本日も前回予告しました通り、最新話をお送りします。
それでは、本編をどうぞ。
ライブが終わった早数日、この日颯樹は仕事は完全にオフだが、大学がある。しかし午前中は自身が受けている講義は、担当教授が2週間の海外出張のため、その期間は休講であるが、教授が帰国した際にレポート提出をしないといけないので、そこは怠らないようにはしているのだ。
だからこのため、今日の大学は午後から行くのだが、最近は仕事が忙しくてなかなか食材の買い出しに行けてないのだ。
そのため、冷蔵庫の中の食材が底に尽きそうにになるので、午前中の買い出しが終わってから大学に行く予定である。しかし準備にはそんなに時間は必要無かったので、ものの数分で終わらせるも、最近行き始めた大型スーパーの開店時間まではまだ2時間ほどあるのだ。
目的地まで車で数十分と、時間は取らないので、コーヒーを飲んで一息ついていた。しかしコーヒーを飲み始めたちょうどその時、誰かから着信が来た。颯樹はスマホを手に取って誰か確認すると、納得したような表情を浮かべると同時にため息をついた。
『おはよう、颯樹さん。こんな朝早くからすみませんね』
「もしもし、おはようそよ。どうしたこんな朝早くから?」
電話の相手はそよのようだが、平日にも関わらず朝早くから電話を掛けてきたのは颯樹は内心驚いていた。
『それでは単刀直入に…睦ちゃんの事だけど』
そよにそう言われた颯樹はコーヒーを飲む手をピクリと止めた。まさかわざわざ級友の事を聞き出すためだけに平日の朝っぱらから電話を掛けるとは予想すらしてなかったのだ。
「……何故だ」
『昨日、夜のニュースでAve Mujicaの特集をやってたの。だけどその際に出てた睦ちゃんを見た際にこう思ったの。この睦ちゃんは別人じゃないかと』
そよの抱いていた気持ちに心当たりがあるのは当然の事だが、こんなにも早く睦の事で指摘してきたのは想定外であったのだが、颯樹は一度ため息をついた。
「……ごめん、そよ。今から言う事は内密にしててね。基本は守秘義務が働く物だから」
本来ならのらりくらりと躱そうとしたが、そよの喰いつき具合からして言い逃れをしても逃げきれないと観念したのか、誰にも言わない事を条件に事情を説明するのであった。
『そんな事が…』
「そうだ。紛れもない事実だ」
颯樹からの事情を受けたそよだが、現実として受け入れ難い内容であったのか困惑気味であった。しかし颯樹の口から伝えられた物でもあるからか、真実として受け入れざるを得ない状況でもあるので少し複雑な感情を抱いた。
「…だけどそよの気持ちは分かるよ。大半の人間はそう言われたら誰もがお前と同じリアクションを取るのは無理もない。だけど、お前は睦の学友でもある。だから事実を受け入れなければならない」
複雑な心境のそよに対して颯樹はフォローを入れつつ、彼女に今後睦とどう関わっていくかの助言を施した。
『颯樹さん…分かった、私も少しずつだけど、自分なりに睦ちゃんに接してみる』
「分かった。だけど無理はするな」
それを受けてそよは自分で睦とどう関わっていくか模索する道を選んだ。睦と学校が同じで、唯一同学年なのは自分だけなのだ。だから自分が彼女に寄り添ってなければならない…そう悟ったのだ。
そよの出した答えに颯樹は関心するも、一つ違和感を抱いた。
「……そう言やそよ、今何してる」
『えっ、今は着替えてる所だけど』
そよの衝撃発言から少しの間、沈黙が走った。それもそうだ、電話越しから聞こえる何かが擦れる音が漏れていたのだ。しかもそよから通話から間もなくしてから今に至るまでその音が止まる事は無かったのだから。
「……っ、早く着替えを済ませろ!下手したら遅刻するぞ!」
颯樹にそう指摘されたそよは顔を真っ赤にして即座に着替えを済ませると、颯樹に一瞥して通話を終わらせて学校に向かうのであった。颯樹もやれやれと言わんばかりに呆れて、時間を確認してまだ開店時間はあるので再度コーヒーを淹れ直すのであった。
学校が終わって、放課後にマイゴのライブの打ち合わせも兼ねた練習のためにRiNGに来たんだけど、なんだか調子が上がらないなぁ。
今朝、颯樹さんから睦ちゃんの話を聞いたのもあるけど、その際に私は制服に着替えながら彼の話を聞いてたから、それを指摘されて、恥をかいた気分になっちゃった。
そのためか、今日の授業は何処か上の空。あとは人が変わった睦ちゃんを間近で見たからそれもあるんだと思う。
「今日のそよりん何だか上の空だねー。うりうり」
「……やめて」
しかしそれ以前に、私が上の空に乗じてか愛音ちゃんがちょっかいを掛けてくるから少し鬱陶しい。でも愛音ちゃんの言う事は至極もっともだから何も言い返せないのが腹正しく感じる。
「あ、あのちゃん、イタズラは程々に……」
そんな愛音ちゃんを見かねたのか、燈ちゃんがイタズラを止めるよう促してきた。
「まぁたまた……。ともりんだってれおぽんに付箋にメッセージ書いて下駄箱に貼り付けたり、なんて電話しようか数日悩んでたよねー?となればそよりんと同じか…それ以上だと思うけど?」
「あ…あのちゃん、それは…!」
燈ちゃん、そんな事考えてたの?まぁ、獅音くんが抜けて一番ショックが大きかったのは燈ちゃんだけど…愛音ちゃん、その話本当なの?確かに燈ちゃんの気持ちはなんとなく理解できるよ。前者ならともかくとして、後者は流石に私でもドン引きするよ…
「はぁっ?燈の口からまたあのクソライオンの名前が出てくるの? ……よし、アイツ1回殺してくる」
「ストップりっきー、早まっちゃダメー!」
「待って、立希ちゃん…!」
獅音くんの事を聞いた立希ちゃんは何処からか取り出したか定かじゃないけど、鈍器と鎖鎌を手に持って何処か…おそらく獅音くんのところに殴り込みに行こうとしたけど、愛音ちゃんと燈ちゃんに止められた。
というか立希ちゃんは何処を目指そうとしてるの?バンドマンじゃなくて
私知ってるからね。バイト代2ヶ月分費やしてボクシングセットとサンドバッグを購入して、サンドバッグの自分が殴る箇所に獅音くんの顔写真貼り付けてストレス発散する際に殴り倒してるの。
これじゃ反省どころかエスカレートしてるんだけど……。
そう思い私は誰も見てないところで颯樹さんにこの事を密かに連絡した。今日は大学だけって言ってたから講義が終わったらおそらく数十分で此処に来る事はできるはず。
そして数分して颯樹からチャットの通知音が鳴った。
『分かった。講義は終わったから、今から此方に向かう』
「だからりっきー落ち着いて!」
「立希ちゃん、やめて!」
「ダメだ!これは燈の頼みでも聞けない!あのクソライオンには目に物を見せないといけない時期が来ちまったんだ!」
しかし2人の制止を振り解こうとしている立希ちゃんの姿が。しかも立希ちゃんは散弾銃と斧まで武装してるだけど、ホントそれ何処から取り出したの?
そして数十分後…
「お待たせ、そよ」
3人…正確には燈ちゃんと愛音ちゃん、暴れる立希ちゃんが格闘している最中に颯樹さんがカフェテリアに来店してきたと同時に小声で私に話し掛けた。ホント毎度毎度助かります……。
「それで立希は?」
「あそこ」
私は颯樹さんと小声で会話しながら指を指した。指の先には未だ格闘している3人がいた。立希ちゃん、もうやめなよ。燈ちゃん、息切れが激しいから。
「分かった。じゃ後は任せろ」
「えぇ」
そう言って颯樹さんは3人に気づかれないようにコッソリと3人…というより立希ちゃんの背後に近づいた。
「立ー希ー。そろそろやめような?」
「五月蝿い。誰が…⁉︎」
立希ちゃんは武器を構えて獅音くんに襲撃を仕掛けようとしてたからか、声を掛けてきた人物が颯樹さんだと気づいたのは多分声を掛けられて振り向いた時だと思う。
「ほう、その様子だと全然反省していないようだな?しかもその様子だと段々エスカレートしている傾向に見えるな?」
立希ちゃんが振り返った時にはもう手遅れだと悟った。だって今の颯樹さんは指を鳴らしながらニッコリと笑っているのだから。しかもその笑顔は目が笑ってないからその恐ろしさが窺える。
「またアンタか…!」
「もしかしなくてもそのまただ。しかも重装備だとは…よほど獅音に対しての私怨が深いようだな?」
うん、それ思った。しかもよくそんなに武器を揃えるね…。サンドバッグとかより絶対お金かけてるでしょ?でないと此処まで揃わないと思うけど。
「ま、そんな事はさせるつもりはないからな…とりあえず立希は反省文30枚といこうか?」
「多っ⁉︎」
愛音ちゃんが驚くのは無理もないか。だって普通最初はよくて1枚、多くても3〜5枚だからね。
「あっ、颯樹さん。それなら愛音ちゃんにもお説教をやっちゃってどうぞ。さっきからしつこく絡んできたので」
「そよりんっ⁉︎それ理不尽だよ!鬼!悪魔!そよ・ザ・デンジャラス!」
なんとでもどうぞ。ていうか最後のヤツ、この前ニックネーム候補に仕立ててボツにしたよね?まだ使ってくるとはしつこすぎる……。
「そうかそうか。それなら愛音にもお説教するとしようか」
「理不尽っ!」
「でも安心しろ、慈悲はあるから。愛音は説教1時間だけで収めてやる」
「安心できないからっ!」
いや、自業自得でしょ?
「でもその分立希は倍増な?」
「はぁ⁉︎」
「当然だ。この前説教したのにも関わらず、わずか数日で犯行に及ぼうとしてるからな…情状酌量を適応する気にもなれん」
うん、これは完全に立希ちゃんの自業自得だ。誰も彼女に同情する気もない。
「でも立希にはちゃんと指導しないといけないからな…お前は入念に説教しないといけない」
「はぁ⁉︎」
でしょうね。でないと再犯する可能性が高いから。しかしその時、急に颯樹さんは立希ちゃんに拳を掠めるように振りかざした。しかもその影響で髪の毛が数本地面に落ちた。
「しかもお前のは特別指導だ。最近お前はボクシングセットを買ったそうだな」
「はぁ⁉︎なんでアンタが知ってるんだ⁉︎」
「話を風の噂で知った」
それ、教えたのは私なんだけど。正確には、立希ちゃんのお姉さんが私に立希ちゃんがボクシングセットを買った事を受けて何かあったか相談しただけなんだけど…その際颯樹さんにも内密に教えただけなんだよね。
「だから、僕が直々にボクシングの特訓を施そう。ちなみに断ったりしたら説教6時間と反省文50枚コースとボクシング3時間のフルコースを味合わせあげるからそのつもりで」
もうそれ完全に死刑宣告と変わらないんだけど……でも元を辿れば立希ちゃんの自業自得だから良い薬になるかもね。
「沙綾、少し
「ちょっと待ってくださいねー……ちょうど一室だけ空いてるんで、そこを使ってもらって結構です。凛々子さんには私から後で事情を説明しておきますので」
「分かった。それなら、そこを3時間だけ借りるとしよう。ちなみに使用料金は立希の次回の給料から天引きしておいてくれ」
「了解しました♪」
カフェテリアでちょうど仕事してた山吹さんにそう一言断って颯樹さんは立希ちゃんと愛音ちゃんの首根っこを掴んで、山吹さん案内の元立ち去るのであった。
ちょうどその時、楽奈ちゃんがすれ違うように来店してきたけど…何故か京介さんに引き連れられていた。
「今、颯樹さんとすれ違ったようだが…何があったんだ?」
「あー、それは……」
颯樹さんの事は認知したけど、事情までは把握出来ていない(無理も無いけど…)京介さんに、何があったか詳しく説明した。
「なるほどね」
「そういう京介さんは何故どうして此方に?あとなんで楽奈ちゃんと行動してたんですか?」
「質問は一つにしなさい…と言いたいが、月ノ森の生徒だから受け流そう。まずはそこの楽奈がなんか立ち往生してたから事情を聞いて連れてきたのと…」
京介さんが事情を聞いて納得したと同時にまず楽奈ちゃんを連れてきた経緯を話した。立ち往生って…そんな猫みたいな…いや、今に始まった事じゃないか。
それで言い終えた京介さんは何故かカウンターの方に視線を向けた。
「香澄の馬鹿に用がある」
「なんで戸山さんに用があるんですか?」
「あの馬鹿、今日2マンライブの打ち合わせがある事忘れてバイトのシフト入れやがってたからな。「ヤキを入れて構わない。だけど命の保証とギターが弾ける程度で収めてくれ」という市ヶ谷から承認を得たから此処に殴り込みに来たんだ」
こめかみ辺りに青筋を浮かべながら京介さんは笑みを浮かべて指を鳴らしていた。これ、デジャヴだ。つい数分前の颯樹さんと全く同じなんだけど。
「香澄、アレほど言ったのに……。京介、香澄は裏方で作業してるから連れてこようか?」
「頼む。お礼代わりとして3日後やまぶきベーカリーで5000円分のチョココロネを購入するから用意しておけ。あとそのチョココロネは全てりみりんに送り届けてくれ」
「了解、それとお買い上げありがとうございます♪」
えっ、そんなんでいいの?しかも山吹さんはそれに承認しちゃったようでニッコリと笑ってた。しかしチョココロネ全部牛込さんにプレゼントって……。
私が呆れている最中、山吹さんは戸山さんを連れてくるようでいつのまにか裏方にむかっていったし。
「誰が私に用があるの?」
「香澄もよく知っている人物だよ?」
見つけるのにそんなに時間を取らなかったようで、2人の会話が聞こえてきた。しかも会話を聞く限り、戸山さんは京介さんが来てる事は知らないみたい。
「あっ、京介くん」
「「あっ」じゃあねぇよ。お前、打ち合わせの日忘れてただろ?」
「あっ、ヤバ…忘れてた」
うん。案の定、戸山さん忘れてたよ。しかも声に出しちゃってるし。
「そうかそうか。誰かと交代でバイトのシフトに入っていたなら大目に見逃してやるつもりだったが、何の躊躇もいらないようだな。よかったよ」
右手にメリケンサックを着けながら京介はそう言った。すこしやりすぎな気もするけど、元を辿れば戸山さんが100%悪いので擁護すら出来ないのは事実。
「京介ー。颯樹先輩がお説教で使ってる部屋があるから、その部屋使ってるいいよー」
「ありがとう、早速向かう。部屋番は?」
「あー、それはねー……」
「ちょっとさーや、何乗り気なの!助けて!」
いや、自業自得でしょ?(2回目)
「ありがとう、沙綾。それじゃ香澄、市ヶ谷の許可もあるからそろそろ逝こうか?」
「ちょっと待って京介く…あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
京介さん、『行く』の字絶対『逝く』になってますよね?でも私のそんなツッコミはさておいて、京介さんは戸山さんの首根っこを掴んでそのまま颯樹さんのいる部屋に向かうのでした。
「そよ、アレなに?」
「楽奈ちゃんは気にしなくていいから」
「…りっきーとあのんは?」
「あの2人はお取り込み中。愛音ちゃんは1時間くらいで合流出来ると思うけど、立希ちゃんは無理かもね」
「?」
楽奈ちゃんに2人の所在を尋ねられたけど、ありのままの事実を伝えた。でも立希ちゃんの事は理解していないようで首を傾げた。
「楽奈ちゃんは知らなくていい事だから。それじや早く練習しましょう。楽奈ちゃんはバンドしたいんでしょ?」
「!バンド、やる」
「それじゃ決まりね。あとで抹茶パフェご馳走してあげるから早くしようね」
「うん!」
そろそろスタジオを借りる時間という事もあって、楽奈ちゃんを上手く言いくるめ…というより買収して無理矢理この話を切り上げてスタジオに向かう事になった。
ちなみに楽奈ちゃんにご馳走する抹茶パフェは私が支払うんじゃなくて、颯樹さんが先程やったように、立希ちゃんの次回のお給料から天引きしてもらうよう山吹さんに頼むは此処だけの話ね?
「(そういえば颯樹さんで思い出したけど…今朝の事で色々言われたりしないかな?あの時、私着替えながら電話してたから色々と音が漏れちゃったんだよね…。颯樹さん、さっきはスルーしてたけど内心意識してないかな…?)」
今になって今朝の出来事が蒸し返してきた。忘れたいけど、数日は忘れられなさそう…。多分今の私の顔は真っ赤になっていると自負している。多分この場に愛音ちゃんがいたら、
あと余談だけど…その愛音ちゃんは、スタジオで練習開始してから1時間ほどで私達と合流したけど、颯樹さんのお説教を受けたからかその目から普段の生気が感じられなかった。
その後は愛音ちゃんも加わって練習したけど、立希ちゃんは結局最後まで来る事はなかった。でもスタジオ借りる時間が迫っていたので、外に出ると、ロビーでは真っ白に燃え尽きて椅子に座ってる立希ちゃんがいた。
あとはそんな立希ちゃんの隣には戸山さんがいたけど、頭にたんこぶが出来ていた。しかも彼女の身長と然程変わらない高さまで到達してるんだけど…そこまでに至る量頭叩いたな、
そんな颯樹さんと京介さんだけど、してやったりと言わんばかりにカフェテリアでコーヒーを飲んでたのは此処だけの話です。私達もそんな2人に合流して暫しの交流や雑談を経てからそれぞれの自宅に帰るのでした。
ちなみに余談だけど、1ヶ月後に立希ちゃんや戸山さんは給与明細を見た際に振り込み金額を見た際に悲鳴を上げたのはまた別の話です。
まずは読んでくださった方、お気に入り登録をしてくれた方、こんな拙作を応援いただきありがとうございます!こんな拙作読んでくれるだけでもありがたいです。
次回も2週間後を目安に最新話の投稿を予定しております。もしかしたら、進捗次第では1週間前倒ししますが。
それでは、また次回。