※等身大の人間が、後々から精度の低い記憶や怪しい文献を読み漁りながら記しているイメージです。
→そのためリムグレイブのすべての情報を"正しく"記すものではありません。また、意図的に省く要素もあります。
※"当初の予定"の上では、リムグレイブ編のみです。
一ページ目「旅立ち」
◆一「前置き」
この手記は"狭間の地"を訪れた、一人の男の記録である。
これはドラマティックな物語ではない。
ヒロイックな展開は一切ないから、そういう期待は抜きにして読んで欲しい。
まずはじめに、これはこの俺"トニー"の視点による手記であることを断っておく。
一介の吟遊詩人……いや、狭間の地では単なる"素寒貧"でしかない一人の男が書いた文でしかない。
だからこれは、俺の個人的な日誌のようなものであり、間違った情報が混入しているかもしれないと白状する。
正しい情報や真実は、これを読んだ君達が探し当てて欲しい。
俺にできるのは、俺が見聞きした情報を後世へ残すことだけだ。
もし何らかの奇跡でこの手記を手にした者がいたならば。
どうかこの手記を大切に役立てて欲しい。
これは真実のための糸口であり、そして俺が生きた証なのだから。
◆2「異世界」
突然知らない世界に迷い込んでしまう、というのは古今東西よくあるお伽噺だ。
たいていは面白い物語を創作するためのガセなんだが、一方で全部が全部嘘ってわけでもない。
それは妖精の気まぐれだったり、魔術的な云々が施された禁足地だったり、まぁ色々だ。
もしかしたら神やそれに連なる何かの意思による、超自然的なものなのかもな。
で、だ。
俺はそういう存在と運命の赤い糸で結ばれているのか、よくそういうことに出くわす。
その中でも今回はとびきりだった。
最初はどこかの教会だった。
無人な上に壊れかけで、人の死体すらある始末だ。
外に出たら複数の腕がある化け物に襲われたが、もみくちゃになっているうちにどこかの地下墓地に迷い込んだ。
不思議だろ?
でも俺にとってはよくあることだった。
けど、その地下墓地から抜け出した後は流石の俺でも驚きを隠せなかった。
何故かって?
それは俺を出迎えたのが、見上げても全貌を眼におさめられないほどに巨大な、あの伝説の黄金樹だったからさ。
◆3「祝福」
狭間の地には"祝福"と呼ばれる光がある。
これは狭間の地の各地にあって、選ばれた"褪せ人"を文字通り祝福し、旅の行く末を導くそうだ。
俺の目にも見える辺り、俺もまた選ばれた褪せ人ということなのだろう。
旅の最中で出会った、奇妙な白面の男がそう嘯いていた。
また、祝福は褪せ人の体を癒す特別な安らぎの場だ。
少し近づいただけで俺の体がみるみる活気づいたんだから、その効能は伊達じゃない。
俺のように狭間の地にたどり着いた褪せ人は、みんなこの輝きを求め、そして助けられるんだろう。
だが一方で、先述した通り祝福は褪せ人の旅路を導く役目も持つ。
俺の目には、祝福の光は白面の男が言うところの"ストームヴィル城"へ続いていた。
祝福は、俺に何を求めているのだろうか?
その疑問を胸に、俺は城へ向けて旅をはじめた。
◆4「放浪商人」
おっかない騎士様の目を盗むようにして北に進むと、教会が見えてきた。
周りには磔にされた遺体がいくつも並ぶし、教会そのものも崩れ果てて天井すらないありさまだ。
でも中に入れば、一つの祝福と、焚火を囲む放浪商人との縁に恵まれた。
"カーレ"と名乗ったその放浪商人は、俺が訪れた"エレの教会"を拠点としているそうだ。
この教会を訪れる褪せ人から路銀を得ることで、干上がらずに済んでいるそうだ。
そういう事情もあり、この近辺にはそれなりに詳しいらしい。
いくつか会話をしているうちに、色々情報をもらうことができてな。
有意義な時間だった。
ようやく服にも恵まれたしな。
せっかくなので、放浪商人についてのトピックをもう一つ。
彼らは放浪の民の出らしく、そもそも旅をしながら商いをする一族だそうだ。
そんな彼らの特徴として、黄金の祝福とは無縁で、だから定住が許されないらしい。
放浪商人としての在り方は、きっとその無情な事情も無関係ではないだろうな。
でもだからこそ、褪せ人の味方をしてくれるんだろう。
もし狭間の地に赴くことがあるなら、彼のような放浪商人には手を出さないことを勧めるぜ。
旅先で品物を売ってくれる彼らは、旅の貴重な仲間だ。
敵対していいことはない。