湯気立ち込めるキッチン。男女がコンロの前に並んで談笑をする。女の方には黒く輝く可愛らしいウマ耳が。エイシンフラッシュとそのトレーナーだった。
「お、いい感じになってきたんじゃない?」
男が語り掛ける。2人が向かっている鍋にはぐつぐつとそばが踊っている。昼間に2人で打ったそばが。
湯気に隠れて彼女の美貌が見えない。そんな不満を表現するように、男はそっと抱き着く。後ろから、そっとガラスを扱うように。
「トレーナーさん、危ないですよ」
「え~」
めっ、と人差し指で制止され仕方がなく離れる。そんなこんなでそばが茹で上がりお椀に盛り付けていく。陶器の大きな器に蕎麦が整えられ、そこに汁が注がれる。
「にしん手に入ればよかったんだけどね〜」
「また言って…」
そう言いながら蕎麦に野菜を乗せて彩りを加えていく。白菜にえのき、そして花の形に切ったにんじんを乗せて可愛らしさを追加する。
「うんうん、いい感じ」
「先に運んでいてください。洗い物済ませちゃうので」
「んや、一緒にやるよ」
蕎麦の湯気が消えぬうちに。冬のかじかむ水作業も2人でやれば心の温かさでなんのその。甘く暖かい空間が家中を支配する。
やがて洗い物を終えいそいそとコタツに蕎麦を運んでいく。向かい合う訳でなく隣合ってコタツに入り肩を寄せ合う。
「さてさて…いただきまーす」
「いただきます」
新年1発目、丁寧にいただきますを言う。何か機会があれば帯を締め直すのが人という生き物、こういう時に丁寧に礼節持って手を合わせて言うのだ。
待ってましたの1口目、豪快にすするトレーナーとお上品に音を立てないエイシンフラッシュ。対比的な2人だが笑顔は同じだった。
「ん〜美味しい〜。すごいねフラッシュ、初めてなのに全然ちぎれてないや」
「そば粉の割合を減らして正解でした」
途中で千切れることなく完璧の域に達する蕎麦。初めてでこのクオリティというのだから彼女の料理の腕は凄まじい。
「俺が初めてそば打った時は………10割でやって無事ボッソボソになったもんなぁ。これ割合なんだっけ?」
「そば粉7割、小麦粉3割です。二八そばより少々風味は落ちますが…やはり食感は大切にしたいですし、7割でも十分風味は出るので」
「やっぱフラッシュは賢いや」
キチッとした几帳面さを持って何事も行う。それがエイシンフラッシュたる所以でありエイシンフラッシュの魅力であり、彼が惚れた一面。可愛らしいしカッコイイ、何より誇らしい。彼女の魅力をまた直に感じて幸福感を得る。
花形に切ったにんじんを口に入れながらトレーナーはフラッシュにまた、見蕩れていた。
「ところで…トレーナーさんはご実家に帰らなくて良かったんですか?」
「ん〜いっかなぁ。適度に顔見せてはいるし」
熱烈な視線から逃げるようにフラッシュが話題をそらす。が、そんなはぶらかしには動じない。フラッシュの肩に頭を預けて甘えつつ答える。
「ですが…お正月は本来家族と過ごすものですよね?嬉しいですが…私とでいいんですか?」
「ん?だから、こうして
「っ!…貴方はまたそうやって!」
顔を赤くして目線を逸らすフラッシュ。彼女の可愛らしさにまた笑顔がポロリと零れる。そうこうしている内に時計はてっぺんを指した。
「あ、時計回ったね。…あけましておめでとう、フラッシュ。今年もよろしくね」
「もう………今のセリフ、何十年も聞かせて貰いますからね」
「望むとこだよ」
優しいリップ音が、除夜の鐘代わりに響く。
あけましておめでとうございます、本年もよろしくお願いします
今年は投稿ペース上げれたら…いいな?
フラッシュとイチャイチャしながら年を越したい