冬の寒さが深まる夜。星空が降るように広がる山奥の展望台は、観光地として知られる一方で、地元では不気味な噂が絶えない場所だった。展望台の麓に住む人々は、夜にその場所へ近づくことを避けた。誰もが理由を語らないが、暗黙の了解のように「夜の展望台は危険だ」と伝えられていた。
**1. 不気味な誘い**
大学生の亮(りょう)は、サークルの仲間と共にその展望台を訪れることになった。夜空を眺めるのが好きな彼は、地元の噂を聞いて逆に興味をそそられた。仲間の一人、美咲(みさき)は、あまり乗り気ではなかったが、「そんな迷信を信じるなんて馬鹿らしい」と亮が笑うので、渋々ついて行くことにした。
展望台に到着したのは夜の11時を少し過ぎた頃だった。広がる山々は闇に沈み、冷たい風が木々を揺らす音が不気味に響いていた。それでも、満天の星空が頭上に広がり、一同はその美しさに一瞬息を呑んだ。
しかし、展望台の隅で何かが揺れているのを見た美咲が、「あれ、誰かいる?」と小さな声で言った。薄暗い展望台の端に、まるで人影のようなものが動いているのが見えた。
「ただの風だろう。気にするなよ」と亮は笑って言い、双眼鏡を手に星を観察し始めた。
**2. 不可解な現象**
その瞬間、展望台の真下から聞こえてきた、低い男の声のような「助けて……」という声に、一同は凍りついた。
「今の……聞こえた?」美咲が震える声で言う。
「風の音だろう」と亮が答えたが、彼の顔にも緊張が走っていた。他の仲間たちも動揺し、誰かが提案した。「帰ろうよ、こんな場所、気味が悪い。」
だが、その場を離れようとした瞬間、展望台の鉄製の階段がガタガタと揺れた。誰も触れていないのにだ。風では説明できない力が働いているかのようだった。
その後も、不気味な音や影が周囲に現れ、一同はパニックに陥った。逃げ出そうと展望台を降り始めた時、美咲が突然足を止めた。
「待って……あそこ、誰かいる!」
彼女が指差した先には、展望台の入り口に佇む女性の姿があった。赤い服を着たその女性は、じっとこちらを見つめていた。
**3. 忘れ去られた過去**
「誰だ、あれ……」亮が呟くと、その女性は無言で一歩一歩近づいてきた。彼女の目には感情がなく、その動きはどこか機械的だった。
恐怖に駆られた一同は全力で展望台を離れたが、帰り道に進むにつれて、どこからか「助けて……」という声が再び聞こえてきた。まるで声が彼らを追いかけてくるようだった。
村に戻った彼らは地元の老人にその出来事を話した。すると老人は、驚いた顔でこう語った。
「展望台には昔、若い女性がいた。彼女は恋人に裏切られ、自ら命を絶ったらしい。それ以来、夜になると展望台でその霊が現れるという噂だ。その女性は赤い服を着ていたと言われている。」
話を聞いた美咲は青ざめ、「私たち、本当にその人を見たんだ……」と震えた声で呟いた。
**4. 消えない記憶**
その後、亮たちは二度とその展望台を訪れることはなかった。だが、不思議なことに、亮のスマートフォンにはその夜の記録が残っていた。撮った覚えのない写真や音声が保存されていたのだ。
写真には、展望台の暗闇の中に浮かび上がる赤い服の女性の姿が映っていた。そして音声には、かすかに「助けて……」という声が収録されていた。
彼らはその写真や音声を削除しようと試みたが、なぜか消すことができなかった。それどころか、時間が経つにつれてその記録は増えていった。
「展望台の呪いだ……」そう噂する美咲の声が亮の耳に残る。
そしてある日、亮は一人でふと展望台の方向に目を向けた。その瞬間、彼の目に、遠くの展望台からこちらをじっと見つめる赤い服の女性の姿が映った。
彼は思った。
「俺は、逃げられないのかもしれない……」
亮は目をそらすことができなかった。冷たい風が頬をなぞり、不気味な囁き声が耳元で響いた。
「助けて……」
その声は、もう彼の頭の中に直接響いているようだった。
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亮(りょう)は展望台の方向を見つめながら、全身の血が凍るような感覚を覚えた。あの赤い服の女性は遠くにいるはずなのに、視線を感じるだけで体が動かなくなる。その目には、まるで亮自身を見通すような冷たい意志が宿っているように思えた。
彼女が本当に何を求めているのか、亮には分からなかった。助けを求めるのか、それとも恨みを晴らそうとしているのか。ただ一つ確かなのは、亮はその「何か」に取り憑かれているということだった。
**5. 消えない影**
翌日、亮は大学に行ったが、気分が晴れることはなかった。講義中も友人との会話中も、頭の中にあの展望台の光景が浮かんでは消えた。美咲(みさき)や他の仲間たちはあの出来事を話題にするのを避けているようだったが、彼らもまた不安を抱えているのは明らかだった。
亮は夜中にふと目を覚ました。部屋の中は静まり返り、窓の外からは月明かりが差し込んでいる。時計を見ると午前2時を過ぎていた。
その時、スマートフォンの画面が突然明るくなり、着信音が鳴った。画面には「不明な番号」と表示されている。
亮は恐る恐る通話ボタンを押した。すると、受話器の向こうから低く、震えるような声が響いた。
「助けて……」
その声は間違いなく、あの展望台で聞いたものと同じだった。亮は恐怖で通話を切ろうとしたが、手が動かない。声は続いた。
「どうして……逃げたの?」
その言葉を聞いた瞬間、電話が切れ、部屋の中は再び静寂に包まれた。だが、その直後、部屋の隅に何かの気配を感じた。暗がりの中に赤い影がぼんやりと浮かび上がっている。
亮は息を呑み、ベッドから飛び起きた。だが、影は微動だにせず、じっと彼を見つめていた。目を凝らすと、それは間違いなくあの女性だった。
「やめてくれ!」亮は叫びながら電気を点けた。その瞬間、赤い影は消え、部屋には何も残されていなかった。
**6. 真実への手がかり**
翌朝、亮は美咲を呼び出した。彼女もまた眠れていないようで、目の下にクマができていた。
「俺、昨夜見たんだ。あの女が俺の部屋に来た。お前は……?」
亮の問いに、美咲は小さく頷いた。「私も……。夜中に何度も電話が鳴って、誰かがずっとドアを叩いてた。でも怖くて開けられなかった。」
二人は展望台での出来事が何か異常なものだったことを確信し、真実を突き止めるべきだと決意した。展望台に纏わる過去について調べるため、地元の図書館を訪れることにした。
古い新聞や記録を漁る中で、彼らは衝撃的な事実を知る。昭和時代、あの展望台はカップルの間で人気の場所だった。しかし、その場所では度々謎の失踪事件が起きていたというのだ。失踪者の多くは若い女性で、赤い服を着た最後の被害者だけが発見された。
その女性の名前は「山下涼子」。彼女は恋人に裏切られ、展望台で命を絶ったと言われていた。だが、彼女の死には謎が多く、実際には殺人の可能性も指摘されていた。
「これが……あの女の正体なの?」美咲が呟く。
亮は新聞の記事を握りしめた。「でも、彼女が俺たちに何を求めてるのか分からない……」
**7. 再び展望台へ**
その夜、亮と美咲は再び展望台を訪れることを決意した。彼らは恐怖を抱えながらも、涼子の霊が何を伝えようとしているのか確かめるために進んだ。
展望台に到着すると、そこは異様なほど静かだった。冷たい風が吹き付ける中、二人は恐る恐る奥へと進んだ。その時、突然空気が重くなり、辺りに霧のようなものが立ち込め始めた。
そして、赤い服を着た女性が再び現れた。彼女は静かに亮と美咲の前に立ち、低い声で囁いた。
「私は……忘れられたくない……真実を見つけて……」
その言葉と共に、霧が一気に晴れた。亮と美咲が気づくと、展望台の地面に一枚の古びた紙が落ちていた。それは涼子の日記の一部だった。
そこには、彼女が恋人に裏切られ、展望台で殺されたことが綴られていた。さらに、犯人の名前らしきイニシャルが書かれていた。
「K……」
二人はその手がかりを持ち、涼子の霊を救う方法を探し始める決意を固めた。だが、背後から聞こえる不気味な足音が、彼らの運命がまだ終わっていないことを告げていた。
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亮(りょう)と美咲(みさき)は展望台で拾った日記の一部を手にしながら、重苦しい気持ちを抱えたまま村に戻った。日記には「K」というイニシャルが記されていたが、それが何を意味するのかは分からない。犯人の名前の一部か、それとも別の手がかりか……。
二人は翌日、村の役場を訪れ、過去の住民記録を調べることにした。赤い服の女性――山下涼子(やましたりょうこ)が生前関わっていた人々を探すためだ。
**8. 繋がる過去**
役場の資料室で、美咲がふと小さなノートを見つけた。それは涼子が失踪した当時の警察の捜査記録だった。そこには、彼女が付き合っていた男性についての情報が記されていた。
「彼の名前……木村一樹(きむらかずき)。イニシャルはKだ……」亮が声を潜めて言う。
警察の記録によると、木村一樹は当時地元の有力者の息子で、涼子との関係が噂されていた。しかし、涼子が展望台で命を絶ったとされる直後、一樹は突然村を離れ、その後消息を絶っていた。
「まさか……涼子は彼に殺されたんじゃないの?」美咲が震える声で言った。
亮は眉をひそめ、「それなら彼女の霊が俺たちに助けを求めた理由も分かる。真実を暴いてほしいんだ……」と呟いた。
だが、問題は木村一樹の現在の居場所だった。彼がどこにいるのかは全く分からない。
**9. 呪いの追跡**
その夜、亮のスマートフォンにまた不明な番号からの着信があった。電話に出ると、またあの囁き声が響いた。
「真実を……見つけて……」
亮は冷たい汗を流しながら、意を決して質問を投げかけた。「木村一樹……彼が犯人なのか?」
しばらくの沈黙の後、声が答えた。「彼は……私を……」
その瞬間、電話が切れ、画面が真っ暗になった。そしてスマートフォンには突然一枚の写真が表示された。それは展望台から撮られたもののようで、そこには薄暗い山道に佇む男の後ろ姿が映っていた。
「これが……木村一樹なのか?」亮は美咲に写真を見せた。
美咲は写真を見て息を呑んだ。「この道、村の外れにある山道じゃない……?」
二人はその写真を手がかりに、再び行動を起こすことにした。
**10. 最後の真実**
翌日、二人は村の外れにあるその山道へと向かった。写真に写っていた場所に近づくにつれ、空気がどんどん重くなり、不気味な静寂が辺りを包み込んでいった。
道を進むと、古びた山小屋が見えてきた。その小屋は長い間放置されていたようで、崩れかけている。亮は息を整えながら扉を押し開けた。
中は埃まみれだったが、床に散らばる古い新聞や写真から、この小屋がかつて誰かの住居だったことが分かった。そして、その中に1冊のノートが落ちているのを美咲が見つけた。
ノートには、震えた文字でこう書かれていた。
「彼女を愛していた。でも彼女は俺を裏切った。だから……俺は……」
その文面から、木村一樹が涼子を殺害したことが暗示されていた。そしてさらにページをめくると、彼が展望台の近くに何かを埋めたことが記されていた。
「埋めた……?何を……?」亮は混乱したが、美咲は直感的にそれが涼子の亡骸ではないかと思った。
**11. 呪いの解放**
二人は展望台へと戻り、ノートに記された場所を掘り返した。しばらくして、土の中から錆びついた金属箱が見つかった。中を開けると、そこには古い手紙と涼子の遺品が入っていた。
手紙には、涼子が木村一樹との関係に絶望し、最後に展望台で彼に命を奪われたことが綴られていた。
その瞬間、冷たい風が吹き抜け、涼子の霊が二人の前に現れた。彼女は穏やかな表情で、静かに頷いた。
「ありがとう……これで、やっと……」
涼子の姿は徐々に薄れ、夜空に溶け込むように消えていった。そして、不気味な気配も共に消え、展望台はただの静かな観光地へと戻った。
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**12. その後**
涼子の霊が消えた後、亮と美咲はその証拠を警察に届け出た。木村一樹の行方は不明のままだが、村では涼子の事件が改めて調査されることになった。
それ以来、亮と美咲のもとに不気味な声や影が現れることはなくなった。だが、展望台に行くたび、二人はあの夜の出来事を思い出し、涼子の無念を忘れないように心に刻むのだった。
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涼子の霊が消え、展望台は平穏を取り戻したかに見えた。しかし、亮(りょう)と美咲(みさき)はどこか心の奥に、不安が残っていることを否定できなかった。涼子の霊を救ったつもりだったが、木村一樹(きむらかずき)が未だ行方不明であること、そして涼子の死が正式に解決していないことが、彼らを縛り続けていた。
ある日、美咲の元に役場から電話が入った。涼子の事件を担当する捜査員が、新たな情報を手に入れたというのだ。
**13. 失われた証言**
捜査員によれば、涼子の死が報じられた当時、木村一樹の動向を知るという証言があったが、有力者の圧力で黙殺されていたという。その証言者は、村外れに住む老人だった。今も生存しており、二人に直接話を聞いてほしいと勧められた。
亮と美咲は早速その老人――古川(ふるかわ)という名の男性を訪ねた。古川は足元のおぼつかない状態だったが、意外なほど快く二人を迎え入れてくれた。
「木村一樹か……あの男は確かに怪しい。ただ、村を出た直後に変な噂を耳にした。」
古川は当時の記憶を振り返りながら続けた。
「展望台の近くで、一度彼を見たという奴がいるんだ。村を出たと言いながら、しばらく周囲をうろついていたらしい。何かを隠そうとしていたのかもしれん。」
「隠す……」美咲は息を呑んだ。「私たちが見つけた箱のことですか?」
古川は目を細め、「お前たちが掘り出したのは、ほんの一部だろう。きっとまだ何かある」と呟いた。
**14. 最後の探索**
古川の言葉に背中を押され、亮と美咲は再び展望台へと向かった。捜査資料や証言を元に、新たな手がかりを探すためだ。展望台に到着した二人は、前回掘り返した場所からさらに広範囲を調べ始めた。
冷たい風が吹きすさぶ中、亮のシャベルが硬い何かに当たる音がした。
「これだ……!」
土を払いのけると、そこにはもう一つの金属箱が現れた。中には、涼子の失踪前後に撮影された写真や、木村一樹が犯行に関与していることを示す証拠品が詰められていた。さらに、木村が展望台の近くで自分の行動を記録したメモも見つかった。
メモにはこう記されていた。
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「涼子が俺を裏切ったのは許せない。展望台で問い詰めたが、彼女は謝罪しようとしなかった。感情が抑えきれなくなり、あの時……」
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その後は筆跡が乱れ、何が書かれているのか分からない。しかし、このメモは明らかに彼が涼子の死に関与していることを示していた。
**15. 最後の決着**
警察に証拠を提出すると、事件は大きく動き始めた。木村一樹が村を出た後、別の都市で偽名を使って生活していたことが明らかになり、ついに居場所が突き止められた。
彼は数十年にわたり隠れ続けていたが、警察の捜査により逮捕された。彼は当初犯行を否認したが、展望台から発見された証拠品によって追い詰められ、最終的には罪を認めた。
裁判の場で、木村は涙ながらにこう語った。
「彼女を愛していた。だが、あの夜、感情に支配され、取り返しのつかないことをしてしまった。」
木村の懺悔を聞いた亮と美咲は、複雑な思いに包まれた。木村が罰を受けることで涼子の無念が晴れるのか、それとも彼女の霊は今もどこかで彷徨っているのか。それは誰にも分からなかった。
**16. 平穏の中で**
木村一樹の逮捕から数週間後、亮は再び展望台を訪れた。今回は一人だった。冬の空気が冷たく、星空が美しく広がっている。
展望台の柵に寄りかかりながら、亮はふと涼子の姿を思い出した。そして小さく呟いた。
「これで終わったのかな……」
その時、どこからともなく暖かな風が吹き抜けた。亮は空を見上げ、満天の星々の中に涼子が微笑んでいるような気がした。
「ありがとう……」
それは確かに、亮の耳元で囁く声として聞こえた。そして次の瞬間、風は静まり返り、夜は深い静寂に包まれた。
亮は静かに微笑み、展望台を後にした。
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亮(りょう)は展望台を後にし、涼子(りょうこ)の霊がようやく解放されたのだと信じていた。しかし、心の奥底には、小さな違和感が残っていた。「ありがとう」という涼子の声は確かに聞こえたが、それで本当にすべてが終わったのか――。
**17. 不穏な影**
日常が戻りつつあった頃、亮は夜中に奇妙な夢を見始めた。それは必ずあの展望台から始まる。冷たい風が吹きすさぶ中、彼は涼子の姿を探している。だが、夢の中の展望台は現実よりも朽ち果て、霧が立ち込めている。
「涼子、どこにいるんだ!」夢の中で亮は叫ぶ。すると、背後から足音が聞こえる。
振り返ると、そこに立っているのは赤い服を着た涼子ではなく、黒い影のような存在だった。それはゆっくりと近づき、低い声で囁く。
「終わっていない……」
その声で目が覚めるたび、亮は汗だくになり、胸を押さえながら深く息をつく。
美咲(みさき)にも相談したが、彼女は夢を見ることはなく、亮が過剰に考えすぎているのではないかと心配した。
「疲れてるんだよ、亮。事件は終わったんだから、少し休んだほうがいい。」美咲のその言葉も、亮の不安を消すことはできなかった。
**18. さらなる真実**
ある日、亮は古川(ふるかわ)老人を再び訪ねた。夢のことを話すと、古川は深い皺の間にさらに影を落とし、重い声でこう語った。
「涼子だけがこの村で亡くなったわけじゃない。展望台にはもっと古い歴史がある。あそこは……」
古川の話によると、展望台が建てられる以前、そこには古い祠(ほこら)があり、村人たちが山の霊を鎮めるための儀式を行っていたという。だが、時代が進むにつれ、その祠は忘れ去られ、展望台が建設された。
「祠を壊してから、妙なことが起こるようになった。展望台で事故が増えたり、失踪者が出たり……涼子の霊もその影響を受けているのかもしれん。」
古川の話を聞いた亮は、展望台に潜む「何か」が涼子を苦しめ続けていたのではないかと考えた。彼女の死が解決した今でも、霊的な力は残っているのかもしれない。
**19. 最後の試み**
亮と美咲は、展望台を巡る過去をさらに調査し、廃れた祠の跡地が展望台の下に埋まっていることを突き止めた。その場所は現在、地面がコンクリートで覆われており、簡単に手をつけることはできない。
「これ以上手を出すのは危険かもしれない。」美咲は躊躇した。
しかし、亮は断固として言った。「もしこの祠の跡地が原因で、涼子や他の人々が苦しんでいるのなら、放っておけない。」
二人は夜を待ち、再び展望台へと向かった。月明かりの下で、亮はコンクリートの隙間を探し、小さな裂け目を見つけた。そこから風が漏れ出し、何かを囁くような音が聞こえてきた。
**20. 呪いの終焉**
亮はその裂け目に祈るように手を重ね、涼子の名を呼んだ。
「涼子……お前がまだここにいるなら、俺たちに教えてくれ。どうしたらお前を救える?」
その瞬間、展望台全体が揺れ、突風が吹き荒れた。霧が立ち込め、再び赤い服を着た涼子の姿が現れた。彼女は微笑むでもなく、泣くでもなく、ただ亮を見つめた。
「私は、もう自由になった。でも、この場所には……まだ……」
涼子の声は次第に消え、代わりにどす黒い影が姿を現した。それは人の形をしていない、混沌とした闇そのものだった。亮と美咲はその場に立ち尽くし、闇が展望台を覆い尽くしていくのを見守った。
「祠を戻せ……そうすれば、全てが終わる……」闇が低い声で囁く。
翌日、亮と美咲は村の住人たちに協力を求め、展望台の一部を解体し、失われた祠を再建するプロジェクトを開始した。最初は抵抗もあったが、涼子の事件を知る人々が少しずつ協力してくれるようになった。
数か月後、祠は元の形に復元され、供養の儀式が行われた。その夜、亮の夢にはもう涼子も黒い影も現れることはなかった。
**21. 平穏の訪れ**
再建された祠の前で、亮と美咲は手を合わせた。風が静かに吹き、涼子の優しい声が遠くから聞こえた気がした。
「ありがとう……これで本当に終わる。」
展望台はその後、観光名所として再び人々に親しまれる場所となったが、亮と美咲にとっては、特別な思い出の詰まった場所として心に刻まれた。
もう二度と、不吉な噂が立つことはなかった。
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### 後日譚
祠(ほこら)が再建され、展望台は平穏を取り戻した。村の人々の間では、呪われた地という不吉なイメージは次第に薄れ、代わりに「守られた場所」として新たな評判を得るようになった。亮(りょう)と美咲(みさき)は事件の解決者として地元で一目置かれる存在となったが、二人はその注目を喜ぶどころか、どこかで警戒心を抱いていた。
全てが終わったはずなのに――その感覚は、亮の中で完全には消え去らなかった。
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**22. 繰り返される違和感**
祠の再建から半年後、亮は東京での就職活動のため、村を離れる準備を進めていた。だが、彼は夢の中で何度も展望台に戻る自分を見ていた。そこにはもう涼子の姿はなく、黒い影も現れない。ただ、風に揺れる草木の音と、見知らぬ声がかすかに耳元で囁く。
「待っている……」
ある朝、亮はその夢に目覚めると同時に、強烈な既視感(デジャヴ)を覚えた。それは、祠を再建する前に見た悪夢と酷似している。次第に胸がざわつき、亮は美咲に電話をかけた。
「最近、何かおかしなことは起きてないか?」
美咲は少し黙り込んだ後、こう答えた。「実は、展望台の近くでまた奇妙な現象が起きているらしいの。夜になると霧が濃くなったり、風の音が『誰かの声に聞こえる』って。」
その話を聞いて、亮の心にかすかな恐怖が蘇った。「祠を戻しても、まだ何か残ってるのか……?」
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**23. 展望台のさらに奥**
亮は美咲と共に、再び展望台を訪れることにした。夜、祠の前で手を合わせた後、二人は展望台のさらに奥へと進んだ。再建された祠以外にも何かが隠されているのではないか――その直感が二人を突き動かした。
山道を進むと、足元がぬかるみ、木々が密集する場所に出た。そこで、亮は古びた石碑を見つけた。石碑にはかすれた文字が彫られており、読むのに苦労したが、美咲が何とか解読した。
「ここには……封じられし者が眠る……」
「封じられし者?」亮は眉をひそめた。「涼子とは関係ない……のか?」
石碑の裏側にはさらに細かい文字が記されていた。
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**「封印を解く者、災いをもたらす」**
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その言葉を読んだ瞬間、亮の背筋に冷たいものが走った。
「もしかして、俺たちが祠を再建したことで、逆に何かを解放してしまったのかもしれない。」亮は声を震わせた。
**24. 最後の選択**
二人は石碑を掘り返すべきかどうか迷った。亮は掘り返して真実を知るべきだと主張したが、美咲は危険だと反対した。
「もし本当に何かが封じられていたとしたら、触れない方がいいかもしれない。それが新たな災いを招くことになる……」
しかし、亮は夢で何度も「待っている」という声を聞いていた。それがただの幻覚や疲れではないと確信していた。
「俺たちがここまで巻き込まれたのは偶然じゃない。これを無視したら、また誰かが苦しむことになるかもしれない。」
意を決し、亮は石碑の下を掘り返した。
**25. 解放と覚悟**
掘り進めると、中から木製の箱が出てきた。箱は錆びついた金属の鎖で厳重に封印されており、表面には古い呪符が何枚も貼られていた。
「これ……本当に開けるの?」美咲は顔を青ざめさせた。
亮は少し躊躇したが、「開けないと終わらない気がする」と答えた。そして、錆びた鎖を外し、箱を開けた。
中には黒い布で包まれた何かが入っていた。布を慎重にほどくと、そこには小さな人形が現れた。それは、古代の呪術に使われる「藁人形」のようなもので、異様な雰囲気を放っていた。
突然、強い風が吹き荒れ、二人は立っていられなくなった。そして、どこからともなく低い声が響いた。
「目覚めさせたな……」
その瞬間、人形は自ら燃え上がり、灰と化した。
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**26. 平穏の兆し**
その後、不気味な現象はぴたりと収まった。展望台の霧も晴れ、人々は以前のように安心して訪れるようになった。亮と美咲は、あの黒い影が祠の力で封じられていた何かだったのだと理解した。
亮は村を後にし、東京での生活を始めた。時折、美咲と連絡を取り合いながら、彼女と過ごした日々を思い返すことがあった。
展望台の事件は彼らにとって忘れられない経験となり、同時に、それが自分たちの中で何かを変えたことを実感していた。
「涼子も、これで本当に安らかに眠っているんだろうな……」
亮はそう呟き、夜空を見上げた。その先には、祠のあった展望台が思い浮かび、静かに目を閉じた。