今回はアニメ2話終盤のツアーライブ初日をお送りします。
それでは、どうぞ。
日は過ぎ、Ave Mujica全国ツアー初日。会場はAve Mujicaのデビューライブが行われた【G-WAVE】となっている。しかし僕たちは此処には縁がある…メンバーの大半の素顔が晒された時…【dub】でのライブの前にも此処でライブして新曲の『KiLLKiSS』ご披露されたっけ。
そんな僕たちは、スタッフさん達が慌ただしたくなっている中、僕たちは控え室で祥子ちゃんから手渡された、キャスト陣が仮面を取った後に修正された台本を手に取って読んでいた。
「睦ちゃんと京介さん、遅いね」
台本を読んでいた最中に初華さんか台本を読んでいる最中にそんな事を呟いた。確かに全員到着して衣装に着替えてないとおかしいよね。遅刻…なんて真似、先輩は絶対しないだろうけど。
「前の現場が押しているそうです」
押しているって……。先方もツアーがあるって理解してスケジュール組んでくれたのかな?
「てゆーか、今日の台本なに⁉︎あたしへの当てつけ?」
「あくまで物語上のことですわ」
…なんか話の途中でにゃむさんが割り込んできたけど、どうやら台本の内容に不満があったようだ。でも祥子ちゃんは毅然とした態度で一蹴したけど。
「仮面を失った人形達が迎える、残酷なまでの現実です」
確かに、前回の
そういった意味では残酷な現実を僕たちに叩きつけられたのは明白だ。
祥子ちゃんがそう告げてからは僕たちはミスがないように台本の読み合わせを入念に行なった。しかし暫くすると楽屋の扉が蹴破るように開かれた。そこには京介先輩と、彼におぶられている睦さんの姿があった。
「京介さん!これは一体…」
「時間がないから単刀直入に言う。今日までの取材とかの影響で睦が倒れかけた」
京介先輩がそう告げると全員が驚いた。確かに睦さんだけ仕事の量が多かったから……。先輩曰く『仕事の影響で疲労が一気に溜まった』との事だ。
「京介さん、颯樹には連絡しましたか?」
「一応連絡したが、睦がやると聞かなくてな…俺も颯樹さんも反対したが、仕方なしに連れてきたんだ」
そんな経緯が…確かに今の睦さんを見る限り疲労困憊なのは明白、これでライブなんて出来るか心配になってきた。
「……仕方ありません。此処でライブに来た観客を無駄足にさせるわけにはいきません…翌日のスケジュールを大幅に変更した上で1曲だけ演奏してその様子次第で変更する、というのはどうですか?」
此処で千歌さんが妥協案を出してきた。確かにただライブを中止させたりすると此処まで足を運んでやってきた観客達を手ぶらで帰すようなものだから…それに睦さんの体調もあるから、お互いの事を配慮した上での最低限の判断である。京介先輩はおろか、他のメンバーもその案で決定の雰囲気を出していたようで無言で頷いた。
「どうやら満場一致と捉えてもいいですね…分かりました。颯樹やスタッフには私から連絡しておきます。京介さんと睦さんは至急衣装に着替えてください。私は今からその事を伝えますので、皆さんはいつでも出れるよう準備をお願いします」
千歌はそう言うと、控え室を後にするのであった。
控え室を一旦出た千歌は偶然通りかかったスタッフの1人に先程まで何が起きたか手短かに報告した後は、運営側で一番偉いスタッフさんと急遽行われた今回のライブの打ち合わせの後に、
「……状況はわかった。だが、
千歌からの受けた颯樹は彼女に忠告に近い指示を出した。颯樹の立場はプロデューサーという位置に属するため、メンバーの事は特に状態とか気にしないといけないのだ。
「京介に伝えろ。『今の彼女の精神状態は不安定だ……何かの拍子に精神に多大な負荷がかかれば……』」
「負荷がかかれば……?」
現時点で睦のお目付け役の京介に伝言があるようで、颯樹は特に睦には注意するよう促すが、何処か警告に近かった。
「『乗っ取られるぞ』」
颯樹のその一言で、千歌は背筋が凍るような感じに陥った。彼の一言には何か考えがあっての事だが、声のトーンからして何処か冷酷さを感じ取ったのだ。
「へぇ、それを僕達の方でどうにか対処しろと言うのかい?
「!」
すると、突然千歌に声を掛けてきた人物がいた。千歌は不意を突かれたからか、無意識に後ろを振り返った。
そこにいたのは、黒いゴシックファッションに身を包んだ目元が隠れる柄に蛇があしらわれた黒い仮面を着けた青年…
「もしもし、電話は代わったよヴァニタス」
呆気を取られてる千歌からスマホを奪うかのように強制的に電話を代わってアングイスが颯樹をヴァニタスと呼んで連絡を取り合った。
「お前か。盗み聞きはよくないぞ?」
「偶然聞こえたから聞き耳を立てたまでさ」
「それを盗み聞きと言うが…まあお前の耳にも遅かれ早かれ届くものだからこの際何も言わん」
盗み聞きをした事に対して咎めようとするも、どうせアングイスの耳にも入る案件であったため、この事については特に何も追及せずにそのまま話を続けた。
「話には聞いてたけど、
「了解致しました。我が
「その時はお前やオディウミスの判断に委ねる」
そう言ってヴァニタスは電話を切った。ヴァニタスの最後の一言を聞いたアングイスは千歌にスマホを返すとその場を立ち去った。千歌も、すぐに正気に戻ってアングイスの後を追いかけた。
そして時間は過ぎ、開場はおろか開演時間になった。睦モーティスはいつものようにギターを掲げての
しかし
その直後、今度はにゃむアモーリスにスポットライトが当たった。
「ねぇ!あたしの完璧な顔を返して!」
アモーリスは自身の思い通りにならなかったのか、嘆くように空に向かって懇願していた。
「愛らしくて大きな目を…美しく孤を描く口を返してっ!」
「アモーリス…」
そんな懇願しているアモーリスに対してスポットライトが当たった初華ドロリスは心配そうに呟きながら彼女を眺めていた。
「こんなの、本当のあたしじゃない!」
そんなアモーリスの嘆きは駄々をこねた子供に見えなかった。しかしそれに対し、モーティスは冷や汗を掻きながら眺めるしか出来なかった。
しかしその時、今度は祥子オブリビオニスにもスポットライトが当たった。
「アモーリス。貴女が望んだ事ですわ」
オブリビオニスが放った一言は、無慈悲にもアモーリスの嘆きを否定するもので、冷酷な表情を浮かべて一蹴するのであった。
「違う!あたしは…!はっ。月は⁉︎月の光なら、きっとあたしを輝かせてくれる…!」
「そうだ。月ならきっと…!」
しかし現実を受け止めきれてないアモーリスはドロリスと共に夜空を見上げながら祈った。しかしそこに海鈴ティモリスにスポットライトが当たった。
「残念ですが、月は誰も癒しはしません」
「それどころか、どこまでも追い詰める。一度壊れてしまったら、この顔で生きていくしかありません」
ティモリスが現れると無情にもそんな事を告げて、それに便乗してかオブリビオニスはアモーリスに追い討ちを掛けた。
「そんなぁ…!」
2人から告げられた事実にアモーリスは現実を受け止めきれなかったからか、その場から崩れ落ちた。
「ハッハッハッハッハッハ!これは滑稽だねぇ、アモーリス!」
そんな時、誰かが嘲笑する声が聞こえた。その瞬間、スポットライトを浴びると、1人の人物…アングイスが階段の手摺りに寄りかかったいた。
「あらアングイス。気まぐれで狡猾な貴方がこの
「それは心外だねぇ。僕もこの場に足を踏み込む事はするさ。それと、狡猾は余計だよ」
階段から降りながら、アングイスは
「しかし仮面を取って人形から人間になるとは…猿真似でも始めるつもりかい?これだと人形から猿になった…の方がピッタリだよ」
「アングイス!君は罵倒するために此処に足を運んだというなら許さないよ!」
今度はアモーリスの顎を撫でながらそんな事を告げるも、ドロリスは彼女を庇うように怒るも、オブリビオニスに制された。
「およしなさい、2人とも…アングイス。貴方が此処に来たという事は、ただの気まぐれ…ではないですよね?」
「あら、気づいちゃった?そうだよ。僕もやりたい事があって此処に来たのさ」
「やりたい事、ですか?」
どうやらアングイスには理由があるようで、その理由が分からないティモリスは首を傾げていた。
「君たちの真似事、やらせて貰うとするよ」
「もしかして貴方も、ですか?」
「そうだよ。この仮面を取った僕はどうなるやら。東洋には『藪から蛇』という言葉がある。もしそうなら蛇のままか人間になるか…はたまた鳥や龍だってありえるよ。でもそれは…」
そう言うとアングイスは自身の身につけている仮面に手を取った。そして…
「
躊躇なく自身の仮面を剥ぎ取るのであった。
その行為に対して
「貴方、どうやら少し勝手が過ぎるようですね」
…と、そこに舞台裏から2人現れた。1人はオディウミス、1人はソリトゥスであった。
「勝手?それは違うさ。僕は彼女達と同じ条件に合わせただけだよ。ま、君も例外じゃないけどね…オディウミス?」
「なんという屁理屈を…っ!」
アングイスの歯に衣を着せぬ言い回しにオディウミスは憤りを感じた。しかしアングイスはそれ以上何も言わず、視線をソリトゥスの方に向けた。
「それでソリトゥス。君はどうなんだい?」
「どう、とは?」
「君もその素顔を晒したらどうだい?」
「!」
突拍子の無い提案をしてきたアングイスに対してソリトゥスは、驚きを隠せなかった。
「しかし悔しい事に、アングイスの言う事に一理あります。
アングイスの提案に対し、オディウミスは渋々賛同すると同時にソリトゥスに指摘をした。それを受けてソリトゥスは観客席を見渡すと、想像以上に騒々しいのであった。
これ以上世界観を破壊は避けたかったが状況が状況…その願いは虚しく散るものと悟った。そう感じたソリトゥスは自身の仮面に手を掛け、ゆっくりと剥ぎ取って素顔を
一方の
「しかし此処からどうすればいいのだろう。私はそれが不安でしかない」
素顔を晒した今でも、ソリトゥスはまだ不安を隠しきれなかった。人形の姿を捨て、人間になった自分にはどんな未来、もしくは結末が分からないからだ。
「それが普通の反応です。しかし慰めを求めるのなら…」
それに対し真っ先に動いたのはオブリビオニスであった。彼女は一歩一歩前を進みながらソリトゥスに助言を施した。
「……全てをAve Mujicaに委ねなさい!」
そして最後にオブリビオニスがそう宣言すると同時に会場全体の照明が一瞬落ちるが、ものの1分程度で照明は点き、楽器などが準備されていつでも演奏が出来る態勢…正確にはもう既に【Ave Mujica】のイントロが流れ出した。それと同時に観客の歓声が会場全体に鳴り響いた。
「ようこそ。Ave Mujicaの世界へ──── 」
ドロリスが歌い出そうとした時、想定外な事が起きた。
それは、モーティスがギターのピックを落とした直後に椅子に座り込んだのだ。その表情からは覇気が感じ取れない。まさに自身の名である
同じステージに立つモーティス以外の他のメンバー、舞台裏に移動したサポートメンバーはそんなモーティスを見て驚愕するしかなかった。
しかし観客達は驚くが、そんなモーティスを見て『これも演出なのか?』と疑問符を浮かべて観ていると同時に『凄い』と感じ取る者もいたのだ。
だが、舞台裏でその光景を見ていたオディウミスは脳裏から『
オディウミスは動こうとするも、自身の隣にソリトゥスはいるのだがアングイスの姿が無かったのだ。『何処へ行った?』と思いながら周囲を見渡した。すると突然また会場全体の照明が落ちた。
会場全体は何事なのかザワつきを隠せなかった。
しかしその一言により突然スポットライトが一つ照らされたのだ。
スポットライトの照らされたその先には…アングイスと、彼に抱き抱えられているモーティスの姿があった。
「どうやら人形になった人間にも、個人差というものがあったようだ。モーティスの場合はこのタイミングで眠りについた…まだ不完全の状態だねぇ…」
するとアングイスのその一言にオブリビオニスは内心驚いた。何故なら彼のセリフは台本にも書かれていない事であるからだ。
「此処はそうだね…ソリトゥス、ソリトゥスはいるかい?」
しかしそんなオブリビオニスを無視したアングイスはそのままアドリブを敢行した。ソリトゥスはアングイスの凶行に憤りを隠せなかったのか、舞台裏からステージに現れた。
「此処にいますが?(先輩!どういう事ですかっ⁉︎そんなセリフ、台本には書かれていませんよ!)」
「彼女を頼めるかい?(想定していなかった事態の対処だ。だからこの場は俺がなんとかするから早く彼女を休ませてやれ)」
ソリトゥスはアングイスに呼ばれて何故呼んだか追及するが、モーティスを連れ出すよう頼むのだが、その2人は観客達に聞かれないよう小声やアイコンタクトで意思疎通するのであった。
するとオブリビオニスはキーボードを鳴らし始めて自身に注目が来るよう仕向けた。
「ソリトゥス。モーティスをお連れしなさい」
「しかしオブリビオニス!」
「……ソリトゥス」
「……分かりました。私が責任を取ってお連れします」
オブリビオニスにそう頼まれたソリトゥスは渋々従い、アングイスからモーティスを預かり、そのまま舞台裏へ移動するのであった。しかしその際、アングイスは何故かモーティスのギターを勝手に拝借したのは疑問に思っているが。
「何故アングイスはあのような事を…?」
「おそらくこの場の対処するための処置でしょう。だからアドリブを敢行してモーティスから注目を浴びないための下準備をなさったはず。此処は彼とオブリビオニス達に任せて私達は楽屋に行きますよ」
2人はそういうとモーティスを連れて楽屋に移動するのであった。
一方、ステージ上では
「皆さま、私めに一つ提案があるのですが…」
しかしアングイスがそう言い放つと観客達は一瞬沈黙した。その後は『何?』と言わんばかりにまたざわつき始めた。その時、アングイスはモーティスが先程座っていた椅子に座ると、モーティスのギターを掲げると同時にピックを持って、ギターを軽く弾き始めた。
突然のソロパートを弾いた事により観客はおろか、ステージにいたオブリビオニス達は驚く他なかった。
「…今宵、私めがモーティスの代理として一曲だけサポートとして参加しましょう」
そう言い放つと観客達は沈黙するも、それは一瞬だけですぐさま観客席から歓声が鳴り響くのであった。
「(ちょっと京介様!何故そのような話になるのですかっ⁉︎)」
「(よく考えてみろ。2回連続で曲を聴かせずにそのまま帰すのは流石にマズイだろ?だから一曲だけ聴かせて観客を帰す…違うか?)」
アングイスにそう諭されたオブリビオニスは歯を食いしばりながらそう肯定せざるを得なかった。
それを面白半分で見ていたアングイスはそのまま『Ave Mujica』のイントロ部分を軽く弾き始めていつでも演奏出来る態勢に入った。
「それでどうする?僕はいつでも始められる状態だよ」
「……分かりました。
アングイスの問いを受けてオブリビオニスは
モーティスの穴を埋めたアングイスは一発本番という事もあって少々ズレが生じたものの、他のメンバーのフォローがあってか、それに合わせるようにして、モーティスがギターを弾いてるものとは大差なかった。
「ようこそ。Ave Mujicaの世界へ」
ドロリスのその一言で『Ave Mujica』は始まった。彼女達と青年1人の演奏を、
そして暫くすると演奏が終わった。暫し沈黙が流れたが、1人が拍手すると1人1人、また1人拍手した。会場全体に歓声と拍手が鳴り響くのであった。
「それでは皆さま、よい夢を」
演奏が終わってオブリビオニスがカーテシーをしながらそう告げると、舞台裏に向かって歩き出した。メンバー全員もそれに続いて「よい夢を」と1人ずつ告げていくと、会場内は徐々に暗くなった。しかしそれでも尚、歓声と拍手が鳴り止まなかった。
Ave Mujicaのツアーライブ初日は、想定外の出来事はあったが、無事に終わりを迎えるのであった────。
【とある虚無の
Ave Mujicaのツアーライブが始まるとほぼ同時刻、颯樹はまなと共に次の仕事の現場に向かうために車に乗っていた。その際、颯樹はタブレット端末でAve Mujicaのライブ配信を観ていた。
「……言わんこっちゃない……」
「颯樹さん、一体どうしたんですか?」
「睦が意識を失った。今は気を失ってる状態で、何れ目覚めるだろうけど……」
「?」
「次に同じ事が起これば……或いは」
「……えっ、それって……これ以上の事がそう遠くないうちに起こるって事ですか?!」
ライブ配信を視聴していた颯樹がまず口に出したのはこれから起こる予期せぬ事であった。これに対しまなは驚きを隠さなかったが、先程まで彼はAve Mujicaのライブ配信を視聴していたので、その言葉には説得力を感じるのであった。
「備えろ。ここから少しでも掴んだ光からは手を離すな。さもなくば振り落とされるぞ」
万が一に備えてなのか、もしくはまなにも同じ目に合わせないためなのか、颯樹は彼女に忠告をした。
「……は、はい。肝に銘じます」
それを真摯に受け止めたまなを見届けた颯樹は、次Ave Mujicaの練習に足を運んだ際に説教と反省文提出を考えると同時に、大掛かりなアドリブで睦を遠ざけたと共に会場内の観客に満足させた
まずは最新話の読了とお気に入り登録をしてくれた皆様、ありがとうございます。こんな拙作にお付き合いいただいた事に感謝感激です。
次回の投稿予定は他の作品の執筆にも手がけるので、4月4日か11日を予定しております。
それでは、次回をお楽しみに。
【京介の楽器の腕前】
実はSeason3に入る前から楽器の練習をしていた。パートはギターとベース。ギターはパン好きの同級生と普通を目指す後輩から習った。ベースはベース&ボーカルの幼馴染とギターを指導してくれた普通を目指す(ryから教わった。
ちなみにどちらも人前で弾けるレベルで、特に後者は講師陣が京介に対して感情が大きいので、ノリノリで指導して1週間未満でほぼマスターした。(ギターは3週間程度)