞く事はこの場ではしないのだが……まず、手始めに。
「にゃむ」
「!?」
「この前書いて貰った反省文だが……お前のだけ適当に終わらせているのを見つけた。これは一体どういう了見だ?」
そう言って僕はバッグに締まったファイルから、にゃむの書いた反省文を広げて3人に公開した(と言ってもにゃむは書いた本人なので割愛するが)。
「うん。こんなの、通るはずが無い」
「にゃむ・ザ・ボー○ボ……お前と言うヤツは何て愚行をやったんだ……」
「その件、あたし何も関係無くないと思って……。てかむーこならともかく、きょーこも反省文無しってどういう事⁉︎ 不公平じゃん! しかも何そのあだ名っ……何処ぞのハジケリストなのそれっ!」
「「えっ、違うの?」」
「違うから! あたしはにゃむち!」
「言い訳無用。とにかく、にゃむは反省文の再提出だよ。しかもペナルティで10枚書いて貰うぞ? 僕の目が黒いうちは好き勝手させないから、そのつもりで居る様に」
それを聞いた瞬間、にゃむの顔から生気が勢い良く引いたと思ったら……時間が経つに連れて、何か怖い物でも見た様な青白い顔になって行った。僕のわずかながらの温情に賭けたつもりだろうが……それは普段の行動が物を言う所だ。
お世辞にもにゃむはあまり良いとは言えず、練習量こそ目を見張る物こそあるけど、それ以外が論外と言う物。であるなら、温情も何もあった物じゃない。
「えっ、10枚は流石に……」
「問答無用。それと、また適当な物を提出されでもしたら困るから……今から書こうか?」
「えっ、これから練習と打ち合わせ……があるから、あぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
慈悲はないと言わんばかりに僕は強く手を引き、にゃむを別室へと連れて行く事にした。今日は偶然にも事務作業をする予定があったので、筆記用具などは自前の物を持参している。その為、彼女が何処へ逃げ失せたとしても……その気になれば引っ捕らえた後、拘束して反省文の刑に処す事が出来る腹積もりだ。
「あら、これから練習ですわよ?」
「祥子すまない。反省文の件でにゃむと僕は少し遅れる。獅音もすまないな」
「大丈夫です(やっぱり、あれは罷り通らないって……。颯樹さんってば、誤字脱字とかすごく厳しいし……)」
「(祐天寺さんにとっては、良い薬ですわね。でしたら)構いませんわ。むしろ、思いっきりやってもよろしくってよ?」
……ほう、それは良い事を聞いた。
「さきこぉ!? それにれおこも何言ってるのっ!?」
「私たちを責めるよりも、今はご自分の心配をなさっては如何です? 先程の私の言葉で火がついたみたいですわよ」
「すみません、にゃむさん。あの場で素直に大人しく実刑を受けて完遂させて居れば……こんな事にはならなかったはずなんですが」
「実刑って何、あたしそんな悪いことしたっけ!」
ここに来て見苦しい言い訳か。聞き飽きた。
「ほら、さっさと行くよ〜。すみません、一室をお借りしたいんですが」
「畏まりました。此方でございます」
「ありがとうございます。……ほら、さっさと来る」
「ぎゃあああああああああ……! 助けてぇ、さきこ……れおこ」
にゃむの叫び声が遠くなる程、僕はにゃむを広間から少し距離のある一室に連れ込み、罰則の執行をさせる事にした。ちなみにこれは余談にはなるのだが……千歌や海鈴に初華が到着した頃、祥子が人の悪い笑みを浮かべて、何やら短く一言零していたと言うのだが、それはまた別のお話。
……ほんと、腹の中では何を考えてるんだかね。
今回はここまでです。如何でしたか?
次回も遅れずに投稿したいとは思っておりますが、ここ暫くはヴァンガードの方で集中するかもしれないので……気長にお待ち頂けると幸いです。
余談ですが、この話の投稿日である本日4月11日は、ヴァンガードのブースターパック……【
そのパックにはコラボ枠として(今年に入ってからは2弾連続ですが)、【BanG Dream!】からMyGO!!!!!やAve Mujicaも参戦しておりますので、ぜひ機会がありましたらお求めになってみては如何でしょうか。
余談が少し長くなりましたが、今回はこの辺で。