舞い狂う仮面の人形と孤独の獅子の咆哮   作:なかムー

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 皆さまお待たせしました。そして投稿遅れて申し訳ありませんでしたm(_ _)m

 アニメでのくだりがあまりにもギスギスしてたので、その影響でなかなか筆が進みませんでした……。

 さて、気を取り直して…今回は先日お伝えした通り、最新話をお送りします。

 それでは、本編をどうぞ。


#11

 僕たちAve Mujicaが所属している芸能プロダクション…『Win-Wing-Production』の事務所の一室にて、メンバー全員が仕事の休憩を取っていた。

 

 さっきまでテレビの収録があったのだ。しかも収録が終わっては別のテレビ局に移動して収録…という過密なスケジュールであるのだ。

 

 前回の反省が活かしきれてないのか…と思いきや、そういうわけじゃなかったのだ。睦さんたっての要望で仕事を増やしたのだ。

 

 当然颯樹さんからは拒否されたのだが、どういう訳がそれを承諾したのだ。

 

 「あー、疲れた……」

 

 そんなスケジュールに疲れが見えたのか、にゃむさんが机に突っ伏しながら愚痴を呟いていた。結構スケジュールを詰め込んだから流石に疲れたのか……。しかしそこにスタッフさんが1人入室してくると僕たちに差し入れとしてマカロンをくれたのだ。

 

 「何色にする?」

 「悩むなぁ…」

 「赤か、黒…てか、ダイエット中なんだよねー」

 

 睦さん、初華さん、にゃむさんがどのマカロンを食べるか選んでいたけど、にゃむさんに至ってはダイエットしてるのを思い出したようで食べるのを止めたけど。

 

 しかし睦さんと初華さんがどれを食べるか悩んでいる最中に海鈴さんが割り込んでマカロンの一つを手に取って食べた。それに対し睦さんは「あー!」と言って横取りされたのを見て悔しそうにしてる。

 

 「私、食べても太らないので」

 「羨ましいー」

 「自分で言うか、普通…」

 

 京介先輩の言う通り、言いませんね。というか海鈴さんはこの前の「私も綺麗な顔してるので」と言い、にゃむさんに対して完全に皮肉を言ってるな……。

 

 「では京介さん、私のお腹を触ってみますか?今なら触りたい放題ですよ。そうすれば太ってないって証明できますから♪」

 

 貴女は何を言ってるんだ。というか海鈴さんはそう言うと、お腹を(…というより、へそ出しのインナーを着てる都合上、もう見せてるけど)見せてきた。

 

 「節操の無い女は飽きられますよ。常日頃から優雅に淑やかたれ、その意味がわからない歳ではないでしょう」

 

 そんな海鈴さんの様子を見かねてか、千歌さんが彼女に苦言を呈してきた。

 

 「何故貴女がそれを知っていますの?!」

 「私も母から厳しく教育を受けてますから」

 

 祥子ちゃんが驚くと千歌さんがそれをいなすように返した。うん?もしかしてこの人……

 

 「あの…もしかして千歌さんも……」

 「貴方の認識がどうかは分かりかねますが、彼女は音楽家の家系で、母はソプラノ歌手の水澄(みすみ) (あかね)です」

 「当然有名人な訳だから礼儀作法も完璧にこなせますわ」

 

 そうだったんだ…なんか意外だ。ん?確か素顔晒したライブの際に確か観客(ゲスト)の反応も凄かったからなぁ。黄色い歓声が湧き出てたからよく覚えてる。今更だが、スマホを取り出して調べてみよう……水澄(みすみ) (あかね)……海鈴さんの言った通り、名の知れてるソプラノ歌手である。夫(千歌さんからしたらお父さん)も、音楽系の仕事をしているのは本当のようで、その界隈でも有名人のようだ。

 

 千歌さんの家庭の事情は概ね理解できたけど、今気になるのは睦さんよ方だ。

 

 今の睦さんはテレビの生放送の日からキャラが今までとは真逆になっていた。あと僕が知っている限りでは、彼女は無表情で尚且つ無気力に近いのだ。だが今は今までとは180℃違って表情豊かなのだ。

 

 だけどその理由は僕を含めた一部は知っている。それは睦さんは解離性同一性障害(かいりせいどういつしょうがい)…つまる話、多重人格の疑いがあるからだ。

 

 颯樹さんの知り合いから聞いた話では、進行度合いは生放送当日の時には既に極めて危険な状態であるのは耳にしている。

 

 僕も後から知った事だけど、睦さんの症状を聞かされたと同時期に、睦さんが過激派のファンから襲撃を受けた。

 

 その時に僕たちは颯樹さんの知り合い…藤宮さんって言ったか、その人物の紹介を受けて、医者と一度相談して不測の事態を避けた方がいいと打診されたばかりにだ、しかもこのタイミングを狙って。

 

 この襲撃を受けて、一度藤宮さんが今一度調べた(と言っても、颯樹さんと同じ年だから本格的な検査ではなくて簡易的ではあるが…)けど、もう既に手遅れに近い状態であったそうだ。

 

 だから僕たちは生放送当日まで今後どうするか入念に打ち合わせをするも、水泡に帰ったのだ。

 

 今も尚、睦さんは別の人格に成り変わっているようで、他の大半のメンバーもそれには疑念すら抱いていないのだ。多分『アレ?なんかキャラチェンした?』か『もしかして本気を出した?』程度としか捉えられてないだろう。

 

 「皆さん。腑抜け無いでください。まだ新曲も完成していなくてよ?」

 

 そんな様子を見かねてか、祥子ちゃんは苛立ち気味になりながらもまメンバー全員に叱咤した。

 

 「ライブ最終日にお披露目しますからね…」

 「あたしは叩きたいんだけどなー」

 

 まだ新曲も出来ていないからこの反応…元々は作詞は初華さんで、祥子ちゃんが作曲だからね…実を言うと新曲作りは難航してるんだよ。特に作詞した歌詞がないと作曲も出来ないから……。曰くsumimiの方も忙しいみたいだから作詞になかなか手を出せてないようだ。

 

 「すまない、祥子。sumimiの方が忙しくてな…」

 「あっ…此方こそ申し訳ございません」

 「いや、僕の方にも一応の原因はあるから気にしないでくれ」

 

 申し訳なさそうに颯樹さんは祥子ちゃんに謝るも、祥子ちゃんも我に返ったようで申し訳なさそうになった。暫く話しをして、今週末にsumimiの仕事がオフだから、その日の間に新曲作りをする事でなんとか話は纏まった。

 

 その後は各々の仕事があるそうで初華さん、睦さん、海鈴さん、にゃむさんは会議室を出て行った。

 


 

 そして時間は過ぎ、福岡ライブ前日。

 

 僕たちAve Mujicaのメンバーは会場でリハーサルを行なおうとしていた。といっても京介先輩は不在で颯樹さんがいる形であるが。(ちなみに京介先輩は本職のライブがあるため、其方に付きっきりになるため参加出来ない事と、颯樹さんはsumimiの方が完全オフだからという理由だが…)

 

 で、今は音響チェックに入るため合わせをやろうとしたところで新たに問題が発生した。

 

 「モーティスさん、ギターを…」

 「ギター、いらなーい」

 

 えっ?今「いらない」って言わなかった?なんでそんな事言うんだ……あっ、もしかしたら「私もうギター余裕だから、リハーサルの必要は無い」…そういう意味合いで言ったんだね?

 

 祥子ちゃん達やスタッフさん達も驚いているからそんな冗談言うのやめようね?流石に誤解しちゃうかな…

 

 「だってギター弾けないし」

 

 …なんで真顔でそんな事サラッと言っちゃうの?しかも少しばかり首を傾げて「何言ってるの?」と言わんばかりにキョトンとしてる……ん?待てよ…

 

 『ムジカの曲知らなくてー』

 

 …そういえば、生放送当日のあの後に行われた出演者のトークにて睦さんはそんな事言ってたな……。でもその時は司会者さんも冗談だと受け流してたから気づかなかったが。もしその言葉が仮に本当の事だとしたら今の睦さんは人格が違うのが決定的になるぞ。

 

 しかし当の本人がそう言ってるのだから仕方ない捉えたのか、スタッフさんの判断でリハーサル一旦中断して、控室の楽屋にて待機する事となった。

 

 でも僕、祥子ちゃん、颯樹さんの3人はスタッフさんに許可を取って、他のメンバーとは違う部屋で緊急の会議を開く事となった。僕たち以外にも、藤宮さんと京介先輩にも無理を承知の上で招集を掛けて、電話越しという形で参加する事となった。

 

 ちなみに千歌さんには他のメンバー(特に睦さん)の面倒を任せた。

 

 『…一応念のために確認を取るが、今話した事は本当か?』

 「本当だ。すまない、特にお前は明日ライブだというのに急に呼び出して…」

 『緊急なら仕方ない。それに前倒しで打ち合わせやリハをしてたからライブの時間まで余裕はある。もし前倒してなかったら、今回の緊急会議の参加は危ぶまれていたが』

 

 会議が始まると、早速今回の一件を事情を知らない2人に説明した。

 

 先輩の都合が合ったのかスケジュールに余裕はあったみたいだけど、リハーサルの前倒し…そういうのは時間遵守だと思うんだけど……というよりなんで颯樹さんは遠い目してるんだ?まさか心当たりがあるのかな?

 

※大体はどこぞのTOKOのお陰で予定通りに進まない事があります。それのお陰で年明けに行われたグァムでイベント参加した時は飛行機は前乗りしてました。

 

 『…話の腰を早速折ってすまない。もしそうなら人格は入れ替わったのは確実で、睦本来のギターの腕までは反映されていない…と捉えていいのか?』

 「あぁ、そうだ。その認識で間違いない」

 

 電話越しで今までの話を再確認した上で、京介先輩は要点だけ掻い摘んで今の睦さんの状態を今一度整理した。

 

 『藤宮女史。一つ尋ねるが、解離性同一性障害(かいりせいどういつしょうがい)は心の中にいくつもの人格が別れて存在して、一番長く一番表に出ている人格を主人格、それ以外の人格を副人格と呼んで、時々人格が交代をして表に出てくるので、その間は主人格の意識は分断されて、記憶がない状態になると俺の方でもある程度調べたが、もしそうなら、その逆の副人格に主人格の動きとか真似は出来ないのか?』

 『大半は症状を認めずに診断や治療を拒まられる医師もいますが、それは個人差があります。それと、その女史というのは…?』

 「美優。京介の人の呼び方は独特すぎるんだ。おそらく京介本人にとってはお前に敬意を払ってるから、それに対してその呼び方をしている。だからあまり気にしないでくれ」

 『そ、そうでしたか…』

 

 京介先輩は電話越しに藤宮さんに質問するけど、詳しいなこの人…。多分この人もそれを聞かされて独自に調べたんだろう。でも、その『女史』って…藤宮さんが困惑してますよ……。

 

 『話を戻します。では……私は流川さん、でお呼びしてよろしいんですの?』

 『構わない』

 『わかりましたわ。では、改めて。流川さんの(おっしゃ)られた事は、理論上出来ない訳ではありません。ですが、今の若葉さんの状態を加味するなら、生まれたての赤子同然の精神状態になっているのです』

 

 なるほど…だから今の睦さんの口調が子供っぽかったのはそれが理由だったんだ。それは納得したけど…

 

 「すみません、僕からも」

 『何でしょうか?』

 「睦さんがギターを弾けない、と言う事はわかりました。ですが、ライブまでもう時間が無いんです。何か策はありませんか?」

 

 僕が藤宮さんにそう尋ねた瞬間、周囲が凍りついた感じがした。颯樹さんや祥子ちゃんからは『何言ってるんだ?』って目つきで睨まれたから少し身震いをした。

 

 『貴方、一体全体どうしてこの状況になっているのか、理解したうえで今の発言をなさいましたの?』

 「す、すみません…」

 『少年、それは失言だ。ヘッドホン掛け器でも言葉は選ぶぞ?』

 

 うっ…流石に迂闊すぎたか……。というか先輩、後半から何を言ってるんだ?ヘッドホン掛け器ってなんですか?祥子ちゃんは首を傾げてるけど、颯樹さんはなんか悟った表情してるし…。

 

 『……とにかく。それでしたら、代役を立てて対応するしか方法はありませんわ。颯樹様、関係者の方にはご報告を?』

 「報告書は上にあげた。だが、対応に遅れが生じている。それもあったのか、周囲に説明が届いてない」

 『……なんて事っ。颯樹様にどれだけの負担がのしかかるか、想像に難く無いと言いますのに……私がその場に居りましたら、首根っこを掴んででも説得しましたのに……

 

 とりあえず今の状況に藤宮さんは嘆いているけど、最後の方何言いました?小声で電話だから聞き取れなかったけど……。

 

 「とりあえず、アレだ。さっき変な事を言ったヤツには、それ相応の責任と言う物があると僕は思うんだよ」

 「……これに関しては私は一切フォロー致しませんわ。元はと言えば、私たちの方で起こった不祥事ですもの……それを軽率に悪化させようと言うのは、許容しかねますので」

 

 うっ…!確かに颯樹さんの指摘は尤もだ。数分前に戻れるならその時の自分を殴ってでも止めたかった……。しかしどう責任を取れと言うんだ?

 

 「…今後のAve Mujicaの行動方針をお前に委ねる、といったら?」

 

 何を言ってるんだこの人は⁉︎その一言に祥子ちゃんも驚いてるし。責任を取れと言われても、それはいくらなんでもやりすぎじゃあ…

 

 「…というのは、責任を取るというほんの一部だ」

 

 …アレ?

 

 「本来ならお前に責任を取らせるつもりだったが、今回は時間があまり残されてないから、此処で追及した所で無駄だから仕方なく水に流す。今問題なのは明日のライブと今後の活動方針だ。祥子、酷な話だが今此処で決断しないといけない」

 

 決断…下した内容次第ではAve Mujicaの未来に今後関わってくるのは明白。という事は…

 

 「もしかして、解散…なんて事もあり得ますか?」

 

 僕が放ったその言葉にこの場にいた僕を除いた全員が凍りついたような気分になった。

 

 「今の睦さんは赤子同然…それならギターが弾けない状態なら、つまりAve Mujicaで活動する上では致命的になります。サポートという手もあるけど、それでは演奏に劣ります。あくまでも睦さんのギターの腕があったからこそ成り立っていました。だから此処は残念だけど、解散も視野に入れないと厳しくなるかと…」

 

 今の状況、それを検討した上で解散も可能性がある。でも願わくば、それ以外の道もあってほしい。

 

 「獅音。その意見…」

 「あっ、これも失言ですよね。すみません、撤回しま…「いや。今の段階でそれが濃厚かもしれないぞ」へっ?」

 『あぁ、俺もそう思う』

 

 颯樹さんにまた咎められそうになったけど、逆だった。京介先輩も颯樹さんに同意見であった。

 

 「今の状況でツアーどころかバンドの活動を続けるのは不可能に近いのは尤もな意見だ」

 『それに極端な話になるが、ギターの音源があれば「モーティスは体調不良で暫くギターは弾けません」で強引に押し通せるが、それが無い以上活動は厳しくなるぞ』

 「生演奏に拘って来た事が裏目に出てしまったようだな」

 

 颯樹さんと京介先輩が僕の意見を受けた上で、それを決定づける理由を述べた。確かに、2人の意見は一理ある。それを受けて祥子ちゃんは悩んでいる様子だ。

 

 「……分かりました。それでは───────」

 

 祥子ちゃんが決断を下したその後、僕たちは一度ホテルに戻る事となった。

 

***

 

 ホテルに戻ると、睦さん以外のメンバー全員と合流して緊急会議で話した内容、千歌さんが色々睦さんに尋ねた事の情報を共有するのであった。

 

 「千歌先輩から聞かされましたが、突拍子の無い話だと改めて感じました」

 

 海鈴さんの言う事は尤もだ。誰だってそんな話突然されたらそういうリアクションするのは当然だ。しかし当の千歌さんは何故か表情が暗いのは気のせいか…?

 

 「何故千歌はあんなに暗いんだ?」

 「それは…」

 

 颯樹さんに見破られたのか、千歌さんは先程何があったか彼だけに説明するように耳打ちを始めた。

 

 「その話、本当なの?」

 「本当ですわ。残念ながら…」

 

 初華さんが祥子ちゃんに確認を取ろうとしたその時、扉の方からノックする音が聞こえた。初華さんはおそるおそる扉を開けた。すると…

 

 「呼んだ?」

 

 今問題の張本人である睦さんがひょっこりと顔を出しながら部屋に無理矢理入ってきた。

 

 「みんないる〜。なんの話してたの?」

 

 無邪気そうにそう尋ねながら、睦さんは部屋にあるソファに座った。

 

 「そういえば若葉さんにはまだ伝えてませんでしたね。Ave Mujicaは解散する事になりました」

 

 そうだ。Ave Mujicaはこのライブを以って解散する方向となった。海鈴さんがそれを睦さんに告げると、彼女はさっきとは打って変わって焦りの表情を浮かべた。

 

 「えっ、なんでそんな話になるの?」

 

 「意味が分からない」と言わんばかりに睦さんは焦り出した。

 

 「仕方ないだろう、お前……ギター弾けないんだろ」

 「……」

 「要らないって言ったのも、その為か。ムジカの曲なんて聴いた事も無い、なら演奏できなくて当然だ。聴いてないヤツが一発で弾ききれるほど、ヌルい音楽じゃない」

 

 そんな睦さんにお構いなしに颯樹さんは厳しい言葉を投げ掛けた。確かに颯樹さんの言うことは至極もっともだから。

 

 「だが、自分の不得意な事を理解しているのは良い事だ。これから学んでいけばいい、お前と言う存在が表にいる限り……目に映る全てが新鮮に見えるからな」

 

 だけどそんな睦さんをフォローするように颯樹さんなりの僅かながらの激励を送った。

 

 「さっきー悪どいねぇー。貶すだけ貶して、最後には飴を与えて餌付けなんてさー」

 

バキッ!

 

 しかしそんな颯樹さんににゃむさんはケラケラと笑いながら茶々を入れるも、彼の鉄拳制裁で黙らせた。

 

 「やだやだやだ‼︎バンドは音楽を奏でる運命共同体なんだよ⁉︎私たちの使命は観客(ゲスト)の皆さまに夢を見てもらう事でしょ⁉︎ムジカしか祥子ちゃんにはもうこの世界しかないんでしょ⁉︎」

 

 しかし頭にたんこぶを作って気絶してるにゃむさんを無視して睦さんは駄々をこねるように解散の反対を主張し始めた。

 

 「睦。何度も言わせるな、Ave Mujicaは解散する。これは決定事項だ」

 「でもっ!」

 「睦」

 「何…っ⁉︎」

 

 颯樹さんに投げ掛けられてもそれでも喰いつく睦さんであるが、祥子ちゃんはそんな睦さんを優しく抱きしめた。

 

 「ごめんなさい、睦。貴女がAve Mujicaや私の事をどれほど思っているかは充分理解できました。でも、解散は私の意志で決めた事です。もう撤回は出来ませんの」

 

 優しく言葉を投げ掛けるも、逆にそれが睦さんにとってはナイフになって心に刺さったようで目を見開いていた。

 

 「なんでそんないじわる言うの…?私がギター弾けないから…?ねぇ!みんなでバンドやるって言ってたよね!祥子ちゃん!初華ちゃん!海鈴ちゃん!千歌さん!獅音くん!颯樹さん!」

 

 そして未だに現実を受け止めきれてないからか、一度祥子ちゃんを突き飛ばすと気絶しているにゃむさん以外呼び掛けるも反応すら無かった。

 

 「みんないじわるする…助けて()()()()

 

 最後に縋るように睦さんは自身に助けを求めるも、何も返ってこなかった────。

 


 

 翌日、ライブ当日。

 

やだ…

 

やだ やだ やだ やだ

 

 ライブの開演時間になると、そんなモーティスの拒絶の言葉が会場中に聞こえた。観客(ゲスト)達は睦…もといモーティスのパフォーマンスと捉えたのだ。しかし実は違っていたのだ。

 

月は地の果てに沈み

 

 オブリビオニスがそう告げ…

 

 やめて

 

 モーティスはオブリビオニスに止めるよう懇願した。

 

あたし達の仮初の生命も此処まで

 

 アモーリスがそう告げ…

 

 どうしてそんな事いうの⁉︎

 

 次にモーティスはアモーリスにそう追求した。

 

人形たちはもういない

 

 ティモリスがそう告げ…

 

 私はここにいるじゃない‼︎

 

 しかしモーティスは必死に主張するも叶わなかった。

 

今宵のマスカレードをもって…

 

 そして最後にドロリスが…

 

 やめて…っ 言わないで…っ!

 

 モーティスは聞きたくないと言わんばかりに顔を押さえて蹲った。

 

Ave Mujicaの終幕とさせて頂きます

 

 Ave Mujicaの幕を下ろす事を静かに告げた。

 

 イヤァァァァァァァァ‼︎

 

 その宣言の直後、会場全体にモーティスの拒絶の慟哭が鳴り響くのであった────。




 まずは読んでくださった方、お気に入り登録をしてくれた方、こんな拙作を応援いただきありがとうございます!こんな拙作読んでくれるだけでもありがたいです。

 次回の投稿は2週間後を目標に最新話の投稿を予定しております。もしかしたら七深の生誕記念回の執筆の予定がありますので、2週間を前後するかもしれません。

 最新話の予定としましては、アニメの内容から少し離れる事をお伝えします。

 それでは、また次回。
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