舞い狂う仮面の人形と孤独の獅子の咆哮   作:なかムー

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 皆さま、お待たせしました。リアルでの仕事が忙しくて1週間遅れての投稿になってしまいましたm(_ _)m

 今回は久しぶりの最新話をお送りします。

 それでは、どうぞ。


#5

 テレビでの生放送のインタビューから翌日。僕たちAve Mujicaメンバーは事務所の控え室にいるのだけど、沈黙が続いていた。原因は昨日のインタビューに問題があったからだ。

 

 「どうするの、これ?」

 

 まず沈黙を破ったのはにゃむさんで、テーブルに叩きつけるように何かを置いた。それはスポーツ新聞だけど、問題はその見出しだ。一面トップを飾っているのはA()v()e() M()u()j()i()c()a()()()()()()()()()内容であった。

 

 原因はインタビュー中に睦さんことモーティスが「長くは続かない」とポロっと言ってしまった時に全員がそれに反応してこの記事が出来た…というわけだ。

 

 「長くは続かない?此処からって時に何言ってるの⁉︎」

 「私…は…」

 「あたしにとっては今は自分を売り込むって大事な時期なの!むーこには分からないかもしれないけどさ、動画のコメ欄も『解散』『解散』ってマジ最悪…っ!」

 

 傍から見たらにゃむさんが睦さんに対して苦言を呈しているような光景だけど、後半からもう完全に私怨になってるのでは…?というより仮に売り込んでも『動画配信者のにゃむち』というより『Ave Mujicaのアモーリス』の方が印象に残りそうだけど…?

 

 「睦ちゃんも悪気があったわけじゃないんだし…」

 「てか小さい頃からテレビ出てたじゃん!インタビューとか慣れてないの⁉︎なのになんで⁉︎」

 

 初華さんが宥めようとするも、にゃむさんは立て続けに苦言を呈してきた事で遮られた。これ完全に頭に血が上ってる…。

 

 「あのねにゃむ。何でもかんでもワーワー騒げば事が解決する訳じゃないんだ」

 「さっきー冷たっ!あたしがここまで来るのにどれだけ頑張ったと「だから落ち着くんだよ。お前たちの状況は多少なりとも知ってる、でもだからと言って暴れたところで火に油だ。それが分からないわけじゃないだろ?」……」

 

 しかし颯樹さんに諭されてなんとか落ち着いたけど、ただそれだけじゃなく一つ一つ指摘もしてにゃむさんを黙らせた。

 

 「それにだ、にゃむ右衛門(えもん)。お前は一つ根本的な誤解をしている」

 「誤解ってなんなの…って、きょーこ!にゃむ右衛門ってなにっ⁉︎」

 

 ホントそれですよ。『にゃむ太郎』じゃイマイチだったから別のあだ名をつければいいってもんじゃないんですけど…颯樹さんや初華さんは苦笑いしてるしなんなら海鈴さんはなんかメモしてるし…

 

 「この際それは置いといて…」

 「置いとかないでっ‼︎」

 「さっき、お前は睦はテレビ出てたのとインタビュー慣れの事をしただろ?睦だってテレビを出てたのは片手の指で数えられる程度の上に、その回数でインタビューを慣れるのは無理があるぞ?それに、睦は見た感じ人前で話すにはあまりにも不向き…それで慣れろは酷な話だし、そんな事気にせず苦言を呈するのはお門違いだぞ?」

 

 先程茶化していたのとは違い、睦さんの特徴を一つ一つ分析してたのか、京介先輩はそれを指摘した。確かに先輩の言うことは一理ある。少ない回数で慣れるのは、よほどな天才じゃないと無理な気がしてきた。

 

 「むむむ…さきこも何か言ってよ!それとも幼馴染だから許すわけ⁉︎」

 

 京介先輩の指摘で論破されたのか、にゃむさんは八つ当たり気味に祥子ちゃんにも問いただしてきたけど、彼女は今回の一件の事が書かれたネットの記事を見てなんとも言えない表情になっていた。

 

 「……私のマネジメント不足ですわ」

 「さきちゃん…」

 

 自分の力不足を痛感したのか、祥子ちゃんは立ち上がって自分の非を認めると同時に睦さんを見た。

 

 「祥…」

 「睦。今後は発言にプロとしての自覚をお持ちになって」

 「ごめ…「若葉さん。次の仕事に向かわないと」あ…」

 

 祥子ちゃんの一言で睦さんは一度謝ろうとするも、そこで海鈴さんにスケジュールの事を言われて、付き添い役の京介先輩と共に控え室を後にするのでした。

 


 

 事務所を出て今日の仕事場に無事に着いた京介と睦であるが、まだ一部メンバー…というより男性陣の素顔(というより今回は京介だけであるが)は晒されていないため秘匿するのは従来と同じなのだ。

 

 ちなみに今日の仕事の内容は雑誌の取材で、先方から(モーティス)を直々に指名したのだ。しかし(モーティス)だけでは色々と不安なので先方には「誰か一人付き添いとして参加させる」を条件に今回の仕事が実現したのだ。

 

 「しかし数回しか着てないけど、慣れんものだな…」

 

 今回の京介はAve Mujicaアングイスとして活動しなければならないため、Ave Mujicaお決まりの衣装に着替えながらそんな事を愚痴るように呟いた。

 

 今の京介が着ている衣装は、黒を基調としているが細部がAve Mujicaのイメージカラーを施されたロングコートで、見た目も何処かゴシックファッションにも思わせるものであった。その他にもスラックスやベストも黒で統一されており、首には何処ぞの赤いスーツを着ている検事が身につけていそうなヒラヒラ…ジャボが巻かれているのが特徴的である。

 

 「ったく、あれほど俺のは地味な感じにしてくれって言ったのに…」

 

 衣装に着替え終えると、楽屋に備えつけてあるコーヒーを飲みながら京介はこの場にいない祥子に愚痴を入れていた。

 

 ちなみに、京介の衣装について少しだけ時を遡ると…

 

***

 

 衣装を製作するにあたって、採寸を測り終えた京介は祥子とふたりっきりになっていた。というのも、衣装について話すだけの事であるが。

 

 『祥子、俺の衣装は地味な感じにしてくれ』

 『(地味に…という事は私の基準でよろしいですわね……)えぇ、分かりましたわ』

 

 しかし何処か勘違いしていたのか、祥子のいう『地味な感じ』というのは()()()()()()は地味と解釈してしまったようだ。その後はお互い忙しかったため特にこれといった事はなく衣装は祥子主導の元製作されて、今の京介が着ている物が出来上がったのだ。

 

 京介も、これには『もっと色々と打ち合わせしとけば…』…と後に語るのであったのは言うまでもなかった。

 

***

 

 …と言ったものだ。

 

 しかし此処で後悔しても時が戻ってこないのは明らかで、京介は渋々この衣装を着てAve Mujicaの活動に参加する事となったのだ。

 

 楽屋に備えつけてある時計を見ると、取材まで時間があった。どうしたものかとコーヒーを飲みながら京介は時間まで何をするか考えていた。ふと彼の視線に入ったのは睦であった。今の彼女は普段と変わらない表情京介と向かい合うようにでソファに座っているが、内心取材に対して怯えているようで、少しだけ震えていた。

 

 「睦。少しだけ聞きたい事があるんだが、いいか?」

 「なんですか?」

 

 何か思う事があったのと、時間にまだ余裕があったのか京介は急に睦に話を持ちかけてきた。それに対し睦は気が気でないが、此処で断ると返って心配を掛けさせるのではないかと判断したので、京介の話に乗る事にした。

 

 「何故お前はAve Mujicaに入ったんだ?」

 

 それは京介を知る者にとっては、彼が最初にしない事から話は始まった。

 

 「なんで、それを聞くんですか?」

 

 しかし負けじと…言うべきか、睦は思わず聞き返した。『質問を質問で返す』のはマナー違反であるが、京介の意図が分からなかったのでそうするしかなかった。

 

 「早い話、お前の性格を見る限りだと、自分の方から積極的にバンドに参加しよう、あるいは自分から買って出て加入したとは思えなくてな…なら誰かにスカウトされたのが自然…と考えたんだよ」

 「…京介さんの言う通りです。私は祥から直に誘われました」

 「(祥子からか。やはりな…)なるほどね。それで?なんで誘いに乗ったんだ?」

 

 睦がAve Mujicaに入ったきっかけはある程度把握出来たが、京介が一番気になるのが入った理由である。理由があるならそれなりな事情があるのは明白だ。

 

 「……祥が壊れそうだから」

 

 その一言で京介は言葉を失った。此処で返ってくるのは「幼馴染の祥がバンドをやろうと誘われたから」が自然であるが、まさかの予想外な答えが来るとは思いもしなかったのだ。

 

 「(マジか…しかし壊れる、というのは…多分此処で聞いても返さないのは明白…しかしどうしたものか……)」

 

 自分から持ち込んだ話だというのに、京介はなんだかやるせない感じになった。『好奇心猫をも殺す』とまではいかなくても、それに近い感情に見舞われていた。

 

 「(しゃあない…)睦。お前にアドバイスがある」

 「アドバイス、ですか?」

 「嗚呼。説得力はあるか分からんが、ひとまず独り言程度で聞き流しても構わん」

 

 睦のフォローになるかどうかは分からないが、一言添える事にしたのだ。幸い、取材までまだ時間に余裕はあるので話を聞かせるくらいは出来ると踏んだのだ。

 

 「アドバイスするに当たって…そうだな、まずは俺がMorfonicaのマネージャーを務める事にした理由だな」

 「理由、ですか…?」

 

 単刀直入にアドバイスが来ると踏んでいたのだが、何故か経緯から始まったのだ。しかし京介の話に意図がある筈なので此処は何も言わず耳を傾ける事にしたのだ。

 

 「まぁ、最初にましろが世話になったっつーわけで俺は月ノ森に直に呼び出されてMorfonicaのメンバー全員とコンタクトを取ったのがキッカケだ」

 「…………」

 「積もる話を終えて帰ろうとした矢先、ギター担当の透子にMorfonica加入のスカウトをされた事を機にメンバー全員から承認を貰って、Morfonicaに入った」

 「そう、なんですね…」

 

 彼がMorfonicaに入った理由はそれなんだと感じる睦であった。だが、京介の話はまだ続きがあるからか「しかし…」と言って話を続けた。

 

 「スカウトもあるけど、もう一つ理由はある。これはお前を含めても、ごく少数…それも数えるのに片手の指で足りる程度にしか教えてない事だ」

 「?」

 「…生き別れた幼馴染に再会できる、と思ったからだ」

 

 その事実を聞いた睦は内心驚きを隠さなかった。理由の半分が自身と同じ幼馴染関連で入ったのが衝撃を受けたからである。

 

 「7年前に転校して行ってな。その時からバンドをやりたいって言ってたからもしかしたらバンドに関われば会える確率があると思ってな。でも、会えるとは限らないけどな。根拠の無い賭けと同じ程度だよ。でも、去年偶然再会出来た。でも、此処からが肝心なんだよ」

 「?」

 「…その後はどうするか、だ」

 

 確かに目的を達したら京介はいる理由はなくなる。だが、マネージャーという立場上、京介はメンバーを放っておく事はせずに真面目にマネージャーの仕事に取り組む日々を送るのだ。

 

 「ま、当然悩んださ。果たしてこのまま続けるか途中で抜けるか…二者択一だ。でも、その後に一つ想定外な出来事が発生した」

 「?」

 「瑠唯がMorfonicaを抜けると言ってきた事だ」

 

 京介のその一言を聞いた睦はまた更に驚く。それもそうだ、自身の通う学校の先輩がバンドを突然抜けるなんて事実は初めて聞いたのだから。

 

 「その後は何故か瑠唯のMorfonica脱退を撤回するよう奮闘したんだ。今回は色々省略させて貰うが、瑠唯は無事Morfonicaに戻ってきてくれた。それと同時に、俺の中にある一つの考えが芽生えた」

 「?」

 「…『此処が俺の居場所、だから守らなくてはならない』、『何処まで行くのか見届けたい』と」

 

 成り行きから始まった事からまさかの自身の居場所と悟るまでに至ったようで睦は少なからず興味を抱いた。

 

 「だから睦。お前がどんな経緯でAve Mujicaに入ったかなんてのはどうでもいい事…大事なのはその後だ。例え他のメンバーが様々な理由でAve Mujicaに入ったとしても、結局進む先にあるのはみな同じという事だ。分かれ道で全員が別々の方向に進んだとしても、いずれ道は交差する。だから深く考えるな。いつか全員お前の事を分かって貰えるって」

 

 その言葉は睦にとってはまだ難しいながも何処か温かく感じた。経緯はバラバラ、だけどいつか同じ志になる。だから祥子もいつか自分や他のメンバーの事を理解してくれる、もしくはその逆の事も可能性があると感じるのであった。

 

 「京介さん、ありがとうございます」

 「構わない…もう時間だ。行くよ、睦…モーティス」

 「はい…アングイス」

 

 時間を確認して取材の時間まであとまもなくであったので、京介はテーブルに置いてある仮面を着けて…アングイスになりきって睦…モーティスと共に楽屋を出るのてあった。

 


 

 「Ave Mujica…今度は解散報道?話題が尽きないね〜」

 「でもお母さんが大女優だし、そっちの道に進むのもありだよね」

 「みなみさんとの共演見たいな〜」

 「家ではどんな話をするの?ギターを始めたきっかけもご両親?」

 「えっと…」

 「失礼ですが、Ave Mujicaの事を質問してください。それ以外はタブーです」

 

 取材が始まると否や、インタビュアーが真っ先に質問してきたのは解散後どうするかや両親の事など、その大半はAve Mujicaとは全く関係の無いものばかりであった。常にモーティスの傍にいるアングイスがフォローに入るも、インタビュアーは懲りずにAve Mujicaのモーティスとしてではなく若葉と森みなみの娘の若葉睦として質問責めをしてくるのであった。

 

 「(まともな質問をして来ない…その上でこの後は写真撮影……この調子だとツアー初日にモーティスが持つか怪しくなってきたぞ…)」

 

 今なおモーティスは質問責めをされている。そしてこの後のスケジュールの事を考えるとこの流れを此処でどうにかしないとモーティスの負担が大きくなる。いくら先方からの指定といえど、限度というものがあるので窘めるために動く事にしたアングイスであった。

 

 「取材しているところ申し訳ございません。先程も申し上げた通り、今はAve Mujicaのモーティスとしての質問だけにしてもらえますか?それ以外の質問は一切お答え出来ません」

 「何を言ってるんですか!此処で睦ちゃんの記事は売れるでしょうが!」

 

 しかしアングイスは忠告するも、それを無視してインタビュアーは取材の続行を敢行するのであった。マスコミも此処までくればもうマスゴミ…そう感じたアングイスは一度ため息をついて咳払いをした。

 

 「そうですか。では、此方も然るべき処置を考えねばなければなりませんね」

 「然るべき処置とは?」

 「そこは実際受けてみないとお教えできません。ですが、敢えて言うなら今後無事ではいられなくなる…とだけ言っておきましょう」

 

 アングイスがそう言うと同時にインタビュアーを睨んだ。睨みを利かせているからか、インタビュアーは怯んでしまう。アングイスは名前の暗示通りの蛇にちなんだのか、蛇に睨まれた蛙…と言っても過言ではなかった。

 

 その後はインタビューする際の質問に余計な事は挟まずに無難に取材を進めるのであった。それ以外は特に何もトラブルは起きる事なく写真撮影も続けて、仕事は約数時間で無事終わるのであった。

 

 「京介さん。さっき言ってた然るべき処置ってなんですか?」

 

 仕事が終わり、私服に着替えた京介と睦は予め手配していたタクシーに乗りながら自宅に向かっていた。尤も、自宅といっても若葉邸だけで、京介は睦を送った後は先程の報告をするために一旦事務所に戻るが。

 

 タクシーに乗って若葉邸に向かっている途中、睦は先程京介(正確にはアングイスだが)が言っていた事が気になったので尋ねた。

 

 「あー、それね。アレ、特になんも無いただのブラフなんだよ」

 「ハッタリ、だったんですね…もし尋ねられたらどうする気だったんですか?」

 「颯樹さん(ヴァニタス)に連絡を入れるさ。ま、それは今回しなかったけどな」

 

 京介は苦笑いしながらそう答えた。それには睦も口元が軽く動く程度だが、微かに笑うのであった。

 

 その後は特に話す事なく、無言であった。そして数十分後に若葉邸に無事到着して睦はタクシーから降りた。

 

 「京介さん、今日はありがとうございます」

 「構わん。これも仕事のうちだ」

 

 京介は照れくさそうにそう言い放つとタクシーの運転手に早く車を出すよう促したが、途中睦に止められてしまった。

 

 「まだなんかあるのか?」

 「一つ、いいですか…?」

 「?」

 「これからはお兄様、と呼んでもいいですか?」

 

 睦の突然の提案に、京介は内心驚きを隠せなかった。まさかの突拍子もない提案なのでそうなるのも無理は無い。

 

 「俺にはもう妹がいる……と言いたいが、勝手にしろ。どうせダメだと言っても呼ぶ気なんだろ?」

 

 京介は呆れながらそう言い放つと同時に睦に指摘した。それに対し睦は、図星だったのか頬が少し赤くなった。

 

 やれやれと言わんばかりにため息をついた京介は今度こそ事務所に向かうため運転手にタクシー出すよう促してその場を後にするのであった。

 

 睦はタクシーが見えなくなるまで見送りを終えると、家に入って自分の部屋に戻ると、今日一日で疲れたのかそのままベッドの上に倒れるように眠りにつくのであった。

 

***

 

虚無の近況報告】

 

 事務所で報告を終えた京介は、ヴァニタスこと颯樹に直々に電話で呼び出されてそのまま彼の家に向かった。そして今は颯樹と対面になる形でソファに座っていた。

 

 「やっぱりそうなったか…」

 

 京介から今回の報告を聞いた颯樹は眉間を押さえてため息をついた。

 

 「分かった、とりあえずツアー初日までこうしよう。明日以降、もし今日と似たような出来事が起こったら、迷わず僕に連絡しろ。幸い明日からツアー初日の前日まで仕事は何も入ってないから、もし何かあったら即座に対処できる」

 

 「分かったが、それでいいのか?話とは違うという理由で途中で打ち切る事も出来るはずだろ?」

 

 「それも考えたが、こういったものは途中でやめたら信頼性を失うおそれがある。だから最低限の仕事をこなして先方の頼みも聞き入れるんだよ」

 

 「要はご機嫌取りのゴマスリか。なんとも言えんな…」

 

 「そう言わないでくれ。それも仕事のうちだ」

 

 「はいはい」

 

 その話を受けて京介は此方側が下手(しもて)になっていると呆れながら指摘するも、逆に颯樹に諭された。それをつまんなそうに聞いた京介は出されたコーヒーを飲んだ。

 

 「それで話は変わるが…京介、そういうお前は千聖に色々と頼まれたんだろ?」

 

 「……やはり気づいていたか」

 

 これ以上この話題について何も話す事は無いと踏んだ颯樹は、別の話題に切り替えるよう単刀直入に京介に話を持ち掛けた。すると京介はコーヒーを飲む手を()めて、苦虫を噛み締める表情になった。

 

 「それでアンタは俺をどうする気だ?その事を全員の前で追及してからAve Mujicaから追い出す気か?」

 

 「いや、その事は僕とお前だけの秘密にする」

 

 「ほう?俺はバレたらスパイとして裁判にかけられると覚悟してたが?」

 

 「お前はいわば僕とパスパレを繋ぐパイプ役を担ってもらう。今のパスパレの現状も気になるし、僕は下手に動けない立場だから、監視をお前に頼みたい」

 

 「監視役、か…これじゃ二重スパイに近いよ」

 

 「といっても、お前はパスパレやAve Mujicaの味方じゃない、 Morfonicaの味方、だろ?」

 

 「それはご尤も、だ。アンタが俺の立場を知って理解してくれたのならありがたい。俺も色々と動きやすいからな…それと、アンタに内密に伝えておきたい事がある」

 

 「なんだ?」

 

 「(かなえ) 優花(ゆうか)、って人物に心当たりはないか?」

 

 「いや、無いが。それがどうした?」

 

 颯樹から逆に尋ねられた京介は以前千歌から話された事をそっくりそのまま説明した。

 

 「……分かった。だが千歌は信頼しているけど、まだ接触すらしてないから確証は無い。だから暫くはこのまま泳がせておく。その事を知ってるのは千歌とお前だけか?」

 

 「いや、千聖さんにも調べてもらうよう千歌さんに内緒で頼んだ。おそらく千聖さんが信頼している者数人にも耳に届いている筈だ。だけどその数人が誰かまでは全部把握出来てないが」

 

 「そうか…分かった。何か分かったなら真っ先に僕に報告をくれ。特にその信頼している者数人が誰なのかもね」

 

 「了解した」

 

 「それじゃ、そろそろ時間もアレだしご飯にするか。といっても、食材買う時間が無かったから、外食になるけど」

 

 「構わんよ。それなら七深の働いているファミレスにするか。アイツ、今日シフト入れてるって言ってたから」

 

 「なんだ、結局は七深にも気に掛けてるじゃん。気まずい事になってると思ってたよ」

 

 「色々あったが、なんとかなったよ。もちろん一悶着もあったけど」

 

 「ハハハ…それじゃ、ファミレスに行くとするか」

 

 「了解した」

 

 2人はそう言うと家を出て、颯樹が運転する車に乗って七深のバイト先のファミレスに向かうのであった────。




 まずは読んでくださった方、お気に入り登録をしてくれた方、こんな拙作を応援いただきありがとうございます!こんな拙作読んでくれるだけでもありがたいです。

 次回は従来通り2週間後の投稿になりますが、進捗次第では前倒しして来週に投稿するかもです。

 それでは、次回をお楽しみに!




アングイスの衣装とキャラ】
 アングイスの衣装は、本編でも描写はあったけど、改めてここでも。

 ゴシックファッションを基調とした、黒いロングコートと、ベストとスラックスも同色で揃えている。ロングコートは細部はAve Mujicaのイメージカラーで施されている。なお、ロングコートは羽織らずに肩に掛けている(祥子曰く『肩に掛ける方が見栄えが良くてよ』との事)。

 首元にはジャボ(中世ヨーロッパで貴族が首元に巻いているもの)と呼ばれるヒラヒラを巻いている。

 Ave Mujica恒例(?)の仮面は、他のメンバーが花言葉の花を模した柄に対して、アングイスだけ蛇を模した柄の仮面となっている。

 アングイスになりきっている時は一人称は「僕」。颯樹がヴァニタスになってる時は「俺」なのと、獅音(ソリトゥス)初華(ドロリス)はお互いのキャストの一人称が逆なので、それを模して今の一人称になった。



 ※今回は話の都合上、中盤以降京介の出番が多かったので彼のプロフィールをこの作品でも共有します。

【名前】流川京介(るかわ きょうすけ)
【性別】男 【年齢】18
【学年】高校3年生 【学校】羽丘学園 【クラス】3年A組
【身長】175cm 【体重】65kg 【誕生日】 4月4日
【血液型】AB型
【容姿】アッシュグレーのミディアムロングで、右目を前髪で隠れてる。二重の切れ長の紫色の瞳。外見は整っており、イケメンの部類。(本人自覚無し)
【一人称】俺
【イメージCV】小野友樹
【概要】
 作者の処女作『白き蝶に導きかれて……』の主人公。

 時系列がSeason3になっても人好しであり困った人は基本放っておかないところは変わっておらず、それに併せてか皮肉屋のところも顕著になり始めた。
 
 本作ではSeason3になった事で学年も1つ上がっており、この世界線においては羽丘の生徒会長に就任している。
 ちなみに就任理由は、日菜独断で無理矢理押し付けられた上に、彼女の行動で生徒会長に祭り上げられた事が原因である(余談だけどつぐみは(本作においては)副会長を務めている)。そのため、日菜に対して恨んでいる。

 Morfonicaのマネージャーは相変わらずだが、生徒会の事があってかここ最近顔を出してない。それも加えて月ノ森の新体制について瑠唯から聞かされて悩みの種が増えた。

 しかしそんな折、Ave Mujicaと邂逅と同時に引き抜き話を持ち掛けられそうになるけど、颯樹の提案でサポーターとして落ち着く事に(ぶっちゃけて言えばバイトや派遣みたいな立ち位置。しかし祥子からはメンバーの1人としてカウントされている)。

 ちなみに颯樹の提案を受け入れた理由は、Ave Mujicaの存在を千聖から聞かされた事と、今後のガールズバンドで危険の有無が無いか見極めるためと何かしでかさないか彼女から監視を依頼された為である。(ちなみに先述の邂逅はほんとに偶然からなったものである)

 しかし颯樹には看破されており、逆に彼から千聖や彩を筆頭としたパスパレが何かしでかさないか監視を頼まれた事により二重スパイという立場になる。

 この時点で同メンバーのましろと瑠唯、RASのレイヤとは恋人関係である。3人揃っての修羅場が一番苦手なのは本人談。sumimi(スミミ)純田(すみた) まなの大ファン。ファンになった理由は透子に無理矢理sumimiの曲を聞かされた事がキッカケで、まなの素晴らしさに目覚める。
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