今回は副将戦後編をお送りします。
それでは、本編をどうぞ。
「ユーバのスキルで、ソウルブラスト1と手札を1枚コストに支払って……山札から《極大衛星兵器 オイリアンテ》と《殲滅機動要塞 フライシュッツ・マクシム》を手札に加える。そして手札から捨てられた《ブリッツパブリシスト フェンリッタ》の効果で、ヴァンガードがヴェルストラを含むグレード3以上なら、自身をドロップからコールできる!」
(手札7→6→8/ドロップ7→8→7)
「戦力を増やして来ましたか。ですが、それだけでは」
「特別CEO権限……」
「(やはり…っ!)」
「オイリアンテとマクシムをオーダーゾーンに置き、この効果で2枚以上置いたら、オーダーゾーンのプロダクトカードを1枚選んで稼働させる!」
(手札8→6/オーダー1→3)
「……少々知恵をつけた所で、私の場はそう簡単に崩せなくってよ?」
「押し通す! マクシムを稼働! ラグラスを退却させ、ヴァンガードのパワー-5000!」
「くっ……(パワーが下がるのは手痛いですが、私にはこれがありますわ…っ!)」(パワー8000)
これで攻め手を一つ減らせたはず……と思っていた、あたしの眼前に飛び込んで来た光景は、その場に先程と変わらずに存在している、ラグラスの姿だった。しかもそれは、何か見えないバリアに守られているみたいに。
……なんでッ?!
フライシュッツ・マクシムは相手のリアガードを退却させる効果がある……さしもの美優ちゃんと言えど、無事で済むはずが無いのに…っ!
「ふっ、ふふふ……っ」
「何がおかしいの?」
「すみません、私とした事が……はしたない真似を」
あたしがマクシムの効果を処理した時、美優ちゃんが何かのツボにはまった様に笑い始めた。その様はお淑やかだけど……何処か、人の事をバカにした様な感じだった。
「貴女は、先鋒戦をご覧になりましたか?」
「……見たよ、それが何?」
「ご覧になっているのなら、京介さんが使用された【レガリスピース】の事、ご存知のはずですわよ。何か思い当たる所があるとは思いませんか?」
思い当たるところ……。
何だろう、結局あの場では……イヴちゃんに行動する隙を与えてしまったから、あんな負け方をしたんだと思うけど……。
「目先の事にしか目を向けないから、こうなるのです」
「……何を言ってるの?」
「日菜さん!」
「ほぇ?」
「藤宮さんが先程使ったオーダーは、京介さんの使用した物と同じッス! だから、カードの効果で選ばれず、リアガードサークル以外に移動しないんです!」
美優ちゃんが事の真相を話す前に、控えに居る麻弥ちゃんから指摘が入った。
……えっ、ちょっと待ってよ……。
じゃあ……あたしがこのターン中、意気揚々とマクシムを連続で稼働させたとしても、実際に効果が及ぶのはヴァンガードのパワーを下げる事だけって事?!
「……もう、遠慮なんてしないよ。あたしを怒らせたらどうなるか、その身で思い知らせてやる!」
「まあ、アイドルとは思えない口の悪さですこと。では、私はそんな貴女に引導を渡して差し上げますわ」
……許さない、人を小馬鹿にした様なその言い草……さすがのあたしでもカンカンだよ!
「続けるよ、オイリアンテのスキル! このカードがセットされた時、デッキから1枚ドローしてエネルギーチャージ3。《ブリッツオペレーター トゥール》をコール。トゥールは、オーダーゾーンにプロダクトカードが2枚以上あるなら、自身のパワー+5000! 続けてフェンリッタのスキル。エネルギーブラスト4をコストに支払って、あたしのヴァンガードのグレード以下のプロダクトカードを1枚選んで稼働させる! 稼働させるのは当然……っ!」
(手札6→7→6/ドロップ7→8)
(エネルギー6→9→5)
「フライシュッツ・マクシム。でしたら、私のリアガードは退却されませんが、リアノーンのパワーを-5000させる、ですわね」(パワー3000)
……やっぱり、一度経験すると慣れるのが早い。
でも、その程度で終わるほど甘くないッ!
「フェンリッタの効果で稼働したマクシムは、このターンに支払うカウンターブラストを1軽減させる!」
「(そう言う事ですか。マクシムはここから見えているだけでも、あと2回の稼働を残している……そうなると、パワーはトリガーを間に挟まなければ、リアノーンはパワーが-7000まで下がります。ここで何かパワーを補えたら、まだ手札消費は軽くて済みますわね)」
「今のは【ディヴァインスキル】の効果で置いただけ……だーかーらー! 手札から《殲滅機動要塞 フライシュッツ・マクシム》を新たにセット!」
(手札6→5/オーダー3→4)
「やった!」
「これで攻撃の順番次第に因っては、相手のパワーを-12000まで下げる事が出来て……尚且つ5回攻撃を行えるわ」
「それじゃあ、ヒナさんの勝ちが!」
「可能性は0じゃないわ、あとは天に運を任せるだけよ」
「まずは〜、フェンリッタで攻撃!」
「ラグラスでインターセプト」
(ドロップ7→8)
「ヴァルネストのブースト、トゥールで攻撃! その時にカウンターブラスト1をコストに払って、トゥールのスキル発動! マクシムを再々稼動! リアノーンのパワー-5000!」
「くっ…!」(パワー-2000)
「更にこれだけじゃないっ! 1枚カウンターブラスト、フェンリッタを手札に戻して……マクシムをリアガードとしてコールする! さあ、第一陣の出撃だよ!」
(手札5→6)
さて……トゥールのパワーは、ヴァルネストのブーストを受けていて、その合計が23000。-2000まで下げられているから、相手はこの攻撃を防ぐには30000ものガード値が要求される。
こんな所で、手札を消費したくないはずだけどー?
「……良いですわよ、ここは甘んじてノーガード。ダメージトリガー・チェック《爛漫の総行進 リアノーン・ヴィヴァーチェ》。ノートリガー」
(ダメージ2→3)
「それじゃあ、あたしの頼れるCEO……その勇姿をお見せしちゃうよー! ヴェルストラで、ヴァンガードに攻撃! 先ずはヴァルネストのスキル発動!【ディヴァインスキル】を効果に持つ、ヴェルストラを名前に含むヴァンガードが攻撃した時、ソウルブラスト1と自身の退却をコストに支払って……マクシムを再再々稼働!」
(ソウル4→3/ドロップ8→9)
「うっ…!」(パワー-7000)
「続けてヴェルストラのスキル! エネルギーブラスト2をコストに支払って、マクシムを再々再々稼働! リアガードは退却できないけど、リアノーンのパワー-5000! さらに、このマクシムはフェンリッタの効果が付与されているから、コールする際に払うカウンターブラストは0!」
(エネルギー5→3)
あたしのその宣言に、美優ちゃんは何処か苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。さすがの彼女と言えど、5回ものマクシムの稼働は効いたみたいで……あたしが効果宣言をしている傍らで、ガード値の計算を始めていた。
「それに因り……トゥールを手札に戻して、マクシムをリアガードとしてコールする! さあ、我が最終兵器に双方を挟まれた状況下でのこの攻撃……どうやって防ぐかなッ!」
(手札6→7/オーダー3→2)
「(リアノーンのパワーは、5度のフライシュッツ・マクシムの稼働に因って総計-12000。このターンを凌ぎきるには、ヴァンガードの攻撃を死守するのは当然としても、リアガードを確実に1回は守らないと行けませんわ。……だったらっ)手札1枚を破棄して、《カストーディアル・ドラゴン》。ヴェルストラの攻撃は完全ガードです」
(手札6→4/ドロップ8→10)
予想通り完全ガードを使ってくれた。
……となると、次に引きたいのは!
「ツインドライブ。
(手札7→9)
あたしのツインドライブの結果を見た瞬間、会場が一気に湧き立って来た。当然sumimi側は苦い顔をしてるし、今まさに相手をしている美優ちゃんだって、この結果は快くなんて思わないはずだ。
……勝てる、このまま突っ込めば……行ける!
「フライシュッツ・マクシムでヴァンガードに攻撃!」
(パワー33000/✶✶)
「……仕方ありませんわね、ここはノーガード。ダメージトリガー・チェック《ラスタインパート・ドラゴン》《レゾナンス・ドラゴン》。どちらもトリガー無し」
(ダメージ3→5)
「もう一枚のフライシュッツ・マクシムで……ヴァンガードに攻撃!」
「……やった! この攻撃がもし決まれば、日菜ちゃんの勝ちだよ!」
「そうなればサツキさんも、きっと戻って来ます!」
「ええ、そうね。……でも」
「「ほぇ?」」
「……」
あたしがもう一枚のフライシュッツ・マクシムで攻撃したその時、控えの方からそんな言葉が聞こえて来た。……さすがにあの攻撃は実数値で守れる物じゃないし、さっきのドライブチェックで2枚もクリティカルが捲れてる。確実に無事では済まない。
……勝った、あたしの勝ちだ。
誰もがあたしの勝利を信じて疑わなかった……その時。
『な、な、……何と言う事だぁぁぁぁ! 二度に渡って行なわれたフライシュッツ・マクシムに因る超高火力攻撃……その最後の1回を、手札をコストに払ってカストーディアルで完全ガードしていたぁぁぁぁぁ?!?!?!』
……うそ、だよね……。
信じられない、何かの見間違いだよ……。そう思いながらも盤面を見ると……。
「危機一髪。恐れ入りましたわ」
(手札4→2/ドロップ10→12)
「……エンドフェイズ時、2枚のマクシムをオーダーゾーンに帰還させて、ターンエンド」
(オーダー2→4)
あたしは攻撃の役目を終えたマクシムを、2枚ともオーダーゾーンに帰還させて、美優ちゃんにターン進行を明け渡した。最後の最後で決めきれなかったのは苦しいけど、あたしの手札はツインドライブやマクシムのコストも絡んで、かなり潤沢と言った具合まで回復できてる。
……しかも、相手はダメージ5。調子に乗って完全ガードを2枚使ったのが運の尽き。例え高火力での連続攻撃をして来たとしても、あたしには到底届かない。
……勝つよ、この試合……絶対に!
「スタンド&ドロー、エネルギーチャージ3。……では、この場で宣言させて頂きますわ」
(手札2→3/エネルギー0→3)
……えっ、一体……なにを?
「……へっ?」
『こ、これは驚いたぁぁぁぁ! 藤宮選手、ダメージ5と追い詰められている状況の中で、高々とファイナルターンを宣言してのけたーーーーっ! これより藤宮選手は、手札が3枚、相手のダメージが4と言う絶体絶命の状況を……持ちうる全てを使って、乗り越えなければならないーーッ!』
「ファイナルターン…。それって、もしかして」
「ええ、美優ちゃんには日菜ちゃんの豊富な手札を乗り越えたうえで……このターンで必ず決着をつける、と言う算段があるって事よ」
「な、何かの間違いです……そんな事をすれば」
「決めきれなかった時の反動は計り知れない……まして、次のターンには日菜さんのオーダーゾーンにあるオイリアンテも稼働されます。中途半端な攻撃は、逆に手痛い
……そうだ、ハッタリに決まってる。
あたしの心を動揺させて、手元を狂わせる。そして油断した所を一気に叩く……そんな魂胆だろうけど、それじゃああたしは倒れない。
何をする気か知らないけど、あたしは怖くない!
「こ、これが……」
「リアノーン・ヴィヴァーチェ……」
「可憐でキレイです……」
「……そうね、憎たらしい程だわ」
これには堪らず会場全体がその空気に包まれ、その次の言葉を誰も発せられずにいた。そしてそんな周囲を他所に……美優ちゃんは動き出した。
「このユニットが、別名のリアノーンからライドして登場した時、このファイト中に一度も【ユニゾンドレス】状態となって無ければ、このファイト中に限り……私は【ユニゾンドレス】状態になりますわ。その後、デッキからカードを1枚ドロー」
(手札3→2→3/ソウル3→4)
美優ちゃんのヴィヴァーチェは、イヴちゃんが使っていた羅刹と同じ様な効果なんだね……でも違う箇所があるとするなら、このライドに因ってペルソナライドが発動するか否か。羅刹はペルソナライドを発動できるけど、ヴィヴァーチェはそうじゃない。ただ別名のユニットに乗っているだけだから、ペルソナライドの発動条件に該当していない。
……でも、これだけならまだ耐えられる。
そう簡単にあたしの牙城は崩せないし、崩させる訳には行かないよッ!
「メインフェイズ開始時、パルセアのスキル。自身をソウルに置きますわ。その後そのサークルに《ラスタインパート・ドラゴン》を、ラグラスの居たサークルに《レゾナンス・ドラゴン》をコール。これでバトルに入りますわよ」
(手札3→1/ソウル4→5)
……必要最低限の展開だけで、攻撃態勢完了……。
や、やられた……。
直前のターンに《
……悔しいけど、あたしより数段……上手い。
「プロスペールのブースト、レゾナンス・ドラゴンでヴァンガードに攻撃。プロスペールのスキル。プロスペールにパワーを与えますわ」
「ゲイズンでガード!」
(手札9→8/ドロップ9→10)
「《ラスタインパート・ドラゴン》は永続効果で、自分の後列にグレード1以下のリアガードが2枚以上存在しているのなら、ブーストを得て、パワー+5000されますわ。ラスタインパートのブースト、ローザリウムでヴァンガードに攻撃。ここで、ローザリウムのスキル発動」
……ローザリウムのスキル?
えっ、それってリアガード1体を退却させて……その代わりに《プラント・トークン》を生成する、だけじゃないの?
「知らぬなら、教えて差し上げますわ。ローザリウムは、私のヴァンガードがカード名にリアノーンを含んでいて、相手のヴァンガードがグレード3以上なら、後列のユニット1体を選んで、そのユニットのパワー分だけ、このユニットのパワーを上昇させます」
……えっ……。
「私がこの効果で選択するのは、ラスタインパート。それに因ってパワー+15000」
(パワー38000/✶)
ちょっ、パワーがまた上がっちゃった?!
……でも、一度だけならそこまで怖く無いっ!
「ここはノーガード。ダメージチェック《強襲飛翔母艦 リューべツァール》。トリガー無し」
(ダメージ4→5)
「では……本命ですわ」
『!?』
「参りますわ。リアノーン・ヴィヴァーチェで、ヴァンガードに攻撃。スキル発動。このユニットがブーストされないで攻撃した時、レストしている私のリアガードを全てスタンドさせて……」
そう言って美優ちゃんは、左右それぞれの列に居るリアガードを流れる様にスタンドさせて行った。……別にこれくらいなら、さっきのターンと流れは同じ。攻撃回数を増やす為に、既に攻撃を終えたリアガードを立ち上がらせるなんて、よくありそうな事だ。
……これくらいで終わるなら、の話だけど。
あの妙な言い方は……あるんだ、他にも!
「私のリアガード全てで、ヴァンガードをブーストさせますわ。もちろん……ブーストを持っていようといまいと、関係ありませんわ!」
……リアガード全部で、ヴァンガードをブースト?!
「プロスペールのスキル。自身のパワー+5000。レゾナンスはこのターン中に3回以上ブーストされているなら、自身のパワーを+5000。さあ、この攻撃はどう防ぎますの?」
(パワー77000/✶)
ぱ、パワーが77000?!
そしてツインドライブも控えてるなら……ここッ!
「《ヴァイオレート・ドラゴン》で完全ガード!」
(手札8→6/ドロップ10→12)
「行きますわよ、ツインドライブ。
(手札1→2)
こ、ここでオーバートリガー?!
でも確り完全ガードをしたし、この後に何も起こらなかったなら……問題無い! しかもせっかくのクリティカルも無駄な振り方をした、この流れは完全にあたしに来てる!
「このカードを除外して、パワーをローザリウムに、1枚ドロー。追加効果を発揮。デッキから1枚ドロー、前列にパワー+10000。ローザリウムにクリティカル+1、ダメージ1回復。そしてバトル終了時、カウンターブラスト1をコストに、ヴィヴァーチェ、ローザリウム、レゾナンスをスタンド。その後前列全てにパワー+5000、ヴァンガードのドライブ-1」
(手札2→3→4/ドロップ12→13)
(ダメージ5→4)
……?!
「リアノーン・ヴィヴァーチェ、攻撃ですわ!」
「ヤクト、デカルコップでガード!」
(手札6→4/ドロップ12→14)
「チェック《メロディア・ポメラ》。ゲット・クリティカルトリガー。パワーはプロスペールに付与して、クリティカルはローザリウムに付与しますわ。ローザリウムで、ヴァンガードに攻撃。効果は……覚えていますわね?」
(手札4→5)
……確か、後列のユニット1体を選んで、そのユニットのパワーをローザリウムに与えるスキルだったはず。
「……日菜さん、備えて下さい! 1億超の攻撃が二度飛んで来ます!」
……麻弥ちゃん、それ……どういう事?
「麻弥ちゃん、どうしてそう思ったのかしら?」
「実はデッキを作っている時、予備知識にと思って調べていたんです。そうしたら《レゾナンス・ドラゴン》の効果を見る機会がありまして……そこには、スタンド効果があったんです」
「えっ、でもそれって自身をスタンドさせるとか?」
「いえ……」
……何だろう、すごく嫌な予感がする。
「大和さんは博識の様ですわね。初見にも関わらず、私のカード効果に対して知識があったとは。……ええ、御明答ですわ。《レゾナンス・ドラゴン》には、リアガードのスタンドスキルがあります」
……そ、そんな……っ!
「ですが、それをお見せする前に……この攻撃を耐えて頂きますわよ。パワーをコピーするのは、プロスペールですわ。さあ、守護者はお持ちですの?」
(パワー100061000/✶✶✶✶)
麻弥ちゃんのおかげで、後に控えている攻撃やその効果はわかったけど……問題は100061000と言う高パワーになった、ローザリウムの攻撃をどう凌ぐか、だ。おまけにさっきのヴィヴァーチェでのドライブで捲れた、2枚のクリティカルと
……確かに、これを防ぐならヴァイオレートをもう1枚使う方が理に適ってる。レゾナンス・ドラゴンの攻撃はビール頼みにして、ローザリウムを2回とも死守してしまう方が手っ取り早い。
でも、そうすると今度は返しのターンで動きづらい。
山札の一番上から、都合よくお目当てのカードを引き当てられるかと言われれば、それは限り無く否に近い。
……なら、ここは仕方無い。
「ノーガード。……っ、ダメージチェック」
「(確実に守れる択を削り、天に運を任せましたか。……興醒めですわ)」
「《標の運命者 ヴェルストラ “ブリッツ・アームズ”》。……トリガー無し、あたしの負けだよ」
(ダメージ5→6)
「みんな、ごめんね……」
副将戦が終わってみんなの元へ帰ってきた日菜の一言めはまさかの謝罪の言葉であった。それもそのはず、自分達の勝利はリーチに差し掛かっていたのに、それをまたドローに持ち越されたのだから。
「日菜ちゃん、此処まで来たのなら仕方ないわ。白星を上げたイヴちゃんと麻弥ちゃん、一歩及ばなかった彩ちゃんと日菜ちゃんのためにも…私が大将戦で白星を上げて颯樹を取り戻すわ」
未だ落ち込む日菜を宥めつつも、千聖は勝利する事をメンバー全員に約束した。
「千聖ちゃん…分かった、あとは千聖ちゃんに任せるよ」
「頑張って千聖ちゃん!」
「ジブン達も応援してます!」
「ファイトです!」
「ありがとう、みんな…」
千聖と宣言に彩を筆頭としたメンバーは激励の言葉を彼女に投げかけた。千聖は思わず嬉し涙が出そうになるも、それをするにはまだ早いのでグッと堪えていつもと変わらぬ表情で応えた。
しかし、そんな彼女達の元にスタッフが1人駆け寄ってきて、一度楽屋まで案内されるのであった。
「何故楽屋に案内したんですか?」
「大将戦の舞台を整えるために時間を取るからです。それと…」
麻弥がスタッフに尋ねると、そう返すと同時に上着のポケットからカードを入れるためのスリーブを取り出した。
「大将戦を戦われる選手の方にご報告致します。これより行なわれる大将戦は、スタッフより支給されるスリーブを着用してご参加頂きます様お願い申し上げます」
大将戦の準備と同時に、選手にスリーブの差し替えをするよう促してきたのだ。ちなみに、sumimi側も同じ対応をしているらしく、今もスリーブの差し替え作業をしているところだ。
「分かりました。少々お時間を取らせていただきますが、よろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です。準備が出来るまで今暫くお待ち下さい」
千聖はスタッフからスリーブを受け取ると、早速スリーブの差し替えを行なうのであった。大将戦の準備があるので、スタッフは楽屋を退室するのであった。
「なんで今更スリーブの差し替えを行わなければならないんでしょう…?」
「知らないわ。でも粋な演出をするのは確かだと思うわ」
麻弥が疑問に思うも、千聖は既に割り切っていたので、慣れた手つきでスリーブの差し替えをしていた。しかも数も半分を終えていた。
「……よし、終わったわ」
そこから数分が経過すると、千聖はスリーブの差し替えを終えた。そしてそこでタイミング良く先程のスタッフが尋ねてきて大将戦の準備が終わった事を伝えてきた。
「それじゃあ皆んな、行ってくるわ」
ファイトスペースに向かおうとする千聖は一言伝えると、メンバー全員無言でサムズアップをして千聖にエールを送った。千聖もそれ以上語る事は無いと悟ってその場を後にした。
その後は無事ファイトスペースに到着するも、会場内の雰囲気が変わるほどに舞台がセッティングされていた。あと変わっているところを強いて言うなら、ファイトスペースの審判のいる席にデフォルトされたドラゴンのぬいぐるみが鎮座されているくらいであった。
ドラゴンのぬいぐるみを可愛いと思いつつ眺めていると自分の向かい側から誰かがやってきた。そこには……
「どうも♪」
千聖の対戦相手…sumimiのまなもちょうどやってきたのであった。
まずは感想、お気に入り登録をしてくれた方、こんな拙作を応援いただきありがとうございます!こんな拙作読んでくれるだけでもありがたいです!
次回は大将戦…の前にちょっとした前日譚をお送りします。
投稿は1週間後の8月8日を予定しております。
それでは、また次回。