黎明卿を目指すヒーローアカデミア   作:TSZECT

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※前話のラストを加筆修正しました


☵☲☱☷☶☳☵☵

 

 

キーン…コーン…カーン…コーン…

 

(あれ…僕いつの間にか寝てて…)

 

チャイムが鳴りうたた寝から目覚める緑谷。

 

ボンヤリと霞が掛かっている頭を振るい意識をハッキリとさせていく

 

「うーん…なんか凄い夢を見てた様な…?。」

 

「おい」コツッ

 

「あいた!」

 

頭をなにかで軽く叩かれ擦りながら視線を上に向けると担任の相澤先生がいた。

 

「朝から居眠りか?夜更かしは非合理的だちゃんと寝ろ」

 

「えっ、あ…はい」

 

「わかったらならいい、それじゃあHRを始めるぞ。」

 

ふと自分の視線の先にある隣の席を見る、空席だ。

 

誰か休んでいるのだろうか?

 

ダレが?

 

「緑谷出久」

 

なんだろう…

 

「…緑谷出久」

 

何か大事な事を忘れてる様な

 

「……おい緑谷」

 

確かそこの席には

 

緑谷出久!

 

はいぃぃぃっ??!!ガタタッ!

 

大きな声で呼ばれ椅子を倒しながら返事をする、朝の点呼に呼ばれてたのに気付かなかったようだ。

 

相澤先生は呆れ半分心配半分の顔持ちでこちらを向いていた

 

「おいどうした?何時も静かだが今日は一段とだな、何かあったのか?」

 

「あっいえその…」

 

しどろもどろになりながら言葉を続けようとしたけどうまい言葉が思いつかない、そんな様子を見かねたのか相澤先生は溜息をつきながら着席を促す

 

「もうすぐ期末試験なんだ、ぼっーとしてないで合理的に過ごせ、いいな?」

 

「は、はい」

 

そう言って朝のHRを終えて教室から出ていく誰か。僕は先程何を考えていたのか思い出そうとしてふと横に視線を向け

 

(……あれ?何考えてたんだっけ?)

 

もうそこには席なんて無かった。

 

広い教室中にいるのは僕の席だけだった。

 

ここには僕以外誰もいない。

 

(………なんだろう?なにか足りないような…)

 

 

フォォォンンン……

 

 

 

 

 

 

 

舞台の上でオブビリオンは用意した椅子に座り緑谷の様子を眺める

 

「あの子の灯火だけが異様に強かったせいでまだ取り残されているようだが…あの分なら大丈夫だな、彼も無事に楽園に行けるだろう…。」

 

オブビリオンは緑谷から視線を外し薄れすく世界を眺める、視界の奥から蜃気楼の様に揺らめき消えていく様子を静かに観る。

 

「しかし一時はどうなるかと思ったが案外あっさりだったな…君の個性はやろうと思えば天球儀を破壊出来たのだがな。」

 

見上げる先には黒い天球儀、雨宮を拘束・追放するために取り込ませたが特に問題は起きていない。いくら理に対して無法ともいえる技を持っていたとしても笛がなければ如何様にもなるらしい。

 

「そろそろ時間だ、私も【楽園】へ行く準備をしよう。」

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

廊下を歩く

 

あてもなく只々歩く

 

何時から歩いてたんだろう、ボンヤリとしててわからない

 

前を見ると【A組】と書かれた教室に辿り着く、どうやら気づかないうちに1周してたみたいだ。

 

中を覗いてみるがそこには真ん中に机とその上に自分の鞄があるだけで何も無い。

 

(……何をするべきなんだろう、なにかしなきゃいけないような、何かを目指してたような気がするけどそれがなにかわからない)

 

フラフラと教室の中に入る緑谷、目の焦点は合っておらず表情は消えかかっていた。

鞄を手に取るが持ち上げようとして躊躇する

 

(なんかもう疲れたな…みんなどこに行ったんだろう、…ん?)

 

フォォォンンン……

 

「なんだろう…鞄の中から聞こえる」

 

鞄からくぐもった音が聞こえなんだろうと思い鞄を開くとそこには祈りの手の形をした気味の悪い物が入っていた

 

「うげ…なにこれ、」

 

フォォォンンン……

 

どうやらこの笛(?)が発生源のようだ、かなり小さく鳴っていて取り出しても耳をすまさないと聞こえないくらいだ。

 

「なんで鳴っているんだ?見たところ電池が入ってるようには見えないし、えっ、なんか微かに震えてる?、なにこれ怖。」

 

笛は振動によって鳴っているようだ、どういった仕組みは分からないが薄気味悪さを感じる……だけどどこか懐かしいようにも感じる。

 

「うーん、よくわかんないしこれはここに置いて─あっ」ガッドサッ

 

机に置いて行こうと腕をのばしたら端に置いていた鞄に腕が当たり落ちてしまう、緑谷は困り顔にながら鞄とぶちまてた中身を拾う為屈むと

 

カランッカランッ

 

キーホルダーが転がって目の前で倒れた。

 

なにかのキャラクターなのだろうか、ニッとした笑に二本の触覚の様な金髪の前髪が特徴的なアメコミチックな絵柄だ。

 

「……。」

 

僕は不思議とそのキーホルダーに目が吸い寄せられた。

 

僕はそれを拾って眺める、まるで大事な何かを必死に掘り出してるような感覚に襲われる

 

(なんだ?、何を忘れてる?、何を?)

 

キーホルダーと増えを交互に見てボンヤリとした頭を必死に回す。

 

「僕は…僕は…!」

 

思い出せ、自分にとっての大切な友人達を。

 

思い出せ、自分が思い描いた夢を。

 

思い出せ、追い縋り、その背を追い抜かんと目指した憧れを。

 

「僕は─!」

 

キーホルダーから視線を上げると何も書かれてなかった黒板に文字が浮かび上がる、それはあの雄英で最初に教わった言葉だ。

 

PLUS・ULTRA!(更に向こうへ!)! 』

 

心の中に灯が着く

 

「っ!」

 

僕はキーホルダーと笛(?)を握りしめて教室を飛び出した

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

暗い。

 

何も視えず何も聴こえない。

 

体に力を込めることも、言葉を発することもできずにフワフワと水の中を漂っている感覚に流されるがまま。

 

なのに意識だけははっきりとしている、今の所は…だが。

 

勿論なにか出来ないか目覚めた直後に色々試してみたがどれも不発に終わった。

何とか動いて行動しようにも身体は脱力しきって鉛のように重く無理やり動かしても精々腕1本を前後に動かすのが限界、声をあげようにも口だけが動いて音は出ず、笛もないため個性は発現できず偽・祈手も死装束の2人も呼び出せなかった、スレッドに頼ろうと頭で念じるが通じず、

どれ程の時間を要したのか解らないが少なくとも数時間は経っていると雨宮は感じていた。

 

(こりゃ完全に詰んでるなぁ…)

 

俺は暗闇を漂っていながらそう思った、この世界に来てから様々な出来事に出くわしたがここまで手も足も出ないのは初めてだった。

 

(ドジったなぁ、まさか首にかけてた笛を落とすなんて…あんな土壇場でやらかすかよ普通。)

 

溜息をつきたくなったがそれすらも出来ないのでもどかしい

 

(あぁヤバイ…意識が持ってかれそうだ…、気ぃ張ってないとこのまま取り込まれる気がするし…)

 

目を覚ました直後は動けない程度だったが時間が経つにつれて意識が朦朧としてきていた

 

このままでは不味い、何とか抜け出さなければと策を考えるが文字通り手も足も口も出せない以上どうすることも出来なかった。

 

「──、──。」

 

(くそ、何言ってるのか解らないけど遂に幻聴まで聞こえ始めた…。)

 

だがその誰とも知れないその【声】にはどこか懐かしい感覚があった

 

「お──、あ─み─!。」

 

(なんだ?、誰だ?誰の声だ?A組の皆じゃない、家族の声でもない、お前は一体誰だ?)

 

「─い!、─まみや!。」

 

自分の名を呼ぶ誰か、今世の自分の苗字のはずなのに何故か今世での呼ばれ方とは違う。

 

自分の存在の輪郭がどんどん薄くなるにつれて大きくなる声、そして。

 

(駄目だ──意識が──持ってかれ──!)

 

雨宮の意識はまたプツリと途切れる

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

「おーい…おーい…」

 

(…………)

 

「雨宮ー、そろそろ起きないと怒られるよー」

 

(知らない声だな…でもなんか懐かしい様な、…誰だ?)

 

雨宮は微睡みからゆっくりと目覚め顔を上げる

 

(ここは…教室?、俺は何してたんだっけ…?)

 

「やっと起きた、もう。朝からずっと居眠りは良くないよ〜」

 

ボヤけた視界がハッキリしていき目の前の存在を視認した雨宮は内心ギョッとした。

目の前には自分と同じくらいの歳の女子生徒がいた、顔には影がかかり見えない【誰か】が此方に話し掛けていた。

 

(え…誰?)

 

「え〜?まだ寝ぼけてるの〜?、私だよ私。☵☲☷☱☶☴☳だよ」

 

(なんて言ったんだ?聞き取れなかったぞ…?)

 

「まだぼんやりてるわね、ほら先生来る前にシャキッとする!」ペチペチ

 

自分の頬を叩いてるようだが…何も感じない、音はするが感覚が無い

まるで夢を見ているような感覚だ。

 

「おっ?朝からイチャついてんのかー?お熱いねぇw」

 

横から茶化すように掛けられ雨宮と誰かが視線を向けるとそこには同じくらいの歳の男子生徒がいた、当然のように顔は見えない。

 

「イチャついてなんかいないって、寝坊助さんのお世話をしてただけですー」

 

頬を膨らませて抗議する女子生徒をやれやれと肩をすくめる男子生徒。

 

「いやそれをイチャついてるって言うんだよ…たくっこの無自覚夫婦め…

 

「え!なんて☆?」ズイツ

 

「近えよ怖えよそういうキラキラしたのは俺じゃなくてアイツにやれよ」

 

「なんか恥ずかしいからヤダ」

 

意気地無しめ…焦れってぇんだよ早よくっつけや…。そうだ雨宮お前今日提出するプリント持って来たか?」

 

(プリント?)

 

「おいおい散々先生に言われてたろ今週の提出物忘れ物コンプリートする気かよ?!とにかくカバン中探せ!今なら先生来てねーから間に合う!」

 

「あちゃー…でも雨宮君はああいうの苦手だったよね?書いてきてる?」

 

「それでもやらないよりかわマシだろ!どうだあったか!?」

 

ゴソゴソ…(あっ、あった)

 

そうして1枚のプリントを取り出す

 

「よしっ!あるなら大丈夫だ!ちゃんと書いてきて─oh......」

 

「あららやっぱり」

 

プリントを裏返して内容を見ると以下の事が書かれていた

 

 

 

・【将来の進路と夢】

※期限は今週の金曜日迄!

 

 

 

(なんだコレ)

 

「1年でこれ書かされるの面倒だよねー」

 

「んな事言ってる場合か!雨宮お前真っ白じゃねーか!」

 

(そうだな)

 

「いやそうだなじゃなくてだな?!」

 

「あっはははは!万事休すじゃんw、ちなみにウチも真っ白w」

 

そう言って目の前の女子生徒もプリントをこちらの机に載せると同じく真っ白だった。

 

☵☲☷☱☶☴☳!お前もかよ!?真面目に書いてきたの俺だけかよ?!」

 

(お前は何を書いたんだ?)

 

雨宮は何気なく男子生徒に聞く

 

「んぁ?俺?、んなもん決まってんだろ!」ドンッ!

 

自分胸を叩き自信満々に応える

 

「学問もスポーツもテッペンを取り!一流企業に就職して社長にまでのし上がって世界一の大富豪を目指す!!」

 

「はい無理ー」

 

女子生徒があっさり否定する、なんちゅう荒唐無稽な目標なんだろうか。

 

「別にいいだろ!俺は1番が好きだ!No.1だ!」

 

「はいはい、私はそうだなー司書かな」

 

「お前も大概じゃん!」

 

「失敬な!これでも文学女子として名を馳せるんだよ!」

 

「ただの願望じゃねぇか!」

 

(……なんだろう、前にもこんなこと話したような?)

 

雨宮はヒートアップする二人のやり取りを見て何処かノスタルジーを感じる雨宮、視線を下ろしプリントを観る

 

(将来の進路と夢…か、何を目指してたんだっけ)

 

真っ白なプリントと睨めっこしながら考える

 

自分は何になりたかったのか

 

何に憧れてたか

 

(小さい頃は何か明確にはあったんだろうけどもう思い出せないな…今は何をしたいんだっけ)

 

「ねぇ」

 

空っぽの自分には無理難題な課題であると考えていたら声を掛けられ再び視線を上げると男子生徒はいつの間にかいなくなっており女子生徒だけが此方を向いていた

 

「まだ見つかりそうにない?」

 

(あぁ、何したいか忘れた。)

 

「だよね、今の君は色んな事が抜け落ちてるから。でもいつかは思い出せるようになるよ」

 

(思い出す?)

 

「小さい頃私に散々話してくれたじゃん。☳☴☶☱になるって」

 

☱☶☴☳?)

 

「そう、今ここでは無理かもしれないけど【君が今いる所ならなれそうじゃん?】」

 

(……)

 

「まぁ今は難しく考えなくてもいいよ、君がちゃんと君自身の夢と憧れを思い出してくれるのをこっちは待ってるからさ」

 

フォォォンンン……

 

何処からか笛の音が聞こえる

 

「ほら、君の友達が呼んでいるよ。」

 

教室が少しづつ崩れていく、二人の輪郭も意識も徐々に薄れていく

 

(待ってくれ!ここは何だ?君は何故俺の名前を知っているんだ?君は誰なんだ?)

 

女子生徒は雨宮の質問には応えず右腕を指さす、視線を向けると右腕には黒くてゴツイガントレットが装備されていた

 

「君が譲り受けたちからはとても強い、やろうと思えばなんだって出来る。」

 

フォォォンンン……

 

笛の音は更に大きくハッキリとしてくる

 

「さぁ行って、友達を助けてあげて。そしてもし余裕があったらでいいからさ」

 

意識が途切れそうだ、女子生徒は此方に微笑みかけながら最後に告げる

 

「アイツを止めて、何時も君に頼って悪いけど私にはもう君しかいないから」

 

 

フォォォンンン……

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「はぁっ!はぁっ!」

 

緑谷は走る、まだ記憶は完全には戻ってはいないがあの笛とキーホルダー、そして黒板に書かれた【PLUS・ULTRA!(更に向こうへ!)】の文字を見て街を駆け、目的地を目指す。

 

「急がないと!、あの黒い球体にさえたどり着ければ!」

 

人も車も消えた道を突き進み街のド真ん中上空に佇む天球儀を目指して走る

 

だがいくら走っても近づく気配が無い、それどころか景色に違和感を感じる

 

「おかしいなさっきもあのお店をみた気がするな…」

 

同じところをグルグル周ってる気がするが今はとにかくあの球体の所まで行かなくては。

 

そう思い緑谷はまた走り出す。

 

タッタッタッタッタッ…

 

「はぁっはぁっはぁっ…」

 

タッタッタッタッタッ…

 

「はぁっはぁっはぁっ…」

 

タッタッタッタッタッ…

 

「……。」

 

タッタッ……ピタッ

 

「いやどう考えてもおかしいよ!もう三回目だよ?!しかもなんだか見えてるものがどんどん白黒になってる!?」

 

いくら走っても変わらない景色、しかも色褪せて見えてた景色は徐々に侵食されるようにモノクロな世界に描き変わっていった。

 

「このままここにいたら不味い、何処かに出口は!」

 

辺りを見廻し必死に出口を探す緑谷、そして前方の少し先の方の景色が少しだけ歪んでいるのを見つける

 

「あった!、でもコレ触って大丈夫なのか?」

 

少し躊躇するが意を決して右手を突き出すと肘から先がモヤの中に取り込まれたように消えていた

 

「み、右手が!……あれ?」

 

焦って引き抜こうとしたら意外にもサッと引っ込められた、消えていた右手も無事の様だ。

 

「もしかしてループしてるのってこのモヤが原因なのか?、だとしたらここが端っこなんだろうな。でも参ったな僕じゃこのモヤを突破出来そうにないし…かと言ってこのままだと…」

 

モノクロの色味がどんどん濃くなっていく、このままここにいたら一体どうなるのか想像もつかない、緑谷はポケットに入れていた笛(?)をおもむろに取り出す

 

「……そういえばこれはなんだろう、さっきより音が大きくなってる」

 

フォォォンンン……

 

微かな振動と共に音を出し続けている、先程よりかは音が大きくなっている気がするが…

 

「ん?これって……僕の手の色?」

 

ふと気づけば笛を持っている手に色味が戻っている、持っている手だけだが確かに色が戻っていた。

 

「もしかして……この笛のせい…ってこと?」

 

フォォォンンン……

 

「……ちょっと吹くのには躊躇いがある形だけど、もしかしたらいけるのかもしれない!よし!試しに─」

 

チラッ

 

フォォォンンン……

 

「………、ふ、吹き込み口に吹きかけるくらいにしとこ。」

 

……流石に祈り手の形をした笛を直に咥えて吹く勇気は無かったようだ。

 

「せーのっスゥーッ……ふーーっ!」

 

笛『スコーーーーッ』(迫真)

 

あれぇっ?!鳴らない?!もっと強く吹いた方がいいのかな?、ふーっ!ふーっ!!」

 

笛『スコーッスココーーッ』(迫真)

 

何度か息を吹き込み口に吹きいれるがそれでも間の抜けた音しか出なかった。

 

「えっどうしよう、もう何も思いつかないんだけど、不味いって不味いって!なんかもう黒のベースが濃くなりすぎてて凄いことになってる?!うわぁぁぁぁっ?!」

 

焦り過ぎて腕をわたわたと振り回す

 

フォォォンンン……

 

「い、今音が?」

 

ぶんッ

 

フォォォンンン……

 

「お、音が大きくなった?揺らせばいいのか?」

 

ブンブンッ

 

腕を振る度に大きくなる笛の音と比例して色はくすんではいるものの緑谷の右手から肘へ、肘から肩へとどんどん取り戻していく、それにつれて今までぼやけて忘れていた記憶も戻って来る。

 

「うぐぐ…これ以上振っても音が大きくならない…!なら!」

 

緑谷の腕にバチバチと緑色の閃光が迸る。

 

「さっきまで忘れてたけど【コレ】使って振れば…!」グッ

 

笛を握り一気に振りかぶる

 

O・F・A!!!(ワン・フォー・オール!!!)フルカウ──」

 

個性を発揮し一気に振ろうとして───!!!

 

 

スポーーンッ

 

 

 

 

緊張と焦りで手が汗ばんでたのかすっぽ抜ける笛

 

それを呆然とした表情で眺める緑谷

 

だが奇しくも個性を使った振りかぶりによるパワー+すっぽ抜けた振動+凄まじい回転による空気の流入により大音量で笛の音が白黒の世界に響き渡る

 

フォォォンンン……

 

 

笛を中心として黎い影が集まりやがて人型に形作られていく、そして頭部辺りに左右に分けるように真ん中に紫色の光の筋が走る

 

〚────え?〛

 

「────あ!」

 

見知った姿が現れる、だが再会を喜ぶ暇はなかった、何故なら──

 

ドゴォォォォォンッ!!!

 

〚背中痛ぁっ???!!!〛

 

あ、雨宮君ーーっ??!!

 

すっ飛んでいる笛を中心にしてるというのなら当然現れた物もそのまますっ飛んでいく、よって雨宮……もといボンドルドはそのままOFAのパワーが乗ったまま縦回転し大の字で張り付くように壁に激突しべしゃっと地面に落ち悶絶する

 

〚うごごごごご……い、一体何がぁぁぁぁ……。〛

 

「ごめん、手からすっぽ抜けちゃって──ていうかどうやって来たの?」

 

〚イッタタタ…、いやそれが俺にも何とも言えないんだよな…夢から覚めたらなんか出れたって言うか──と言うかなんか景色の色抜け落ちすぎてないか?〛

 

こんな白黒の世界だったっけ?

 

緑谷は( ゚д゚)ハッ!とする

 

「そうだったゆっくりしてる場合じゃないんだ!早くここから抜け出さないと!」

 

〚お、おい抜け出すって何処から。ん?何だこのモヤは?〛

 

よく見ないと分からないがここから先の世界が蜃気楼のようにユラユラ揺らめいてるように見える。

 

「なんとかここから出ないといけないんだけど僕の個性じゃ相性が悪くて」

 

〚ふむ…〛

 

(『君が譲り受けたちからはとても強い、やろうと思えばなんだって出来る。』)

 

(なんだって出来る…か)

 

〚緑谷、少し後ろに下がっててください〛

 

「わ、わかった」

 

そう言って緑谷は2歩下がるのを確認しボンドルドは右肘をモヤに向けて構える

 

キィィィィィィンン……

 

(恐らくこの【黎明卿】ってのはまだまだ知らない力がある、物理的な力とは違う何かが。)

 

腰を落とし右脚を前に踏みしめ軸にする

 

枢機へ還す光(スパラグモス)ならこのモヤを突破できる気がする)

 

この世界に存在した頃から共にしているまだまだ得体の知れない力、だが何時までも気味悪がっていたら先には進めない。

 

光が砲口に集まり強まる

 

枢機へ還す光(スパラグモス)

 

ズキュゥゥゥンンッッ!!

 

極光が撃出されモヤに大きな風穴を開ける

 

〚今です!ここから出ますよ!〛

 

「うん!」

 

ボンドルドと緑谷は白黒の世界から脱出を果たす。

 

 

────────────────────────

 

 

〚さて抜け出したは良いのですが〛

 

ボンドルドが見上げる先に鎮座する天球儀、直接的な攻撃はしてこないがまたさっきみたいに閉じ込められても面倒なのでどうしたものか。

 

〚どうやってあそこまで行くか〛

 

一応飛ぶ手段はありはするのだが【飛ぶ】と言うよりも【跳ぶ】に近いのでここから行くのはあまり良くないのだ。

 

ボンドルドが顎に手を当てて考えていると横で同じように考え込んでいる緑谷がていあんしてくる

 

「一応僕の個性でジャンプすればある程度の高度は行けるよ、そこから雨宮君のジェット噴射でなら届くんじゃないかな?」

 

〚それは脚を壊す前提ですよね?こちらの再生薬*1も万能では無いので余り無茶はしないでいただきたい〛

 

「う…ごめん」

 

緑谷は図星を突かれたのかバツが悪そうに謝った

 

〚ただそのように飛び出してからロケットで飛び出すのはいいかもしれませんね〛

 

(せめてカタパルト的な何かがあればいいんだけどこのビル街にそんなのは…………………あ)

 

自分たちの周りを見回すと高くは無いが雑居ビルが左右に立ち並んでいて新築なものもちらほら建っていた。

 

〚緑谷君〛

 

「何?」

 

私に良い考えがある*2

 

その声でそのセリフ言われると凄く不安なんだけど?!

 

 

〜しばらくして〜

 

 

「ねぇこれ本当に大丈夫?」

 

ギリギリ…ギリギリ…

 

〚あの高高度にいるオブビリオンの元に行く手段で一番手っ取り早い方法です……少々危険ですが〛

 

ギリギリ…ギリギリ…

 

「いや少々所か危険満載なんだけど…」

 

ギリギリ…ギリギリ…

 

〚背に腹はかえられませんよ、グェイラ左が少し緩み始めてますもう少し引っ張って下さい、ギャリケーはそのままを維持してください。

射角はなるべく高度を取りたいので64.6をキープ、右に1.3修正して下さい〛

 

ギリギリ…ギリギリ…

 

ぐごごごごっ久々の出番でこの重労働はキツすぎるっスよぉ…っ!!〗

 

〖文句を……言う暇が……あるなら……サッサと…やれ……っ!!〗

 

両側に建っている建物の内頑丈そうな建物に複数より合わせた月に触れる(ファーカレス)を取り付け偽・祈手(ロー・アンブラハンズ)と共に引っ張ってその反動で飛び途中で両腕のロケットを起動して飛んでいくというもの。

 

所謂人間パチンコ、逆バンジーと言うやつである。

 

え?バンジーはともかくパチンコで人間は飛ばさない?そもそもロケット噴射もしないって?かの有名なBIGなBOSSも仲間と共に飛んでましたよ?*3

 

〖も、もう限界……!〗

 

〖卿…!此方も限界だ…!〗

 

ギリギリ…ギギギギ…!!

 

〚そろそろですね、では合図と共に手を離してください。緑谷君はそのまま捕まっててください一応月に触れる(ファーカレス)で補強はしてますが万が一の為に〛

 

「もうここまで来たらやるしか無いね…よし!こっちは何時でも行けるよ!……でもやっぱりなんだけどさ」

 

〚それでは…〛ガンムシ

 

ギギギギギギギギ……

 

張り詰める緊張、届くかどうか分からないが全てはこの一瞬に掛けられた。

 

〚ボールを相手のゴールにシュゥゥゥーッ!!〛

 

スパァァァァンッッッ!!!!

 

「その合図じゃ無くても良かったんじゃァァァァッッ!!??」

 

合図と共に勢いよく弾き出される2人!!コースは天球儀一直線だ!

 

 

 

 

 

 

〖……行きましたね〗

 

〖あぁ、後は卿に任せよう〗

 

〖ところでオッサン〗

 

〖なんだ?あとオッサンでは無い〗

 

〖あの掛け声ってなんスか?〗

 

知らん

 

〖そっかー〗

 

 

*1
15スレ参照

*2
CV. 玄田 〇章

*3
メタルギアシリーズのPW参照

貴方は忘れたいことはありますか?

  • ある
  • ない
  • (│)〚知らん〛
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