呪いの王が生まれ変わるのは間違っているだろうか   作:名無し

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 多分これで極東編は終わり。

予定では
1.極東編
2.???
3.???
4.???
5.???

 といった感じ。


神を弑する呪いの王

 肥溜めの擬人化。腐ったミカンの叩き売り。神の威を借るハイエナの巣窟。

 

 極東を統べる『朝廷』、その暗部に据わる『五条』の家。この国の全ての闇を一手に引き受ける一族に生まれたゴジョウノ・輝夜が八の齢で知ったこの国の実態。

 

 国の舵を取る立場になった大多数が己の懐を満たすことに腐心し、民から徴収した税で酒池肉林の欲の限りを尽くす。権利だけを求めてその立場の責任を果たそうとする素振りはない。国や民のために働こうとする少数の者は腐った連中に疎まれて目を付けられ、蹴落とされるか潰されるか喰われるか。中には流されて同じ獣に落ちる者までいた。

 

 国のためにこの身を捧げます。そう女神と帝の前で宣誓した男が半年も経たぬうちに酒と女漬けになり、幼童の自分に向けてきた悍ましい視線は今でも忘れられない。

 

 そんな腐りきった権力者達の何の意味もない会議が始まる。

 

「――皆、揃ったな。これより、『ヤマタノオロチ』による被害とその復興にかかる資金と時間の報告、および討伐者の処遇検討会議を行う」

 

 この国の頂点に君臨する女神の招集によって『朝廷』の主の間に集められた百名以上の貴族。彼等彼女等の視線を浴びながら帝が会議の始まりを宣言する。

 

 つい先日まで『ヤマタノオロチ』から逃げようと帝から再三の招集があったにも関わらず無視して国外逃亡の準備に明け暮れ、その時でも貯めこんだ財産を捨てていこうとしなかったせいでまだ国に残っており、『ヤマタノオロチ』が討伐されたとわかった途端に何事もなかったの如くのこのことやってきた者達の出す意見は愚かとしか言いようがなかった。

 

「よりにもよって討伐者が宿儺とは……! もう奴は罪人としての触れを出しているのだぞ! 今更撤回などできるものか!」

 

「功績さえ出せば何をしてもいいと思いあがられてはたまりませんからなぁ。今からでも遅くありませんし、我々の兵が討伐したことにしませんか?」

 

「氷に包まれているせいで竜麟をはじめとした多くのドロップアイテムが回収できておりません。特に被害が大きかった我が領地はすぐにでも大量の金銭がなければ運営がままならないので、分配はそこを考慮していただければ」

 

「何を言う? 私は貴重な子飼いの忍を派遣して進路を誘導して被害を抑えるに留まらず、ここに来るまでずっと禊をしておったのだぞ。討伐のためにやれることを全てやった私にこそ取り分は多くされるべきであろう」

 

「宿儺はどうします? 本来はゼウスとヘラの両派閥が最小限の被害で終わらせてくれるはずの被害をここまで拡大させたのです。オラリオに戦力として下賜するのも不安が残りますし、亡き者にしたほうがいいのでは? 『ヤマタノオロチ』との戦いが原因で死んだとしても不思議ではないでしょう」

 

「裏梅は儂が引き取りますぞ。かの大精霊が誕生したのは儂が管轄する土地ですからの……フヒッ」

 

「馬鹿を言うな! 『ヤマタノオロチ』のドロップアイテムだけで今回の被害を賄える訳がないだろう! オラリオに『精霊の護符』と『精霊の加護』を金と引き換えに売り出すために国全体で管理すべきだ!」

 

「暴徒となりうる民衆の数はどの程度だ? 最低限の税収を収められる数は残さねば」

 

「とりあえず今回の件で発生した被害は全て宿儺に原因があるという風に情報統制しましょう。民草の希望も絶望も受け止めるのが『英雄』の役目なのですから」 

 

 自分達の失態を認めることもできず、あることないこと捲し立て、全てが終わって危機を脱した今になって欲を曝け出す彼等の言動。国力を低下させてでも私腹を肥やすことしか頭にない豚どもが……外で警護にあたる輝夜はあまりの馬鹿さ加減に眩暈がした。

 

 彼等だって『ヤマタノオロチ』が脅威で強大であることは理解している。民が困窮することもわかっている。それでも実感しなければこいつらはどこまでも他人事のようにしか思えないのだ。最初から恵まれて生まれた人間が繋がりと世襲によって上に立ったとしても下の人間が何に困っているのかもわからない。

 

(殺しに行くとか言った奴は本当に成人した大人なのか? 予言が出た時に差し向けた討伐隊が誰に殲滅されたのか覚えてないのか? 自分達が生きていて世迷い事を口にできているのが宿儺が戦ったからだとどうして理解できない……!?)

 

 輝夜はこの光景を唾棄する。救国の英雄に感謝の一言もないまま、英雄から手柄は横取りして責任だけ押し付けようとしている連中のなんと醜いことか。腹立たしいのは、奴等の言葉が決して実現不可能ではないことだ。

 

「うんうん、皆が真面目に考えてくれて僕は嬉しいよ。僕も皆と同意見。マッチポンプで皆に認められたいなんて思ってそうなスクニャンにはこれから僕の眷属として一生懸命働いてもらうつもりだ。今回発生した被害への償いとして凍らせて独り占めしようとしてるドロップアイテムは全て渡してもらうし、国民もそうだけど世界中の子供達にも納得してもらうために『三大冒険者依頼(クエスト)』に加わってもらう予定だよ! 裏梅も彼の契約精霊として連帯責任だ! それでチャラにしてあげようじゃないか!!」

 

「おお、アマテラス様! なんと慈悲深いお言葉……」

 

「そうでしょそうでしょ、我ながら慈悲深いよ。ブサイクで生まれた自分が悪いっていうのに世界が悪いって暴れる他責思考の悪餓鬼にチャンスをあげるんだから。本当だったら僕の『恩恵』もあげたくないよー」

 

「しかし、この栄誉と幸運を理解できるほどの教養が宿儺にありますかな?」

 

「そこまでの馬鹿じゃないと思うよぉ? 曲がりなりにも叡智を司る種族なんだからさぁ~」

 

最強の派閥(ゼウスとヘラ)にアマテラス様の名も加わる時が来たということですね!」

 

「……それだけじゃ終わらないよ。僕はゼウスとヘラも超えるつもりだ! そうだ、僕こそが頂点なんだ。あんな下半身で思考している老いぼれた狒々と常にとち狂ってるサイコパスが僕より上であってたまるか」

 

 アマテラス。『朝廷』の頂点。かつてこの極東の地で行われた大戦にて、最も多く子供達の魂を天に還した女神。

 

 アマテラスにとって人類は余程のことがなければ絶えることのない資源と変わらない。アマテラスにとって愚者も英雄も等しく駒だ。大神であるアマテラスの命令は絶対で、国政の最終決定はアマテラスが行う。

 

 彼女がいる限りこの国は変わらない。そして彼女は不変の神だ。だからずっと、この国は腐ったままなのだろう。きっと宿儺もこの腐りきった国の礎として生涯を終える。

 

(その国の闇に携わる私も同類か。考えるだけで足搔こうともしない私が誰かに望む資格なんてないのに)

 

 期待を裏切られることが怖くて、諦めるように少女はその目を閉じた。

 

 

 

「【逆鱗】【融合】【死兆の明星】」

 

 

 

 ――【捌】。

 

 無骨な男の手の中から汚泥が滴り落ちる。それが少し前まで神の玉体だったと信じられる者はいないだろう。

 

 集まった民衆から嫌悪、憎悪、憤怒といった数えきれないほどの敵意をぶつけられ、その負の感情をかき消すほど絶大な大神の『神威』を浴びながら行われた神殺し。下界最大の罪を犯した男に誰も彼もが恐怖し逃げ惑う中、輝夜はただ一人、四つ腕の鬼神の圧倒的な力にただ見惚れた。

 

 

 


 

 

 

『朝廷』の遣いが来る数日前――。

 

「ありがとう。この国で生きる一人の住人として、この国を愛する神の一柱として感謝を申し上げる」

 

 眼前で一柱の男神が正座し、掌、額まで地面に付けてビシィツ! と感謝の言葉を述べていた。

 

 ――羂索が飽きるほど見せてきたものと比べて、本気の土下座というものはこれほど神々しいのか。宿儺様、相手は神です。確かにそうだな……俺は何を言ってるんだ?

 

 まるで『無量空処』のような効果を持つ平伏を披露してきた男神から目を逸らすことなく、宿儺は血迷ったことを考えていた己の頭を軽く叩く。裏梅も気合を入れるかの如く頬にぴしゃりと手を打ち付けていた。

 

 既に目覚めた『ヤマタノオロチ』討伐から一週間が経過していた。四日ほどぶっ続けで寝て、残りの三日は裏梅から手厚い看護を受けて療養したことにより全快まで回復し、がっつりしたご飯を食べていた宿儺の下へ狙いすましたかのようにこの男神はやってきた。

 

 どうして居場所がわかったとかは尋ねない。どうせ裏梅の気配を辿ったとかだろう。

 

「虫がいい話なのはわかっている。でも、頼む。俺の願いを聞いてほしい……!」

 

 タケミカヅチ――そう名乗った男神は頭を地面に擦りつけたままそう告げた。

 

「ふむ、言ってみろ」

「……俺はお前が『ヤマタノオロチ』を故意に目覚めさせたなんて思ってないし、『ヤマタノオロチ』が齎した被害の責任をお前が引き受けるべきだなんて欠片も考えちゃいない」

「……」

「でも……アマテラスのせいで、沢山の子供達がお前に責任をなすり付ける」

 

 たった一人の眷属が万軍を叩き潰せるようになった『神時代』では、地震や台風といった自然災害とモンスターによる被害は同一視されない。何故なら、モンスターであれば『神の恩恵(ファルナ)』を授かった眷属ならどうにかできるというのが今の時代の常識(あたりまえ)だからだ。

 

 すると民衆はどのような行動をとるのか? 答えは『責任を求める』である。

 

 家族、財産、住居……生きていく支えを失った衝撃に耐えられるほど人の心は強くない。不安定になった人間は理不尽な感情を爆発させ、ぶつける先を求める。『ヤマタノオロチ』を倒せたのに、()()()()()()()倒してくれなかった宿儺に対して。

 

 そしてそうなるように『朝廷』が民衆を煽るということもタケミカヅチはわかっていた。

 

 仮にタケミカヅチが暴動を起こそうとする民衆に『宿儺がいないときに「ヤマタノオロチ」が目覚めていたら?』『ゼウスとヘラが救援に来られなかったら?』といった正論を並べたとしても、被害を受けて感情で動く人々にそんなことは関係ない。わかっていても都合よく恨みをぶつけられる方へ流されてしまう。

 

 集団心理によって感情が昂ぶり、『英雄』だから守るべき自分達(よわきもの)に攻撃するはずがないという根拠なき自信を無敵の盾にして好き勝手に喚きたて、恨みをぶつけ、石を投げるだろう。自分達が到底勝てない怪物(モンスター)を屠ったそれ以上の化け物ということも忘れて。 

 

「お前にとって不愉快極まりないことだってわかってる。金やコネみたいな対価すらない。それでも頼む、俺にできることならなんでもするから、お前に理不尽な恨みつらみをぶつけてくる子供達を殺さないでやってくれないか……! これから生まれてくる子供を育てるには、今を生きる子供達の力がどうしても必要なんだ!!」

 

 人の悪意に力は時に無力となる。一つの大陸からモンスターを一匹残らず殲滅し、今を生きる人類の数を大きく左右させるほど戦い続ける力を持っていたはずの大英雄が『殺戮者』ではなく、『愚者』の烙印を受け入れてしまうほどに。だが、宿儺は躊躇いなく『殺戮者』の烙印を受け入れる性格をしている。間違いなく逆恨みをして不条理な怒りをぶつけてくる者達を殺す。

 

 命をかけて戦った戦士に、抗うための力を求めようともせずに民衆が享受していた平和で安穏とした日々の代償を代わりに支払えと言っているも同然の発言。殺されても仕方がないが、タケミカヅチはそれでも言わねばならなかった。彼の社にいる子供達を守り、育てなければならないから。

 

 男神の罪悪感と覚悟がこれでもかと込められた悲痛な叫び声が空気を震わせ、その場に静寂が満ちる。永遠を生きる神であるタケミカヅチにとって刹那にも満たないはずなのに、その沈黙は永劫続くかと思わせるほど長かった。

 

「面を上げろ」

 

 顔を上げたタケミカヅチが認識したのは、人を殺すのに十二分な威力と速度を孕んだ蹴り。

 

「ッッッ!!」

 

 その蹴りの威力を殺すことなく捻る力に転換して足を絡めとり、抵抗しようとする力さえ操って宿儺の体勢を崩し、そのまま『武の神』は彼を地面に引き倒していた。思わず『神業』を使ってしまったことに青ざめるタケミカヅチよりも先に、体を起こした宿儺が口を開く。

 

「強者が弱者のように媚び諂うな。『武神』であるなら力で従わせてみろ……貴様の同類は俺にそうしてきたぞ」

「もしかしてスサノオのことか? ……そんな真似、俺はしたくない。こっちが無茶苦茶言っている自覚はあるんだ」

「……ではこうしよう。今から殺し合い――ではなく喧嘩をする。貴様が勝てば条件に従い、分を弁えずに俺を不快にさせようと人は殺さないでやろう。だが俺が勝てば問答無用で鏖殺だ。どうする?」

 

 気が進まないという表情をしながらタケミカヅチが構えを取る。武神の答えに宿儺は笑って応えた。

 

 

 

「クハッ、ハッハッハ。なるほど、あれが武神の技か」

 

 息を乱して全身から滝のような汗を流しながらふらふらとした足取りで帰っていったタケミカヅチを見送ることもせず、宿儺は()()()()()()()()()()()()四本の腕と足を治癒しながら笑っていた。

 

 裏梅は目の前で起きた出来事だというのに信じられなかった。宿儺が『強化魔法』を使っていなかったとはいえ、『加護』の効果で身体能力は雲泥の差のはずだった。にも関わらず宿儺はタケミカヅチに敗北し、神の望んだ通り愚民への反撃を行わないことを誓うことになった。嘘がわかる神が納得して帰ったのであれば、宿儺は本当にあの神との口約束を履行するつもりなのだろう。

 

「……よろしかったのですか。あのような約束をして」

「もとより殺す気はなかったのでな。あの技を見るためにちょっかいを出したが、多少の戯言や有象無象の鳴き声など気にするまでもないほど俺は機嫌が良い」

「左様で……」

「それに俺は()()殺さんとしか言っていない。脳を失った国の行く末に興味もない」

 

 そこまで言われて裏梅は宿儺の考えていることに思い至る。

 

「いかがでしたか、『ヤマタノオロチの心臓』のお味は?」

「不味いな、呪物とさして変わらん……奴の神を殺す力は得られたように思うがな」

「それでは?」

「俺に舐め腐った真似をしてくれた『朝廷』の主たるアマテラスを屠る。その前に適当な神で慣らすぞ。ついてこい、裏梅」

 

 ――そして『朝廷』に招かれたその日。宿儺はアマテラスを殺害した。

 

 この日を境に、宿儺の名は世界中に広がることとなる。

 




 強化パッチ②タケミカヅチの技。
 第一級冒険者を投げられるこいつなら多分本気でやれば宿儺を殺せた。生まれたばかりの命を預けられたのでいろいろ考えて行動した結果、極東の多くの人間が救われることになった。
 
 神を殺す斬撃【捌】:【解】は威力に特化した能力であるため、【捌】を特殊効果に特化した方へ改良した。いつか『神の恩恵』を強制的に断ち切れるようになるかもしれない(そんなことしなくても殺す方が早い)。

『ヤマタノオロチの心臓』は食べても神を殺せるようになって神の力が利きにくくなるだけで特に強化とかはない。『神の恩恵』を持っていないから神を殺す力が手に入ったという設定。もし宿儺が恩恵を持っていたらザルドみたいな食べたら強くなる『スキル』を手に入れてたかも。

 アマテラスは自分が何よりも一番にならないと気が済まない性格。自分だって大神なのに、神の頂点を聞くと誰もがゼウスやヘラの名前を挙げるのが気に食わないし、下界に来た時も極東に割り当てられて滅茶苦茶キレていた。宿儺を利用して世界の中心であるオラリオで成り上がろうと画策していたが、宿儺に大神の神威が利かないと考えずに舐めた真似をし続けた結果、殺されることになった。
 

 





 実はこの作品、リヴェリアの妹を宿儺みたいな設定で書く予定だったものを再利用している。



 昔は外の世界に憧れたりする以外は一般的エルフらしかったリヴェリアが生まれたばかりの妹が異形で、それが原因で母親も死んだから殺しはしないけど捨てることに反対せず見殺しにして、オラリオで過ごす日々で妹を殺したことに罪悪感を募らせる。

 妹は何をしても報われず、極東でヤマタノオロチを倒しても誰にも感謝されないかと思いきや、タケミカヅチに出会ってようやく幸せをつかむ。

 そして異端児編で堂々と姿を現して異端児を庇いながら「一度見殺しにしたんだ。もう一回忌み子を殺すことくらい訳ないだろ、エルフなんだから」と妹に吐き捨てられて心に傷を負うリヴェリアを見たかった。



 誰かにこういうのを書いてほしい。
 下のはそれの設定とかシチュとか。

https://syosetu.org/novel/367753/

黒閃ってあり?

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