「マルス!マルス!マルス!マルス!」
男が、讃えられている。
女が、子供が、老人が、兵士達が、神ですら。
全てのものが、彼を讃えている。
「う、うわぁー!」
「この兵隊、まさか!」
「ラキアだ!ラキアが攻めてきたぞぉー!」
「右翼隊、そのまま前進。左翼隊は止まれ。中央大隊は右翼隊に掛かった敵を仕留めろ」
男が軍隊を操っている。側には誰もいないが、その声は魔法で全てに届く。
「ハーハッハー!さすが俺の息子!お前は最高の軍師だ!」
「アレス。気を抜きすぎだ」
男はラキアの神を嗜める。
「お前によってレベルが上がった状態の兵士が、お前の指示で戦っているんだぞ?負けるはずがない!」
「戦いに絶対は無い。
「いいや絶対だ。何せ、
「降伏だ!我が国はラキアに降伏する!」
「ほら、勝ったな」
神の予想通り、男の軍は
「このような小国に一万も兵を使ったんだ。当たり前だろう」
「それでもだ。お前が来てから数年で、ラキアはどの国にも負けない大国になった」
「周辺諸国に攻め入り、勝利。属国にし、領土を拡大。いまやこの大陸の殆どが『ラキア帝国』だ」
神の言葉通り、男が齎した『勝利』はラキアを繁栄させた。
「エルフの王森、砂漠世界、
「発展のために国政として産業を『管理』。属国にもその恩恵は大きく反映されている」
「さらには地上のモンスターの絶滅。お前の影響でこの下界は、人類は大きく発展している」
「成り行きだ。
男はラキアだけを考えて動いている。彼はあくまで
「ハッ!今ラキアの属国で無い者など、オラリオくらいだろう」
事実、ラキアは
「なあマルス。
「『勝利』を齎し、繁栄を極めた先に、お前は何を望む?」
「全てを手に入れて何がしたい?」
「俺は、どうしたいんだろうな」
男が山を歩いている。登山が目的ではない。
「自分探しの旅、か」
『お前は
言われた通りに、旅をしている。
彼は今まで王として求められた行動をしてきた。言われた通りに国を広げ、言われた通りに国を守り、言われた通りに国を栄えさせた。
彼は、言われた通りに人生を送ってきた。
「欲しいものもないしな……」
彼は求めない。
強さ、財宝、土地、部下。下界そのものとまで言える
彼が欲しいと思えば、直ぐに全て得られる。
「……あ?こんなところに村があったのか」
あてもない旅をしている男は、山の中で村を見つけた。
「あれ?お客さんですか?」
そこで、
「君は……」
「僕はベル。ベル・クラネルです」
美しい、白い少女。
その紅い眼はまるで宝石のようで……
「俺は
「え、ええーー!!?」
見つけたぞ、アレス。
これが、欲しい。
田舎娘にプロポーズする下界の王。