名もなき褪せ人の手記   作:上代わちき

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 延長戦です。


湖のリエーニエ編
十一ページ目「イリス教会にて」


 

 

 

◆一「抜け道」

 

 ようやく手帳を新調できた。

 これでストームヴィル城の先について記すことができる。

 

 この手帳については、ストームヴィル城の北に広がる"湖のリエーニエ"について記そうと思う。

 余白が余ればケイリッドなどについて記してもいいかもしれないが、まぁそれはその時次第だ。

 もしリムグレイブの情報を読みたいなら、以前の手帳を探してくれ。

 

 

 

 さて、前回は王の器となるかもしれない褪せ人と出会い、彼と共にゴドリックを倒した。

 その後、大ルーンの力を得るために神授塔へ向かう彼と別れ、俺はストームヴィル城の奥を探索した。

 

 すると面白いものを見つけた。

 抜け道だ。

 

 

 

 ゴドリックが座っていたと思わしき玉座の間が最奥にあり、その周りを探索すると通路が出て来たんだ。

 その通路は下の方へ続いていて、そして外に繋がっていた。

 

 城とは、戦争に備える防衛拠点だ。

 基本的に外敵との戦を想定して城を作られるが、当然ながら戦とは負ける時についても想定しなければならない。

 この場合は、城の中に敵が入り込む場合などだな。

 

 そういう場合に備えて、城主を逃がすための抜け道は作られるものだ。

 おそらく俺が通ったのは、そういう用途の道だろう。

 

 

 

 抜け道の先には、白い霧に包まれた湖が広がっていた。

 その瞬間に、俺はこの場所が"湖のリエーニエ"であると悟った。

 

 なにせ、その湖の中にあの"魔術学院レアルカリア"が聳え立っていたのだから。

 

 

 

◆二「イリス教会」

 

 リムグレイブに比べて肌寒い湖のリエーニエだが、幸運なことに教会という安全地帯にありつくことができた。

 イリス教会といって、リムグレイブ各地の教会同様"聖杯の雫"に恵まれた。

 

 だがそれ以上に、人の縁に恵まれてな。

 いくらか情報を聞き出すことに成功した。

 

 

 湖の中に聳え立つ魔術学院レアルカリア。

 輝石の魔術師の学び舎であるこの場所は、しかしかの破砕戦争の際に門を閉じてしまったらしい。

 何の告知もなく、何も知らない魔術師は学院に戻ることすらできなくなった。

 この情報を教えてくれた魔術師も、そういう者の一人であるようだ。

 

 だが、何の手立てもないというわけでもないらしい。

 どうやら"輝石鍵"というものがあれば、魔術学院の門を通ることができるらしい。

 

 

 湖のリエーニエでは、まずこの輝石鍵の捜索が目的となるだろう。

 何せ大ルーンの一つがあるとされている場所だし、俺にとっても魔術学院は情報の宝物庫だからな。

 

 

 

◆三「シャブリリのブドウ」

 

 実はストームヴィルの抜け道を通った際、不気味なものを見つけた。

 それは黄色く爛れきった瞳だ。

 表皮は剥がれかけて、中身はどろりとしていて、さながら大粒のブドウのようだ。

 

 これは「シャブリリのブドウ」と呼ばれるアイテムのようで、文献に曰く狂い火に連なるもののようだ。

 

 

 まぁ、わかりやすい話ではある。

 啜り泣きの半島で見た黄色い火に、どこか似ているんだ。

 確信を持ったのは文献と照らし合わせてからだが、少なくとも俺の本能はそのおぞましい気配に気づいていた。

 

 文献では、これは盲目の巫女に捧げれば、彼女を"彼方の灯"に導くものだそうだ。

 あきらかに碌なものではなさそうだが、詳細は不明だ。

 

 

 ……それにしても、盲目の巫女に捧げるとはどういう意味なんだろうな。

 まさかとは思うが、手触りが熟しきったブドウに似ていることをいいことに食べてしまうものなのだろうか。

 

 もしそうしようとした時は、シャブリリのブドウが瞳であることを告げておくのが礼儀だろう。

 流石にあの狂い火の関係者だろうと、そういう常識はある筈だ。

 

 

 

◆四「レアルカリア兵」

 

 イリス教会から湖の方へ降りていく道の途中で、レアルカリア兵の野営地を見つけた。

 運悪く奴らに見つかって応戦し、かろうじて茂みを使った奇襲などを駆使して倒すことに成功した。

 

 まったくもって割に合わない戦いだったが、その代わり一定の情報を得たのでここに記す。

 

 

 

 青いサーコートが特徴のレアルカリア兵は、カッコウの二つ名で知られている。

 なんせそのサーコートには、輝石の隆盛を覗き込むカッコウが描かれているからな。

 兜にもカッコウの一枚羽が配されていることから、意図的な二つ名なのだろう。

 

 文字通り魔術学院レアルカリアに仕える者達だそうだが、学院の外にいるのは彼らも門の封鎖によって締め出されたからか、はたまた別の理由があるのかもしれない。

 曰く、魔術学院から戦争の自由を与えられており、略奪を恣にする野蛮な奴らだとされている。

 所詮は噂話だが、まぁ亡者と化した奴らの背景を探る手掛かりにはなるかもしれないな。

 

 

 

 戦闘面だが、奴らは大剣を構えていて、重い剣術を振り回してくる……のは、他の兵と同じだな。

 だが特徴的なのは、投擲物だ。

 

 おそらくは「カッコウの輝石」と呼ばれるアイテムなのだろう。

 青く輝く輝石片の塊を地面に叩きつけることで、魔力の弾を生じさせて飛ばす。

 この魔力の弾は、金属盾では防ぎきれない。

 対処には、今までとは異なるアプローチを要するわけだな。

 

 

 だが、それだけに味方につければ心強くなるだろう。

 ちょうどその野営地で、「カッコウの輝石」を製作できる製法書を見つけた。

 リエーニエの湖で手に入る「結晶の木の芽」と、結晶の坑道にあるという「壊れた結晶」があれば作れるという。

 材料が集まったら、アイテム製作を試みるのもいいかもしれない。

 

 なお「カッコウの輝石」の使用には、一定の魔力を要するそうだ。

 使う時には注意しないとな。

 

 

 

 それと、興味深い戦術がもう一つ。

 レアルカリア兵の野営地には、彼らの戦闘を補佐する雑兵もいたんだが、彼らも投擲物を駆使する。

 その投擲物なんだが、おそらく「しろがね壺」と呼ばれるものだ。

 

 このしろがね壺に当たると、聖杯瓶が使用できなくなる。

 体の傷が深刻だったとしても、回復ができなくなるというわけだ。

 その性質を考えると、こちらの投擲物も回避するべきだ。

 

 

 湖のリエーニエを旅する時は、投擲物に注意することだな。

 

 

 

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