英雄《ヒーロー 》が如く  龍を継ぐもの   作:0101シュート

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第七章 鉄哲編 失われた歴史 パート4

「ハア…………今日の訓練も本当に疲れたわ」

 

雄英高校ヒーロー科3年生の香山 睡は校舎の廊下を歩きながらため息をつく。

彼女はもうすぐここを卒業しヒーローになる身。故に気合の入った訓練を日々自分に課していたのだった。自主練も終わり外も暗くなってきている。はやく帰ろうと自身の荷物が置いてある三年の教室へと早足で向かった。その道中彼女は2年生の教室を通りかかる。

 

「ヒク…………うう…………」

 

「ん?」

 

その時彼女は誰もいないと思っていた2年生の教室から話声が聞こえて来るのに気が付いた。何やら

すすり泣き声が聞こえてくる。彼女は気になり教室の扉を半開きし中を覗く。すると中には

二人の男子生徒が教室のすみで体を寄せる合うように座っていた。

 

(あれ?教室の隅に誰かいる…………あれは………相澤君と白雲くん?)

 

 

 

 

「どうしよう相澤……!父さんが死んだ………!俺このままじゃ………このままじゃ」

 

「落ち着け白雲!まだよくわかんないけど.........やけになるな!」

 

泣きながら頭を抱え何か喚く白雲を相澤が必死に落ち着かせようとしていた。

香山は二人を放っておけず教室へと入っていく。

 

「ふ、二人とも大丈夫?」

 

香山がその言葉と共に教室の扉を開けた時ビクンと二人の肩が驚愕で震える。

そして恐る恐る彼女の顔を見た。香山は二人の表情に首をかしげながらも香山は

優しい口調で白雲に話かけた。

 

「どうしたの白雲君?なんか辛いことでもあったの」

 

「えっと、その………」

 

何故か相澤が焦り始める。説明をしよとした次の瞬間白雲いきなり立ち上がる。そして

さっきの表情と打って変わり笑顔で香山に話しかけた。

 

「いや~。心配掛けさせてすいません先輩!実は今日やった小テストで俺やらかしちゃって!このままじゃ補修になるって相澤に泣きついてたんすよ!」

 

あきらかに無理をしている。香山はそう感じ取った。しかしこれ以上詮索していいものだろうか?

彼女は悩んだ末に口を開く。

 

「そ、そう。駄目よ白雲君。常日頃からちゃんと授業の予習復習しておかないと……」

 

「アハハ!やっぱそうっすよね!じゃあ俺たちそろそろ行かないと!それじゃあ」

 

白雲は早足でその場から去っていく。相澤も彼についていくがその去り際に香山に

「気使ってもらってすいません」と囁かれた。もし彼らが自分に相談しに来たら

全力で応えようと決意した。しかしその瞬間は永遠に訪れることはなかった。

 

 

 

 

場面が急に切り替わる。

 

 

 

「ハア………!!ハァ……!!」

 

香山は病院の廊下を走っていた。それはルール違反だというのは明白だが彼女に

それを気にする心の余裕がなかった。とある一室。その扉を彼女は乱暴に開ける。

 

「白雲君!相澤君!二人とも大丈……………あ………」

 

とある一室の病室。そのベットの上に体中に包帯を巻いた誰かが横たわっていた。そして

そのベット前に相澤が立っていた。そして嗚咽とともに体を震わしている。

 

「白雲…………嘘だろう………クソ………クソ…!!白雲………!!」

 

「噓でしょ?まさか…………そんな………白雲君!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハ!?」

 

その時。プロヒーロー、ミッドナイトの意識が覚醒した。彼女は机に突っ伏して寝てた状態から

体起こし。周りを見渡す。ここは職員室。彼女は自分は仕事中に寝てしまったのだということを理解した。

 

(まったく嫌な夢ね。なんであの日の夢なんて………)

 

彼女は目頭を押さえながら体を伸ばす。

 

「お、先輩お目覚めッスか?」

 

近くのデスクで資料をまとめていたプレゼント・マイクが、ニヤッと笑いながら声をかけてきた。

 

「……ああ、山田君。仕事中に眠ってごめんなさい。少し疲れが溜まってたみたい」

 

「無理もないッスよ。1年の職業体験の書類仕事に、例の爆破騒動のマスコミ対応……

 爆破の件自体は根津校長が調査してくれてますけど俺ら、ここ最近ずーっと激務続きッスからねぇ」

 

マイクは椅子をくるっと回し、わざと大げさに肩をすくめた。

 

「それにしても、先輩が居眠りなんて珍しいッス。まるでイレイザーみたいじゃないスか?」

 

「聞こえてるぞ、山田」

 

低い声が職員室に響く。振り返ると、相澤がコーヒー片手に入ってきていた。

マイクは「あっ」と変な声を漏らし、肩をすぼめる。

 

「俺の場合は居眠りじゃなくて仮眠だ。寝袋でちゃんと仕事の合間を使って………」

 

「OKOKわかってるよ。ヒュー」

 

「ったく。ああ、それより山田。あの件の引継ぎはちゃんと進んでるのか?」

 

「ああ。雄英で行われる予定だった根津校長と日本を含めた各国首脳、そして大手

個性関係会社の代表が集まる個性サミット会談。その会場引継ぎの件は順調に進んでるよ。

ハァ………あの騒動が無かったら職業体験後の連休中に行われるはずだったんだけどな」

 

「仕方ないわよ。でも、よく“日本開催”が中止にならなかったわね。根津校長が必死に調整して、雄英から士傑高校に会場を変えたらしいけど……あの人の人徳、本当に世界規模よね」

 

根津校長は人間ではなく、“個性”が発生した動物である。そのため人間たちのもてあそばれた

という過去を持っている。しかしその体験を元に彼は個性のあるべき姿。個性差別の撲滅などを

世界に訴えた。その結果世界中の著名人たちが彼の意見を支持し、個性教育に大きな影響を与えたのだ。

 

「ああでも。そのサミットに参加するイギリスの副大統領。ラミラス・ラバナーと

その弟であるセインズテクノロジー社 社長のハイド・ラバナーは一回、根津校長と

個人的に面会するために雄英高校に来るらしいわね。歓迎の準備も進めないと」

 

「ああもう。仕事がまだまだ山ずみだぜ!」

 

「そうだな。あ。そろそろ出ないと。じゃあ出張に行ってきます」

 

そう言って相澤は教室から出て行った。その後ろ姿を見て香山は先ほど見た夢のことを思い出していた。

 

(もし白雲君が生きていたら私たちのように教師になってのかしら………それにしても

なんであの日の夢なんて見ちゃったんだろう。いや今は仕事に集中!)

 

彼女は眼鏡をかけ直しながらパソコンと再び向き合うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パワーエデンの調査のため狼山と正式に手を組むこととなった鉄哲。その後二人は

かつてこの施設で暮らしいた少女。白雲霞の兄。白雲朧がかつて雄英高校の生徒だったことを知る。この白雲兄妹の間に微かに見える雄英と異能解放軍の繋がり。ここには大きな秘密が隠されているのではと二人は感じるのだった。

 

 

 

時は夜。2人は更なる情報得るためにパソコン室に籠っていたが流石に夜の空腹には勝てなかったため部屋を出て食堂へ向かい夕食を済ませるのだった。腹を満たした二人は今回得た情報を整理しようと鉄哲の自室へと戻ることとなった。しかしその道中二人は何やら多くの人だかりができているのを

発見する。

 

「ん?何の騒ぎや?」

 

人が集まり何かざわめいている。2人はその人だかりの場所へと向かって行った。

そしてその人だかりの一人に声をかける

 

「おい。一体何の騒ぎや?」

 

「大変だ!リ・デストロがいきなり異能解放軍の幹部の

人達を招集してここに招待されたんだ。その一同を見た奴が何人かいただけど、どうも

全員険しい顔をされていたらしい。もう緊急事態が起こったんじゃないかって大騒ぎだよ」

 

リ・デストロだけじゃなく。今この施設にその幹部の面々もここにいる。この事実を聞いた鉄哲の頭にとある考えが浮かびあがる。そしてニヤリと笑った。それを見た狼山は鉄哲と初めて会った日に彼が起こした行動を思い出し顔をしかめる。

 

「兄貴………まさかまた忍びこもうと考えてるんじゃ?」

 

「フッよくわかったなキバちゃん。その通りや。周りの奴らも言っとたがこんな時間に

幹部たちが集まるなんて少し不自然や。恐らく緊急招集かなんかやろう。ってことは……

外で何かがあってとことや。それを何とか知りたい。ってわけで…………もう一度あの

施設長部屋に向かうで。幹部会をするなら多分あそこやろうからな」

 

そう言って歩き始める鉄哲。狼山はあわてて彼についていく。

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」

 

(ああ。俺はとんでもない人の弟分になっちゃたもんだ…………)

 

狼山は何故か理解していた。この人は一度言ったら聞かない男だと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後二人は施設長部屋がある教官棟へと忍び込んだ。そして警備員の位置を狼山の個性で

把握しながら避け奥へと進んで階段を上っていく。そして施設長部屋の前へとたどり着いた。

 

「中には誰もいないみたいですね」

 

「ああ。どうやら先回りできたようやな」

 

二人はとりあえず部屋の外で見つからないようにやり過ごし、この部屋に幹部が集まった

時にその内容を盗み聞きしようと考えていた。しかしその時、狼山の鼻が何かを嗅ぎつける。

 

「ん?この匂い………!?こっちに近づいて…………」

 

狼山が言い切る前に、廊下の窓の扉が突然開いた。そして窓から何者かがひょいっと入ってくる。

 

「鉄哲君、狼山君。ここで何をしているのですか?」

 

「か、亀田所長!?」

 

そう窓から突然現れたのはパワーエデン最高責任者の亀田一朗太だった。鉄哲の初対面の

時とは違い穏やかの表情ではなく冷たそうで鋭い目線を二人に向けられていた。

 

(ち。もう見つかるとはのう。作戦はもう失敗か………)

 

鉄哲は盗み聞きはできないことに内心ため息をつきながら、どう言い訳しようか適当に考えていた。

何やら大人数でこちらに来る足音が聞こえてくる。おそらく警備員たちだろう。

 

「ど、どうしましょう兄貴」

 

「仕方ない。大人しくお叱りでも受けて…………」

 

その時。突然亀太が室長室の扉の方へと歩いていく。そしてその扉を開けて部屋の

中にあるクローゼットを指さす。

 

「もうすぐ警備員たちだけじゃなく、幹部の方々もこの部屋に来られます。

もし見つかりたくないならあの中に入ってください」

 

「は?」

 

「え?」

 

突然亀田に隠れように指示された二人は驚きの声を漏らす。何かの罠じゃないと

疑いたくなる。2人の思考が一瞬フリーズする。しかし……

 

「早く隠れなさい!!」

 

「「!?」」

 

突然怒鳴り声をあげる亀田。それは子供を叱る大人特有の圧が込められていた。

二人の頭から自然と疑いの念が消え去る。2人は素早く部屋の中に入り、狭いクローゼットの

中に入り込んだ。隙間から部屋の中を覗く二人。しかし時間が少し経つとやけに冷静になって来た。

 

(な、なんで俺たちあの人の指示で隠れちゃってるんですか!?)

 

(くそ!あのおっさん一体どういうつもりや!?)

 

答えの出ない疑問を頭の中で巡らせる二人。そんな中部屋に数人の者たちが入って来た。

そう幹部の面々とリ・デストロが慌てた形相で入って来たのである。奴らはすぐさまそれぞれに

用意された椅子に座る。

 

 

 

 

 

 

「リ・デストロ。私は外に出た方がよろしいでしょうか?」

 

「いや亀田君。君も同席してくれ、一応情報と今後の方針を伝えておきたい」

 

「かしこまりました」

 

亀山も席に座る。しかし一つだけ席が空いていた。一人遅れてくるのだろうかとクローゼットの中で

二人は考察する。するとリ・デストロが話を始めた。

 

「では皆。緊急幹部会をはじめよう。皆を集めた理由は連絡した通りだ」

 

「全く。本当に信じられません…………まさかのステインが雷門町でたかが一人の

高校生に倒されるとは…………!」

 

「!」

 

ステインが雷門町で高校生一人に倒された。その言葉から鉄哲は自身の仲間である上鳴電気の

ことを思い浮かべる。

 

(まさか!上鳴お前やったのか!?)

 

「まずいですよリ・デストロ。もし捕まったステインがあの秘密を誰かに話したら!!」

 

「そうなれば我々の計画に支障が…………!!」

 

幹部たちが不安でざわめき始める。何か重大な問題がそこにあることがその空気から伝わって来た。なぜステインの名前でそんなにも深刻な雰囲気になるのか二人には理解できない。不安の空気が部屋全体を支配する。しかしその空気を切り裂くようにリ・デストロが声を上げた。

 

「落ち着きなさい!」

 

奴の声に皆黙る。静かになったのを確認した奴はいつもの笑顔と口調で話を続ける。

 

「ステインは監視役があの情報を喋る前に抹殺した。今すぐに計画が漏れるという心配はない。

だから皆安心して計画の最終段階の準備を続けたまえ」

 

リ・デストロの言葉に皆ホッと胸をなでおろす。その姿に流石多くの人間たちを従える組織のトップだと

鉄哲は少しだけ感心した。

 

「まあその高校生がステインと少し何かを話をしていたらしい。何故か個性難民についての情報を話してはいたらしいが、その高校生と仲間は公安に連れてかれたという情報を得た。公安もあの情報を嗅ぎ回されたくないだろうからな。おそらくその二人はもう………娑婆にでることはない。

だから心配ないだろう」

 

 

(なんや!?どういうことや!?)

 

 

 

「ハア。このタイミングで奴が倒されたって聞いた時は本当に肝が冷えましたよ。

ただ強さしか取り柄の無かったあの殺人鬼がたかが高校生にやられるなんて……まったく

何のためにリ・デストロが使命をお与えになられたと思っているんだか」

 

「フフフ…………まあまあその辺にしたまえ。彼は十分に役に立ってくれたよ。

奴は私の情熱的な言葉一つで何の疑いもなく邪魔者になり得るヒーローたちを

消してくれたんだから。まあただ一人の高校生にやられたのは私も正直失望したがね。フッ」

 

 

奴の言葉に亀山以外の幹部たちはフフフと鼻で笑う。

人が死んだというのに奴らはその事実は嘲笑っていた。邪悪で不気味な雰囲気にクローゼットの中に

隠れている二人は生唾を飲んだ。

 

 

 

「すんません!!遅れました!!」

 

その時室長室の扉がばたりと開く。すると大柄でスーツを来た気前の良さそうな

男が入って来た。

 

 

「遅いぞ京極!もうとっくに幹部会は始まってるぞ」

 

「いやー申し訳ねぇな。でも俺は一応桐生竜仁会の若頭補佐って言う立場なんだ。

そんな臨機応変に動けねぇよ。それは勘弁してくれ」

 

 

 

東城会直系桐生竜仁会 若頭補佐 

京極 武

 

 

京極は豪快な態度で椅子に座り礼儀のかけらもないように座りふんぞり返る。その姿に

まわりはため息をつきながらもその態度に文句は言わなかった。リ・デストロも余裕そうな

顔を保ち続けているが目が笑ってないことを隠れている二人は感じ取った。

 

(あの男、桐生竜仁会若頭補佐とか言ったな。一体こことどんな関係が?)

 

 

 

「ゴホン。それで京極君。君たち桐生竜仁会の方の計画はうまく行ってるかな?現状報告をしたまえ」

 

「まあ順調すよ。あの件の裏も親父が主導で集めらてました。もう奴らをあそこに呼ぶのは

いつでも行ける状態っすよ。あとロベリアの件も順調の様です」

 

「よろしい。では計画に大きな支障ないということだな。フフフ………もうすぐだ。この計画が

終わった時。この世界は大きく変わる。そして日本は我々異能解放軍の手に………!!

皆今後も気を引き締めて役割を果たすように………」

 

 

奴がそう締めると緊急会議は終わった。あまり多くは語られなかったため現状報告だけ

して終わった感じだと鉄哲は思った。部屋から幹部たちが次々と退出していく。そんな中

京極がクローゼットをちらりと見たことに誰も気が付いていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

しばらくしてリ・デストロを含めた幹部陣たちが全員退出した。室長室に残ったのは

亀山とクローゼットに隠れている鉄哲と狼山のみ。全員が部屋から出て行ったしばらくすると

亀山が窓から外の景色を眺めながら口を開く。

 

「もう出てきても問題ないですよ?好きな時に出ていただいて結構です」

 

亀山の言葉を聞いた二人は警戒しながらもゆっくりとクローゼットから出た。そして

鉄哲は外を眺める亀山の背中を睨みつける。そして低い声で威圧するように話かけた。

 

「あんた何のつもりや?俺たちにわざわざ情報を与えるような真似して………!」

 

「ほう。それはまるで君たちがスパイであるかなような発言ですね」

 

「ッ!?ち!」

 

冷静に放たれる言葉に二人は痛い所を突かれてしまう。まさか自分たちの目的を知っているのかと

狼山も不安で緊張の汗を流した。亀山がゆっくりとこちらを振り向き二人に目を向けた。

 

「鉄哲君。狼山君。君たちがここのとある情報を求めて来ていることはある程度分かっています。きっと藁にもすがる思いでここに来たのでしょう。ですがハッキリ言わせてただ来ます。これ以上、白雲一家などの異能解放軍に関する事件を深追いするのはやめておいた方がいい」

 

「ああん、なんやと?」

 

鉄哲の声には怒りよりも警戒が混じっていた。亀山は無表情な顔を崩さぬまま、声の温度だけを落としていった。

 

「詳しくは話しませんが。あの件の真相ははとてつもない闇に覆われています。そして狼山君」

 

「は、はい」

 

「君のお父さんはその闇に関わった故に命を落としました」

 

狼山の喉がひゅっと鳴る。鉄哲も思わず一歩だけ前へ出た。

 

「……なんやて?」

 

「もし関われば君たちも父親のように

死ぬことになるでしょう。ですから二人とも。異能解放軍に忠誠を誓う気がないならこの施設から立ち去りなさい。私がうまく上に話を通しておきますから」

 

騙そうとしている。鉄哲はそう感じなかった。亀田の言葉には子供を窘める大人特有の

声色さがあったからだ。自分が幼かった時孤児として施設に保護された時に関わって来た

大人たちとに似ていると思った。そんな風に考えていると狼山が過呼気味になりながら

亀田に近づき肩を掴み縋りつく。

 

「父さんのこと!何か知ってるんですか!?闇に関わったって一体どういうことですか!?貴方は何を知っているんですか!?お願いです教えてください!!」

 

「…………」

 

「ッ!頼むよ教えてくれよ!!何か言ってくれよ!!俺はそれを知るためにここまで生きてきて………!!」

 

半狂乱になりながら亀山の肩を揺らす狼山。しかし亀田は一切答えない。その時鉄哲が狼山の肩を掴む。

 

「あ、兄貴………!」

 

「落ち着けキバちゃん。やけになっても多分このおっさんは何も喋らへん」

 

「あ………」

 

少し強引に彼を亀山から引き剥がす鉄哲。そして次は鉄哲が亀山をの方を見つめた。

 

「亀田はん。あんたが俺と敵対するつもりはないってことはよく分かった。俺らの

身を案じてくれてるのも多分本当なんやろう。けどな………!!」

 

「ん?」

 

突然鉄哲の語尾が怒りに染まったものになったことに亀田は思わず疑問の声を漏らす。

すると鉄哲は少しだけ威圧的な雰囲気を醸し出した。

 

「俺の学校が誰かに爆破されたんや。それで多くの奴らが傷ついた!だから

単刀直入に聞かせてもらう。お前ら異能解放軍の仕業ちゃうんか?」

 

「…………やはりそれが理由でしたか。君は私たちがやったと言いたいんですか?」

 

「ああそうや!で!?どうなんや!?それを知るまでは俺はここを出る気はないで!」

 

「…………」

 

鉄哲の言葉を聞いて亀田は黙り込んでしまう。何かを長考しているのか顎を指で触り始めた。

すると後ろ振り向き先ほどの様に窓の外を眺めはじめる。

 

「君たちはあるのですか?これから歩めるであろう幸福な人生を捨てる覚悟が」

 

「あん?」

 

「この闇に触れるということはそういう意味なのです。もしこの事実を知りたいのであれば………明日の今日と同じ時間。北エリアに地下の訓練所に来てください。そこで真実を教えましょう。覚悟があるのなら来なさい」

 

そう言うと亀田は室長室から出て行ってしまった。2人がぽつんと部屋に取り残される。

 

「あ、兄貴……俺明日………!」

 

「ああ。アイツに会いに行ってみよう。絶対に色々はかせたるわ」

 

鉄哲の瞳には恐れはなかった。代わりに、獲物を追う獣のような鋭さが宿っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薄暗いとある地下施設。そこに人間を長期間閉じ込めるための牢屋がたくさん備え付けられていた。

そこに無理矢理連れてこられた二人がいた。上鳴と耳郎である。

 

「おい!なんだよここ!!放せよ!!」

 

「ちょっとなんでウチらこんな場所に連れて来れて……!って痛い!放して!!」

 

抵抗しようとした彼女の腕を無理矢理掴む黒服の男たち。それ見た上鳴の怒りは

頂点に登り戦闘態勢に入ろうとする。しかしその前に後ろから警棒で後頭部を

殴りつけれてしまう。

 

「が……!」

 

「か、上鳴!!」

 

後頭部から血を流し前のめりに倒れてしまう上鳴。それを見た耳郎はすぐさま

彼の元に駆け寄ろうとするが黒服たちによって取り押さえられ引きがされてしまう。

 

「早く連れていけ!処分内容は後で伝える!」

 

「「ハッ!!」」

 

「いや!!放して!!上鳴!!上鳴ーーー!!」

 

「じ、耳郎…………!」

 

連行されながら、耳郎は泣きながら喉が裂けるほど上鳴の名を叫んだ。上鳴も意識が朦朧とし倒れながらも

彼女に必死に手を伸ばす。しかしそんな二人の想いも虚しく二人は引き離されてしまう。

 

 

 

 

 

 

その後上鳴が目覚めたのは独房の中のベットの上だった。彼は鉄製の扉の鉄格子の窓の前に立ち

その外の様子を必死に見ようとしたり叫んだりした。しかし数時間経つと無駄なことだと理解してしまう。

彼は疲れ切った様子でベットに腰掛けて頭を抱えた。

 

「俺………もしかして一生このままなのか?」

 

そんな負の感情が頭を支配した。そんなか彼の頭に耳郎のことが思い浮かぶ。

 

(耳郎も俺と同じ目に合ってるのか?俺に協力したせいで………!?)

 

上鳴の頭がそんな不安に押しつぶされていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の夜中。鉄哲は狼山と約束した集合場所へと歩いていった。そこは昨日亀山が指定した

北エリアに存在する地下訓練所の入口。その入り口前に狼山が待っていた。彼は彼を

見つけるなりすぐに話しかける。すると狼山は少し不安そうな表情を見せた。

 

「兄貴………なんか嫌な予感がします」

 

「ん?どういうことや?」

 

「はい何というか話し合いじゃすまない気がするんですよ。生半可な覚悟と

準備じゃなんか返り討ちに合うみたいな」

 

「なるほどな………」

 

「兄貴。俺はもう準備はできてるつもりです。けど兄貴がもしまだ準備が出来てないなら

俺はここで待ってます。兄貴、行く準備は大丈夫ですか?」

 

 

 

問題ない         ⇐

まだやめておこう

 

 

 

「問題ない。いくで!キバちゃん!」

 

「はい!」

 

二人は地下の入口に侵入していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地下訓練施設。入口の前にあった下への階段を降りていくとある施設。2人が下へと降りていくとそこには

無機質でコンクリートの長い廊下が存在した。薄暗いライトで照らされる冷たい空間は二人は

ゆっくりと歩いていく。すると前方からコツコツと音がしてきた。あきらかに自分たちとは違う

足音がいくつかある。すると二人の前に数人の男たちが!

 

「ああん?なんやお前ら」

 

鉄哲の問いに奴らは一切答えない。それどころか奴は拳や武器を構え始める。まるでこれ以上進むなら

容赦はしないと警告しているかのように二人を睨みつけていた。

 

「亀田所長の差し金でしょうか?」

 

「さあな。どちらにせよこれはあのおっさんに問い詰める必要があるな。いくでキバちゃん!!」

 

「はい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解放戦士候補生たち

 

2人が拳を構えて前に進んだ瞬間。奴らも素早い動きで二人に襲い掛かって来た。

鉄哲はまず防御の姿勢で奴らの攻撃を受けて様子を見る。すると今まで戦った解放戦士候補生たち

とは違うことに気が付く。洗練された動きと冷静な目線。

 

(なるほど。まるで精鋭って感じやな。感情を内に秘めて冷静に攻撃しようとしとる。けどな……)

 

「まだ甘いわ!!おら!!」

 

「ぐべ!?」

 

容赦ないカウンターストレートが一人の体に突き刺さる。そしてその反動で奴は吹き飛ばされ壁に激突し

その場に倒れてた。そして鉄哲は倒れた奴に素早く近づき片足を掴む。

 

 

 

△極

 

鉄哲が更に両足を掴み奴の背中を壁に向かってフルスイング!!

 

「おら!!」

 

「ぐあ!?」

 

壁に激突した瞬間背骨が折れる鈍い音と共に口から血が飛び出す。そして

ぐったりとその場に倒れるのだった。

 

 

デビルスイング

 

 

 

 

 

普通ならこんな攻撃を見た者は恐怖で震え上がるだろう。しかし奴は無表情のまま

攻撃態勢を維持し鉄哲を睨みつけていた。

 

「えい!!クソ!!」

 

一方狼山は何とか素早い動きで奴らを迎撃していた。しかし中々決定打となる攻撃を

くり出せずにいた。それを見た鉄哲はよしと呟きながら突っ込んで行く。

 

「おら!!」

 

「グ!?」

 

鉄哲の剛腕によるラリアットを食らい一人倒れる。

 

 

 

 

△極

 

そして鉄哲はそいつを垂直に持ち上げた!

 

「うお!?」

 

「来い!!」

 

「うおーー!!」

 

鉄哲の掛け声とともに狼山は二人に突っ込みながら高くジャンプする。そして

鉄哲に拘束された奴の顔面に飛び膝蹴りを食らわせるのだった!

 

 

連携落下登り膝の極み

 

 

「まだまだいくで!キバちゃん!!」

 

「はい!!」

 

「うおーーーーーーーー!!!!」

 

二人の気合がどんどん上がっていく。鉄哲が一人の足を持ち上げ振り回すと

まるで台風のように回転し近づいて来た奴らを容赦なくぶっ飛ばす。そしてそれに怯んでいる他の奴らを狼山がその爪で切り裂いていく。そして二人は更に奥へと進んで行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の前にとある古びた扉が現れた。2人は同時に蹴りを叩き込み扉を破壊する。

するとそこは別の地下訓練フロア。体育館のように広く薄暗い場所だった。

その中央に一人の男が立って待っていた。そう亀山である。

 

「ほう。あの精鋭を突破してきましたか」

 

「おう、おっさんこれは一体どういうことや?俺らと話し合いをする気はない

っていう意思表示かいな?」

 

「まさか。ただ君たちの覚悟を確認させてもらったまでですよ?ただ君たちにはちょっと

物足りなかったでしょうか?」

 

フッと少し笑いながら亀田は二人に背を向ける。そして再び口を開いた。

 

「鉄哲君。君は本当に強い子だ。君にとって理不尽や大きな試練は破壊対象でしかない。

おそらく昨日話した闇にも命ある限り抗い続けるでしょう。例えどんなことがあってもね

しかし……………」

 

その時!亀山が自身の着ていたジャケットとシャツを一気に脱ぎ捨てた。スーツの下に隠れていた年季の入った

筋骨隆々な姿と背中が露わになる!!

 

「あれは蛇と亀?いや、玄武か!」

 

亀山の背中に彫られていたのは四神の北の方角に位置する神獣である玄武だった。大きな背中に彫られてた

不動の雰囲気を醸し出す玄武はとてつもない覇気を漂わせていた。

 

「私は極道時代に先代に拾われてここで色んな子たちを育ててきました。私も教育者の端くれ、君たちのような未来ある若者たちが人生を棒に振るうのを見過ごすわけにはいかないのです」

 

そう言いながら亀田は彼らの方向き個性を発動させる。すると亀田の体は緑色に変色し

更に筋肉が増える。そして背中と両手に亀の甲羅のようなものが出現した。

 

 

 

亀田 一郎太

個性 マッスルタートル

 

 

 

「ですのでこれ以上知りたいのであればこの私を倒しなさい。極道の現役を退いて

何十年も経ちますが君たちのような若者をひねるくらい朝飯前です。だから遠慮なく

2人で殺す気で掛かってきなさい」

 

そう言って拳と両手の甲羅を構える亀山。圧倒的な威圧と眼光が二人に襲い掛かる。

狼山はそのプレッシャーに冷や汗をかくが、鉄哲は武者震いで体を震わせていた。

背中の刺青を見せつけれてまるで自身の誇りをかけて戦うという宣言。鉄哲の闘争心が

極限まで高鳴る。そして彼も自身の上の服を脱ぎ捨てた。

 

「あ、兄貴!?」

 

「悪いなあキバちゃん。ここは俺一人でやらせてもらうで」

 

「え!?そんな俺も………!」

 

「悪いが邪魔したら一生恨むで?」

 

「ッ!?」

 

 

「フフフ………私相手にタイマンを張ろうとするとは舐められてものですね?」

 

「あんたこそ俺に情けをかけようなんて余裕ぶっこいてるやないか?」

 

 

 

 

 

両雄、軽口をたたきながら互いの場所へと普段通りに歩いていく。そして二人が

超至近距離に近づいた。一回り鉄哲より体が大きい亀山は彼を見下ろし鉄哲は

睨み返す。次の瞬間お互いの拳が互いの顎を上から突き上げた!

 

 

パワーエデン最高責任者

亀田一朗太

 

 

「グハ!?」

 

「う……!ほう」

 

亀田の拳の威力の方が高かった。鉄哲は少し吹き飛ばされ亀田から離れてしまう。

しかし彼は少し揺れる意識をすぐさま取り戻し拳を構えるのだった。

 

(な、なんちゅう威力や。俺が押し負けるなんて。やってくれるやないか!!)

 

鉄哲は自身の個性を発動させ鋼鉄化させる。そして思いっきり地面を蹴りぬき亀田に

向かって大きく拳を振りかぶる。亀田はその拳に自身の手に付いた亀の甲羅を合わせた。

 

(それで防御する気か!!そんな甲羅俺が粉砕したる!!)

 

「うおー!!」

 

鉄哲の拳と亀田の甲羅が激しく激突!!まるで巨大な鐘を思いっきり叩いたかのような

音が地下に響き渡る!その時鉄哲の腕の骨がきしむ音が響き渡った。

 

「グ!?」

 

鉄哲はすぐさま後ろに飛び防御を固める。そして痛みで震える自身の拳をなんとか

落ち着かせた。

 

(な、なんて硬さや)

 

「私の甲羅はかつて様々な裏社会の猛者たちの攻撃を受けきった最強の盾です。君のような

若造がこの盾を割ろうとするなどおこがましいにもほどがあります」

 

「ち!」

 

「では次は私から行かせてもらいます」

 

亀田が鉄哲に向かって突っ込む。そして巨体にも似合わない素早いステップで動き始める。

そして巨大な拳をテクニカルに鉄哲の顔面にそれぞれ別角度から叩き込む!

 

「シュ!シュ!!」

 

「ぐお!?ぐあ!?」

 

「おら!!」

 

更に強力なアッパーを食らわし鉄哲を吹き飛ばし地面に倒す。

 

「ぐお!?」

 

(なんやこの巨体にも関わらずボクサー並みの素早い攻撃!?う!?)

 

倒れた鉄哲の顔面を踏みつけようとと亀田がすぐそばに近づいてきた!

 

「お”ら”!!」

 

「く!?」

 

鉄哲はすぐさま体を回転させそれを避ける。そして素早く立ち上がり距離を取った。

それを見た亀田はチッと不機嫌そうに舌打ちする。その顔にはもう先ほどの冷静な大人らしい

表情は消え去っていた。

 

「ち!なるほどな。あんた根っからの戦闘狂みたいやないか」

 

「…………余計なおしゃべりはやめなさい。フ!」

 

再び亀田がステップを踏み込み鉄哲に突っ込む。そして先ほどと同じように拳を振るい始めた。

しかし鉄哲は先ほどとは違いその連打に対応するスウェイ移動でギリギリのタイミングで避けていき

奴の懐へと入っていく。そして奴の顔を両手でガシッと掴んだ。

 

「む!?」

 

 

 

△極

 

「おっら!!」

 

鉄哲は思いっきり頭を後ろに振るとその余白を利用し勢いを付けながら思いっきり

鋼鉄とかした自身の頭蓋を亀田の顔に突き刺した。

 

「ぐ!?」

 

たまらず凍を歪める亀田。しかし鉄哲の攻撃は終わらない。

 

「おら!おら!おら!!」

 

奴の顔面に何回も頭突きを叩き込む。そして最後に片手で胸ぐらを掴み

全体重をかけた頭突きをくらわした!!

 

「おら!!」

 

「グハ!?」

 

 

鋼鉄連打の極み

 

 

「う!?」

 

予想外の連撃に亀田は思わず後ろに下がる。それをチャンスと見た鉄哲は更に突っ込んで行き拳を突き刺そうと振りかぶる。しかしそれよりも早く亀田が彼の頬を殴りぬいた。

 

「グ!?」

 

「これで私は追いつめたつもりか!?随分舐められたものですね!!」

 

更に亀田が追撃のアッパーを繰り出そう腰を低くした一瞬の刹那!鉄哲のカウンター

フックが炸裂!横一線に走る拳は奴の頬をうち抜いた。

 

「う!?」

 

「ナメとんのはそっちやろおっさん!オラ!!」

 

更に飛び膝蹴り顎に叩きつける鉄哲。それは普通なら意識を持っていくレベルの衝撃。

しかし亀田も百戦錬磨の猛者である。その攻撃を受けてなお踏ん張り拳を自身の横に構える。そして鉄哲の腹に渾身のボディブローを食らわせる。

 

「う!?」

 

(俺の鉄の腹筋が意味を成さないほどの衝撃!やってくれるやないか!!)

 

「おら!!」

 

「ッ!!」

 

鉄哲もその攻撃にボディブローで返す。奴の顔が一瞬痛みで引きつるも再び拳を

鉄哲に返す。それを受けて鉄哲も更に拳で返す。2人のノーガードでの殴り合いが始まった!!

 

「おら!!おら!!」

 

「フン!!」

 

お互いの血が噴き出るが徐々に鉄哲が押されていく。亀田は徐々に鉄哲の攻撃を見極め始め腕の甲羅で防御し始める。そして最終的に鉄哲の打ち終わりを狙い亀田が渾身の右ストレートを彼の顔面に叩き込んだ!

 

「グア!?」

 

鼻血を吹きだしながら殴り飛ばされる鉄哲。そしてものすごい勢いで回転し地面に叩きつけれる。亀田は自身の勝利を確信した。しかし………

 

 

△極

 

カッ!!

 

鉄哲の目が大きく見開かれる。

次の瞬間、ものすごい爆発力で倒れた身体を前のめりに起こし、不安定な体勢のまま前へと突っ込んだ。

 

「!?」

 

勝利を確信していた亀田は、その動きに一瞬困惑し、反応が遅れる。

その隙を逃さず、鉄哲は亀田の両肩を両手で掴み、そのまま前方へと高く跳んだ。

バランスを崩した亀田の身体が、後ろへと傾く。

 

「おら!!」

 

「ぐあ!?」

 

倒れ込みながら、鉄哲は渾身の頭突きを叩き込む。

その衝撃で亀田の後頭部が床に打ちつけられ、軽い脳震盪を引き起こした。

 

 

そして鉄哲はマウントポジションを取り拳を振り上げる。

 

 

 ⇐連打しろ

 

「おら!!おら!!おら!!おら!!」

 

マウントポジションから容赦なく鉄拳を何発も顔面に叩き込む鉄哲。そして最後に渾身の

拳を叩き込むのだった。

 

「おーりゃーーーー!!!!!」

 

「グハ…………!!」

 

 

リベンジの極み

 

 

 

「ああ…………」

 

亀田の体から力が抜けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハアハア………おっしゃーーーー!!!」

 

「あ、兄貴ー!!」

 

痣だけの顔と体になってしまった鉄哲。しかし片方の拳を空に付き合が勝利の方向を

叫ぶのだった。狼山も泣きながら喜び。鉄哲の咆哮に参加する。

 

「フフフ………私も年ですか………でも若いころを思い出してしまう熱いバトルでしたね」

 

大の字に倒れながら亀田はそう呟いた。彼はフッと笑いながら立ち上がり鉄哲の方を

見る。そして鉄哲もその視線に向き合う。

 

「負けました鉄哲君。君になら託してもいいかもしれませんね」

 

「亀田ハン」

 

「では約束通り。この組織……いや日本の闇。私の知る限りのことをお話しましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、少し落ち着くまで休憩した二人。服を着直す。そして亀田は鉄哲と狼山に話を始めた。

 

「じゃあ最初に確認しておきたいのですが、鉄哲君はあの爆破事件の真相。

そして狼山君は君の父親の死の真相を知りたい。そうですね?」

 

「おう」

 

「はい」

 

「わかりました。ではそれらを話す前にあなた達に知って欲しいことがあります。

それはこの国と異能解放軍の対立の歴史です。まず二人は超常黎明期の頃に活躍した

政治家。大道寺 傑という人物をご存知でしょうか?」

 

「ん?だ、誰すかそれ」

 

「ああ……社会の授業でなんか聞いたことがあるな。個性法の設立に結構貢献した

政治家の一人………まあ受験勉強の時にしか見てないからよう覚えておらんわ」

 

 

「大道寺 傑。当時、政財界でフィクサーと呼ばれた一族の末端。

かつて日本を、表ではなく裏から動かしていた氷山の一角。

超常黎明期。個性の出現により、日本だけでなく世界中が混乱に陥っていた時代。

その混乱の中で大道寺は、ヒーロー制度と法律による統制を打ち立てました。

ですが、制度だけでは治安は守れない。彼はそれを理解していた。だから、法の裏側で動く“駒”を必要としたのです。

そこで目を付けたのが、海外の個性難民でした」

 

「個性難民?」

 

「個性を理由に迫害され、国を追われ、行き場を失った人々です。

大道寺は、フィクサーが元々持っていた中国由来の非公式航路を使い、彼らを密かに日本へ流入させました。偽装戸籍を与え、日本での生活を保障する。その代わり彼らは完全に従う“ヒーローの影”になる。拒否権はありません。彼らには、守るべき家族がいたのですから」

 

ヒーローの影。その言葉に鉄哲は緊張する。

 

 

 

「彼らの仕事は主に犯罪行為。ヒーローが容易に手を出せないヴィランの抹殺でした。

実黎明期のかで治安が回復していく裏側には、常に彼らの血が流れていたのです。

ある者たちにとっては天職。しかし、ある者たちにとっては、

良心を削り続ける、耐え難い仕事でもありました。辞めたくても、行く場所はない。頼れる人間もいない。

そんな彼らに手を差し伸べたのが、異能解放主義を掲げた、リ・デストロの先代。デストロ様でした。彼は彼らに“生きるための仕事”と“居場所”を与えた。それが、デトネラット社。そしてここ、パワーエデンです」

 

「それがここのはじまりやったんか」

 

「ええ。デトネラット社で働いている社員、そして異能解放軍の実に半数。彼らは“個性難民”の子孫です。

デストロ様は、大道寺のスキャンダルを盾に政府と真正面から戦い、彼らを守り抜いた。

 

私は……神室町で極道をしていた頃、あの方に拾われました。そしてここで教官をすることになったんです」

 

感慨深そうにあの頃を思い出す亀田。あの頃彼は東城会と敵対してた組織にいた。しかしその組織は東城会のヒットマンにやり完全壊滅。亀田は生き残ったものの行き場を失った。そんな時手を差し伸べてくれたのがそのデストロだったのだ。

 

「彼のおかげで多くの難民たちが救われました。しかしデストロはある日突然死されてしまったのです。

そして異能解放軍で世代交代が行われリ・デストロがリーダーとなりました。

あの方は先代が成し遂げられなかった異能開放の実現に固執していました。そこで彼は再び個性難民を受け入れ始めたのです。強制的に解放戦士の一員にしメンバーを増やすために。しかもある者の子供にはヒーローになることを義務付けヒーロー側に内通者をどんどん増やしていったのです」

 

「お、おい。じゃあまさか今日本中に」

 

「はい。あの人の息がかかったヒーローたちが暗躍しています。国家転覆を狙うためにね」

 

国家転覆。創作物の中でしか聞いたことないような規模の大きな犯罪行為。それがいま日本で行われようと準備されている。その事実に二人はまるで背筋が燃えるかのような焦りの感情が生まれた。唖然とする二人を見てフッと笑う亀田。

 

「信じられませんか?まあ無理もありません。けどこれは紛れもなく現実です。

当然国もそれを感じており対抗策をうっています。公安に異能解放軍の対処するための

秘密組織を設立しました。その組織は政府の裏組織などと連携し異能解放軍に組するヒーローたちを

捕縛および抹消進めていきました」

 

「抹消?ハア要するに政府側もやることやっとるって感じか………」

 

「フ、大人の世界は汚いことばかりですよ鉄哲君。政府側としても個性難民の存在は

トップシークレット。いわば政府の大スキャンダルです。表に出れば多くの政治家が影響をうけて日本の政治にも支障が出るでしょう。故に公にせずに公安は大勢の者たちを捕縛しまた抹消しました。世間は思ってもみないでしょう。社会の影で政府と異能解放軍による血みどろの殺し合いが行われてることを

 

そして狼山君。君のお父さんはその秘密組織に所属していたとんだと思います」

 

「父さんが………公安の人間?そうか……だから父さんは仕事のことを俺に話さなかったのか」

 

「ええ。ここらは私の想像にはなってしまいますが、恐らく君のお父さんは白雲家が違法にこの国に住んでいる個性難民。そして異能解放軍の関係者だと睨んでいたのでしょう」

 

父の死の真相。その一端が見えた。そう狼山は感じた。しかしまだわからないことがある。

鉄哲もそう感じ取っていた。

 

「でもなんで父さんはその容疑者である白雲と一緒にビルの倒壊で死んだんですか?」

 

「その詳細に関しては私は知らされていません。けどその詳細を恐らく知っている人物は

知っています」

 

「まさか!それって」

 

「ええ。白雲 霞。彼女は彼が死ぬ前にここパワーエデンで会話していた。彼女なら少なからずあの事件の詳細を知っているでしょう。だから狼山君」

 

亀田はスーツのポケットから封筒を取り出し彼に差し出した。

 

「泥花街のミストガーデンと呼ばれるリハビリ施設。その責任者が彼女です。これを渡せば

私の紹介だと分かります。彼女に話を聞いて見てください。そして鉄哲君」

 

狼山に封筒を渡した亀田は次に鉄哲に向き合い始める。

 

「雄英高校爆破事件。申し訳ないがその詳細に関しては何も知りません。ですが少し質問させてもらいます。

その事件自体を起こした者は捕まってないのですか?」

 

「実行犯たちはもう捕まっとる。けどどいつもこいつ戸籍が偽造されて奴らばっかやった。更に個性による記憶障害を受けたというおまけつきや。だが一人だけ明らかに違う奴がいた。宮野友里。偽名だとおもう。けどそいつは爆破の時に頭打って記憶を失とった。しかもその事件の被害者で恐らく奴らのターゲットである轟とも面識があったみたいやが………ここの関係者やと睨んできてみたが……今は確かめようがないのう」

 

「なるほど。恐らく君はわかっていると思いますが………その実行犯たちを入学できるように

仕向けた関係者がいる。それも雄英の上層部に。そうですね?」

 

「おう」

 

「これは私のカンですが………もしかしたらその者は白雲の関係者だったんじゃないでしょうか?」

 

「なに?」

 

「彼は少なくとも雄英高校の生徒たちと複数関係を持っていた。そしてそのOBはOGは

雄英高校に教師として働いている………君も薄々感じてたんじゃないですか?」

 

「ああ。もしかしたら内通者は…………」

 

「はい。そしてその件も可能性は低いですがもしかしたら彼女が何か知っているかもしれません。だから二人にこのバイクのカギを渡しておきます。施設の南エリアにある門を明日の夜に開いておくようにしておきます。いっきにそこを突っきってバイクで道路を走ってください。しばらくすれば国道にでて街に戻るルートが確認できるはずです。私がうまく警備員を誤魔化しておきます」

 

 

「あんたこんなことしてええんか?これは立派な裏切行為やろ?」

 

 

「鉄哲君。私は戦士である前に、教育者でありたい人間です。

子供たちの未来を守る“先生”になることそれが、極道になる前の私の夢でした。

しかし私は、個性差別によって居場所を奪われ、裏社会に身を落とすしかなかった。

そんな私に、曲がりなりにも教育者としての立場を与えてくれたのがデストロ様でした。

ここパワーエデンは本来、子供たちが自分の個性を“安全に、そして正しく使うため”に学ぶ場所だったのです。

ですがリ・デストロは違った。彼の頭にあったのは、戦争のことだけだった。

その影響でここは、個性差別者を生み出す場所へと変わってしまった。

無垢な子供たちを思想で縛り、戦場へと導こうとしている。……私は、それがどうしても許せないのです。だから私は、君のような若者に託すことにしました」

 

亀田はそう言いながら、鉄哲の肩を強く掴んだ。

 

「だからどうか、自分の信じる道を進んでください。

子供にこんな重荷を背負わせるなど、大人として言語道断だとは思います。

それでもどうか、戦いを止めてください」

 

「………あんたの気合、十分すぎるほど伝わったわ」

 

鉄哲は一度だけ息を吐き、真っ直ぐに頷いた。

 

「おう。まかしとけや」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、二人は一旦鉄哲の自室に戻った。そして今後のことを話し始める。

 

「キバちゃん。明日ここを出て街に向かう。亀田はんが協力してくれるとはいえ

これは立派な反逆行為や。ここを出たらすぐにバレる。街で奴らに命を狙われる

可能性も十分あり得るで。覚悟はええか?」

 

「はい兄貴!覚悟はとっくにできてます」

 

「おう」

 

(とはいえまだ時間はたくさんある。ここでやり残したことがあればやっといたほうがええかもな。それらが終わったら夜がくるまでここで休もう)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回、サブクエスト編

倒せ!!スパルタのウォーリアーズと色欲のエレガンツ!!

 

 

 

 

 

 

 




盛り上がってきましたが次回は残念ながらサブクエスト消費回。まあ某実況者とかよくやる流れ(笑)。なるべく早めの投稿を目指すのでお楽しみに
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